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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査14巻7号

1970年07月発行

雑誌目次

カラーグラフ

やけどの病理

平山 峻

pp.620-621

やけどは人類の発達史とともに現われ,その治療法は遠く紀元前ソクラテスのころから始まり,現在に至るまで数々のすぐれた治療法が行なわれるようになった.

やけどを治療する際最もたいせつなことは,その病態生理を知ることである.範囲の狭い軽度のやけどの治療はともかくとしても,広範囲の重症のやけどの際に起こる局所変化,全身反応を1つずつ解明・対処していくことにより,1人でも多くの重症患者を救命することができよう.

グラフ

オートタイター—血清学的検査の自動化

河合 忠 , 近藤 泰正

pp.623-630

 近年,医学の進歩とともにその診断技術の向上はめざましいものがあるが,臨床検査においても例外ではなく,必然的に検査の質の向上と量的処理の問題が起こってきている.血清学的検査はその繁雑さから,ともすると量的処理のみに追われ,質的向上がおろそかにされる傾向がある.したがって,臨床検査の自動化については,大量の検体を処理するためばかりでなく,検査の成績向上の面からも十分検討されなければならない.

このオートタイターは血清試料の倍数稀釈,試薬類の添加などの繁雑な操作を機械化し,しかも微量検査で小型のトレイを使うために,インキュベーションに要するスペースも少なくてすむ利点がある.(カットは左:V型トレイ,右:U型トレイ)

組織細胞化学・1

組織化学および細胞化学概観

三友 善夫

pp.632-633

 組織化学(Histochemistry)および細胞化学(Cytochemistry)は,組織ないし細胞の構造を基盤として,組織や細胞の物質代謝などの生化学的状態を顕微鏡レベルで追究する学問である.これは形態学と分析化学の2つの分野から発展し,しだいに結合したものとみなされる.そして,組織や細胞内に存在する物質の化学的性状と,その存在部位の確定が目的である.

Raspail(1830)によって1つの学問として体系化され,発展の途をたどるのであるが,まず組織や細胞内に見いだされる褐色色素に関して鉄が認められ,Haernatoidin(Virchow,1847),Hae-mosiderin(Neumann,1888,Haemofuscin(VonRecklinghausen,1889)などと呼ばれ,また黒色色素にはMelanin(Langhans,1870,Berdez&Nencki,1886)の名称がつけられ,Perls(1867)やQuinke(1895)が組織内の鉄証明法を示し,骨髄系白血球の判定に用いられるPero-xidase反応がKlebs(1868),Struve(1872)により見いだされ,酵素の組織細胞化学的研究もMiescher(1871),Stirling(1875),Ehrlich(1879),Kossel&Mathews(1898)らによって始められるのであるが,1900年ごろより色素による組織染色が発達し,化学反応を主とする組織化学は一時的とはいえ,形態学を離れて生化学の発展へ貢献するのである.

ノモグラム・7

計算による24時間尿量の求め方

斎藤 正行

pp.635

求め方 A軸に1回の採尿量を,B軸にその採尿時間間隔をそれぞれとり,その目盛りを結ぶ線とC軸との交点が求める24時間尿量である.なお,D軸は1/5時間尿量.

検査室の便利表・7

pHメーター規整用標準緩衝液

松村 義寛

pp.637

ホウ砂は室温以上において乾燥させると結晶水が変動する.

酒石酸塩,フタル酸塩,リン酸塩は110℃で1時間乾燥したものを用いる.それぞれC欄の量を精密に秤取して水(比電導度2×10−6Ω−1cm−1以下のもの)に溶解し,防腐剤としてチモールの数mgを加え1lとする.1か月ごとに作り替えるのが望ましい.ホウケイ酸ガラスびん,あるいは清浄なポリエチレンびんに入れる.

臨床検査技師・衛生検査技師等に関する法律の全文紹介

‘臨床検査’編集室 , 藤井 信良

pp.639-648

新旧法の対照と解説

現行の「衛生検査技師法」が,第63回国会で改正され,新たに「臨床検査技師.衛生検査技師等に関する法律1として,1971年1月1日から施行されることになった.

新しい法律は,生理学的検査,採血行為,学校の就学期間,いわゆる衛生検査所などに著しい改正点がみられ,それに伴って技師に新しい資格が生まれた.

