検査室へは,各科から咽頭培養の検査依頼が相当多い。しかし,培養結果が出たさいに,その咽頭所見はどんなようすなのか,検査成績は診断にどう役立ったのか,検査技師諸君は知る機会がないのが通常である。そこで,咽頭に変化を生じる疾患の代表的なもの数例について,咽頭所見・臨床経過・検査成績と診断を揃えて,御参考に供する。
症例1〜4は,咽頭症状が病気の主症状であり,咽頭培養の結果が原因を決定した例である。症例5は,咽頭症状は病気の一部であり,検査の面でも,咽頭から溶連菌が純培養状態に検出されたことは,皮膚の発疹のγ—グロブリンテスト陽性という成績と一緒に考えて,狸紅熱と診断確定した例である。症例6は,咽頭症状が病気の主症状で,ジフテリアを疑わせたが,咽頭培養の成績はこれを否定したので血液検査が実施され,顆粒白血球減少症という診断が導き出された例である。このように陰性という検査所見も,正しい診断に到達するために重要なことに注意して頂きたい。