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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査14巻11号

1970年11月発行

雑誌目次

カラーグラフ

ウイルスの螢光抗体法

青山 友三

pp.1042-1043

 ウイルス感染の剖検例について,螢光抗体法(直接法)で抗原の局在部位を調べた.ここでは進行性種痘疹とヘルペスグループ・ウィルスによる感染について紹介する.

グラフ

ウイルスの螢光抗体法—その標本の作成

青山 友三

pp.1045-1048

 螢光抗体法で技術的に最も問題になるのは,ラベル抗体の精製と抗原を含む組織の切片作製であろう.ここでは冷凍ミクロトームの扱いを主として標本の作り方を図示し,組織片の凍結から始まり薄切手技,切片とラベル抗体との反応,洗浄,封入までを解説する.ラベル抗体の精製法,バッファーの作製法および顕微鏡の扱い方などは成書を読んでいただきたい.

組織と病変の見方 肉眼像と組織像の対比—呼吸器とその病変(1)

金子 仁

pp.1049-1052

呼吸器の代表は肺臓である.正常肺は軟らかいし,水に入れると浮かぶ.これは肺胞の中に空気がはいっているからである.肺胞は肉眼でも小穴として見える.うっ血が続くと肺胞中隔の毛細血管が拡張して,中から漿液が肺胞の中にはいる.これが水腫である.

うっ血水腫が長く続くと肺炎が起こりやすい.肺炎になると,肺胞腔の中に好中球,漿液,線維素がいっぱいはいるので,肉眼的に肺胞が見えないし,非常に硬い.肺炎のときに強い呼吸困難の起こるのはこのためである.肺胞内に空気のない状態が無気肺で,空気がはいりすぎて肺胞中隔の破綻したのが肺気腫である.

組織細胞化学・5

酵素組織化学(4)

三友 善夫

pp.1054-1055

酵素組織化学各論

3.転移酵素(Transferase)

 この酵素は酵素基質を分解し,生じた分解生成物を他の物質に付加結合させ,新しい物質を合成する酵素作用をもち,転移酵素と呼ばれる.なかでもアミノトランスフェラーゼ(トランスアミナーゼ)のGOT, GPTが日常,臨床検査でなじみぶかいであろう.しかしながら,組織化学的に検出可能な転移酵素の種類は少なく,グルコシルトランスフェラーぜ,ヌクレオチジルトランスフェラーぜ,アミノトランスフェラーゼの中の限られた酵素にすぎない.

ノモグラム・11

循環血液量の標準値

斎藤 正行

pp.1057

 解説 循環血液量は年齢,体格,性別によって標準値が変動する.したがって色素とか,アイソトープを川いて患者の循環血液量を算出しても,標準と比較しなければ臨床的評価はできない.このノモグラムは身長,体重から性別の標準血正液量を算出するもので,幼・少年型のように標準値の変動する年齢層には便利である.

 例身長140cm,体重40kgのとき,男性なら2900mlが標準循環血液量である.

検査室の便利表・11

血色素係数と平均赤血球容積(1)

小林 重光

pp.1059

 求め方 血色素係数:たて軸に赤血球数(RBC),よこ軸に血色素量(Hb:%)をとり,その数値を100で除したものが血色素係数(C.I.)となる.

 平均赤血球容積:たて軸に赤血球数,よこ軸の血色素量(%)のところにヘマトクリット(Ht)を2倍した数をとり,その交点の数値が,平均赤血球容積(MCV)である.

総説

肝癌患者血清中の胎児性α-グロブリン

平井 秀松

pp.1061-1066

 胎児に特有な血清タンパクにαf-ゲロブリンがある.原発性肝癌に際し,患者血中に著しく特異的に出現し,その診断的価値は大きい.本著ではαf-ゲロブリンの化学的性質,測定法,臨床的特性などについて述べ,特に肝癌との関連を解説しよう.

技術解説

最近の抗生物質(1)

清水 喜八郎

pp.1067-1073

 ペニシリン(Penicillin)の発見に始まる抗生物質の発展はすさまじく,今日多くの抗生物質が日常の診療に使用されており,さらに臨床使用以前の多数の物質についての検討が行なわれているのが現況であろう.