第3回国公私立大学病院臨床検査技術者研修会—新鮮な講義,理解を深めた実習(細菌,病理組織,生理)

国貞 行徳 , 播金 収 , 奥本 隆 , 三井 誠造

pp.723-726

 昭和45年1月29日より2月5日まで,東京大学医学部付属病院看護講堂において,文部省主催による第3回国公私立大学病院臨床検査技術者研修会が,全国42施設68名の参加で行なわれた.昨年は生化学,血清,血液の領域が中心で,今回は細菌,病理組織,生理の各分野から選出されたものが参加し,日程表のように4日間の総合講義と3日間の専門領域分科会の実習が行なわれた.

総説

やけどの病理

平山 峻

pp.649-653

 ガス爆発などによる都市公害・労働災害,生活様式の多様化.複雑化に伴う家庭内事故の増大から"やけど"の数はふえつつある.そこで,検査データを効果的に使うには,やけどの経過,それに伴う病理学的な変化を知っている必要が出てくる.

技術解説

脂質代謝の検査法(1)—総論

中村 治雄

pp.654-658

はじめに

 最近,測定法の開発の進歩とともに,急速に生体内における脂質の代謝が解明されつつある.今回,主として血中脂質を中心に,その臨床的意義について述べ,次に,おもな脂質代謝の指標となる脂質濃度についてその測定法を述べてみたい.

白血病細胞および腫瘍細胞の染色体検査法

山田 清美

pp.659-663

 近年,細胞学上の著しい技術的進歩により,人類の染色体の数と形態を正確に分析することが可能となり,1959年以来,正常人および先天性疾患患者などの染色体について,多くの広範な知識が急速に深められ蓄積された.さらに,正常体細胞の染色体についての知識を基礎として,また,新しい技術を採用することにより,人類の白血病細胞および腫瘍細胞における染色体研究も信頼度の高い解析が可能となり,今日まで多くの注目すべき研究がなされている.これまでの研究の成果によると,白血病細胞および腫瘍細胞には,染色体の数的あるいは構造的変化を伴った異常が高頻度に認められることが明らかとなり,細胞の悪性化やその増殖や維持に関連して,染色体の果たす役割の重要性が実証されている.

 一方,染色体検査による結果が,実際に臨床面で,白血病の診断に活用されたり,また,細胞が腫瘍性であるか否かを判定するうえに役だつことが明らかとなり,その有用性が認められている.たとえば,慢性骨髄性白血病(CML)の患者にはPhiladelphia染色体(Ph1染色体と略し,21番めの染色体の長腕が約1/2欠失したもの)と呼ばれるこの疾患に特有の異常染色体が認められ,Ph1染色体の存在がCMLと診断するうえに重要なものとなっている.また,一般に腫瘍細胞の染色体構成は正常細胞のそれと異なっているため,細胞の染色体構成を調べることにより,腫瘍性であるか否かを判定することが可能である.

オートタイターの応用(グラフページ参照)

河合 忠 , 近藤 泰正

pp.666-668

同種赤血球凝集素価の測定

1.方法

 抗原抗体比は用手法と全く同じである.V型トレイを用い,まず被検血清0.05 mlを1番めの各カップに採り,稀釈液0.025 mlを順次加え,さらに2%生食赤血球浮遊液を0.025ml加えた.これをセロファンでおおって蒸発を防ぎ,室温に2時間放置したのちに凝集の有無を判定する.凝集素価は+1以上の凝集を表わした最終稀釈倍数で表わした.

私のくふう

結核菌耐性検査問接法—菌浮遊液の簡易な作り方

橋本 嘉夫

pp.663

 結核菌耐性検査間接法の中で,培養分離株を菌浮遊液にする作業が,耐性検査の中で,大きな比重を占めています.そこで菌浮遊液をニクロム線耳,試験管,0.5%NaOHを用いて簡易に作ることができ,離菌の混入をも防ぐ方法を報告します.

セルローズアセテート膜のセット

渡辺 茂夫

pp.684

 常光PAV−50はシャープにタンパクを分画することができるが,セルローズアセテート膜(以下,セ・ア膜)のセットにはときとしてまごつくことがある。特に切って使用する場合は1枚ごとに動いたり,濾紙にかかる長さが異なったりして苦労するので,よい方法はないものかと考えてみた.

