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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査14巻6号

1970年06月発行

雑誌目次

カラーグラフ

風土病の検査(2)—レプトスピラ病—凝集反応

小林 譲

pp.518-519

 レプトスピラ病の確定診断は,病原レプトスピラの分離同定や血清反応によらねばならないが,病気の時期によって検査材料および検査方法が異なるので,これらの点を注意して検査を進めることがたいせつである.

 わが国には,黄疸出血性レプトスピラ病の病原としてLeptospira icterohaemorrhagiae,秋季レプトスピラ病の病原としてL.autumnalis, L.hebdomadis, L.auastralis,イヌ型レプトスピラ病の病原としてL.canicolaがあり,沖縄ではL.pyrogenesやL.javanicaも見いだされている.

グラフ

性染色体の検査法

松永 英 , 菊池 康基 , 大石 英恒

pp.521-524

 性染色体の検査は,種々の性染色体異常個体の検出ならびに診断,および性の分化異常を示す患者の正しい性の判定に欠くことのできない検査である.検査方法としては,染色体検査,性染色質およびドラムスティックによる判定,およびオートラジオグラフィーに基づく染色体の同定があり,これらすべての検査を並行して行なうことが望ましい.

組織と病変の見方 肉眼像と組織像の対比—中枢神経とその病変(1)

金子 仁

pp.525-528

中枢神経系は脳と脊髄である.脳病変として最も多いものは脳出血,脳軟化であり,脊髄疾患として最も注目したいのはスモンとポリオであろう.中枢神経系は,病理解剖に従事した衛生検査技師でないとお目にかかることができないが,病気としては重要な,致命的なものを含むことが多い.したがって十分に理解することが必要である.

本編では脳出血,脳軟化,脳膜炎,脳腫瘍,ポリオ,スモンなどを選んだ.脳腫瘍では髄膜腫,アストロサイトーマを紹介する.ポリオ(脊髄性小児麻痺)は有名な病気であるが現在は非常に少なく,ここに載せたのは1960年に剖検した東大病院例で,きわめて珍しい病変の激しいものである(写真中,臓器のLは左側,Rは右側を示す.この号以後についても同様である).

病理組織のための電顕試料作製法Ⅲ—支持膜とガラスナイフ

三友 善夫 , 宮本 博泰

pp.565-568

試料支持膜作製法

光顕観察時のスライドガラスに相当する電顕試料を載せる膜は,細かい格子状や細隙状の多数の小孔のある円形金属板(シートメッシュ)に張られる.この膜は厚さが100-200A,電子線に強い抵抗性を有し,内部は無構造,電子線を散乱しない透明なもので,ホルムバールやセロイジンが用いられる.また膜の強化の目的でカーボン,シリカ,一酸化ケイ素などを真空蒸着する.支持膜の作製にあたって電顕試料の観察では微細な塵埃も障害となるので,薬品は精製した特級品を,器具はよく洗浄したのちに十分に蒸留水を通し,塵埃をさけて乾燥させたものを使用する.(→左)

抗原抗体反応・6

免疫グロブリンの各クラスと補体結合性

松橋 直

pp.530-531

 現在知られている免疫グロブリンには5種類ある.Immunoglobulinを意味するIgに,それぞれのクラスを意味するローマ字の大文字をつけたIgG, IgM, IgA, IgD, IgEである.またガンマー(γ)ということばが免疫に関係あるものとして普及しているので,Igの替わりにγを用いてγGγM,γA,γD,γEと呼んでもよいことになっている.これらの各クラスの免疫グロブリンは,γGグロブリンの基本構造(本誌14巻1号)と相似の構造をもつものが1分子単独のもの,あるいは数分子が重合しているものであると考えられている.たとえば,γAについてみると,L鎖とH鎖の1対ずつからなり,L鎖とH鎖がSS結合で結びついたLHに,同じLHの型のペプチドのH鎖がSS結合で結びつきあい,LHHLの型になっている.このL鎖はBence-Jonesタンパクと相似の化学構造をもったものであり,これにもK型とL型がある.

