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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査13巻3号

1969年03月発行

雑誌目次

代謝経路と臨床検査・3

嫌気的解糖路

松村 義寛

pp.186-187

 多糖(グリコゲン)が横紋筋,平滑筋,心筋などの運動器官において,酵素の供給が不十分なとき,多量のェネルギーを発生する必要に迫られた場合には乳酸を生成する.この代謝経路を嫌気的解糖路,あるいはEmbden-Meyerhofの解糖路と呼んでいる.

 右の図を総括すれば,

カラーグラフ

潜血反応

石井 暢 , 梅山 凉子

pp.192-193

潜血反応は尿,その他に応用されることもあるが,主として糞便の潜血の有無判定に用いられる.糞便中の潜血は消化器の潰瘍,癌その他の疾患の診断に重要な手がかりを与える大切な検査の1つである.検査は抽出法によるのが望ましいが,多忙な検査室では直接法が広く応用される.しかし,これは抽出法に比べ血液以外の物質によって陽性を示しやすい欠点がある.また試薬の新旧,純不純によっても影響をうけやすいから,潜血反応実施において十分な配慮が必要である.(技術解説参照p.209)

グラフ

連続切片作成法

千葉 宗平

pp.195-198

生検でも,剖検材料でも,また実験した動物の組織にしても,くわしく変化を調べるには,連続切片を作り1枚,1枚追求しなければならない.連続切片作成には,組織片の厚みはさけられないので,最初の固定・脱水・包埋と入念にやらなければならない.またメスの整備も慎重にして中途で取り換えるようなことのないようにしなければならない.

そのほか器械・器具も必要であるので,あらましを紹介しながら,製作上の手技や,注意すべきことがらの要点を述べている.

自動血球計数装置—オートアナライザーSMA4

冨田 重良 , 南 博迪

pp.199-202

現在の自動血球計数器では血液の稀釈・撹拌などにまだ人手を要し,これがまた測定誤差の一因ともなっている.SMA 4は他のオートアナラィザーと同様,連続的流れ分折の原理に従って赤血球数,白血球数,ヘモグロビン濃度,ヘマトクリット値の4種目を同時に,しかも1時間60検体の割合で自動的に測定記録する完全自動化血球計数装置である.開発後日も浅いゆえか,改良の余地は認められるものの,血球計算の能率化,人為的誤差の排除のためには,画期的な機械であるといえよう.

総説

臨床検査センターの現状と将来

藤沢 正輝

pp.203-208

日本医師会の"臨床検査センター"の発展はめざましいものがある.この臨床検査センターの利用なしには,診療は考えられない開業医が増加しつつあるという.そこで,今月は,臨床検査センターの過去・現状・将来…….特にそのゆくえと可能性に焦点をしぼって概説することにする.

技術解説

潜血反応(カラーグラフ参照)

石井 暢 , 梅山 凉子

pp.209-212

 種々の体液あるいは排泄物ちゅうの血液の存在の証明は,臨床検査の分野において,しばしば疾病の診断に応用されているが,その他の医学の分野たとえば法医学方面においても,きわめて重要な問題となっている.ことに,血液が著しく微量な場合に,これを確認することがしばしば要求されるが,これの分析はまた相当困難なことである.

 血液が多量にある場合には,肉眼でほとんど確認することができるし,また臨床検査材料で血液量が多少すくなくとも,血液成分に変化がなければ赤血球そのものを顕微鏡的に確認することもできよう(尿沈渣,髄液の鏡検など).また,ヘモグロビンの特有な吸収帯からも,また螢光色素で染色し,その特有なスペクトルから検出することもできよう.さらにヘミンその他ヘモグロビン誘導体の結晶を作り,それから判定することもできる.

連続切片製作法(グラフ参照)

千葉 宗平

pp.213-218

まえがき

 どんなことをするにも,すぐれた技術が必要であるが,それとともにいろいろの機械・器具が必要である.パラフィン連続切片を作る作業にも,病理検査技師としてのすぐれた技術とともにいろいろとミクロトームの機械のほか,こまごました器具が入用である.図1にならべた用具類も,その例でそれぞれ大切な役目をもっている.