 まず,セ・ア膜に傷をつけないことを条件として,それぞれの部分を見ると,濾紙があり中央には血清塗付位置指示板がある.これをうまく利用することを考えてみると,案外,よくセ・ア膜をセットすることができた.

臨床検査の問題点・19

脳波検査の実際

島薗 安雄 , 河越 弘 , 石田 哲浩

pp.670-679

頭皮上の2点に電極を装着して得られる電位の変化—これが脳波(脳電図)である.脳波検査は,患者検査の中では比較的普及しているが,検査環境やペンの管理,紙送り速度,電極装着などの技術面はまだまだの感がある.被検者への接し方と合わせて,正しい脳波のとり方を検討する.

主要疾患と臨床検査・19

薬疹と薬剤

安田 利顕

pp.680-684

 体内に外部からはいってきたもの,あるいは体内の異常のために発生してきた分解産物が,有害物質として働いて,血行性に皮膚に運ばれて発生してくる皮膚病変を総称して,中毒疹toxicodermaと呼んでいる.ときに,外用した薬剤が皮膚,特に粘膜から吸収されて,全身性の皮膚病変を発生してくることもある.たとえば,サバを食べて発生してくる急性募麻疹urticaria acutaは中毒疹の1つである.

 中毒症の特徴は,それが左右対側性にみられて,多くの場合汎発性の皮疹であることである.ただし,その疹型としては,次のような種々のものが知られている.

1ページの知識 生化学

螢光分析の臨床化学への応用

降矢 焚

pp.685

1.螢光分析とは

 物質に白色先を照射した場合に,光の吸収が部分的に行なわれると物質は着色して見える.単色光を照射した場合は,波長に応じて吸収の度合いが異なるので,波長を連続的に変えて吸収度を求めると,波長—吸光度曲線が得られ,吸光光度法という分析法に応用されている.

 照射光が吸収されるときに照射を受けた物質から照射光より波長の長い光が発することがあるが,この場合照射を止めると発光も停止する現象を螢光と呼び,照射を止めても短時間発光を続ける現象をりん光と呼んでいる.しかし,この2者に間に明確な区別はなく,実際は螢光でも照射停止後きわめて短時間の間は発光を続けるのである.

1ページの知識 血液

毛細血管抵抗の測定法と血餅収縮試験

糸賀 敬

pp.686

1.毛細血管抵抗の測定法

 静脈を圧迫して,一定時間末梢の毛細管内圧を高め,毛細血管壁の抵抗性を出現する溢血斑(点状出血)の数によって検査する.一般にルンペル・レーデ法(Rumpel-Leede法)といわれる.そのほか外部から陰圧を加えて検査する方法もある.

1ページの知識 血清

Advances in FTA

水谷 昭夫

pp.687

まえこうじょう

 FTA(fluorescent treponemal antibody test)は,FAT(fluorescent antibody technique)を梅毒の診断反応に応用したおなじみの梅毒血清反応である.この反応は,1957年にHarris門下のDeaconによって創始された.

 彼はその後これに若干の改良を加えてFTA-200を考案し,この検査法は一時ずいぶん普及したものであったが,やがてHunterらはこれにさらに非病原性treponema(Reiter株)による事前の吸収操作をつけ加えて,FTA-ABSを編み出した(1964).

1ページの知識 細菌

病原大腸菌と腸炎ビブリオ

土屋 俊夫

pp.688

1.病原大腸菌

 グラム陰性汗菌である大腸菌は代表的腸管内常在菌で,生後まもなく腸管内に浸入し,小腸下部と大腸に常在細菌として生息している.正常人の腸内では,多くの大腸菌は病原性を発揮することはないが,ひとたびこれら大腸菌が腸管外に出て他臓器および体腔内にはいった場合には,病原性を発揮する.たとえば大腸菌が起炎菌となりうる病気には膀胱炎,腎盂腎炎,胆管炎,虫垂炎そして外科で問題となる術後腹膜炎などがある.

 以上は一般的な大腸菌の性質である.しかし大腸菌の中にも独自で腸炎をひき起こす病原性をもつ大腸菌の存在がBray (1945),Beavan (1948)らにより報告されている。病原大腸菌は急性胃腸炎をひき起こし,乳幼児の感染が多いのは,人の生涯を通じてこの期間は最も免疫グロブリン量が減少しているため,感染に対する抗抵力が減退しているからである.病原大腸菌と一般大腸菌とを鑑別する場合には,血清学的型別が行なわれており,大腸菌の抗原構造は菌体抗原(O抗原),莢膜抗原(K抗原),鞭毛抗原(H抗原〉により抗原構造を決定する.

