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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査15巻13号

1971年12月発行

雑誌目次

カラーグラフ

細胞染色機構と細胞形態

山田 喬

pp.1382-1383

 染色標本に見える細胞内構造は,必ずしもその本来の細胞構造を示すとは限らない.極端な表現を用いれば,われわれの見ている形態は,それぞれの色素が染まる部分の分布を意味しているにすぎないともいえよう.その典型的な例が細胞核クロマチンの形態である.一方,剥離細胞診において良性,悪性細胞の鑑別にはクロマチンの形態が重要視されている.しかも,この形態が標本の固定,染色方法の違いによっても,また変性過程によっても変化することも知られている.

 染色の機構を理解することが,正しい細胞形態的判定の基礎となることを示す意味で,クロマチンの染色機構を中心として,2,3の染色色素の性質について解説を加えたい.

グラフ

直示はかり—正しい取り扱いと調整法

阪本 秀策

pp.1385-1388

はじめに

 測定にあたって,はかることは必ず行なわれる操作です.このはかるも,かつては測る,計る,器る,量る……のように書かれ,文字を見れば何をはかるのかわかったのですが,今日のようにかなで"はかる"では,重さか,長さか,時間かわかりません.ここでは重さをはかる場合を述べることにします.

 分析を行なう場合,少なくとも一度は必ず物質の量(質量)をはからなくてはならない,しかし質量を直接はかることができないので,重力を利用して物質の重量を測定しその質量を比較しています.ここで重量を測定する器具として"はかり"(balance, scale)が用いられます.

新しい検査室 横須賀市立市民病院中央検査科—超微量化と自動化へ

田中 昭平 , 奥田 淳

pp.1389-1392

 1971年6月に完成した当市民病院は,機能的に成人病センター(180床)と救急・地域診療部(40床)からなり,この両診療部門ならびに地域の医療機関から委託検査のための臨床検査センターとして,この臨床検査室が設置された.

 この検査室は,機能的な設計によって動線を少なくしたこと,超微量測定装置を導入したこと,可及的に自動化を計画していることなどが特色であり,ここでは生化学検査室を中心に紹介する(生理機能検査室と病理検査室は割愛する).

寄生虫・原虫の生活環・6

鉤虫—ズビニ鉤虫(Ancylostoma duodenale) アメリカ鉤虫(Necator americanus)

安羅岡 一男

pp.1394-1395

 人体に寄生する鉤虫には5種ほどが知られているが,わが国ではズビニ鉤虫とアメリカ鉤虫の2種が重要である.

ノモグラム・24

リン酸緩衝液のイオン強度

松村 義寛

pp.1397

求め方

 イオン強度の定まったリン酸塩緩衝液を作るためのノモグラムである.

 pH6.8,イオン強度0.1のものを作るには0.10の赤破線と,pH6.8の赤実線との交わる点の横軸が総リン塩の濃度,すなわち0.046Mol/lでK2PO4の割合が57.9であるから,

検査室の便利表・24

総説

先天性代謝異常症

荒川 雅男 , 吉田 稔男

pp.1401-1407

はじめに

 今世紀初頭の1908年,Sir Archibald Garrodは,遺伝性疾患に対して1つの概念を発表した.それによるとすべての遺伝性疾患は,ある特殊な‘酵素(enzyme)’の異常による代謝障害によってひき起こされるものと考えた.当時この考えは人人に注目されなかったが,分子生物学のめざましい発展とともに,‘先天性代謝異常症(inborn errors of metabolism)’の概念のもとに脚光をあびるようになった.

 現在この概念は,酵素に限らずすべてのタンパクにも適用することができるが,彼は最初に次の4つの疾患をあげて説明している.それはアルカプトン尿症(alkaptonuria),白皮症(albinism)五単糖尿症(pentosuria),シスチン尿症(cystinuria)であり,現在はBeadle(1945年)の‘一遺伝子・一酵素説(one gene-one enzyme theory)’により説明が可能である.すなわち先天的な1つの遺伝子の異常が1つの酵素またはタンパクの異常をきたし,そのためにある疾患が発症するという考え方である.これは病気の原因を代謝レベルで解明しようとする,現代の医学の新しい方向をうみ出した最初の仕事として高く評価されている.