 このように数多くの抗生物質が毎年出現してくるものの,近年,特に画期的なものの出現ということになると,それほどの進展がみられていないともいえるであろう.つまり,従来,治療に成功しえなかった分野における画期的な進歩はみられないということである.

高圧蒸気滅菌におけるチェックと無菌試験の問題点

岩原 繁雄

pp.1074-1078

 滅菌法にはいろいろありますが,どの方法によるにしても,滅菌条件を十分に吟味して行なわないと完全な滅菌は期待できません.確実な滅菌法としてよく知られている高圧蒸気滅菌法でさえも,完壁な結果を期待するとなれば,それ相応の勉強が必要となります.

 滅菌された物件がほんとうに無菌であるかどうかを確かめるには,無菌試験によるほかはありませんが,この方法では同一滅菌ロットの物件のうち,限られた数量のものについて無菌性を確認するにとどまるばかりでなく,ふつう行なわれている無菌試験法では培養できない微生物がたくさんあることを忘れないでいただきたいと思います.

ひろば

衛生(臨床)検査技師の教育に望む

小林 芳治郎

pp.1073

 この6月に,衛生検査技師法の一部が改正され,来年から‘臨床検査技師’が生まれる.それにしても来年度はこの臨床検査技師になるために,厚生省指定の講習をうけたのちに国家試験をうけることになっている.

 いずれにせよこのような改正については,日本衛生検査技師会が法の改正を要望しつづけて以来,10数年後に始めてその改正実現となったしだいで,これらを背景に考えた場合,次の段階として10年,15年後の臨床検査技師に対する教育のカリキュラムが,現在の姿でよいだろうかということであろう.

私のくふう

セルローズアセテート膜に検体番号を記入する1方法

中西 寛治

pp.1078

 セルローズアセテートは,その名のごとくセルローズの水酸基をアセチル化したもので,一般の紙と違って鉛筆で検体番号などをつけようと思って1はっぎり書けない.たとえば,数件体1枚のセルローズアセテート膜に血清などを塗布し,一連の操作を完了し乾燥後,鈴筆で検体番号などを記入して,1検体ずつ分けてデンシトメトリーで測定する段になって,検体番号などがはっきりしないで,流動パラフィンまたはデカリンで透明化したセルローズアセテート膜を,明るいほうにすかしてみたりして,ようやくわかったなどという経験はありませんか.

 そこで,鉛筆を使わずに,ボールベン,マジックを使ってみました.うまく記入できますが,もう一歩進んで,なんとかよくきれいに記入できないものだろうかと,検査箋に記入する日付用のゴム印を使ったらと思い,さっそく使用してみました.泳動,染色,乾燥後,塗布側に検体番号などを要すれば,2段に分けて検査口を口付のゴム印で軽く押し,その後,1検体ずつ切り離し,流動パラフィンまたはデカリンで透明化すると,検体番号などや検査日のみが浮き出て検査が楽しくできます.

包埋操作における1くふう

吉里 勝彦 , 松尾 均

pp.1092

 従来より病理検査室で常用されている包埋操作は,現在に至ってもなおその方法に変化のみられないのが実状である.そこでわれわれの検査室としても1つの検体について,数個から数十個摘出される手術時のリンパ節群について,その包埋時間の短縮,操作の簡易化を検討してみた.

 手術切除材料とともに摘出されるリンパ節群は,異なる箇所より各数個から十数個に及ぶとぎがあり,それに伴ってその包埋操作中に移す手間はかなりの時間を用するものである.そこで包埋皿へ移す回数を減らす,すなわち数個から十数個の各リンパ節群を一度に移すことができたら,その手間は大きく短縮される.

臨床検査の問題点・22

電気泳動法—そのデータの読み方

河合 忠 , 高山 怜子 , 川村 皓子

pp.1080-1085

 ヒトの血清中には80余種のタンパクがある.電気泳動法は,そのタンパクの分析に偉力を発揮するが,分析のポイントはデータの読み方にある.フィブリノーゲンの判定,リポタンパクの分画,異常成分の鑑別,波形帯など日常的な生の問題点を検討する.

