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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査15巻3号

1971年03月発行

雑誌目次

カラーグラフ

喀痰中の癌細胞と肺癌組織

田村 潤 , 竹内 良三

pp.214-215

喀痰中の癌細胞検出は,簡易でしかも確実性の高い診断法であるが,その判定には,肺癌の組織像を理解することが必要である.特に肺癌では各種組織像の共存する例がしばしばあるので,1回のみの細胞診でその組織像を確定するのは危険である。ひきつづき何回かの細胞診を行なうべきであろう,また特殊例(図5,6など)では,癌と決定できるような細胞が全く出ないことのあることも知らなければならない(図の細胞像1-5は対物60×,6は40×,組織像は10×).(左:細胞像 右:組織像)

グラフ

手術室における電気生理検査

江部 充 , 石山 陽事 , 本間 伊佐子

pp.217-224

病院における検査技師の役割は,医療の進歩に伴って広がる一方である.手術室においても,高度で大がかりな装置を必要とする手術が,いたるところの病院で行なわれてきている.昔は手術室の中では外科医と看護婦によってすべての処理がなされたが,現今のように複雑なME機器を用いた手術が行なわれるようになると,特に教育と訓練を受けた技術者がこれに加わっていなければならなくなった.すなわち手術医—麻酔医—看護婦とともに検査技師の4者が一体となって手術診療に当たらねばならない.

血球観察の基礎・3

幼若顆粒球,単球の鑑別

衣笠 恵士

pp.226-227

13.骨髄球と後骨髄球

 一般に好中球の核が円形のものを骨髄球,核に切れ込みが生じて腎臓形,そら豆形などになったものを後骨髄球と表現されている.しかし図1に示すように両者の核形には移行があり,核が完全に円形である骨髄球はむしろ少なくなる.

ノモグラム・15

体表面積を算出するノモグラム

北村 清吉

pp.229

基礎代謝率(BMR)などを計算するとき用いる体表面積〔注1〕の値を容易に知りうるために考案されたもので,被検者の体重(右側)と身長(左側)を直線定規で結べば体表面積(中央)の値が得られる.

 使用上の注意 体型が著しく正常と異なる場合は,〔注1〕の式にあてはまらない場合が多く,特に肥満者では,実際の体表面積より大きく積算される場合がある(BMR値が低く計算される).

検査室の便利表・15

総説

原子吸光法—臨床化学技術者のために

坂岸 良克

pp.233-238

まえがき

 臨床化学分析の対象となる生体成分の多くは有機化合物で,無機物の項目が占める割合はむしろ少ないといわなければならない.このことは生体が昔から小宇宙と称されていたように,ほとんどの元素を含むにもかかわらず,実際に生体反応に関与する無機物をあげてみると,ごく限られたものしか知られていないためであろう.金属元素は不純物,爽雑物として生体成分に混在するだけでなく,酵素反応に直接大きな役割りを果たしていることが知られていた.しかし,公害が問題になってきた昨今では,われわれが今まで見すごしてきた金属も,生体内でかなり強い働き(阻害効果のみではないかもしれない)を示すことに驚かされている.

 金属元素は単独でもまた高分子物質の構成成分としても存在するが,ほとんど原子またはイオンとして生体反応に関係する.したがって分子の数を論じる通常の分析法とはかなり異なった扱いが適用される.ナトリウム,カリウムなどのアルカリ金属を除くと,アルカリ土類を含めて,金属原子は配位化合物を作りやすい.周知のように原爆症の治療に伴って導入されたEDTAほか各種キレート剤は金属原子とキレート化合物を作ることから,それらの定量法に応用されるようになった。金属イオンについて,この方法は滴定および比色法として普及している。

技術解説

手術室における検査技師の役割

石山 陽事 , 江部 充 , 本間 伊佐子

pp.239-244

はじめに

 近年手術中における患者管理は麻酔医によって行なわれているが,血圧測定,呼吸様式の観察,および瞳孔収縮,散大の程度などは重要な指標である。最近の医学の急速な進歩と高度な医療装置の開発に伴い,開頭,開心,臓器移殖などの手術も複雑な条件下で行なわれるようになった.したがって従来の麻酔医によるすべての管理は困難となり,当然生理検査室の助力が必要となってきた.すなわち手術室では医師—看護婦—検査技師の3者が強力な連携を保ちつつ仕事を進めなければならない,したがって検査技師は検査室とは異なった手術室という環境のもとでの仕事であるから,手術に対しての臨床的な知識をはじめ,滅菌,予防およびME機器とその安全性について十分な理解と知識をもたなくてはならない.

