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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査14巻3号

1970年03月発行

雑誌目次

特集 巨赤芽球および巨赤芽球様細胞

巨赤芽球および巨赤芽球様細胞

田中 信夫 , 藤村 欣吾 , 内野 治人

pp.214-215

骨髄穿刺液の塗抹染色標本で巨赤芽球を認める疾患は,いわゆる悪性貧血および各種要因に基づくB12,葉酸欠乏症であるが,赤白血病,赤血病で認められる巨赤芽球様細胞との鑑別は容易でなく,これらの疾患の診断上,しばしば問題となるところである.これらの細胞は,この他各種白血病,多発性骨髄腫,骨髄線維症,肝硬変症,溶血性貧血,再生不良性貧血および代謝拮抗剤投与例においても認められることがある,したがって,巨赤芽球あるいは巨赤芽球様細胞の鑑別には,B12,葉酸の治療による反応の有無,PAS反応陽性の有無およびその他の臨床検査を参考にすることが必要である.

巨赤芽球および巨赤芽球様細胞の見方

河北 靖夫 , 牧野 卓麿 , 小山 和作 , 宮川 捷敏

pp.217-222

巨赤芽球ないし巨赤芽球様細胞は,日常しばしば遭遇するものではないが,その所見は非常に特徴的である.ここでは各種の疾患に出現した巨赤芽球ないし巨赤球芽様細胞をお目にかけるが,これら疾患の聞における形態学的な識別は困難であり,本文で詳述した特徴を熟読していただき,それぞれの血球の成熟階程を把握したうえでご覧いただければ十分理解していただけるものと思われる.図1-14はギムザ染色所見図15-18はギムザ染色所見とPAS染色所見の対比であり,これらの血球はすべて同一倍率である.図19-31は位相差顕微鏡所見図32-36は電子顕微鏡所見である.

抗白血病剤による巨赤芽球様細胞の出現

守田 浩一 , 岩永 隆行 , 入交 清博

pp.223-224

巨赤芽球あるいは巨赤芽球様細胞は,悪性貧血,葉酸欠乏による巨赤芽球性貧血および赤白血病の際にみられるが,定形的でない場合には,判定の困難なこともしばしばある.細胞質と核構造の成熟の不一致が本細胞の特徴である.そのため本細胞の鑑別には,やはり正常の赤芽球系細胞の成熟段階における,細胞質と核構造との関連を熟知していることが必要である.

最近,抗白血病剤であるサイトシン・アラビノシッド(CA)を投与すると,骨髄中に巨芽球様細胞が高率に出現することが知られている.ここに示した写真は,いずれも急性骨髄性白血病をCA治療中にみられた巨赤芽球様細胞で,その他CAの影響で変形した白血病細胞,過分葉した好中球などを示した.

巨赤芽球および巨赤芽球様細胞の見かた—その技術と観察所見

河北 靖夫 , 牧野 卓麿 , 小山 和作 , 宮川 捷敏

pp.233-239

巨赤芽球は正常人骨髄中には存在せず,その存在が確認されれば診断的価値は大きい.すなわちAddison-Biermer巨赤芽球性貧血(いわゆる悪性貧血)あるいはそれに類似したビタミンB12ないし葉酸欠乏状態(たとえば妊娠性悪性貧血,無胃性悪性貧血—いずれも骨髄に巨赤芽球増殖がみられるので,妊娠性巨赤芽球性貧血,無胃性巨赤芽球性貧血と呼ばれる—など)と診断される.最近では抗痙攣剤や抗結核剤などの投与でも巨赤芽球が出現することが報告され,また抗腫瘍剤として代謝拮抗物質,特に葉酸拮抗物質たるアメトプテリンの使用でしばしば巨赤芽球の出現をみることがあり,6—メルカプトプリン(6—MP)やサイトシン・アラビノサイドの投与後でも同様のことが起こる.

一方,巨赤芽球様細胞は巨赤芽球とは全く性質の異なるもので,むしろ赤血病における腫瘍細胞と考えられる性格のものであるが,ギムザ染色上これら両者を識別することは非常に困難である.特殊な場合を除いて,巨赤芽球造血においてはビタミンB12,葉酸に反応して巨赤芽球はすみやかに消失し,網赤血球分離,貧血の回復が起こるのに反し,巨赤芽球様細胞にはビタミンB12ないし葉酸は全く無効である.