主要疾患と臨床検査・23

膠原病と臨床検査

市川 陽一 , 本間 光夫

pp.1086-1092

 膠原病は疾患群の総称であり,慢性関節リウマチ,リウマチ熱,全身性エリテマトーデス(SLE),皮膚筋炎(多発性筋炎),全身性硬化症(強皮症),結節性多発性動脈炎(結節性動脈周囲炎)が典型的なものである.これらの疾患に共通なことは,病理組織学的変化のほかに免疫異常,ことに自己免疫現象を根底に持つ,全身性炎症性疾患と老えられることである.

 したがって臨床検査には,病気の活性を知るための赤血球沈降速度,CRPなど生体の炎症反応を示す諸検査と,免疫異常を知るための血清タンパク分画や免疫血清学的諸検査があり,それらのなんらかの異常が疾患によってニュアンスの差があれ,まず共通して認められるものと考えてよい.さらに病変の場およびその性状には,疾患独自のものがあるので,各疾患の診断の確定に必要な臨床検査のあることも覚えておかなければならない.そこでまず,代表的な6疾患の臨床症状と,それらに比較的特徴的と思われる臨床検査について述べる.

1ページの知識 生化学

斜傾法による除タンパク液採取

降矢 熒

pp.1093

 除タンパク操作を必要とする定量法は現在でもかなり用いられている.この手間をできるだけ少なくする方法の1つに斜傾法(Goldenberg)がある.遠心上清を斜傾して,透明上清のみをできるだけ完全に試験管に移し,これを呈色試薬を加えて測定する.一見不精確のように思われるが,ある条件下では実用にさしつかえないくらいの精確な値が得られる.

 斜傾して得られる上清をDml,タンパク沈渣を含めての残存液量をRml,加えるべき呈色試薬をC mlとする.仮に沈渣なく全体をそのまま呈色しえたと考えたときと,現実に斜傾して上清のみを呈色させたときの差を,全体を呈色させえたと仮定したときの値で割ったものを誤差とすれば(ベアの法則に従うものとして),

1ページの知識 血液

線維素溶解現象測定法

糸賀 敬

pp.1094

 傷害を受けた組織,あるいは血管に形成された血液の凝塊は,通常数日間で崩壊し,肉芽組織や線維によっておき替えられるか,完全に溶解してしまう.

 このように凝血塊が溶解してしまう現象を線維素溶解現象といい,主役を演ずるのは線維素溶解酵素(プラスミン)である.この線溶現象に関与する諸因子は図に示すとおりで,かなり複雑であり,その測定法も数多く実施されている.生体内では絶えずフィブリノーゲンから転化されたフィブリンを,プラスミンが溶解しているため血栓症が惹起されないわけで,もし余剰のプラスミンが出現した場合は,抗プラスミン因子により不活性化される.その平衡状態がくずれた場合,線溶現象が亢進し,出血傾向が発現する.重篤なショック,急性細菌感染症,X線照射,各種悪性腫瘍,やけど,大手術などで線溶現象は亢進する.

1ページの知識 血清

CRP試験について

水谷 昭夫

pp.1095

1.CRPとは

 CRP(C-reactive protein)は,TilletとFrancisが細菌性肺炎に罹患したヒトの血清から分離した(1930)特殊のタンパクであり,発見の当初は肺炎双球菌に対する抗体とも考えられたが,Mac Leodなどによる検討(1940)によって,いわゆる急性期物質としての性格が明らかになったものである.

 50-75%の硫安によって血清より塩析でき,電気泳動ではβ—γ領域に出現する.70℃30分の加熱によって破壊され,血清中では脂質と結合した状態で存在する(もっともヒト血清中で,需気泳動による易動度が異なるのは,結合する多糖体の差によるとする説もある).

1ページの知識 細菌

菌交代現象と菌交代症

土屋 俊夫

pp.1096

 ヒトの粘膜面,皮膚面には生後すぐに住みこんだ細菌がいる.からだの部位によって1種類のこともあれば数種類のこともあり,いつその部を培養してもほぼ同じ菌が同じような割合で証明される.これを常在菌といっている.常在菌の中には病原的に働くものも多いが,常在菌の生体に対する役割はまだ不明のことが多く,常在菌がそのままでその部位にいるかぎりでは生体に対して無害である.