私のくふう

コンパクトなカバーグラス保存箱

岩本 宏文 , 斎藤 孝司

pp.1407

 私たちの病理検査室では,日常使用する各サイズの封入用カバーグラスの保存に,肉池びんを使用してきた.しかし,検査室の作業机の狭少なことから,多くのカバーグラス容器を,場所をとらずに使用できないかと考え,図示するような容器を作成した.当検査室で使用すること約半年だが,満足できる重宝な物となっている.

細菌吸着羽根を取り付けた無菌フード

大竹 敬二

pp.1464

 私は細菌のために長年病床生活を続け,小さな公害で,人生を曲げさせられたことは残念でなりませんでした.特に細菌を使用する部室の方方は可検物取扱全般に細心の注意が必要で,毎日の作業に慣れと慢性になり,注意はしているものの限度があるのではないかと思われます.呼吸からはいるもの,皮膚に付着し感染源となる細菌など,検査室の設計にも問題がありますが,外気との交流が遮断され他の部室のように,窓,ドアが開放できませんから,検査室の空気もブンゼン燈などの使用も重なって悪くなるばかりで,健康面ではよくないと思います.細菌室で扇風機などの使用は好ましくないといわれ,空調には予算的に不可能な施設が多いように見受けられます.

 そこで仕事中ブンゼン燈を使用しながら,炎を利用して検査台上に散乱する細菌を,できるだけ微少に押えることはできないものかと,くふうしてみました.

技術解説

細胞染色機構と細胞形態をめぐる諸問題—特にクロマチンの形態について

山田 喬 , 天野 実

pp.1408-1418

はじめに

 古くから用いられ,しかもそれが日常のルーチン・ワークのなかで慣用されている方法は,案外その方法自体の原理に興味をもたれることは少ない.特に細胞の染色法は,その多くが経験の蓄積により開発されたものであるから,一見細胞形態の読みと染色原理とは何の関係もないような感じがある.

 しかしよく考えてみると,日常の剥離細胞診断における細胞形態の判定には,実はこの固定・染色に基づいた人工的な修飾により,判定の誤りを生ずる場合が少なからずあることを見のがすわけにはゆかない12)

125I-サイロキシンによる血清サイロキシン(T4)の定量法

高木 康史

pp.1419-1423

はじめに

 生体内に起きている病変を正確に再現性よく,しかも直接に検査値として表現するのは,常に検査室勤務の者には満たされぬ夢である.

 甲状腺疾患についてのこの夢をある程度満たしたのがこの125I—サイロキシン(T4)を用いる血清サイロキシン定量法であり,T3の測定と併用して現在聖路加病院では大きな成果をあげているので,技術的に重要な面を紹介したい.

臨床検査の問題点・35

スパイログラムのとり方

谷合 哲 , 柏木 滋子

pp.1424-1429

呼吸機能検査を実際にやる検査技師にとって重要かつ問題になる点は,"生きた検体"(患者)からいかにしてデータをとりやすくするかであろう.スパイログラムを例にとって,患者心理をよくつかみ,技師の指示が,十分相手に理解され実行されるには……(カットはベネディクト・ロス呼吸計の構造)

コンピュータの基礎知識・11

海外における臨床検査業務のコンピュータ化

開原 成允

pp.1430-1435

 これまで11回にわたって,臨床検査を中心としたコンピュータの利用について解説が進められてきたが,最後に,海外のこの分野の現状を述べてしめくくりとしたい.

 海外では日本と社会事情が異なり,医療界の事情も同一ではないので,必ずしもそれがそのまま日本にあてはまるとは限らない.しかし,一部では非常に進んだシステムが稼動していることも事実であるし,また社会事情は異なっていても,同じ目標に向かって世界中の人々が努力している姿は,われわれにとって大きな励ましとなる.