抗白血病剤による巨赤芽球様細胞の出現

守田 浩一 , 岩永 隆行 , 入交 清博 , 天木 一太

pp.240-243

はじめに

 巨赤芽球の特徴は,細胞が不正形であるということもあるが,それより本質的な点は,核と細胞質との間で,成熟の度合に不一致がある所見といえる.細胞質の成熟度,すなわち血色素の合成の度合と,核構造の分化,すなわち核の線細度とが一致せず,核の構造が細胞質の分化に比べて未熟の段階を保っている。また,核の消失の様子も特徴的で核の多形性が強く,成熟するにつれて多数の核小片に分かれて,赤血球内に分散している像(karyorrhexis),あるいは核の一部が融解しているような像(karyolysis)もみられる1,2)

 これらの巨赤芽球は,VB12欠乏による悪性貧血や葉酸欠乏による巨赤芽球性貧血でみられ,赤白血病でも似た細胞がみられるが,各種の抗白血病剤を投与した場合にも,巨赤芽球と類似した巨赤芽球様細胞が認められる.そのような薬剤としては,まずメトレキセート(アメトプテリン),アミノプテリンがあり,これらは葉酸拮抗物質であるので,薬酸欠乏症のときと同様の変化が認められることは容易に想像されるが,そのほかの抗白血病剤,抗癌剤のサイトシン・アラビノシッド,5-Fu(5-fluorouracil)などでも認められる.

抗原抗体反応・3

抗原と抗体の結合する部分

松橋 直

pp.226-227

 抗原が抗体と結合する部分を,抗原の決定基または決定群と呼んでいる.抗原となるのはタンパク,脂質,多糖体のどれでもよいわけであるが,抗体と結合する部分は案外小さなものである.アミノ酸ぐらいの大きさの分子が数分子つらなって作られる化学的な立体構造が,その抗原物質の免疫学的血清学的な特微である"特異性"を決定している.しかし,タンパクのような大きな分子になると,どのアミノ酸の配列のところが,抗原決定基になっているかを決めることはなかなかむずかしい問題である.

 その抗原決定群の位置を決めるために,抗体グロブリンをいくつかのポリペプチドに解体したように,酵素処理,還元分解などが行なわれるのである.タンパク質を小さなペプチドに切ってしまうと,立体構造が変化してしまったり,抗原決定基の部分がちょうど切れてしまったりして,思うような結果を出すことができない.そこで考えられたのが,化学構造がわかっている簡単な化合物を,タンパク質に化学的に結合することである.たとえば,p—アルサニル酸(図1)のアミノ基をヂァゾ化してタンパク質と反応させると,タンパク質のチロジン,フェニールアラニンのベンゼン核やヒスチジンのイミデイアゾール核にヂアゾ結合(図1)される.

ノモグラム・3

標準尿素クリアランス(Cs)

斎藤 正行

pp.229

 解説1 分間尿量が2ml以下(0.35ml以下の場合はあてにならない)のとぎは尿細管から尿素の再吸収率が大きくたるため,尿素排泄量は尿量の平方根に比例して変化する.したがって,尿量毎分1mlの場含(標準クリァランス・Cs)に換算して正常と比較する必要がある.このため計算式は√を含む繁雑なものとなるが,このノモグラムを用いれば簡単・迅速に求められる.

例 尿中尿素-Nが1500mg/dl,血中尿素-Nが75mg/dl,すなわちU/B=20の場合はV(量)=60ml/hつまり1.0ml/minからCs=20ml/min,40%となる.

検査室の便利表・3

正常血液像の変化

寺田 秀夫

pp.231

新生児,小児期,成人では末梢の白血球百分率は大いに異なる.生後3日めまで好中球が圧倒的に多く(約70%),リンパ球は少なく,その後好中球は急速に減少して,生後1か月から1年の間に逆にリンパ球が多くなり,生後3日めまでの比率の逆になる.その後,好中球か漸増し,6年以内に好中球とリンパ球はほぼ同率(約45%)となり,その後成人の値に近づく(好中球55%,リンパ球35%前後).