 さて,化学療法剤の発見は細菌感染症に対する考え方を一変させてしまった.それは化学療法のすばらしい治療効果により,ほとんどの細菌感染症は治療が可能になったことである.遠い過去において伝染病の流行により多数の人が死亡し,死体置場の死津が山を築いた時代があったことを書物で読むと,われわれは別世界にいるような錯覚をうける.

1ページの知識 病理

結合組織線維の染色

和田 昭

pp.1097

 結合組織の中で細胞間に線維の多いものを線維性結合組織という.今回は線維性結合織の線維の染色について述べてみよう.結合組織線維には膠原線維,弾性線維および細網線維の3種が区別される.この中で細網線維は細網組織に特有のもので,線維性結合組織には少ない.

1ページの知識 生理

スパイク発生の生理学的メカニズム

松本 秀夫

pp.1098

 スパイクはその名の示すような鋭い波形,突発的な出現など他の脳波構成要素からきわだっており,またてんかん性疾患と痙攣を伴う脳器質性疾患に特異的に出現する.したがって,スパイクの発現様式,波及,てんかん性焦点の局在診断などは臨床上重要な問題として日常検討されている.

 反面,この一見周知のスパイクの発生メカニズム,あるいはスパイクという形で表現されるものの本態については,なお十分に解明されたとはいえない.脳波の導入以来,てんかんは発作性脳律動異常と規定され,スパイクその他の発作性波は脳細胞の異常興奮に基づくと一般に考えられている.それではこの異常興奮はどんな形で起こるのだろうか.

1ページの知識 一般

‘日本臨床病理学会’入会のご案内

編集室

pp.1099

プロフィール

 この学会の目的を一口にいうなら‘臨床病理学の進歩向上を図る’(学会会則)ということになるが,患者を実際に診る臨床と,検体(あるいは患者)を検査する臨床検査との学問的な接点にあり,双方を有機的に結びつける研究を目ざすことといえよう.したがってこの学会の会員は臨床病理医,検査に関係の深い内科医,経験深い検査技師が大半を占めている.

 検査室にとってなじみ深いのが,毎年1回開催される‘日本臨床病理学会総会’であり,毎回2500余人の参加者を集めている.今年は17回めを迎え新潟市(屋形稔学会長)で開催され3000余人の出席者を数えた.もう1つは,この学会が主催する資格認定試験である.これには臨床病理技術士(二級,一級),一般臨床検査士および特殊臨床検査士(現在のところ細胞検査士のみ)の各試験があり,最もポピュラーな二級試験と一般試験は毎年夏に,その他の試験も年1回は行なわれている.二級試験と同じ性質のものに衛生検査技師国家試験(厚生省)があるが,著しい相違点は,実技の試験が国家試験には含まれていないことである.

論壇

先天性代謝異常症のスクリーニングについて

高井 俊夫

pp.1101-1103

 近年の臨床検査法の進歩は驚くばかりであるが,臨床的に非常に重要な領域でありながら,その検査法ないしはスクリーニング法の確立していないものがある.その1つが先天性代謝異常の検査法である.

 近年,多くの代謝異常症について,もし早期に発見されれば,治療対策が可能であるとの報告が続々なされている.不幸にして発見が遅れれば,多くは重症の精薄として暗い一生涯を送ることとなり,これに反して早期発見によって早期治療ができれば,正常な人に伍して劣らぬ生活も可能なのである.正しい検査,それもなるべく乳幼児期における検査によって,かくも明暗を異にする運命をたどる疾患も少ないのでなかろうか.

座談会

水質検査—その実体と検査法

三村 秀一 , 松田 暢夫 , 佐谷戸 安好 , 坂本 勉 , 松村 義寛

pp.1104-1111

 水一人間をとりまき,からだの大半を占める水は,人間にとってその必要性があまりにも当然すぎて,ふだんは顧みられていない.だが,飲料水をはじめとする水のよしあしは生活の快適度に大きな影響力をもつ.水質検査の考え方とそれに基づく検査法を検討する.