 Bence-Jonesタンパクの場合も,ペプチド鎖を呼ぶときはκ鎖,λ鎖と呼んでおり,これには二重合体のものと単一のものがあるので,ペプチド鎖で略記すれば,κ2,κとλ2,λとがあることになる.γAの場合もこのκまたはλが2つある.そして,H鎖にγAの特徴があり,これはギリシア文学でα鎖と書くことになっている.したがって,γAのペプチドで略記するときはα2κ2またはα2λ2と書くことができる.また,γAには重合しているものもあるので,このときは(α2κ2)2とか(α2λ2)3といったぐあいに表現されている.なお,γAは唾液,乳汁などの分泌液中にもあるが,これは構造がやや異なっており,分泌と関係があるらしいT分屑を介して(α2κ2)T(α2κ2),(α2λ2)T(α2λ2)のような分子構成をもつものと考えられている.

ノモグラム・6

コレステロールエステル比の求め方

水野 映二 , 青木 志津子

pp.533

求め方 ジギトニソー塩化鉄法(北村元仕他:臨床化学分析III,東京化学同人)で求めた総コレステロール(T.C)および遊離型コレステロール(F.C)(総コレステロールの2.5倍の抽出液を用いる)の吸光度をおのおのの目盛りにそって移行し,その交点を得,それをさかのぼると求めるエステル比となる.エステル比=T×2.5-F/T×2.5×100(%)

 注意 エステル比60%以下,80%以上の値は求められない.単位のとり方を変えるこによってはTC, FCの濃度からでも求められる.なお,吸光度の交点の角度は一定であるから,図に示す印太線の角度をもった定規を透明なセルロイドで作って,T, CとF.Cの吸光度の交点にあてて使用するとさらに便利になる.

検査室の便利表・6

常用pH緩衝液の作り方

松村 義寛

pp.535

リン酸塩緩衝液Sφrensen,Michaelis,Hastings原液A 0.2Mリン酸一カリウム

総説

臨床検査のための試薬とその純度

坂岸 良克

pp.537-542

 99.9999%の時代—正確度,精度の高いデータを追うことは検査の究極目標といってもよい.化学分析の測定誤差を生じる原因の1つに試薬の純度の問題がある.ここでは単純試薬,調製試薬,標準液の性質・取り扱い方,不純物の試験法などについて解説する.

技術解説

レプトスピラ病の検査室内診断

小林 譲

pp.543-547

 黄疸出血性レプトスピラ病(ワイル病)の病原体が,稲田と井戸(1915)によって発見されて以来,世界各地で多数のレプトスピラが人や動物から分離され,現在その数は60種余りにも及んでいる.これらのうち,わが国にはLeptospiraicterohaemorrhagiae(黄疸出血性レプトスピラ),L. canicola(イヌ型レプトスピラ),L. autumnalis(L. hebdomadis A,秋季レプトスピラA),L. hebdomadis(L. hebdomadis B,七日熱レプトスピラ,秋季レプトスピラB),L. australis(L. hebdomadis C,秋季レプトスピラC)があり,L. bataviaeおよびL. pyrogenesの存在も疑われている.また,沖縄ではL. javamicaも分離されている.これらのうち,黄疸出血性レプトスピラ病は,黄疸と出血ならびに腎炎を主徴とし,経過が早く,早期に適切な治療が行なわれない場合には,死亡率が30%前後にも及ぶ危険な疾患である.

 レプトスピラ病の確定診断には,患者からのレプトスピラの分離同定と特異免疫抗体の証明とがあるが,疾患の時期によって検査材料および検査方法が異なるので,これらを表に要約した.