総説

出血と凝固と止血

前川 正

pp.244-250

止血とは何か,また止血はどのようにして起こるのか—血小板,凝固因子,血管の3つの要素が作用するといわれるが,最近の知見を加えながら各要素の働きを述べ,その作用の総合ともいうべき止血機序を解説する.

私のくふう

ピペット格納移動車と試薬棚

磯目 益男

pp.250

 ガラス器具類を一定の場所に整理しておくことは,どこの検査室でも同じであろう.しかし,小検査室あるいは機構の複雑な検査室では,他の入がじゃまてピペットをとるのがおっくうなときがよくあり,また中規模検査室では,器具類を1か所に保存することは不便ではあるが,2か所にすることもできないといったそれそれの不便さがある.

 私の検査室もやや複雑なほうで,どのようにしたらガラス器具類をスムーズに収納し,使用することができるかを考えたのが,図1のようなピペット格納移動車(別に試験管格納移動車もある)である.

第2回私のくふう賞の選考対象テーマ

pp.267

ポリグラフを使っての入浴中負荷心電図簡単検査……………………………………森信弘1:42

比色セルの水切り…………………………………………………………………………三浦隆弘2:120

感受性ディスク3濃度用下敷法

橋本 嘉夫

pp.290

 私の検査室では,化学療法剤の感受性試験に3濃度ディスクを使用しており,1シャーレ(1培地)に4薬剤3濃度計12枚のディスクを置いています.直径約9cmのシャーレ(培地)に12枚のディスクを置く作業は簡単なようですが,理想的な位置になかなか置けないものです.

技術解説

糞便ビリルビン検査法

林 康之 , 小林 一二美

pp.251-255

はじめに

 糞便中の胆汁色素はウロビリン体(ステルコヒリン,ステルコビリノーゲン)が主で,ビリルビンそのものは量的にも少なくほとんと問題にされてはいない.検査法の成書によっても,定性反応としてのグメリン法.シュミットの昇汞試験,Huppert法などが簡略に記されているにすぎない.一方,ウロビリン体の定量法に関しては,貧血の鑑別診断,胆道疾患,肝疾患などの診断上の要求からWatson法が確立され,日常検査として普及しているのが現状である.

 そして,従来,胆汁中の直接ビリルビンは腸内細菌叢の作用によってほとんど遷元され,ウロビリン体に変換された形で糞便中に排出されると考えられてきたので,ビリルビン量の測定はほとんど臨床的価値はないものとされてきた.ところが,最近の広域抗生物質の発展は,投薬と同時に腸内細菌叢に影響を与え,ウロビリン体の生成を阻害し,ビリルビンのまま糞便中に排出される可能性が大きく,ウロビリン体定量のみでは不十分と考えられる場合もでてきた.また,グメリン法,シュミット法なと従来の定性法は,白色磁性皿の上で実施しても,その色調変化を的確にとらえるためには,相当量のビリルビン排出がなければならず,判定の困難なことからもよい方法とはいえない.

臨床検査の問題点・15

Carcinoma in situの細胞診

川井 一男 , 横山 朝夫 , 津崎 和子

pp.256-261

早期癌診断にかかせない細胞診のなかで,特にCarcin-oma in situ (局在癌)の診断は困難とされている.子宮頸癌に例をとり,まちがいやすい異型増生との見分け方,浸潤癌との鑑別法などを話していただくことにする.

主要疾患と臨床検査・15

口腔疾患と臨床検査

清水 正嗣

pp.262-267

 口腔疾患と総称するとき,特に歯科を前提とした口腔疾患を考えるとき,一般には歯牙疾患を中心としたものとみなされやすい.しかし現在,実際に歯科病院臨床で取り扱われる診療対象は,いっそう多様性に富むものであり,その主要な疾患項目をあげると下記のようになる.

1)歯牙疾患:齲蝕,歯周組織の病変など.