特別レポート

札幌医大病院における時間外緊急検査の概況

室谷 光三 , 永井 龍夫 , 佐々木 禎一 , 黒川 一郎 , 福嶋 豁行

pp.1112-1120

 臨床検査における緊急検査の必要性と,その運営要領については第9回日本臨床病理学会総会(1962年,京都)でも論じられている1-6).しかし実際に臨床検査室で時間外緊急検査を実施しているところは,今日なお比較的少ないようである6-8)

 札幌医科大学付属病院中央検査部(以下中検と略記する)は臨床側の要望に応じて,すでに1961年から検査技師の宿日直による時間外緊急検査を実施しているので,その実態を報告し関係各位のご参考に供したいと思う.なお本報告は主として1965年ごろにまとめたデータが中心になっているので,現在の実態とは多少くい違いがあるが,私どもとしては歴史的な記録としても意味があると考え,あえて報告するしだいである.現在の状況についてはひきつづき別の論文として報告する予定である.

検査法の改良

血液出血・凝固時間測定法(第1報)—OBBC法の考案

大竹 敬二

pp.1121-1122

はじめに

 OBBC法は血液凝固説(Morawitz)に出発したDuke法(出血時間),Sahli-Fonio (凝固時間),現在のIry法,Borch-Grenink法とは全く異なり,耳朶の長軸中央下部耳垂の毛細血管を規定の針で穿刺し,湧出する血液が自然に止血するまでの出血時間と凝固時間の測定法で,小児であれ,病室横臥のどのような状態に置かれても自由迅速測定ができ,時間的節約が大きいと同時に,重要な出血性素因の簡易鑑別診断検査に最良といえよう.従来の方法は,煩雑で手間がかかるという危惧の念をもっていたので,その不適当な点を解除したものである.

研究

血清鉄および不飽和鉄結合能の直接測定法の吟味—Ⅱ.不飽和鉄結合能

古郡 浩 , 斎藤 正行

pp.1123-1127

 鉄結合能の測定には多数の報告があるが,一般には,アルカリ域で血清に適当な鉄標準液を加えてトランスフェリンの鉄結合能を飽和させ,次いで吸収されずに残った過剰な鉄を除去し,最後に残った総血清鉄を除タンパク法によって比色測定する方法1,2)と,一定過剰量のFe59と鉄を血清に加えて,トランスフェリンの鉄結合能を飽和させ,残った過剰な鉄をレジン・スポンジに吸着させて,この放射能を測定して,(不飽和)鉄結合能を求める方法3)とが広く用いられている.

 しかしこれらの方法の問題点として,過剰な鉄を除去あるいは吸着させる際の,吸着物質の鉄吸着力に問題があることが指摘されている4).また前者では総血清鉄の測定に除タンパク法を用いているので,前報5)で指摘したと同じ欠陥を含むことになる.そこで血清中の過剰な鉄の吸収や除去,あるいは除タンパクを必要としない測定方法を確立する必要がある.

Zurkowski改良法による血清コレステロール測定試薬‘シカ403’の検討

坂野 重子 , 仁平 葉子 , 結城 光子 , 嶋村 真知子

pp.1128-1130

 動脈硬化,高血圧など,成人病と関係が深いといわれている血清総コレステロールの測定は,今日では最も一般的な臨床検査の1つに数えられ,測定法は,北村らによって手堅く検討されたZak-Henly変法が,広く普及している.

 このZak-Henly変法1-11)は,試薬も操作も単純で,わずかな練習期間で満足すべき測定精密度が得られ,また,他に種々ある測定法に比較すれば,重厚な実績を臨床検査の中に築いてきているなど,確かにかなりの批判に耐えうる方法である.そして,それらの信頼をもって,肝機能研究班の標準操作法としても取り上げられている.

小児脳波記録法における一考察—特にテレビマンガの効用について

児玉 昭信 , 三藤 孝

pp.1131-1132

はじめに

 小児の脳波は,一般に成人の脳波に比べ記録すること自体が非常に困難なうえに,脳の障害を知るためには覚醒時の記録だけではなく,睡眠時の記録がぜひ必要であり,特に自然睡眠が最もよい,ということが多くの脳波学者によって述べられています.その結果私たち脳波技術者は,ややもすれば睡眠脳波に重点を置いて,小児脳波の発達を見るうえに最も重要とされる覚醒閉眼安静時の脳波記録が困難となる傾向が感じられます.私は検査前夜の睡眠時間を制限せずに,主としてテレビマンガを仲介として精神的不安を除き脳波記録への協力を得て,覚醒から自然睡眠に至る完全な脳波を記録することを試み,好成績が得られたので報告します.