RI検査の基礎・6

RI安全取扱法

吉川 春寿

pp.1436-1441

はじめに

 RIはきわめて有用である一面,常時放射線を出しているので,人体への影響に十分の注意をはらわなければならない.放射線影響には放射線を外部から受ける外部照射(external exposure)と体内にはいったRIから受ける内部照射(internal exposure)とある.また,被曝者一代かぎりの影響ばかりでなく,後世代にわたる遺伝的影響もありうる.

 したがってRIはどこでもだれでも自由に使えるわけにはいかず,厳重な法律上の規制がある.この法律は"放射性同位元素などによる放射線障害の防止に関する法律"といい,これに施行令,施行規則が付随し,さらに具体的な数量に関する告示があって,全部あわせると相当なボリュームになる*1),しかも厳重なことでは無類で,RIを使うのがいやになるくらいである.核アレルギーをもつ国として,また最近の公害問題がうるさくなったこととて,厳重なのもまたやむをえないであろう.しかし,多くの法律や規則がそうであるように,不必要に厳重な点がある一方,妙な抜穴があったりして,法律を守って安心しているとかえって危険なことさえある.RI使用上の法的規制については,管理責任にあたる‘放射線取扱主任者’にまかせてその指示に従い,RI実験者は基礎的な知識をもって事にあたるようにしたほうがよいと思う.

論壇

第1回臨床検査技師国家試験を終えて

丹羽 正治

pp.1442-1443

 去る8月22日,全国17か所で行なわれた第1回臨床検査技師国家試験の受験者総数は約2万5000名に達したが,9月30日の結果発表では,その大半の97.4%が合格した.おもえば肌寒い早春から夏までの間に全国各地で日曜・祭日も返上し,時には夜間にも,多忙な日常業務で疲れた身体を引きずって,技師会はじめ各種団体の主催する指定講習会に参加された大半の衛生検査技師の人々の努力は報いられたことになった.

座談会

小規模検査室の設計

雨宮 延幸 , 守屋 美喜雄 , 佐藤 實 , 白戸 四郎

pp.1444-1451

 検査室は病院建築の中でも最もむずかしい部屋で,建築がそのまま機能にひびく所である.ディスポ製品やキットの普及,自動機器の導入などで検査の姿は目ざましく変わってきているが,こうした変革期の中で検査室をどう考えたらよいか,特に数の多い小規模検査室を中心に話し合ってみることにした.

 なお小規模とは,一応200床以下の病院診療所の検査室と考えた.

研究

o-Phthalaldehyde試薬を用いた総コレステロール直接定量法の検討

宮谷 勝明 , 斎藤 和子 , 福井 巌

pp.1452-1454

 除タンパクを必要としない1段操作法による総コレステロール直接定量法は,各社でキット化されたが,これらの方法はRiebermann-Burchard反応を利用した方法1-4)とKiliani反応を利用した方法5)とに大別される.

 最近,Zlatkisら6)は酢酸加硫酸の存在下にo-Phthalaldehydeがコレステロールと反応し安定な赤紫色を呈し,鋭敏かつ反応終結がすぐれていることから,総コレステロール測定法に応用できることをみいだし,次いで,上野7)や中8)らはこの反応系を用いて検討を行ない,日常検査として十分使用に耐えることを報告した.さらに,この反応系を利用した総コレステロール直接定量法のキット化が,いちはやく栄研によって試みられた.今回,われわれはこの改良試薬による測定法について検討を行なう機会を得たので,その成績について報告する.

新しいキットの紹介

色素結合基質による血清,尿中アミラーゼ活性の測定—反応時間を短縮する改法

大水 幸雄 , 佐々木 禎一 , 今野 清子

pp.1455-1457

はじめに

 最近色素結合基質(いわゆるChromogenic substrate)を用いる血清,尿中のα-アミラーゼ活性測定法が注目をあびている.

 すなわち,Remazolbrilliant Blue Rと結合したデンプン粒子1),Reactone Red 2Bの結合したアミロペクチン2,3),Cibachron Blue F 3GA結合デンプン(Bluestarch)4-7)などが基質と用いられ,その従来法よりすぐれた精度はわれわれの興味をひくものである.