1ページの知識 生化学

比色分析の基礎

林 長蔵

pp.269

1.光の色

 太陽の光(自然光)をプリズムに通すと7色の色帯に分かれる.これは自然光に含まれるいろいろの波長の光が,波長ごとに分かれて,それぞれの波長に固有の色をみせるからである.波長が一定の光を単色光といい,それが表わす色をスペクトル光という.タングステンランプなどの光源から出る光も,このような単色光の集まりで,スペクトル色の重なったものである.

1ページの知識 血液

血色素量の測定

糸賀 敬

pp.270

 現在,一般的な血色素量(Hgb.と略)の測定法は,塩酸ヘマチン法とシアンメトヘモグロビン法である.

1ページの知識 血清

冷たいグロブリンと熱いグロブリン

水谷 昭夫

pp.271

 表題はすこし気取ってつけてみた.

 冷たいグロブリン(globulin)といっても,そのもの自体が冷たいわけではない.血清を冷却することによって析出し,その存在が明らかになるような特殊なタンパクをcryoglobulin(cryo-は冷たいという意味)と称するのである(Lerner and Watson,1947).cryoglobulinは上述のように0℃−4℃で白濁した沈降物となって,可視的にその存在が知れるが,この変化は可逆的であるために,血清の温度が高まれば,また消失して見えなくなる.

1ページの知識 細菌

細菌毒素の証明法

土屋 俊夫

pp.272

 細菌毒素には,細菌が培養濾液内および人体内で増殖して,菌体外に産生する高分子の複合タンパク質である外毒素と,菌体内にあるために溶菌せしめるか,あるいは自家融解しなければ体外に遊出しないリピット・多糖質・タンパク質の高分子複合体である内毒素とがある.前者はグラム陽性菌,たとえばジフテリア菌,破傷風菌,ウェルシュ菌,ボツリヌス菌などから産生され,毒作用は比較的強く,易熱性で免疫抗原性に富む.後者は主としてグラム陰性秤菌に含まれ,毒作用は比較的弱く,耐熱性で免疫抗原性は外毒素に比べ弱い.

1ページの知識 病理

脱灰

和田 昭

pp.273

 骨や歯のように本来石灰が多量に含まれる組織はもちろん,結石を含む腎臓や胆嚢,硬化の著しい動脈壁,あるいは腫瘍組織や他の軟部組織でも石灰沈着をみることがあるので,切り出しの際のメスの抵抗から石灰化巣を認めたならば,包埋に先だって石灰を除去しなければならない.この操作を脱灰という.

1ページの知識 生理

—正常波形や記録のなりたちと生理的基礎知識・1—ベクトル心電図

森 博愛

pp.274

1.ベクトル心電図とは

 心起電力は大きさと方向を持っているので,ベクトルとして表わされるが,立体である心臓は,その電気変化も当然,立体的な変動を示す.立体的な心起電力ベクトルの左右(X軸),上下(Y軸),および前後(Z軸)方向の成分を取り出す誘導がVCGの誘導法で,これらのX,Y,Z誘導はVCGの構成スカラー心電図と呼ばれる.図1ではX誘導とY誘導をブラウン管を用いて合成するとVCG前面図が得られ,同様にY誘導とZ誘導で側面図,X誘導とZ誘導で水平面図が得られる.このように,X,YおよびZ誘導の誘導の誘導軸が,解剖的に直交するように電極を配置した誘導を正六面体誘導(cubesystem)と呼ぶが,最近では電気的意味での真の直交3軸成分を取り出すことができるように,抵抗網を用いて補正した誘導法が広く用いられるようになった.この種の誘導法は補正直交軸誘導,または単に直交軸誘導(orthogonal lead)と呼ばれ,Frank誘導はその代表的なものである.

1ページの知識 寄生虫・原虫

寄生虫の検査法(3)—培養法

久津見 晴彦

pp.275

 培養法は,原虫や虫卵の直接的検出(塗抹法)や物理的分離(集卵法)とは異なり,孵化または増殖という生物学的操作を行なう点が特徴である.すなわち原虫では被検材料を培養基に植えて原虫を増殖させ,虫卵では糞便を湿潤な状態で適温に保って,仔虫を遊出させたのちに検査する.