新しいキットの紹介

NEFA測定用キットの検討

中西 茂子

pp.1133-1137

 最近市販のNEFA測定用キットを用いて血清中のNEFA測定を試みているうち,これらのキットを用いて測定を行なう場合,使用者自身あらためて追試すべき必要性を感じ若干の検討を試みたので,すでに衆知の所見もあると思うが参考の一部に供したいと思いその結果を報告する.

血糖測定試薬(o-TBシノテスト)の性状についての検討成績

佐々木 禎一 , 大橋 栄子

pp.1138-1140

はじめに

 除タンパク操作を必要としないで,試料(血清または血漿)と試薬とを一定量比で混合,短時間の加熱後発色したものを比色定量するo-トルイジン法1-3)またはo-トルイジンーホウ酸法(以下o-TB法)4-6)が,簡単で迅速な血糖測定法として現在わが国で高い普及率をみせていることは衆知のところである.したがってo-トルイジン試薬またはo-TB試薬のキット製品も,現在わが国でもすでに幾種か市販されている.

 今回o-TB試薬がシノテストでも開発発売したが,これはいわゆる従来のo-TB試薬(以下‘試液’)と,それを少量ずつアンプルに小分け分注した製品(以下‘ア’と略記)との2種があり,後者は,

質疑応答

キットの標準液の濃度

N生 , 坂岸 良克

pp.1141

 問 最近出回っている市販のキットの中に,標準液の濃度をわざわざ表示とは異なる濃度にしているものがあると聞いていますが,それが事実であると仮定してご意見をお聞かせください.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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今月の特集1 もっと知りたい! 川崎病
今月の特集2 CKDの臨床検査と腎病理診断

60巻5号(2016年5月発行)

今月の特集1 体腔液の臨床検査
今月の特集2 感度を磨く—検査性能の追求

60巻4号(2016年4月発行)

今月の特集1 血漿蛋白—その病態と検査
今月の特集2 感染症診断に使われるバイオマーカー—その臨床的意義とは?

60巻3号(2016年3月発行)

今月の特集1 日常検査からみえる病態—心電図検査編
今月の特集2 smartに実践する検体採取

60巻2号(2016年2月発行)

今月の特集1 深く知ろう! 血栓止血検査
今月の特集2 実践に役立つ呼吸機能検査の測定手技

60巻1号(2016年1月発行)

今月の特集1 社会に貢献する臨床検査
今月の特集2 グローバル化時代の耐性菌感染症

59巻13号(2015年12月発行)

今月の特集1 移植医療を支える臨床検査
今月の特集2 検査室が育てる研修医

59巻12号(2015年11月発行)

今月の特集1 ウイルス性肝炎をまとめて学ぶ
今月の特集2 腹部超音波を極める

59巻11号(2015年10月発行)

増刊号 ひとりでも困らない! 検査当直イエローページ

59巻10号(2015年10月発行)

今月の特集1 見逃してはならない寄生虫疾患
今月の特集2 MDS/MPNを知ろう

59巻9号(2015年9月発行)

今月の特集1 乳腺の臨床を支える超音波検査
今月の特集2 臨地実習で学生に何を与えることができるか

59巻8号(2015年8月発行)

今月の特集1 臨床検査の視点から科学する老化
今月の特集2 感染症サーベイランスの実際

59巻7号(2015年7月発行)

今月の特集1 検査と臨床のコラボで理解する腫瘍マーカー
今月の特集2 血液細胞形態判読の極意

59巻6号(2015年6月発行)

今月の特集1 日常検査としての心エコー
今月の特集2 健診・人間ドックと臨床検査

59巻5号(2015年5月発行)

今月の特集1 1滴で捉える病態
今月の特集2 乳癌病理診断の進歩

59巻4号(2015年4月発行)