今年の人事院勧告と昇格のしかた

佐藤 乙一

pp.1459-1464

 人事院は今年も8月13日,政府と国会に対して国家公務員の給与改訂に関する勧告を行なった.

 本会は,「臨床検査技師,衛生検査技師等に関する法律」が施行された年であるうえ,9月末には新制度に基づく‘臨床検査技師’という職種が新たに誕生することを見越して,これが待遇改善への努力をしてきたことはいうまでもないことである.

質疑応答

標準液の秤量について

C生 , 西村 民男

pp.1465

 問 貴誌「臨床検査」臨時増刊号(Vol.14 No.12, 1970)に記載されている"標準液の"‘容量分析用標準液の作り方’(p.1173)のうち,

1.1N水酸化ナトリウム

シリーズ・日常検査における機械化のくふう・最終回

既存の自動装置とフローセル比色方式を組み合わせた自動分析システムのくふう

水野 映二 , 仁科 甫啓 , 小野 弘毅 , 北村 元仕

pp.1466-1467

 化学検査における自動化の目的は,年々増加する日常検査を能率的に処理し,診療へのサービスを拡大することにある.市販の自動分析装置も,もちろんこの目的のために開発されたものであるが,検査室の個々の条件,現実の要望をそのまま満たす場合はむしろ少ない.私たちがこのシリーズで述べてきた種々のくふうも,限られた条件下にあって生ずるこれらの断層を,自ら埋めなければならなかったからにほかならない.最終回として,今までのくふうを活用し,自動分析のシステムとして組み立てた2,3の装置について簡単に解説しよう.

Senior Course 生化学

レニンとアンジオテンシン

石戸谷 豊

pp.1469

 アンジオテンシン(以下AT)は現在知られている昇圧物質の中で,最も昇圧作用が強力で,ノルアドレナリンの数倍の活性がある.腎糸球体の輸入動脈壁にある傍糸球体細胞よりレニン(Rn)という酵素が分泌され,それが血漿中のα2—グロブリン分画の中にあるレニン基質(ないしアンジオテンシノーゲン)に働いて,10個のアミノ酸よりなるアンジオテンシンⅠ(ATⅠ)を遊離させる.ATI自体は昇圧活性を有回しないが,血中にあるコンバーテイング・エンザイム(肺に最も多く存在する)により末端の2個のアミノ酸(フェニールアラニン,ロイシン)を失って,すなわち8個のアミノ酸になったアンジオテンシンⅡ(ATⅡ)になる.このATⅡが昇圧作用を有するのである.

 自然のATにはウマ型とウシ型の2つがあり(図),ヒトのそれはウマ型であることが確かめられている.ATは血中,肝,腎などに多く含まれているアンジオテンシネース(ATnase)により分解されてしまう.

Senior Course 血液

新しい凝固検査法—(自動測定と免疫学的測定)

鈴木 弘文

pp.1470

 従来からの凝固検査法はフィブリン析出の瞬間を肉眼で観察する主観的な方法が基礎をなし,主として凝固因子の活性能力を観察する方法が用いられてきた.しかし,最近に至りこうした従来の凝固検査法の欠点を是正し,また凝固を従来とは異なった面から観察せんとする傾向がたかまりつつあり,自動測定装置による検査,免疫学的手技を応用した検査法が注目されている.

Senior Course 血清

ABO式新生児溶血性疾患の診断(3)

村上 省三

pp.1471

1.妊娠中の検査(つづき)

 われわれはその他参考になるデータとして唾液中の抗体価を観察している.唾液中の抗体はIgA抗体であるといわれており,IgG抗体である胎盤透過性の抗体とは異質のものであるが,IgG抗体が強いときはIgA抗体も平行して強いことが普通であるので,補助的なデータは十分に得られる.母の唾液を−20℃の冷凍庫の中にいれて1晩放置し,翌日溶解し遠心すると,粘性のある部分は沈降して,上清として,さらりとした透明の液が得られるので,その中の抗Aおよび抗B抗体を測定する.唾液中の抗体が免疫によって上昇するものであるか否かについても賛否両論があり,確定してはいないが,簡単に補助的なデータを得られるので検討中である.