論壇

病院管理面からみた臨床検査

島内 武文

pp.277-279

 私は臨床検査の専門でもなく,現在臨床に従事してもいないが,元来内科医局で勉強し,のちに病院管理学の道にはいったので,病院全体の立場から臨床検査の組織的関連について考察してみようと思う.

 病院において戦後発展の著しいものに,看護部門と検査部門がある.ことに検査部門については,どの病院においてもその規模が数倍に拡張していて,しかも常に狭さをかこっているところが多い.ことに戦後は,ラジオアイソトープ・電子顕微鏡・超遠心機・電気泳動・クロマトグラフなどをはじめ,エレクトロニクスなどの諸技術が臨床面にも取り入れられて,臨床検査部門の医療における役割は重要なものとなってきた.

座談会

地方検査室の実情

桂 栄孝 , 佐竹 成男 , 佐々木 禎一

pp.280-287

日進月歩の臨床検査界にあって,地方の検査室は,同じ検査室でありながら,中央のそれとは技術・教育・管理運営などの面で大きな隔りがある.九州・四国・北海道の現状をお話しいただいて,地方検査室共通の悩みを探ってみたい.

私たちの試みていること

病理解剖を検査技師が介助

高柳 尹立 , 石田 礼子 , 牧田 弘司

pp.288-290

解剖室に,病理検査技師はもとより,他の部門の技師もはいって‘剖検介助’を実際にやっている病院がある.ここに紹介する富山市民病院がそれで,研究検査科医長の高柳先生にそのねらいや実施法について,技師の方にはその体験を紹介していただくことにする.

研究

白血球の自動計数条件の検討—稀釈液について

黒川 一郎 , 後藤 尚美 , 木村 寿之 , 田中 系子 , 山本 英彬 , 永井 龍夫

pp.291-294

はじめに

 すでに本邦でも血球計数器はかなり普及し1),赤血球は機種それぞれの問題を持ちつつも,日常検査としてほぼ円滑に行なわれているのに比べ,白血球計数,特に溶血後の数値の変動については検討の余地が多い2,3)

 著者らもこの問題全般につきいろいろ試行錯誤的に検討し一部を発表したが4),称釈液の組成中,中性ホルマリン,牛アルブミンの添加が溶血後の計数値の安定化に有効なことをたまたま知った.以下さらに調べた成績を中心に報告し若干の考察を加える.

Kiliani反応による遊離型コレステロール直接定量法の検討

宮谷 勝明 , 福井 巌

pp.295-298

はじめに

 総コレステロール中のエステル比の臨床生化学的検査の診断的価値は,次第に薄らいできていると老えられていた.それは測定法の技術的な問題と,他により容易に行なえる同じ目的の検査が普遍化してきたことであろう.しかし,最近,Glomset1)によるLecithin Cholesterol Acyltransferaseの報告や,また,Norumら2)によるこれら酵素の欠損により,Cholesterol esterの著しく減少を示す症例の報告などによって,再びエステル比測定の重要性が増加してきた.

 エステル型を測定するには,遊離型コレステロールをDigitoninで沈殿させ,それを集めて洗ったのち測定し,総コレステロールより引いて求めるので,Digitoninによる沈殿,洗浄純化,その回収という操作の過程で誤差が生じやすく,技術的に困難な測定法の1つといわれている3,4).このような理由から,和光純薬で開発された遊離型コレステロール直接定量法は,測定法の欠点である操作上の繁雑さを改良し,精度の向上を行なったものと考えられる.われわれはこの改良試薬による測定法について検討を行なったので,その結果について報告する.