1ページの知識 病理

薄切

和田 昭

pp.689

1.本削り

 荒削りから本削りに移るには,薄切用のメスと取り替えるか,あるいは同じメスでも荒削りに用いなかった部分を使用するかするが,必ず切り始める前にもう一度組織片の面合わせをしておかねばならない.薄切片の厚さは3-5μぐらいが適当である.左手で微動装置の柄をもち右手でメスの固定台の取手をもつ.メスは平均した力で手元に引くのがよく,特に刃がブロックにかかったあとは途中で止めないことがたいせつである.止めると薄切片に波ができてきわめてみにくい標本となる.また,手に力がはいってメスを上から押さえつけるようにして切ると切片に段が生じたり,厚さの異なった切片になったりする.適当な厚さに切れた切片は花びらのようにメスから浮き上がってくるが,少し厚い場合には彎曲し,厚すぎると巻物のように固く巻いてしまう.

 薄切片をシャーレに浮かべるには,刃にくっついた切片を筆・針または紙片をもって拾うが,この場合強くメスのほうへ押しつけないで,ぬれた穂先をそっと切片につけるのがよい.しわができていたり,少し巻いているものは筆できれいに伸ばしてやるようにする.切片を浮かべるときには裏と表をまちがえてうかべないようにしないと,たとえば脊髄のようなものだと病巣が全く左右あべこべになってしまい,混乱をきたすので注意が必要である.

1ページの知識 生理

食品のカロリーの決定法—ボンベ熱量計について

井川 幸雄

pp.690

1.ボンベ熱量計

 物質の燃焼熱を測定する熱量計で,フランスの化学者Berthelot (1827-1907)の考案したものである.

 図のような構造をもっている.最も内側に鉄製厚肉のボンベ(爆発筒)があり,これが一定量の水を入れた容器中にしずめてある.その外側は保温装置で,図に示したものでは,空気と水の2層のジャケットになっている.ボンベ中に試料を少量入れ,中の空気を高圧の酸素(25-30気圧程度)でおきかえ,電流で点火する.高圧酸素下では試料は一瞬のうちに燃焼してしまうが,このとき発生した熱によって,周囲の水はあたためられるので,その水温の上昇を測定すれば,試料(食品)の発熱量が測定できる.

1ページの知識 一般

Addis Count

原田 稔

pp.691

 一定の条件下で尿の有機性沈漬(赤血球,白血球,上皮細胞,円柱など)を数量的に算定する方法としてAddis countがある.

論壇

管理ということ

石原 信吾

pp.694-695

臨床検査室に管理は不要か

 病院には数多くの部門が存在するが,その部門内で管理という問題がどの程度取り上げられているか,あるいはその問題にどの程度の関心が向けられているかということを考えてみると,その間には相当明瞭な順位がつけられるような気がする.そして,わが検査部門の順位は,残念ながら,そんなに上位にあるとはお世辞にも言えないようである.

 早い話しが,病院管理関係の各学会への出題数である.臨床検査関係の演題が果たしてそこにどの程度出されているであろうか.私が文字どおり寡聞なのかもしれないけれど,それほど多くないというより,むしろほとんどたまにしか見られないと言ったほうが事実に近いであろう.

座談会

この道一筋—検査技師生活40年

浜 房一 , 内藤 晶之助 , 斎藤 菊蔵 , 鈴木 裕 , 三友 善夫

pp.696-703

解剖介助,ワッセルマン反応—これが40年前の検査技師のおもな仕事である.技術的に高度化し,多様化した現在の臨床検査界にあって,先輩の技師たちは何を支えにこの道を歩んできたのか—貴重な経験を,若い世代の技師をまじえて聞き出し,各人の心の糧としたい.

海外だより

エチオピアの検査室とテクニシャン

鈴木 了司

pp.704-707

Asrat君の生活

 Ato Asrat (AtoはMrのこと)は,エチオピアのアジスアベバにある帝国中央衛生研究所(Imperial Central Laboratory&ResearchInstitute)の寄生虫部のテクニシャンである.当年25歳.独身.2年前にこの研究所付属の衛生検査技師養成所を卒業して以来,寄生虫の検査に従事している.月給は175エチオピアドル(約2万5千円)でまあまあだが,結婚するには不足だ.市内をまわり,職員の送り迎えをするサービスバスで9時に出勤する.