末梢血単核細胞の鑑別

新谷 和夫

pp.548-553

 単核細胞ということばは主として病理学の分野で用いられてきたが,その意味するところは核が分葉傾向を示すことなく,円形の細胞というようなものであった.したがって,細胞の種類という観点からすると骨髄芽球,リンパ芽球,赤芽球骨髄球,単球,リンパ球などかなり広範なものが包含されることになる.ところが細胞個々というより細胞相互間の有機的連関,すなわち構造の変化を主として探究してゆく病理学にあっては,このような広い概念をもつことがきわめて有用なことは容易に推定しうるであろう.しかし不思議なことに,単核細胞ということばは個々の細胞を扱う血液学の分野でも盛んに用いられている.そこで本文では末梢血中の単核細胞の問題を取り上げ,その鑑別法についてふれてみたい.

私のくふう

RA試薬セットを応用した血液型判定

横山 協生

pp.553

目的

 血液型(ABO式)判定は,成書によると熟練者3%,未熟者10%の誤りがあるといわれています.私自身のにがい経験を生かして,初心者にもよくわかるようにと思いついた方法です.

臨床検査の問題点・18

細菌と塗抹検査

高橋 昭三 , 舘野 捷子

pp.554-559

 細菌の塗抹検査の目標はいうまでなく菌の形態学的な同定である.よりよい検査結果を出すためにはどの染色法がよいのか,鏡検時の背景をどこまで見るか,検体の均等化は必要なのか,そしてデータの報告のしかたなどを検討し,あわせて塗抹検査の将来も展望する.

主要疾患と臨床検査・18

急性意識障害と臨床検査

稲垣 克彦

pp.560-564

 各種の脳疾患,代謝障害,外因性中毒などの際に意識障害が起こる.

 意識障害の基本型を次の4つに分類する.

1ページの知識 生化学

臨床化学検査室と直視分光器

降矢 熒

pp.569

1.直視分光器とは

 分散した光(スペクトル)を綿密に調べるために分光器が使われる.図1のように屈折率の異なる2種類の三角プリズムを数個組み合わせて鏡筒の中央部に置き,その前方には"スリット"と"コリメーターレンズ"を置き,後方には小形の望遠鏡接眼部を置くと入射光と射出光とはほとんど一直線になる.そして入射光線の方向にほぼ直交した焦点面に分散されたスペクトルを観察することにより,着色した試料の検査分析を行なうことができる.400-800mμの波長目盛りの像が同時に焦点面に現われるようにした形式のものが便利である.

1ページの知識 血液

出血時間・凝固時間の測定について

糸賀 敬

pp.570

出血時間の測定

 出血時間は血小板数,血小板の機能,組織ならびに毛細管の収縮力などに左右され,血液ならびに組織凝固因子などとも多少関係がある.

 皮膚に小切創を作り,湧出する血液を30秒ごとに濾紙に吸い取り,自然に止血するまでの時間を測定するのであるが,デューク法(Duke法)とアイビイ法(Ivy法)とがある.前者の正常範囲は1分から5分まで,後者の正常範囲は1分から7分までである.出血時間が延長するときには,毛細血管の異常か血小板の異常を考える.その場合には血小板数の算定や,毛細血管抵抗試験を同時に実施しなければならない。

1ページの知識 血清

リウマチ因子とRA-テスト

水谷 昭夫

pp.571

Rheumatoid factor-RF

 RFは関節リウマチ患者のおおくにみられるMW約100万の特異なマクログロブリンで,電気泳動ではβ-γ領域に出現する.免疫グロブリンクラスとしてはIg-Mに属するものとされるが,Ig-G class,Ig-A classのものもあるらしい.尿素処理,または加熱による変性を受けたIg-Gと沈降物を作り,aggregatedの哺乳類のIg-Gとはよく反応するが,鳥類のものとは反応しがたいということである.

 RFが,このようにヒトγ-グロブリンと反応することから,これをγ-グロブリンに対する自己抗体と考える人は多い.しかし,このように抗体とは考えない意見もある(Aho, K., 1961).