Weigert's弾力線維染色におけるResorcinolと他のフェノール類およびその誘導体との比較について

松尾 均

pp.299-300

 1898年WeigertによるResorcinolの導入は,弾力線維の染色にすばらしい結果を与えた.今日なおOrceinや,Safranin,Crystal Violet,Bismarck Brown,Hematoxylinなどの色素を使用する染色法も行なわれているが,レゾルシン・フクシンによるWeigert法は,微細(幼弱)な弾力線維をも明瞭に染め出し(軟骨やその構造によく似たものも染まるが),他のものを染めださないという特異性がある,これは他の染色法に見られないすばらしいものだと思われるが,その染色液の作製にでき・不できが非常に多いといわれている.そこで試薬の作製,調製(染色液の),染色法について,①Resorcinolと他の代表的なフェノール類およびその誘導体である,②Cresol,③Phenol,④Pyrocatechin,⑤Pyrogallic acid(pyrogallol),⑥β-Naphthol,⑦Hydroquinone,⑧α-Naphthol,⑨p-Methylaminophenol,⑩Vanillinの9種類と比較を行なった結果,これらの試薬を使用することによって,Resorcinolとは異なった色調に,弾力線維を染めることができたので報告する.

臨床検査材料からの嫌気性菌検出の意義

森 邦義 , 菊地 佳子

pp.301-304

 嫌気性病原菌は,従来有胞子グラム陽性菌(clostridium属)が主で,近年,無胞子嫌気性菌が注目されるに至った.

 ACTH,副腎皮質ホルモン,抗腫瘍剤,各種化学療法剤または放射線治療などの繁用により,個体の低抗性の減弱を誘起してくるため,非病原性菌ないし弱毒菌と考えられた菌種によるendogenous infectionを招来し,常在菌叢のメンバーとされている無胞子嫌気性菌感染が注目され,また今日では各科領域でこれらに関する業績のすでに報告されている.

昭和44年第2回細胞検査士資格認定試験

橋本 敬祐

pp.305-309

昨年3月,第1回の細胞検査士資格認定試験が東京・順天堂大学にて行なわれたが,第2回も同年8月に同じ順天堂大学で行なわれた.ここに試験問題と解答および総括を掲載する.(問題は原文のまま)

質疑応答

結核菌耐性培地の有効期限について

T生 , 工藤 祐是

pp.311

 問 当検査室では,市販の結核菌耐性培地を使用しておりますが,薬剤により有効期限に長短があります.なぜでしょうか.また,有効期限のきれた培地を使ってはいけないものでしょうか.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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60巻5号(2016年5月発行)

今月の特集1 体腔液の臨床検査
今月の特集2 感度を磨く—検査性能の追求

60巻4号(2016年4月発行)

今月の特集1 血漿蛋白—その病態と検査
今月の特集2 感染症診断に使われるバイオマーカー—その臨床的意義とは?

60巻3号(2016年3月発行)

今月の特集1 日常検査からみえる病態—心電図検査編
今月の特集2 smartに実践する検体採取

60巻2号(2016年2月発行)

今月の特集1 深く知ろう! 血栓止血検査
今月の特集2 実践に役立つ呼吸機能検査の測定手技

60巻1号(2016年1月発行)

今月の特集1 社会に貢献する臨床検査
今月の特集2 グローバル化時代の耐性菌感染症

59巻13号(2015年12月発行)

今月の特集1 移植医療を支える臨床検査
今月の特集2 検査室が育てる研修医

59巻12号(2015年11月発行)

今月の特集1 ウイルス性肝炎をまとめて学ぶ
今月の特集2 腹部超音波を極める

59巻11号(2015年10月発行)

増刊号 ひとりでも困らない! 検査当直イエローページ

59巻10号(2015年10月発行)

今月の特集1 見逃してはならない寄生虫疾患
今月の特集2 MDS/MPNを知ろう

59巻9号(2015年9月発行)

今月の特集1 乳腺の臨床を支える超音波検査
今月の特集2 臨地実習で学生に何を与えることができるか

59巻8号(2015年8月発行)

今月の特集1 臨床検査の視点から科学する老化
今月の特集2 感染症サーベイランスの実際

59巻7号(2015年7月発行)

今月の特集1 検査と臨床のコラボで理解する腫瘍マーカー
今月の特集2 血液細胞形態判読の極意

59巻6号(2015年6月発行)

今月の特集1 日常検査としての心エコー
今月の特集2 健診・人間ドックと臨床検査

59巻5号(2015年5月発行)

今月の特集1 1滴で捉える病態
今月の特集2 乳癌病理診断の進歩

59巻4号(2015年4月発行)

今月の特集1 奥の深い高尿酸血症
今月の特集2 感染制御と連携—検査部門はどのようにかかわっていくべきか

59巻3号(2015年3月発行)