 その他A血球にもB血球にも反応するいわゆる交差反応性の抗体がO型血清中にあって,それが新生児溶血性疾患を起こす原因であるという考え方はWiener以来連綿として続いており,これまた新しい息吹が加えられているが,紙面の都合もあるので詳しくは述べない(参考文献1,2参照).それかあらぬか,父親がA型,母親がO型の場合,母親の血清中の抗A,抗B抗体価をいろいろな方法で測定してみると,抗Aのほうが強いはずであるのに抗Bのほうが高い抗体価を示すケースにぶつかることも少なくない.いずれにしろ,抗Aや抗B抗体はいろいろな原因により作られる可能性があり,またさきに述べた新生児(胎児)の防護作用のほかに,たとえ胎盤を通過して児体内にはいっても,いろいろな臓器・組織にある型物質に吸着されることもあり,その全量が児血球に殺到するわけでもないといった事情もあるので,妊娠中の抗体価をあれやこれやとせんさくしてみても,ズバリ確実な診断はつきかねる.そこで一部の人たちからは‘妊娠中の検査無用論’もささやかれている.

Senior Course 細菌

リステリア菌の検査

永井 龍夫

pp.1472

1.髄膜炎に多くみられる

 リステリア菌(Listeria monocytogenes)はグラム陽性の短杆菌で鞭毛を有し運動性がある.1958年山形県で髄膜炎,北海道で胎児敗血症性肉芽腫症が見いだされたのが,ヒトのリステリア症の最初の報告例である.以来41症例(33例は髄膜炎)の報告がある.細菌検査室で化膿性髄膜炎の原因菌検査を実施する際に注意していれば,本菌を検出する可能性がある.

 検査材料としては髄液,血液がおもなものだが,病型は多彩だから咽頭塗抹や排泄物,分泌物も対象になる.健康人では無菌の髄液の沈渣に少数でもグラム陽性短杆菌を認めたら,本菌による髄膜炎を疑う必要がある.

Senior Course 病理

症状と病理組織検査(12)—リンパ節腫脹

三友 善夫

pp.1473

 リンパ節腫脹の原因となる病変の適確な診断は病理組織検査によることが多い.しかし正確な組織診断は顕微鏡像の観察のみでは不可能なこともあり,臨床所見の補助が必要となる.

 患者の性,年齢,腫脹したリンパ節の部位,全身性か局所性か,大きさ,硬さ,表面の性状,疼痛,熱感,集塊形成,周囲組織との癒着,腫脹の進行速度と持続期間,皮疹,発熱,脾腫などの臨床症状に加えて,血液像,骨髄像,血清タンパク分画,血沈,CRP,ポールーバンネル反応(伝染性単核症),寒冷凝集反応(ウイルス),PHA反応,ツ反応,DNCB反応(免疫低下),Hanger-Rose反応(猫ひっかき病),Kveim反応(ザルコイドーシス)などの臨床検査の成績がたいせつである.

Senior Course 生理1

RIによる肺機能検査

開原 成允

pp.1474

 RIを利用した肺機能検査法は,肺のシンチスキャニングと放射性ガスを利用した肺機能検査法に分けられる.しかし,ここでは通常の呼吸機能検査法に比較的類似している放射性ガスを用いた肺機能検査についてのみ述べることにする.

 現在の肺機能検査法は非常に多くの測定値を提供してはくれるが,これらの測定値のほとんどは肺全体に対しての測定値であって,肺の部分についての知見を提供してはくれない.しかし実際には,肺の病変は全体が一様に侵されることはむしろ少なく,局所に病変が限局している場合が多いので,肺機能の測定も,局所的に行なう必要がある.RIによる検査法はこのような観点から開発された.現在まだ完全に標準化された方法はないが,すべてに共通する概略は次のごときものである.