1ページの知識 細菌

検体別細菌検査(2)

土屋 俊夫

pp.572

3.尿

 尿の細菌検査は腎盂腎炎,腎盂炎,尿路結核(腎結核,膀胱結核),膀胱炎,尿道炎などの尿路感染症,および腸チフス,パラチフスなどのサルモネラ症,ワイル病などのレプトスピラの場合に,病原菌検索の目的で行なわれる.

 腎盂腎炎,膀胱炎の原因菌は大腸菌その他の腸内細菌,緑膿菌,コアグラーゼ陰性ブドウ球菌・腸球菌などで,いずれも尿道あるいは外陰部に常在しうる菌である.したがってこの場合,菌の種類だけから原因菌か混入した常在菌かの区別は不可能であり,採尿のし方が大いに問題となる.常在菌として存在しない淋菌,結核菌,サルモネラ,レプトスピラなどが検出された場合は,採尿法が多少まずくて常在菌が混入しても,疾病がこれらの菌によることは明らかである.このように淋菌性尿道炎,尿路結核,サルモネラ症,レプトスピラ症と,腎盂腎炎,腎盂炎,膀胱炎の場合とでは,尿の採り方,検査の進め方にかなりの相違がある.

1ページの知識 病理

薄切への準備

和田 昭

pp.573

1.台木への接着

 前回,板チョコを割る要領で個々のパラフィンブロックに分けると述べたが,この際プロッグの形をできるかぎり面が長方形になるようにしておくと,連続切片を作るときに,切片同志が密接してきれいにできあがる.台木に接着させるにはまずパラフィンの小片を台木表面にのせ,熱したスパーテルで溶かしてブロックをとりつけるが,その場合スパーテルの上にブロックを軽く置き,スパーテルを抜きとると同時にブロックを押しつけるようにすると固く接着できる.ブロックの周囲をなでつけてパラフィンを溶かしておくと一層はがれにくいうえ,形を整えることもできるのでよい.台木の新しいのを使うときは,十分なパラフィンでつけるようにしないと,薄切中にポロリとはがれてしまうことがある.

 台木には木,金属,エボナイト製のものなどがあるが,パラフィンブロックには木を用いるのが普通である.朴,樫など硬い材質のものがよい.新しい台木は使用前に炭酸ソーダ液で数時間煮て樹脂をとり去って,よく洗ったのち乾燥して用いるのがよい.

1ページの知識 生理

—正常波形や記録のなりたちと生理的基礎知識—心電図

春見 建一

pp.574

 正常心電図といっても,正常範囲が比較的広く,種々なパターンがあるので,ここでは平均的正常心電図と電気生理学的事実を結びつけてみたい.洞結節から出た刺激は心房に伝えられ,洞結節の周囲がまず興奮し,興奮は波紋のように右心房から左心房へ伝わる.興奮部と未興奮部の境に起電力を生じ,その方向は未興奮部の方向に向かう.起電力は,洞結節周辺からまず左前下方に向かい,次いで左後方下に向かうので,P波は図1のように正面ではⅠ,Ⅱともに上向きとなり,Ⅲでは上向きまたは2相性となる.胸部誘導では,V1は2相性,V6では上向きとなる.P波の幅は約0.1秒で,心房の興奮開始から終了までの時間を示す.心房の興奮は,房室結節に伝えられる.房室結節では興奮の伝導は遅く,これがP-Q時間が0.12-0.20秒ある理由である.