 彼は検査助手のAto Kassaとともに,培養中の赤痢アメーバの検査をまず行なう.この検査物は2日前に研究所にもってきたもので,すでに済ませてある蠕虫卵の検査成績とあわせて報告書を作る.タイピストルームでは数人のタイピストが待っていて,各検査室からもってくるこれらの成績を正式にタイプする.

研究

手術室内無菌化に及ぼすKathabarの効果と落下細菌の性状について

山 博 , 本多 光弥 , 竹田 美文

pp.708-710

緒論

 手術後感染を防ぐ目的から,外科手術室における空気の無菌化は,手術室の第1条件である1).大阪回生病院は,昭和41年12月新築開院にあたって,外科手術室にkathabarを設置した.

 kathabarという名称は,keeps air, temperature,humidity and bacteria as requiredの頭文字を縮合したもので,本来は除湿装置として開発されたものであるが,室内空気無菌化装置として有効であることがわかり,手術室などに設置されるようになったものである.kathabar装置については,長田・神木2)のすぐれた解説がある.この装置の無菌化装置としての効果については,すでに報告2)があるが,この論文では,大阪回生病院において実際にその効果を調べた結果を報告し,同時に分離した落下細菌の種類および薬剤感受性を調べた結果から,術後感染の危険性について論じる.

ヨウ素デンプン反応によるアミラーゼ測定法の基質の差異について

宮谷 勝明 , 西野 圭子 , 福井 巌

pp.711-714

はじめに

 デンプンにはグルコースのα-1-4結合から成る直鎖状のアミロースとα-1-6結合を含む分枝状のアミロペクチンより成ることが知られている1).これらの化学変化に対応してヨードによる呈色反応は紫色からすみれ色となり,褐色となり,ついには無色となり,これらの色調は鎖長によって異なるとされ2),また,このような複雑な反応系はデンプンの種類3,4)によっても異なるとみられている.

 われわれはヨウ素デンプン反応によるVan-Loon法5)の手技を用い,基質を溶性デンプンと緩衝デンプンとして,結晶α-アミラーゼがどのような反応を示すかについて比較検討を行なったので,その成績を報告する.

卵白グリセリンに替わる貼付剤の使用について

鈴木 四郎

pp.715-716

 従来より病理組織標本の作成に際して,切片の剥離を防止するため,卵白グリセリンが最も多く賞用されているが,その作成,あるいは取り扱いの繁雑さ,過染性,共染性が鏡検や顕徴鏡写真撮影の際に障害となっている。さらに最近の多忙な業務内容などの点から,卵白グリセリンに替わってより簡素化され,より良好な結果を得るものとして新貼付剤の利用を試みた.電子顕微鏡切片をシートメッシュに接着させる方法として,Chloroprene Rubber(Neoprene W-Dupont. USA)が利用されているが,パラフィン切片にも応用して好結果を得たので報告する.

ひろば

一発勝負の危険と,自他ともに納得のいく成績値

中西 寛治

pp.714

 臨床検査は検査件数の上昇と検査法の改良がすすむにつれ,年々量と幅の増加によって,忙しさの一途をたどっている.しかし,忙しさの美名にかくれて成績値の検討をおろそかにし,出た数値のみに固執して成績随を提出するのは,たいへん危険であり,また,技術者でなく1個の機械のようになってしまう.

 1947年アメリカで,同一血液を各病院検査室に広配布し検討したところ,憂うべき分散を示した.これがきっかけでか,日本臨床病理学会や日本衛生検査技師会も,数回にわたり上記のような検討された結果,アメリカと同様異常なバラツキを示していることは,諸兄もよくご承知のことであります.また,各県単位でも同様なこころみがなされ,同じような結果を見るとき,器械・器具の相違,テクニック,試料の配付時などの検討をすれば,このようなバラツキが出るのはやむおえないと,ややもすれば考えたくなり,いわゆる耐性化していく現状ではなかろうか.