Senior Course 生理2

賦活法(2)

神保 真也

pp.1475

3.閃光刺激賦活法(photic stimulation)

 ストロボスコープを用い,閃光は10万燭光前後の明るいもので,1回の閃光の持続は0.5-10msecである.色はオレンジ色か赤色が最も有効といわれているが,ふつうは白色光が使用されている.ランプを被検者の眼前15-30cmの距離に置き,閉眼のまま両眼を均等に照射する.閉眼時は眼球が上方に向くので,ランプは顔面をやや上方(10°−15°)から照射する.最近の脳波計は,閃光刺激のパルスが同時に記録されるように作られているが,この装置のないときは光電池(photocell)を頭のそばに置き,その出力を脳波計の1素子に記録する.閃光刺激の頻度はふつう3-30Hzで十分である.各頻度の閃光は5-10秒間与え,その後10秒ほどあけてから次の頻度に移る.ふつうは低頻度からしだいに高頻度に及ぶ.また低頻度から高頻度に数10秒間に移行的・連続的に上げていく方法もある.

 正常者では,α波の周波数またはそれと調和関係にある頻度の閃光刺激により,後頭部優位に同じ周波数またはそれと調和関係にある周波数の脳波が出現し,これを光駆動(photic driving)と呼ぶ.10Hzの閃光刺激で10Hzの脳波が出現するものをfundamental driving,20-30Hzの波が出現するものをharmonic driving,5Hzのものをsubharmonic drivingと呼ぶ.なお睡眠時にはこの効果はない.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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64巻11号(2020年11月発行)

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64巻10号(2020年10月発行)

増刊号 がんゲノム医療用語事典

64巻9号(2020年9月発行)

今月の特集1 やっぱり大事なCRP
今月の特集2 どうする?精度管理

64巻8号(2020年8月発行)

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今月の特集2 IgG4関連疾患の理解と検査からのアプローチ

64巻7号(2020年7月発行)

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64巻4号(2020年4月発行)

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64巻3号(2020年3月発行)

今月の特集1 Clostridioides difficile感染症—近年の話題
今月の特集2 質量分析を利用した臨床検査

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今月の特集2 高血圧の臨床—生理検査を中心に

63巻11号(2019年11月発行)

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今月の特集2 薬剤耐性菌のアウトブレイク対応—アナタが変える危機管理

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62巻3号(2018年3月発行)

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62巻2号(2018年2月発行)

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62巻1号(2018年1月発行)

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60巻12号(2016年11月発行)

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60巻10号(2016年10月発行)

今月の特集1 血球貪食症候群を知る
今月の特集2 感染症の迅速診断—POCTの可能性を探る

60巻9号(2016年9月発行)

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今月の特集2 百日咳,いま知っておきたいこと

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60巻4号(2016年4月発行)

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今月の特集2 感染症診断に使われるバイオマーカー—その臨床的意義とは?

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今月の特集2 実践に役立つ呼吸機能検査の測定手技

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今月の特集2 グローバル化時代の耐性菌感染症

59巻13号(2015年12月発行)

今月の特集1 移植医療を支える臨床検査
今月の特集2 検査室が育てる研修医

59巻12号(2015年11月発行)

今月の特集1 ウイルス性肝炎をまとめて学ぶ
今月の特集2 腹部超音波を極める

59巻11号(2015年10月発行)

増刊号 ひとりでも困らない! 検査当直イエローページ

59巻10号(2015年10月発行)

今月の特集1 見逃してはならない寄生虫疾患
今月の特集2 MDS/MPNを知ろう

59巻9号(2015年9月発行)

今月の特集1 乳腺の臨床を支える超音波検査
今月の特集2 臨地実習で学生に何を与えることができるか

59巻8号(2015年8月発行)

今月の特集1 臨床検査の視点から科学する老化
今月の特集2 感染症サーベイランスの実際

59巻7号(2015年7月発行)

今月の特集1 検査と臨床のコラボで理解する腫瘍マーカー
今月の特集2 血液細胞形態判読の極意

59巻6号(2015年6月発行)

今月の特集1 日常検査としての心エコー
今月の特集2 健診・人間ドックと臨床検査

59巻5号(2015年5月発行)

今月の特集1 1滴で捉える病態
今月の特集2 乳癌病理診断の進歩

59巻4号(2015年4月発行)

今月の特集1 奥の深い高尿酸血症
今月の特集2 感染制御と連携—検査部門はどのようにかかわっていくべきか

59巻3号(2015年3月発行)