 連続切片作製法といっても,大すじな平素の病理組織標本作製過程と変わりはないが,連続切片作製のためには,熟練した技術の持主がよく整備された機械器具や,よい資材を用い,さらに細心の注意をはらって操作しなければならない.今回はこれらの連続切片作製に必要な諸点につき,特に基礎的な方面に重点をおいて申し述べたい.

化学検査の採血時期—なぜ早期空腹時に行なうか

西風 脩 , 市田 篤郎

pp.219-222

はじめに

 化学検査の重要な使命は,他の臨床検査と同様に,疾病の診断ならびにその病態像,ひいてはその病態機構像の変化を客観的に把握するところにあるため,その基礎ともなるべき生理的変動(正常値の変動)を前もって明らかにしおく必要がある.しかし,その前提をじゅうぶんに満足させることは,けっして容易なことではなく,これらにつき多方面よりの検討が望まれる.

 血清などの体液に対しては,それらに含まれる種々成分の濃度の恒常性を維持しようとする数段もの機構が働いている.しかし,実際には,それら成分に対し生理的変動が伴い,それが連続的な数値として表示されるため,病的代謝調節機構の変化をあやまりなくとらえることは,必ずしも容易なことではない.したがって,個体にみられる生理的変動,検体の採取から測定までに至る起こりうる変化,ならびにその誤差の要因について,常にじゅうぶんな知識をもつと同時に,その施行にあたっては細心の注意を必要とする.測定の際の誤差が,生理的変動に比し大なるものであるときには,その変動について論ずることはできず,この場合,ルーチンの測定誤差の限界を生理的にみられる日差変動の幅(正常値の幅)の1/4以下におさめることが化学検査上の評価の必要条件とされている1)

ひろば

技術仲間たち—ある集まりの記録より

村田 徳次郎

pp.212

 何々研究会,また技術会とかの講演研修会は,日進月歩の医学の発達に伴う臨床検査の変化に対処していかねばならない今日,この種の催しは頻繁にあることを希望するし,また必要なことである.しかし,講演内容を実際活用しようと検討してみると,設備と時間を相当要するものが多いように思う.つまり少ない予算と数人の技術員で構成する中小検査室の,加えて多忙さで縁遠い研究講演が多い.この点において私ども,中小検査室の技術員は,得た知識を業務規模によってくふうをこらして,生かしていくべきではあるまいか.現場でのみ得られる貴重な経験と蓄積されている知識をもってすれば,不可能に思える研究にしろ,技術にしろ,克服できぬことはないと確信する.このような意味も含めて,近くの地域の医院・診療所・病院で検査業務に従事している意欲的な技術仲間が集まり,無礼講で自由にそれぞれの立場で,経験談,仕事のくふう,苦心,苦労,人間関係,また近ごろ問題となっている検査項目の検討と熱ぽい議論と,とにかく迫力のある雰囲気で,所定の時間をだいぶオーバーしてしまったほどであった.私どもはさっそく活用できる多くの要素を仕入れることができた.とかく一方交通になり気味の講習会と異なり,本当に交流が自由に活発に行なわれ,当初思わなかった収穫であった.まことに3人寄れば文珠の知恵だなと強く印象を受けた.

話題

がんセンター衛生検査技師研習会に出席して—広く癌診断技術を学ぶ

大林 弘幸

pp.218

 私は,近年の癌診断の重要性と必要性を考えて,一般総合病院臨床検査に,癌診断技術をいかに取り入れるかという目的で,国立がんセンター(東京)に3週間(43・11・25-12・14)の予定で研修に行ってまいりました.がんセンターにおいては,第1に基礎研究から始まる幅広い癌の研究,第2に癌の診断と治療とその開発,さらに専門医療技術者の養生,訓練癌診断,治療技術の普及,癌知識の普及,癌研究の助成などの癌制圧に関するすべてについて実施しております.現在実施中の臨床検査に関する検体事項を上げてみますと,癌とホルモンの関係,胆癌患者における血液凝固について,生物学癌反応について,癌患者の鉄代謝,癌患者の血清酵素,癌患者のタンパク質代謝,心電図よりみた悪性腫瘍の心転移について,白血病細胞の鑑別に関する細胞学的研究,制癌剤の薬剤感受性と耐性獲得に関する臨床的基礎的研究,制癌剤の生体内分布に関する研究,特に血中病巣濃度を中心にして,などがあげられます.