 興奮による心室起電力の軌跡は,図2のようにまず左室前乳頭筋起始部と中隔の興奮を反映し,右前横または上に向かい,次いで右前より左前下を回りながら左室側壁の興奮時,最大となって左後下に向かう.左室後壁,中隔上部と興奮するに従って,左後下より左後方,右後上方に達し原点に戻る.QRSはⅠ,Ⅱ,Ⅲとも上向きになり,ⅡのRが最大となる.心室興奮のはじめの起電力は右前上に向かうので,この部分がⅠ,Ⅱの小さなqとなる.また,終わりのcrista supra ventricularisの興奮は右上後に向かうので,Ⅰ,Ⅱ,Ⅲの小さなSとなる.胸部誘導では平均的な起電力は右前より左後方に向かうため,右胸部誘導V1,V2ではSが深くなり,左胸部誘導V5,V6ではRが高くなる.その中間V3,V4ではRとSがほとんど同じになる.すなわち移行帯である,右前に向かうはじめの起電力は小さく,これがV1,V2の小さなrおよびV5,V6の小さなqを形成する.終わりの右上に向かう起電力により,V5,V6の小さなSが形成される.したがってQRSの形は基本的にV1,V2はrS,V3,V4はRS,V5,V6,はqRsとなる.

1ページの知識 寄生虫・原虫

寄生虫の検査法(6)—免疫血清学的検査(2)

久津見 晴彦

pp.575

補体結合反応と血球凝集反応

 補体結合反応 肺吸虫症,糸状虫症,包虫症,住血吸虫症,肝吸虫症の診断に用いられているが,一般的には皮内反応に比べると特異性の点で劣るようである.

 肺吸虫症では虫卵陽性者の85-95%が陽性となるが,健康人でも10%が陽性となる.しかし肺臓内の虫嚢を外科的に切除した例では1か月後に抗体価が急激に低下し,4か月後には完全に陰転しており,また薬剤投与で完全治癒したときは1年以内に陰転するが,不完全治癒では抗体価は低下せず1-3か月後に虫卵が陽性となった報告があるので,補体結合反応は治癒の判定に用いられる.

論壇

思いつくままに

清水 文彦

pp.578-579

 急に変わらなければならなかった大学の中での仕事のつごうから,創設以来たずさわってきた医学部付属衛生検査技師学校の校長をやめたのは昨秋のことである.文京学園医学技術科での講義を頼まれたのが先であったから,この教育課程での医学概論の講義を10年もやってきたことになる.

 医学概論といっても,医学部の教育課程にある本格的な医学の哲学ともいうべきものとはちがっているから,適不適は別としてやってきたわけであるが,今まで直接関連のなかった医学の専門科目を突然にぎゅうぎゅうつめこまれて,おそらく多少は覚悟はしていてもそれ以上にめんくらっているであろう高校を出たばかりの人たちに,医学というものを一番てっとり早く理解してもらう手段としてまず医学の歴史のお話をした.現代の科学的医学の主流をなしている西洋の医学がどのようにして起こり,どのような流れかたをして,現在どんな様相を呈しているか,そしてまたこれからのいく末はどちらに向くであろうかをかいつまんで話せば,きっと医学というもの,そしてその分科の各専門科目の修得に役だつだろうと思ったからである.

座談会

超微量化学検査への道

嵯峨 美枝子 , 大場 康寛 , 丹羽 正治 , 橋本 久子 , 斎藤 正行

pp.580-589

 超微量定量のメリットは能率・経済・精度の各面で大なるものがある.しかし,臨床検査室では,現実面でなかなか導入できない問題点や不安が潜在している.体内の豊富な化学的情報を的確にとらえ,臨床に生かすにはどうしても,その"つっかえ棒"を取り除かねばならない.

海外だより

フィンランドの臨床検査室—メーラハチ病院の勤務を終えて

川村 秀子

pp.590-593

 以前に,国際臨床検査技師会議(IAMLT)に参加したことについて紹介させていただきましたが(本誌,13,4),今回は,北欧の小国フィンランドの衛生検査技師(ラボラトリーナース)と,私自身その仕事について1年間いっしょに働いた経験をもとに,私の目に写った印象などを紹介したいと思います.