今月の特集1 検査システムの更新に備える
今月の特集2 夜勤で必要な輸血の知識

59巻2号(2015年2月発行)

今月の特集1 動脈硬化症の最先端
今月の特集2 血算値判読の極意

59巻1号(2015年1月発行)

今月の特集1 採血から分析前までのエッセンス
今月の特集2 新型インフルエンザへの対応—医療機関の新たな備え

58巻13号(2014年12月発行)

今月の特集1 検査でわかる!M蛋白血症と多発性骨髄腫
今月の特集2 とても怖い心臓病ACSの診断と治療

58巻12号(2014年11月発行)

今月の特集1 甲状腺疾患診断NOW
今月の特集2 ブラックボックス化からの脱却—臨床検査の可視化

58巻11号(2014年10月発行)

増刊号 微生物検査 イエローページ

58巻10号(2014年10月発行)

今月の特集1 血液培養検査を感染症診療に役立てる
今月の特集2 尿沈渣検査の新たな付加価値

58巻9号(2014年9月発行)

今月の特集1 関節リウマチ診療の変化に対応する
今月の特集2 てんかんと臨床検査のかかわり

58巻8号(2014年8月発行)

今月の特集1 個別化医療を担う―コンパニオン診断
今月の特集2 血栓症時代の検査

58巻7号(2014年7月発行)

今月の特集1 電解質,酸塩基平衡検査を苦手にしない
今月の特集2 夏に知っておきたい細菌性胃腸炎

58巻6号(2014年6月発行)

今月の特集1 液状化検体細胞診(LBC)にはどんなメリットがあるか
今月の特集2 生理機能検査からみえる糖尿病合併症

58巻5号(2014年5月発行)

今月の特集1 最新の輸血検査
今月の特集2 改めて,精度管理を考える

58巻4号(2014年4月発行)

今月の特集1 検査室間連携が高める臨床検査の付加価値
今月の特集2 話題の感染症2014

58巻3号(2014年3月発行)

今月の特集1 検査で切り込む溶血性貧血
今月の特集2 知っておくべき睡眠呼吸障害のあれこれ

58巻2号(2014年2月発行)

今月の特集1 JSCC勧告法は磐石か?―課題と展望
今月の特集2 Ⅰ型アレルギーを究める

58巻1号(2014年1月発行)

今月の特集1 診療ガイドラインに活用される臨床検査
今月の特集2 深在性真菌症を学ぶ

57巻13号(2013年12月発行)

今月の特集1 病理組織・細胞診検査の精度管理
今月の特集2 目でみる悪性リンパ腫の骨髄病変

57巻12号(2013年11月発行)

今月の特集1 前立腺癌マーカー
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査②

57巻11号(2013年10月発行)

特集 はじめよう,検査説明

57巻10号(2013年10月発行)

今月の特集1 神経領域の生理機能検査の現状と新たな展開
今月の特集2 Clostridium difficile感染症

57巻9号(2013年9月発行)

今月の特集1 肺癌診断update
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査①

57巻8号(2013年8月発行)

今月の特集1 特定健診項目の標準化と今後の展開
今月の特集2 輸血関連副作用

57巻7号(2013年7月発行)

今月の特集1 遺伝子関連検査の標準化に向けて
今月の特集2 感染症と発癌

57巻6号(2013年6月発行)

今月の特集1 尿バイオマーカー
今月の特集2 連続モニタリング検査

57巻5号(2013年5月発行)

今月の特集1 実践EBLM―検査値を活かす
今月の特集2 ADAMTS13と臨床検査

57巻4号(2013年4月発行)

今月の特集1 次世代の微生物検査
今月の特集2 非アルコール性脂肪性肝疾患

57巻3号(2013年3月発行)

今月の特集1 分子病理診断の進歩
今月の特集2 血管炎症候群

57巻2号(2013年2月発行)

今月の主題1 血管超音波検査
今月の主題2 血液形態検査の標準化

57巻1号(2013年1月発行)

今月の主題1 臨床検査の展望
今月の主題2 ウイルス性胃腸炎

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