 検査室においてはその測定法の検討からデータの整理まで一貫して行なっており,講義,実習を通して非常に参考になる点が多く,今後研習より得た経験をもとに大いに病院のために役だてようと考えております.

ゲラフ解説

自動血球計数装置・オートアナライザーSMA 4—画期的なメカニック—能率化・精度管理

冨田 重良 , 南 博迪

pp.223-225

 血液用オートアナライザーSMA 4は,他のオートアナライザーと同様に,連続的流れ分析Continuous flow system)をその根本原理としている.すなわち,プラスチック製カップに入れてサンプラープレート上に置かれた血液試料は,ポンプにより測定システムに送り込まれ,プラスチックチューブ内の連続的流れの中で稀釈され,混和され,測定され,記録される.その詳細は図1のフローチャートで明らかなように,サンプラーから次から次へと自動的に分析し,システム内に吸い込まれた血液は,試料配分器により4本の流れに分割されてポンプを通過した後,空気によって分節された試薬類と一定の量的割合で合流し,混合コイルを通過することによってよく混和され,フェィジングコイルの長さを加減することによって,一定の時間的ずれをもって各測定装置に到達し,測定結果が1枚のチャート紙上に記録される.

 このさい分節に関与した(1)気泡は試料が種々の段階を通って流れるとき,試料間の障壁となって試料が互に混合するのを防ぎ,(2)管壁に付着した試料液の残留物を押し流しながら移動することによって,試料の混入を防ぐ役目をする.

臨床検査の問題点・3

血液培養検査—培地の選び方・使い方

土屋 俊夫 , 後藤 甚作

pp.226-231

血液培養検査は,特に患者の診療に近密なため,迅速さを要求される.カルチャー・ボルトルは雑菌の混入を減らしたが,一方,培地の選択・量,凝固阻止剤の使い方によっては結果が異なってくる.検査室と"臨床"とのあり方をバックにその問題を追っていく.

主要疾患と臨床検査・3

肝疾患と臨床検査

谷川 久一

pp.232-236

 現在,肝機能検査といわれているものが数多くあり,取捨選択に困難を感じておられるかたが少くないと思う.同じ意味あいの検査を2つ以上行なってもムダである(保険診療のうえからも削減される可能性がある.また一方,1つ欠けても診断に困る検査もあるわけである).

 現在,地方の医院や病院でも,その地域の臨床検査センターが多く設立され,検査材料を送れば容易に検査できる現状であるので,特殊検査を除いて,生化学的検査のほとんどは,第一線の先生がたが利用できるわけである.そういった意味から,この項を述べてみたいと思う.

1ページの知識 生化学

溶媒の精製(1)

永井 諄爾

pp.237

 化学反応のほとんど大部分は,何かに溶かした状態,すなわち液相で行なわせるのが普通である.この液体の状態をあたえる媒体を溶媒と名づける.最もよく使われる溶媒は水であり,臨床検査室では水の純度に対してきわめて神経質である.これは血清電解質はもちろん血清鉄,血清銅など,その濃度の低いものの定量のとき,もしも反応溶媒である水が不純,すなわち定量しようとする物質を少しでも含んでいるときは,それによって定量が混乱されてしまうからである.

 ここでは水の精製については述べないで,いわゆる有機溶媒の精製について説明することにする.これらの溶媒の市販品は不純物を含むことがあり,それが思いがけない失敗やまちがいの原因になることが多いのである.したがって市販有機溶媒は必ず精製してから使用するのが原則と心得るべきであろう.

1ページの知識 血液

血球計算の誤差をなくすには(3)

大橋 辰哉

pp.238

血球算定について

 計算板はブュルケル・チュルクでも,ノイバウエルでもよい.トーマは不便でよくない.

 まず乾燥したガーゼで清拭する.前回の血球稀釈液のふき取り方が悪いと,顕微鏡下でそれが血球のように見えることがあるので,完全に清拭することが必要である.完全に清拭されていれば,カバーグラスを載せて軽く圧するだけで,ニュートン環が両端にできる(図1-C).このニュートン環ができているということは,カバーグラスが計算板に一様に密着していることを示す(図1-A).したがって,このニュートン環ができていないのに,血球稀釈液を計算板ちゅうに入れると,規定の量より多くはいりすぎ,血球値は当然実際値より多く出てしまう(図1-B).