新しい機器の紹介

2,3凝固機能の器械使用による測定知見—フィブロメーター,プロトロビンタイマーを中心に

岸 月宣博 , 木村 寿之 , 植野 佳子 , 黒川 一郎

pp.717-721

緒言

 本邦においては,血液凝固機能検査は日常,用手法によることが多く1),自動凝固機能測定器の知見は必ずしも多くはない2-5).著者らもかつてEmdecoプロトロンビンタイマー(Prothrombin timer)についてプロトロンビン時間(PT),部分トロンボプラスチン時間(PTT),Ca再加時間(ReCa T),トロンボテスト(TT)について若干の検討を行なった6).今回フィブロメーター(Fibrometer:Becton-Dickinson)を検討する機会を得たが,この両者についてPT,Ⅱ,Ⅴ,ⅤⅡ+Ⅹ因子測定の可能性などについて抗凝固剤,組織トロンボプラスチンを,種々変えた条件下で調べたのでここに報告する.

質疑応答

メイギムザ染色法の実際

K生 , 田中 信夫

pp.727

問 本誌14巻3号に掲載の‘巨赤芽球および巨赤芽球様細胞'(カラーグラフ)に使われているメイギムザ(May—Giemsa)染色とはどのような染色ですか.かた,実際に私たちの検査室で使うとすればどんな点に注意すればよろしいでしょうか.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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バックナンバー

64巻12号(2020年12月発行)

今月の特集1 血栓止血学のトピックス—求められる検査の原点と進化
今月の特集2 臨床検査とIoT

64巻11号(2020年11月発行)

今月の特集1 基準範囲と臨床判断値を考える
今月の特集2 パニック値報告 私はこう考える

64巻10号(2020年10月発行)

増刊号 がんゲノム医療用語事典

64巻9号(2020年9月発行)

今月の特集1 やっぱり大事なCRP
今月の特集2 どうする?精度管理

64巻8号(2020年8月発行)

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今月の特集2 IgG4関連疾患の理解と検査からのアプローチ

64巻7号(2020年7月発行)

今月の特集1 骨髄不全症の病態と検査
今月の特集2 薬剤耐性カンジダを考える

64巻6号(2020年6月発行)

今月の特集 超音波検査報告書の書き方—良い例,悪い例

64巻5号(2020年5月発行)

今月の特集1 中性脂肪の何が問題なのか
今月の特集2 EBLM(evidence based laboratory medicine)の新展開

64巻4号(2020年4月発行)

増刊号 これで万全!緊急を要するエコー所見

64巻3号(2020年3月発行)

今月の特集1 Clostridioides difficile感染症—近年の話題
今月の特集2 質量分析を利用した臨床検査

64巻2号(2020年2月発行)

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今月の特集2 標準採血法アップデート

64巻1号(2020年1月発行)

今月の特集1 免疫チェックポイント阻害薬—押さえるべき特徴と注意点
今月の特集2 生理検査—この所見を見逃すな!

63巻12号(2019年12月発行)

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今月の特集2 高血圧の臨床—生理検査を中心に

63巻11号(2019年11月発行)

今月の特集1 腎臓を測る
今月の特集2 大規模自然災害後の感染症対策

63巻10号(2019年10月発行)

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63巻9号(2019年9月発行)

今月の特集1 健診・人間ドックで指摘される悩ましい検査異常
今月の特集2 現代の非結核性抗酸菌症

63巻8号(2019年8月発行)

今月の特集 知っておきたい がんゲノム医療用語集

63巻7号(2019年7月発行)

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今月の特集2 COPDを知る

63巻6号(2019年6月発行)

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今月の特集2 薬剤耐性菌のアウトブレイク対応—アナタが変える危機管理

63巻5号(2019年5月発行)

今月の特集1 現在のHIV感染症と臨床検査
今月の特集2 症例から学ぶフローサイトメトリー検査の読み方

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63巻3号(2019年3月発行)

今月の特集 血管エコー検査 まれな症例は一度みると忘れない

63巻2号(2019年2月発行)

今月の特集1 てんかんup to date
今月の特集2 災害現場で活かす臨床検査—大規模災害時の経験から

63巻1号(2019年1月発行)

今月の特集1 発症を予測する臨床検査—先制医療で5疾病に立ち向かう!
今月の特集2 薬の効果・副作用と検査値

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今月の特集1 海外帰りでも慌てない旅行者感染症
今月の特集2 最近の輸血・細胞移植をめぐって

62巻11号(2018年11月発行)

今月の特集1 循環癌細胞(CTC)とリキッドバイオプシー
今月の特集2 ACSを見逃さない!