ひろば

病院実習を考える

大林 弘幸

pp.593

インターンとは,道は開いてくれるが1人で歩くものである

 私の病院にも,地方の病院としては珍しく,ある学校の実習生が来ます。しかし,私たちは教育の専門家でもなければ,臨床検査の学者でもありません.普通の検査技師です.学生の教育などと大それた考えはもっておりません.教育とは私のような,"やすっぽい人間"のやることではないと考えます.

 指導(さして道をしめす)はするが,教育(教え育てる)はしない方針です.

研究

Immunocrit法によるβ-リポタンパク測定法の検討

坂野 重子

pp.594-598

はじめに

 1961年,Heiskellら1)によって提唱された,免疫血清反応を応用したβ-リポタンパク測定法は,β-リポタンパクに対する特異性が高く,しかも測定操作法が簡単であるところから,疾病と脂質代謝の論議のやかましい最近の趨勢において,急速の普及をみた.そして,なおこの普及は,米国のハイランド社から,いち早く測定キットβ-Lテストが市販されたことに負うところが大きい.

 このβ-Lテストについては,測定操作法,正常値,疾病との関係,他の脂質測定法との相関など,すでに多くの報告があり,測定にあたっては,厳しい操作条件を規定しないと,よい再現性が得られないことなどは,今日ではよく知られているところである2-6,9-13)

肝吸虫卵排出から見たその生存期間

長谷川 幸一 , 藤間 明美

pp.599-600

はじめに

 肝吸虫の生存期間は一般には数か年以上と考えられており,最も長いので小林(1910)は自分で肝吸虫メタセルカリヤを試食し,1か月後に虫卵の排出を見て,その後排出を見つづけて,満8年以上は生存しうるものと報告している1)

 私たちも1患者の虫卵の排出を観察し,より長い生存期間の成績を得たので報告する.

新しいキットの紹介

感染性単核球症の診断試薬Mono-Testの使用経験

伊藤 忠一

pp.601-603

はじめに

 感染性単核球症はリンパ腺腫,脾腫および発熱などを主訴とする熱性疾患で,現在ウィルスによる感染症と考えられている.本症は,欧米各国においてかなり高頻度にみられる疾患であるが,本邦においても鏡熱・日向熱・土佐熱などと呼ばれてきた風土病,小児のリンパ腺腫を伴う熱性疾患などと臨床症状がきわめて類似しており,その鑑別は必ずしも容易ではない.

 従来,本症の診断には血清中の異好性抗体を検出するPaul-Bunnell反応1)(P-B反応)および,これら異好性抗体のウシ血球およびモルモット腎による吸収試験(Davidsohn)2)が用いられてきたが,本反応は血清病,肺炎,マラリア,溶血性黄疸,はしか,流行性耳下腺炎,猩紅熱,herpes,白血病,泉熱,リウマチ様関節炎,多血症,急性肝炎,各種リンパ腺腫などでも高値を示すし,またDavidsohn吸収試験は必ずしも典型的なパターンを示さないことがあるため,特異性という点では問題がある.一方,Henleら3,4),日沼ら5)によって感染性単核球症の病原ウイルスがEBウイルスであろうという血清学的証拠が提出されており,EBウイルス抗体価を測定することによってその病原診断,経過の判定が可能になりつつある.しかしながら,本抗体の定性,定量には螢光抗体法という繁雑で高度の技術が必要であり,日常検査として採用するには多くの困難を伴う.また,感染性単核球症のすべてがEBウイルス感染によって起こるものではないと同時に,感染性単核球症以外の疾患でもEBウイルスが病原となっている場合も多く考えられている5,6)

質疑応答

カルチャボトルの血液培養について

K生 , 小沢 敦

pp.613

1)24-48時間培養で混濁を認めたが,それ以後培養を続けるとむしろ混濁度が少なくなるようなものを経験するのですが,いかなる理由なのですか.