1ページの知識 血清

遊出

安田 純一

pp.239

1.遊出のしかた

 抗血清を吸収した抗原から抗体を,ふたたび遊離させる操作を遊出(elution)という.吸収試験によって抗体価が下がっただけでは満足せず,吸収の際に抗原に結合された抗体を実際に取り出してきて,抗源抗体反応の特異性をさらに具体的に検討しようというのが,そのねらいである.加温によって抗体を抗原からはなすLandsteiner以来の方法が広く用いられている.

 まず,吸収に使った抗原を食塩水で2-3回よく洗う.加える食塩水の量は多いほうがよい.念のため,最終回の上清ちゅうに抗体が証明されないことを確認しておく.それから,沈殿に少量(0.5-1.0ml)の食塩水を加えて再浮遊させ,試験管を56℃の湯ぶねに5-10分間浸しであたため,すばやく遠心して上清を分離する.このとき,食塩水の量があまり少ないと遠心しても上清が採れない.多すぎると,それだけ抗体が薄められて検出しにくくなる.

1ページの知識 細菌

普通寒天にはえる病原菌(1)

木村 貞夫

pp.240

病原ブドウ球菌の検査同定

 細菌は,形態のみではなかなか同定がむずかしいことについては,前回までに述べた.そこで,細菌の同定を正確に行なうには,どうしても培養が必要になる.先人の努力によって,現在,病原菌のなかで人工的に培養できないものはらい菌だけであるが,培養にはいろいろの問題がある.

 われわれが,そこから細菌を培養しようとする材料(糞便・喀痰・尿・膿・血液など)には,多くはいくつかの菌がいる.このいくつかの菌のうち,われわれの目的とする菌のみを取り出したい(分離培養)し,その菌のみを純粋に培養したい(純培養).そうすることによってはじめて,その菌の性質を調べ同定することができる.このためには,液体で培養するよりも固形のものの上で培養することのほうがよいことはもちるんである.これには,コッホー派によって開発された賦形剤として寒天を用い,これに肉汁浸出液を含ませたもの(普通寒天培地)の上に培養する方法が一般的である.

1ページの知識 病理

固定組織の脱水とパラフィン滲透

川井 一男

pp.241

1.脱水のしかた

 適当な厚さに切り出したホルマリン固定組織片は,じゅうぶんに水洗して,できるだけホルマリンを除去する.約3mm厚の組織片では流水で少なくとも30分は洗うが,時間は厳格に規定する必要はない.

 墨汁で標本番号・記号(ときには姓名や臓器名)を記した厚手紙(名札用ケント紙が適当)の小片とともに操作を進めるほか,標本の方向をそろえるために組織片の一定の面に墨汁で目印をつけることもある.

1ページの知識 生理

トランジスタ

宇都宮 敏男

pp.242

 半導体素子の最も代表的なものであるトランジスタ(transistor)は,1947年アメリカのベル電話研究所で発明され,transfer of signal through varistor (可変抵抗を通じての信号の伝達)という意味の単語である.発明者ショックレー他2名はこれによりノーベル賞を受けた.約20年の間で,トランジスタは完全に電子工学を革命的に進歩させたことは周知のことである.

1ページの知識 一般

消火器の使い方

川口 正太郎

pp.243

1.消火器の構造と管理

 現在,病院などで主に設置してある消火器は,そのほとんどが泡消火器が設置されており,ボイラー室,電気室などの特殊な場所には粉末消火器(BC火災用),または蒸発性液体消火器を設置している現況である.しかし,病院には病室・診療室・研究室などがあり,病室など一般的な火災と種々の化学薬品のある研究室などに対して,その適応性によっておのずから設置する消火器の種類が限定される.また,消火器の構造としては泡消火器について簡記すれば,泡消火器の薬剤は重曹を主とし,炭酸ソーダおよび可性ソーダなどが添加されたものを外筒に,硫酸アルミニウムを内筒にそれぞれ水に溶解して消火器内に貯蔵している.