62巻10号(2018年10月発行)

増刊号 感染症関連国際ガイドライン—近年のまとめ

62巻9号(2018年9月発行)

今月の特集1 DIC診断基準
今月の特集2 知っておきたい遺伝性不整脈

62巻8号(2018年8月発行)

今月の特集 女性のライフステージと臨床検査

62巻7号(2018年7月発行)

今月の特集1 尿検査の新たな潮流
今月の特集2 現場を変える!効果的な感染症検査報告

62巻6号(2018年6月発行)

今月の特集1 The Bone—骨疾患の病態と臨床検査
今月の特集2 筋疾患に迫る

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今月の特集1 肝線維化をcatch
今月の特集2 不妊・不育症医療の最前線

62巻4号(2018年4月発行)

増刊号 疾患・病態を理解する—尿沈渣レファレンスブック

62巻3号(2018年3月発行)

今月の特集1 症例から学ぶ血友病とvon Willebrand病
今月の特集2 成人先天性心疾患

62巻2号(2018年2月発行)

今月の特集1 Stroke—脳卒中を診る
今月の特集2 実は増えている“梅毒”

62巻1号(2018年1月発行)

今月の特集1 知っておきたい感染症関連診療ガイドラインのエッセンス
今月の特集2 心腎連関を理解する

60巻13号(2016年12月発行)

今月の特集1 認知症待ったなし!
今月の特集2 がん分子標的治療にかかわる臨床検査・遺伝子検査

60巻12号(2016年11月発行)

今月の特集1 血液学検査を支える標準化
今月の特集2 脂質検査の盲点

60巻11号(2016年10月発行)

増刊号 心電図が臨床につながる本。

60巻10号(2016年10月発行)

今月の特集1 血球貪食症候群を知る
今月の特集2 感染症の迅速診断—POCTの可能性を探る

60巻9号(2016年9月発行)

今月の特集1 睡眠障害と臨床検査
今月の特集2 臨床検査領域における次世代データ解析—ビッグデータ解析を視野に入れて

60巻8号(2016年8月発行)

今月の特集1 好塩基球の謎に迫る
今月の特集2 キャリアデザイン

60巻7号(2016年7月発行)

今月の特集1 The SLE
今月の特集2 百日咳,いま知っておきたいこと

60巻6号(2016年6月発行)

今月の特集1 もっと知りたい! 川崎病
今月の特集2 CKDの臨床検査と腎病理診断

60巻5号(2016年5月発行)

今月の特集1 体腔液の臨床検査
今月の特集2 感度を磨く—検査性能の追求

60巻4号(2016年4月発行)

今月の特集1 血漿蛋白—その病態と検査
今月の特集2 感染症診断に使われるバイオマーカー—その臨床的意義とは?

60巻3号(2016年3月発行)

今月の特集1 日常検査からみえる病態—心電図検査編
今月の特集2 smartに実践する検体採取

60巻2号(2016年2月発行)

今月の特集1 深く知ろう! 血栓止血検査
今月の特集2 実践に役立つ呼吸機能検査の測定手技

60巻1号(2016年1月発行)

今月の特集1 社会に貢献する臨床検査
今月の特集2 グローバル化時代の耐性菌感染症

59巻13号(2015年12月発行)

今月の特集1 移植医療を支える臨床検査
今月の特集2 検査室が育てる研修医

59巻12号(2015年11月発行)

今月の特集1 ウイルス性肝炎をまとめて学ぶ
今月の特集2 腹部超音波を極める

59巻11号(2015年10月発行)

増刊号 ひとりでも困らない! 検査当直イエローページ

59巻10号(2015年10月発行)

今月の特集1 見逃してはならない寄生虫疾患
今月の特集2 MDS/MPNを知ろう

59巻9号(2015年9月発行)

今月の特集1 乳腺の臨床を支える超音波検査
今月の特集2 臨地実習で学生に何を与えることができるか

59巻8号(2015年8月発行)

今月の特集1 臨床検査の視点から科学する老化
今月の特集2 感染症サーベイランスの実際

59巻7号(2015年7月発行)

今月の特集1 検査と臨床のコラボで理解する腫瘍マーカー
今月の特集2 血液細胞形態判読の極意

59巻6号(2015年6月発行)

今月の特集1 日常検査としての心エコー
今月の特集2 健診・人間ドックと臨床検査

59巻5号(2015年5月発行)