2)混濁はかなり認めるが,菌陰性の場合があるのですが……

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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64巻12号(2020年12月発行)

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64巻11号(2020年11月発行)

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64巻9号(2020年9月発行)

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今月の特集2 生理検査—この所見を見逃すな!

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63巻11号(2019年11月発行)

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今月の特集2 災害現場で活かす臨床検査—大規模災害時の経験から

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今月の特集2 成人先天性心疾患

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今月の特集1 Stroke—脳卒中を診る
今月の特集2 実は増えている“梅毒”

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今月の特集2 心腎連関を理解する

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今月の特集2 がん分子標的治療にかかわる臨床検査・遺伝子検査

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今月の特集2 脂質検査の盲点

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60巻10号(2016年10月発行)

今月の特集1 血球貪食症候群を知る
今月の特集2 感染症の迅速診断—POCTの可能性を探る

60巻9号(2016年9月発行)

今月の特集1 睡眠障害と臨床検査
今月の特集2 臨床検査領域における次世代データ解析—ビッグデータ解析を視野に入れて

60巻8号(2016年8月発行)

今月の特集1 好塩基球の謎に迫る
今月の特集2 キャリアデザイン

60巻7号(2016年7月発行)

今月の特集1 The SLE
今月の特集2 百日咳,いま知っておきたいこと

60巻6号(2016年6月発行)

今月の特集1 もっと知りたい! 川崎病
今月の特集2 CKDの臨床検査と腎病理診断

60巻5号(2016年5月発行)

今月の特集1 体腔液の臨床検査
今月の特集2 感度を磨く—検査性能の追求

60巻4号(2016年4月発行)

今月の特集1 血漿蛋白—その病態と検査
今月の特集2 感染症診断に使われるバイオマーカー—その臨床的意義とは?

60巻3号(2016年3月発行)

今月の特集1 日常検査からみえる病態—心電図検査編
今月の特集2 smartに実践する検体採取

60巻2号(2016年2月発行)

今月の特集1 深く知ろう! 血栓止血検査
今月の特集2 実践に役立つ呼吸機能検査の測定手技

60巻1号(2016年1月発行)

今月の特集1 社会に貢献する臨床検査
今月の特集2 グローバル化時代の耐性菌感染症

59巻13号(2015年12月発行)

今月の特集1 移植医療を支える臨床検査
今月の特集2 検査室が育てる研修医

59巻12号(2015年11月発行)

今月の特集1 ウイルス性肝炎をまとめて学ぶ
今月の特集2 腹部超音波を極める

59巻11号(2015年10月発行)

増刊号 ひとりでも困らない! 検査当直イエローページ

59巻10号(2015年10月発行)

今月の特集1 見逃してはならない寄生虫疾患
今月の特集2 MDS/MPNを知ろう

59巻9号(2015年9月発行)

今月の特集1 乳腺の臨床を支える超音波検査
今月の特集2 臨地実習で学生に何を与えることができるか

59巻8号(2015年8月発行)

今月の特集1 臨床検査の視点から科学する老化
今月の特集2 感染症サーベイランスの実際

59巻7号(2015年7月発行)

今月の特集1 検査と臨床のコラボで理解する腫瘍マーカー
今月の特集2 血液細胞形態判読の極意

59巻6号(2015年6月発行)

今月の特集1 日常検査としての心エコー
今月の特集2 健診・人間ドックと臨床検査

59巻5号(2015年5月発行)

今月の特集1 1滴で捉える病態
今月の特集2 乳癌病理診断の進歩

59巻4号(2015年4月発行)

今月の特集1 奥の深い高尿酸血症
今月の特集2 感染制御と連携—検査部門はどのようにかかわっていくべきか

59巻3号(2015年3月発行)

今月の特集1 検査システムの更新に備える
今月の特集2 夜勤で必要な輸血の知識

59巻2号(2015年2月発行)