 使用するとき消火器を転倒するので,外筒のアルカリ性薬液と内筒の酸性薬剤が混合し,その際の化学反応で化学泡が発生,その圧力でノズルより泡が放射されることになる.したがって,使用時には消火器の内部には7-10kg/cm2の圧力が生じるから,老朽品には使用時に破裂の恐れがあり危険である.また,蒸発性液体を消火剤とする四塩化炭素や一塩化一臭化メタンなどの消火器は,その放射圧力源として,常時,消火器容器内に約7kg/cm2の圧縮空気が充てんされており,また粉末消火器のように,加圧用として炭酸ガスボンベを内臓してあるものもある.

論壇

臨床検査と電子顕微鏡

東 昇

pp.246-247

電子顕微鏡と臨床医学

 "電子顕微鏡と臨床医学",昔考えてもみなかったことであるが,電子顕微鏡は臨床医学に役だつまで急速の進歩を遂げた.古くは1948年,カナダのウイルス学者が天然痘疑似患者の痘疱内液に,あの特徴ある形をした基本小体(ウイルス粒子すなわちビリオンvirion)を見いだして,電子顕微鏡に診断価値のあることを提唱した.今日,電子顕微鏡と臨床医学とは,文字どおり,新しい時期を迎えたといってよい(詳しくは,筆者監修の「臨床医学と電子顕微鏡」雑誌「日本臨牀」1967年1月号より1968年12月号まで毎号掲載,を参照されたい).ここには,電子顕微鏡と臨床ウイルス学について述べる.それに立ち入るまえに,基礎的なことに少しふれておきたい.

座談会

ディスポーザブル検査器具の将来性—"使い捨て"の経済学

富山 哲雄 , 丹羽 正治 , 寺田 秀夫 , 戸畑 ナツ子 , 福岡 良男

pp.248-255

ディスポーザブルが普及した第1の条件は,経済性である.再生するより捨てることに利点をおく消費経済時代の産物であろう.しかし,医療の世界では,"医学性"をぬきにして考えることはできない.つまり,経済性より医学性を優先して考えなければならない.一方,世はあげて大量生産・大量消費の方向にすすんでいる.それに輪をかけて人手不足の時代である.医療ばかりが,超然と無視しているわけにはゆかない.事実,臨床検査の分野でも,すでに幾多のディスポーザブルが活躍している.今月はこの"時代の主役・ディスポーザブル検査器具"を取りあげてお話しいただくことにした.

研究

プロトロンビンメーターを用いた線維素溶解時間測定法について

長谷川 淳 , 新木 一夫 , 久保田 勝秀 , 武山 正男 , 本田 昌子 , 森居 智恵子 , 竹中 ますえ

pp.256-258

はじめに

 現在,線維素溶解現象の測定方法として種々の方法が考案され利用されている.しかし,現在広く利用されている全血および血漿溶解時間測定法,フィブリン溶解時間測定法,フィブリン平板測定法などの終末点ならびに溶解面積の判定は,全て目視によってなされている.そこでわれわれは主観的要素の入りやすい目視法を改め,客観的に終末点を判定する目的で,プロトロンビン時間などの測定に用いられているプロトロンビンメーター1)を用いてフィブリン溶解時間を測定する方法を考案したので報告する.

体腔液の細胞診—特に印環型細胞の分析

黒木 須雅子

pp.259-261

 細胞診という検査を意識して標榜するまでもなく,従前からいかなる施設でも,いかなる科でも行なってきているのは体腔液の細胞診であろう.したがって検査の機会は多く,問題も多い.問題の最大のものは,細胞種ので鑑別であり,漿膜細胞(中皮細胞,または内皮細胞)と食細胞(単球様細胞または組織球)とを癌細胞といかにして区別するかであって,単なる"異型的"などという程度のcriteriaでは,全然問題にならないことは周知のとおりで,これに関してはすでに多くの研究がある.