今月の特集1 検査システムの更新に備える
今月の特集2 夜勤で必要な輸血の知識

59巻2号(2015年2月発行)

今月の特集1 動脈硬化症の最先端
今月の特集2 血算値判読の極意

59巻1号(2015年1月発行)

今月の特集1 採血から分析前までのエッセンス
今月の特集2 新型インフルエンザへの対応—医療機関の新たな備え

58巻13号(2014年12月発行)

今月の特集1 検査でわかる!M蛋白血症と多発性骨髄腫
今月の特集2 とても怖い心臓病ACSの診断と治療

58巻12号(2014年11月発行)

今月の特集1 甲状腺疾患診断NOW
今月の特集2 ブラックボックス化からの脱却—臨床検査の可視化

58巻11号(2014年10月発行)

増刊号 微生物検査 イエローページ

58巻10号(2014年10月発行)

今月の特集1 血液培養検査を感染症診療に役立てる
今月の特集2 尿沈渣検査の新たな付加価値

58巻9号(2014年9月発行)

今月の特集1 関節リウマチ診療の変化に対応する
今月の特集2 てんかんと臨床検査のかかわり

58巻8号(2014年8月発行)

今月の特集1 個別化医療を担う―コンパニオン診断
今月の特集2 血栓症時代の検査

58巻7号(2014年7月発行)

今月の特集1 電解質,酸塩基平衡検査を苦手にしない
今月の特集2 夏に知っておきたい細菌性胃腸炎

58巻6号(2014年6月発行)

今月の特集1 液状化検体細胞診(LBC)にはどんなメリットがあるか
今月の特集2 生理機能検査からみえる糖尿病合併症

58巻5号(2014年5月発行)

今月の特集1 最新の輸血検査
今月の特集2 改めて,精度管理を考える

58巻4号(2014年4月発行)

今月の特集1 検査室間連携が高める臨床検査の付加価値
今月の特集2 話題の感染症2014

58巻3号(2014年3月発行)

今月の特集1 検査で切り込む溶血性貧血
今月の特集2 知っておくべき睡眠呼吸障害のあれこれ

58巻2号(2014年2月発行)

今月の特集1 JSCC勧告法は磐石か?―課題と展望
今月の特集2 Ⅰ型アレルギーを究める

58巻1号(2014年1月発行)

今月の特集1 診療ガイドラインに活用される臨床検査
今月の特集2 深在性真菌症を学ぶ

57巻13号(2013年12月発行)

今月の特集1 病理組織・細胞診検査の精度管理
今月の特集2 目でみる悪性リンパ腫の骨髄病変

57巻12号(2013年11月発行)

今月の特集1 前立腺癌マーカー
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査②

57巻11号(2013年10月発行)

特集 はじめよう,検査説明

57巻10号(2013年10月発行)

今月の特集1 神経領域の生理機能検査の現状と新たな展開
今月の特集2 Clostridium difficile感染症

57巻9号(2013年9月発行)

今月の特集1 肺癌診断update
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査①

57巻8号(2013年8月発行)

今月の特集1 特定健診項目の標準化と今後の展開
今月の特集2 輸血関連副作用

57巻7号(2013年7月発行)

今月の特集1 遺伝子関連検査の標準化に向けて
今月の特集2 感染症と発癌

57巻6号(2013年6月発行)

今月の特集1 尿バイオマーカー
今月の特集2 連続モニタリング検査

57巻5号(2013年5月発行)

今月の特集1 実践EBLM―検査値を活かす
今月の特集2 ADAMTS13と臨床検査

57巻4号(2013年4月発行)

今月の特集1 次世代の微生物検査
今月の特集2 非アルコール性脂肪性肝疾患

57巻3号(2013年3月発行)

今月の特集1 分子病理診断の進歩
今月の特集2 血管炎症候群

57巻2号(2013年2月発行)

今月の主題1 血管超音波検査
今月の主題2 血液形態検査の標準化

57巻1号(2013年1月発行)

今月の主題1 臨床検査の展望
今月の主題2 ウイルス性胃腸炎

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