今月の特集1 動脈硬化症の最先端
今月の特集2 血算値判読の極意

59巻1号(2015年1月発行)

今月の特集1 採血から分析前までのエッセンス
今月の特集2 新型インフルエンザへの対応—医療機関の新たな備え

58巻13号(2014年12月発行)

今月の特集1 検査でわかる!M蛋白血症と多発性骨髄腫
今月の特集2 とても怖い心臓病ACSの診断と治療

58巻12号(2014年11月発行)

今月の特集1 甲状腺疾患診断NOW
今月の特集2 ブラックボックス化からの脱却—臨床検査の可視化

58巻11号(2014年10月発行)

増刊号 微生物検査 イエローページ

58巻10号(2014年10月発行)

今月の特集1 血液培養検査を感染症診療に役立てる
今月の特集2 尿沈渣検査の新たな付加価値

58巻9号(2014年9月発行)

今月の特集1 関節リウマチ診療の変化に対応する
今月の特集2 てんかんと臨床検査のかかわり

58巻8号(2014年8月発行)

今月の特集1 個別化医療を担う―コンパニオン診断
今月の特集2 血栓症時代の検査

58巻7号(2014年7月発行)

今月の特集1 電解質,酸塩基平衡検査を苦手にしない
今月の特集2 夏に知っておきたい細菌性胃腸炎

58巻6号(2014年6月発行)

今月の特集1 液状化検体細胞診(LBC)にはどんなメリットがあるか
今月の特集2 生理機能検査からみえる糖尿病合併症

58巻5号(2014年5月発行)

今月の特集1 最新の輸血検査
今月の特集2 改めて,精度管理を考える

58巻4号(2014年4月発行)

今月の特集1 検査室間連携が高める臨床検査の付加価値
今月の特集2 話題の感染症2014

58巻3号(2014年3月発行)

今月の特集1 検査で切り込む溶血性貧血
今月の特集2 知っておくべき睡眠呼吸障害のあれこれ

58巻2号(2014年2月発行)

今月の特集1 JSCC勧告法は磐石か?―課題と展望
今月の特集2 Ⅰ型アレルギーを究める

58巻1号(2014年1月発行)

今月の特集1 診療ガイドラインに活用される臨床検査
今月の特集2 深在性真菌症を学ぶ

57巻13号(2013年12月発行)

今月の特集1 病理組織・細胞診検査の精度管理
今月の特集2 目でみる悪性リンパ腫の骨髄病変

57巻12号(2013年11月発行)

今月の特集1 前立腺癌マーカー
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査②

57巻11号(2013年10月発行)

特集 はじめよう,検査説明

57巻10号(2013年10月発行)

今月の特集1 神経領域の生理機能検査の現状と新たな展開
今月の特集2 Clostridium difficile感染症

57巻9号(2013年9月発行)

今月の特集1 肺癌診断update
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査①

57巻8号(2013年8月発行)

今月の特集1 特定健診項目の標準化と今後の展開
今月の特集2 輸血関連副作用

57巻7号(2013年7月発行)

今月の特集1 遺伝子関連検査の標準化に向けて
今月の特集2 感染症と発癌

57巻6号(2013年6月発行)

今月の特集1 尿バイオマーカー
今月の特集2 連続モニタリング検査

57巻5号(2013年5月発行)

今月の特集1 実践EBLM―検査値を活かす
今月の特集2 ADAMTS13と臨床検査

57巻4号(2013年4月発行)

今月の特集1 次世代の微生物検査
今月の特集2 非アルコール性脂肪性肝疾患

57巻3号(2013年3月発行)

今月の特集1 分子病理診断の進歩
今月の特集2 血管炎症候群

57巻2号(2013年2月発行)

今月の主題1 血管超音波検査
今月の主題2 血液形態検査の標準化

57巻1号(2013年1月発行)

今月の主題1 臨床検査の展望
今月の主題2 ウイルス性胃腸炎

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