今月の特集1 1滴で捉える病態
今月の特集2 乳癌病理診断の進歩

59巻4号(2015年4月発行)

今月の特集1 奥の深い高尿酸血症
今月の特集2 感染制御と連携—検査部門はどのようにかかわっていくべきか

59巻3号(2015年3月発行)

今月の特集1 検査システムの更新に備える
今月の特集2 夜勤で必要な輸血の知識

59巻2号(2015年2月発行)

今月の特集1 動脈硬化症の最先端
今月の特集2 血算値判読の極意

59巻1号(2015年1月発行)

今月の特集1 採血から分析前までのエッセンス
今月の特集2 新型インフルエンザへの対応—医療機関の新たな備え

58巻13号(2014年12月発行)

今月の特集1 検査でわかる!M蛋白血症と多発性骨髄腫
今月の特集2 とても怖い心臓病ACSの診断と治療

58巻12号(2014年11月発行)

今月の特集1 甲状腺疾患診断NOW
今月の特集2 ブラックボックス化からの脱却—臨床検査の可視化

58巻11号(2014年10月発行)

増刊号 微生物検査 イエローページ

58巻10号(2014年10月発行)

今月の特集1 血液培養検査を感染症診療に役立てる
今月の特集2 尿沈渣検査の新たな付加価値

58巻9号(2014年9月発行)

今月の特集1 関節リウマチ診療の変化に対応する
今月の特集2 てんかんと臨床検査のかかわり

58巻8号(2014年8月発行)

今月の特集1 個別化医療を担う―コンパニオン診断
今月の特集2 血栓症時代の検査

58巻7号(2014年7月発行)

今月の特集1 電解質,酸塩基平衡検査を苦手にしない
今月の特集2 夏に知っておきたい細菌性胃腸炎

58巻6号(2014年6月発行)

今月の特集1 液状化検体細胞診(LBC)にはどんなメリットがあるか
今月の特集2 生理機能検査からみえる糖尿病合併症

58巻5号(2014年5月発行)

今月の特集1 最新の輸血検査
今月の特集2 改めて,精度管理を考える

58巻4号(2014年4月発行)

今月の特集1 検査室間連携が高める臨床検査の付加価値
今月の特集2 話題の感染症2014

58巻3号(2014年3月発行)

今月の特集1 検査で切り込む溶血性貧血
今月の特集2 知っておくべき睡眠呼吸障害のあれこれ

58巻2号(2014年2月発行)

今月の特集1 JSCC勧告法は磐石か?―課題と展望
今月の特集2 Ⅰ型アレルギーを究める

58巻1号(2014年1月発行)

今月の特集1 診療ガイドラインに活用される臨床検査
今月の特集2 深在性真菌症を学ぶ

57巻13号(2013年12月発行)

今月の特集1 病理組織・細胞診検査の精度管理
今月の特集2 目でみる悪性リンパ腫の骨髄病変

57巻12号(2013年11月発行)

今月の特集1 前立腺癌マーカー
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査②

57巻11号(2013年10月発行)

特集 はじめよう,検査説明

57巻10号(2013年10月発行)

今月の特集1 神経領域の生理機能検査の現状と新たな展開
今月の特集2 Clostridium difficile感染症

57巻9号(2013年9月発行)

今月の特集1 肺癌診断update
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査①

57巻8号(2013年8月発行)

今月の特集1 特定健診項目の標準化と今後の展開
今月の特集2 輸血関連副作用

57巻7号(2013年7月発行)

今月の特集1 遺伝子関連検査の標準化に向けて
今月の特集2 感染症と発癌

57巻6号(2013年6月発行)

今月の特集1 尿バイオマーカー
今月の特集2 連続モニタリング検査

57巻5号(2013年5月発行)

今月の特集1 実践EBLM―検査値を活かす
今月の特集2 ADAMTS13と臨床検査

57巻4号(2013年4月発行)

今月の特集1 次世代の微生物検査
今月の特集2 非アルコール性脂肪性肝疾患

57巻3号(2013年3月発行)

今月の特集1 分子病理診断の進歩
今月の特集2 血管炎症候群

57巻2号(2013年2月発行)

今月の主題1 血管超音波検査
今月の主題2 血液形態検査の標準化

57巻1号(2013年1月発行)

今月の主題1 臨床検査の展望
今月の主題2 ウイルス性胃腸炎

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