今月の特集1 奥の深い高尿酸血症
今月の特集2 感染制御と連携—検査部門はどのようにかかわっていくべきか

59巻3号(2015年3月発行)

今月の特集1 検査システムの更新に備える
今月の特集2 夜勤で必要な輸血の知識

59巻2号(2015年2月発行)

今月の特集1 動脈硬化症の最先端
今月の特集2 血算値判読の極意

59巻1号(2015年1月発行)

今月の特集1 採血から分析前までのエッセンス
今月の特集2 新型インフルエンザへの対応—医療機関の新たな備え

58巻13号(2014年12月発行)

今月の特集1 検査でわかる!M蛋白血症と多発性骨髄腫
今月の特集2 とても怖い心臓病ACSの診断と治療

58巻12号(2014年11月発行)

今月の特集1 甲状腺疾患診断NOW
今月の特集2 ブラックボックス化からの脱却—臨床検査の可視化

58巻11号(2014年10月発行)

増刊号 微生物検査 イエローページ

58巻10号(2014年10月発行)

今月の特集1 血液培養検査を感染症診療に役立てる
今月の特集2 尿沈渣検査の新たな付加価値

58巻9号(2014年9月発行)

今月の特集1 関節リウマチ診療の変化に対応する
今月の特集2 てんかんと臨床検査のかかわり

58巻8号(2014年8月発行)

今月の特集1 個別化医療を担う―コンパニオン診断
今月の特集2 血栓症時代の検査

58巻7号(2014年7月発行)

今月の特集1 電解質,酸塩基平衡検査を苦手にしない
今月の特集2 夏に知っておきたい細菌性胃腸炎

58巻6号(2014年6月発行)

今月の特集1 液状化検体細胞診(LBC)にはどんなメリットがあるか
今月の特集2 生理機能検査からみえる糖尿病合併症

58巻5号(2014年5月発行)

今月の特集1 最新の輸血検査
今月の特集2 改めて,精度管理を考える

58巻4号(2014年4月発行)

今月の特集1 検査室間連携が高める臨床検査の付加価値
今月の特集2 話題の感染症2014

58巻3号(2014年3月発行)

今月の特集1 検査で切り込む溶血性貧血
今月の特集2 知っておくべき睡眠呼吸障害のあれこれ

58巻2号(2014年2月発行)

今月の特集1 JSCC勧告法は磐石か?―課題と展望
今月の特集2 Ⅰ型アレルギーを究める

58巻1号(2014年1月発行)

今月の特集1 診療ガイドラインに活用される臨床検査
今月の特集2 深在性真菌症を学ぶ

57巻13号(2013年12月発行)

今月の特集1 病理組織・細胞診検査の精度管理
今月の特集2 目でみる悪性リンパ腫の骨髄病変

57巻12号(2013年11月発行)

今月の特集1 前立腺癌マーカー
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査②

57巻11号(2013年10月発行)

特集 はじめよう,検査説明

57巻10号(2013年10月発行)

今月の特集1 神経領域の生理機能検査の現状と新たな展開
今月の特集2 Clostridium difficile感染症

57巻9号(2013年9月発行)

今月の特集1 肺癌診断update
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査①

57巻8号(2013年8月発行)

今月の特集1 特定健診項目の標準化と今後の展開
今月の特集2 輸血関連副作用

57巻7号(2013年7月発行)

今月の特集1 遺伝子関連検査の標準化に向けて
今月の特集2 感染症と発癌

57巻6号(2013年6月発行)

今月の特集1 尿バイオマーカー
今月の特集2 連続モニタリング検査

57巻5号(2013年5月発行)

今月の特集1 実践EBLM―検査値を活かす
今月の特集2 ADAMTS13と臨床検査

57巻4号(2013年4月発行)

今月の特集1 次世代の微生物検査
今月の特集2 非アルコール性脂肪性肝疾患

57巻3号(2013年3月発行)

今月の特集1 分子病理診断の進歩
今月の特集2 血管炎症候群

57巻2号(2013年2月発行)

今月の主題1 血管超音波検査
今月の主題2 血液形態検査の標準化

57巻1号(2013年1月発行)

今月の主題1 臨床検査の展望
今月の主題2 ウイルス性胃腸炎

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