 次に体腔液細胞診でしばしば問題となるのは,いわゆる"印環型細胞"である.確かに粘液産生性癌細胞が印環型を呈することがあるのは事実であるが,同時に体腔液中の食細胞が印環型となることも必発といってよい現象である.したがって,一口に"印環型"という形態を呈する細胞には,癌細胞由来のものと食細胞由来のものとがあることが明らかであって,この両者を明確に鑑別することは,きわめて重要である.最も重大な鑑別点は,両種の細胞の生物学的性状の差を把握する方法をとることであろう.すなわち,間葉系細胞としての食細胞の有する貪食能の確認の問題と,粘液産生能を有する上皮性性格を多糖類で確認することである.ただし,PASはほとんどすべての細胞種に陽性所見が見られるので,どのような形態と分布であるかが問題となる.

血中遊離脂肪酸の比色定量法(板谷・宇井法)の検討

橋本 一夫 , 林 訓子 , 伊藤 忠一

pp.262-264

はじめに

 血清中の遊離脂肪酸(FFA)は,他の脂質成分に比較して量的にはきわめて少ないが,その代謝的動向は,生化学的な研究面だけでなく臨床的にもその意義が高く評価されるようになり,臨床検査の分野においても,FFA測定のルーチン化が強く要望されている.

 従来,血中FFAの定量にはDole法1)が広く用いられているが,この方法はルーチン検査としては大量の試料を要し,測定に時間がかかり,終末点の識別に注意と経験を要する.さらにAyers2),岩山3),Duncombe4,5)らはFFAの銅およびコバルト塩が,有機溶媒中に移行することを利用した鋭敏な比色法を報告しているが,これらの方法も,アルブミンと結合しているFFAを抽出するために長い振盪時間を要し,特に血清中のレチシンが有機溶媒中に転溶して類似の発色を与えるため測定に誤差を生じやすい.

セファデックスを応用した血清鉄結合能測定法

岩田 治平 , 高田 瀞子

pp.265-266

 セフィデックスを用いるゲル濾過法は,分量子の差を利用して物質を分離しようとする方法で,分離しようとする物質の分子量差が大きいほど分離が容易になることから,種々の物質に対するタンパクの結合能を測定する手段としては,精度の高い有利な方法になりうると考えられる.そこで,これを血清鉄結合能の測定に応用してみた.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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60巻5号(2016年5月発行)

今月の特集1 体腔液の臨床検査
今月の特集2 感度を磨く—検査性能の追求

60巻4号(2016年4月発行)

今月の特集1 血漿蛋白—その病態と検査
今月の特集2 感染症診断に使われるバイオマーカー—その臨床的意義とは?

60巻3号(2016年3月発行)

今月の特集1 日常検査からみえる病態—心電図検査編
今月の特集2 smartに実践する検体採取

60巻2号(2016年2月発行)

今月の特集1 深く知ろう! 血栓止血検査
今月の特集2 実践に役立つ呼吸機能検査の測定手技

60巻1号(2016年1月発行)

今月の特集1 社会に貢献する臨床検査
今月の特集2 グローバル化時代の耐性菌感染症

59巻13号(2015年12月発行)

今月の特集1 移植医療を支える臨床検査
今月の特集2 検査室が育てる研修医

59巻12号(2015年11月発行)

今月の特集1 ウイルス性肝炎をまとめて学ぶ
今月の特集2 腹部超音波を極める

59巻11号(2015年10月発行)

増刊号 ひとりでも困らない! 検査当直イエローページ

59巻10号(2015年10月発行)

今月の特集1 見逃してはならない寄生虫疾患
今月の特集2 MDS/MPNを知ろう

59巻9号(2015年9月発行)

今月の特集1 乳腺の臨床を支える超音波検査
今月の特集2 臨地実習で学生に何を与えることができるか

59巻8号(2015年8月発行)

今月の特集1 臨床検査の視点から科学する老化
今月の特集2 感染症サーベイランスの実際

59巻7号(2015年7月発行)

今月の特集1 検査と臨床のコラボで理解する腫瘍マーカー
今月の特集2 血液細胞形態判読の極意

59巻6号(2015年6月発行)

今月の特集1 日常検査としての心エコー
今月の特集2 健診・人間ドックと臨床検査

59巻5号(2015年5月発行)

今月の特集1 1滴で捉える病態
今月の特集2 乳癌病理診断の進歩

59巻4号(2015年4月発行)

今月の特集1 奥の深い高尿酸血症
今月の特集2 感染制御と連携—検査部門はどのようにかかわっていくべきか

59巻3号(2015年3月発行)

今月の特集1 検査システムの更新に備える
今月の特集2 夜勤で必要な輸血の知識

59巻2号(2015年2月発行)

今月の特集1 動脈硬化症の最先端
今月の特集2 血算値判読の極意

59巻1号(2015年1月発行)

今月の特集1 採血から分析前までのエッセンス
今月の特集2 新型インフルエンザへの対応—医療機関の新たな備え

58巻13号(2014年12月発行)

今月の特集1 検査でわかる!M蛋白血症と多発性骨髄腫
今月の特集2 とても怖い心臓病ACSの診断と治療

58巻12号(2014年11月発行)

今月の特集1 甲状腺疾患診断NOW
今月の特集2 ブラックボックス化からの脱却—臨床検査の可視化

58巻11号(2014年10月発行)

増刊号 微生物検査 イエローページ

58巻10号(2014年10月発行)

今月の特集1 血液培養検査を感染症診療に役立てる
今月の特集2 尿沈渣検査の新たな付加価値

58巻9号(2014年9月発行)

今月の特集1 関節リウマチ診療の変化に対応する
今月の特集2 てんかんと臨床検査のかかわり

58巻8号(2014年8月発行)

今月の特集1 個別化医療を担う―コンパニオン診断
今月の特集2 血栓症時代の検査

58巻7号(2014年7月発行)

今月の特集1 電解質,酸塩基平衡検査を苦手にしない
今月の特集2 夏に知っておきたい細菌性胃腸炎

58巻6号(2014年6月発行)

今月の特集1 液状化検体細胞診(LBC)にはどんなメリットがあるか
今月の特集2 生理機能検査からみえる糖尿病合併症

58巻5号(2014年5月発行)

今月の特集1 最新の輸血検査
今月の特集2 改めて,精度管理を考える

58巻4号(2014年4月発行)

今月の特集1 検査室間連携が高める臨床検査の付加価値
今月の特集2 話題の感染症2014

58巻3号(2014年3月発行)

今月の特集1 検査で切り込む溶血性貧血
今月の特集2 知っておくべき睡眠呼吸障害のあれこれ

58巻2号(2014年2月発行)

今月の特集1 JSCC勧告法は磐石か?―課題と展望
今月の特集2 Ⅰ型アレルギーを究める

58巻1号(2014年1月発行)

今月の特集1 診療ガイドラインに活用される臨床検査
今月の特集2 深在性真菌症を学ぶ

57巻13号(2013年12月発行)

今月の特集1 病理組織・細胞診検査の精度管理
今月の特集2 目でみる悪性リンパ腫の骨髄病変

57巻12号(2013年11月発行)

今月の特集1 前立腺癌マーカー
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査②

57巻11号(2013年10月発行)

特集 はじめよう,検査説明

57巻10号(2013年10月発行)

今月の特集1 神経領域の生理機能検査の現状と新たな展開
今月の特集2 Clostridium difficile感染症

57巻9号(2013年9月発行)

今月の特集1 肺癌診断update
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査①

57巻8号(2013年8月発行)

今月の特集1 特定健診項目の標準化と今後の展開
今月の特集2 輸血関連副作用

57巻7号(2013年7月発行)

今月の特集1 遺伝子関連検査の標準化に向けて
今月の特集2 感染症と発癌

57巻6号(2013年6月発行)

今月の特集1 尿バイオマーカー
今月の特集2 連続モニタリング検査

57巻5号(2013年5月発行)

今月の特集1 実践EBLM―検査値を活かす
今月の特集2 ADAMTS13と臨床検査

57巻4号(2013年4月発行)

今月の特集1 次世代の微生物検査
今月の特集2 非アルコール性脂肪性肝疾患

57巻3号(2013年3月発行)

今月の特集1 分子病理診断の進歩
今月の特集2 血管炎症候群

57巻2号(2013年2月発行)

今月の主題1 血管超音波検査
今月の主題2 血液形態検査の標準化

57巻1号(2013年1月発行)

今月の主題1 臨床検査の展望
今月の主題2 ウイルス性胃腸炎

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