 現在手術室で使用している検査および治療機器は,特殊なものを除いては心電計,心拍計,血圧計(動静脈カテーテルを含む),脈波計,脳波計,直腸食道温度計,除細動装置,ペースメーカーおよびこれらに付属したブラウン管,記録計などがあるが1.2),これらはすべて同時に使用されるのではなく,手術の必要性に応じて最小限に使用することが望ましい.最近ではこういった手術室用のモニターとして生体情報を同時記録する多用途監視装置をそろえる病院が多くなった.しかし手術室という特殊条件下で使用する場合には,むやみに装置を複雑にしたり大型化したりすることは,手術室の機能面と人体への安全性の点からいっても避けなければならない.

ミリポア・メンブラン・フィルターの使い方

徳永 淳三

pp.245-249

ミリポア・メンブラン・フィルターと‘Depth’フィルター

 ミリポア・メンブラン・フィルターは,セルローズの混合エステルその他の材質からなる薄膜(厚さ150μm)に無数の微細孔があけられたものである,その孔径は‘絶対的’であり,孔径より大きい粒子・微生物はすべて表面に捕集され絶対に通過しない.セルローズ濾紙,アスベストなどは‘Depth’フィルターと呼ばれ,繊維などを圧縮その他の処理により固めたもので,粒子,微生物は不規則な落ち込みや付着により,フィルター表面だけでなく内部においても捕集される.その構造から考えても明らかなごとく,depthフィルターの孔径はあくまで名目上(Nominal)の孔径であり,その名目上の孔径より大きい粒子,微生物の通過を許す可能性は常に存在する.メンブラン・フィルターは孔径以上の粒子,微生物をすべて表面に捕集し,また屈折率の同一な液体(キシレンや油浸用オイル)により透明にできるので,捕集物の検鏡が容易である.以上の理由からミリポア・メンブラン・フィルターは微生物分析に使用すると便利である.

臨床検査の問題点・26

血清ビリルビン検査法

石田 信二 , 伊藤 忠一 , 星 清行 , 橋本 一夫

pp.250-255

ビリルビンはヘモグロビンの代謝によってできた色素であり,臨床的には,各種疾患の診断への手がかりとして重要視されている.ここでは,ビリルビンの測定法としては,現在最も一般的なEvelyn-Malloy法を中心に,間接型・直接型それぞれの測定法,精度管理上の注意点などについて話し合うことにする.(カット写真は血清の分離)

コンピュータの基礎知識・2

大型電子計算機—(ハードウェア)

石井 威望

pp.256-260

計算機各部の名称

 図1は,電子計算機のハードウェアを機能別に分類して,各部分の名称と相互関係を示している.実線は情報の流れ,点線は情報処理を制御する制御信号のつながりを示している,大型計算機も本質的には,このような構成であることに変わりはないが,そのハードウェアを構成する素子の数が多く,演算動作がきわめて速く,大量の情報処理ができる点が特徴である.その結果価格も高くなり(少なくとも3億円以上,何10億円に及ぶ),設置場所,電源はもちろんのこと,大きな運営組織を伴ってくる.

 ハードウェアの中心は計算機本体であって,そこでは最も高速度で情報が運動し変換されている,これらの情報は最終的には人間に到達する人間の情報入出力機能は計算機本体のスピードに比べて著しい開きがあり,そこを橋渡しするハードウェアが周辺機器である.

私のくふう

ゼロックスの応用—肉眼所見のスケッチ

松尾 均 , 和田 昭

pp.260

 組織の切り出しにあたり,肉眼所見のスケッチをする必要がしばしば生ずるが,この際ゼロックスを用いるとたいそう便利なことは,案外知られていない.

 ゼロックスはもともと書籍類の複写に使用されているが,これを固定された臓器あるいは組織の複写に応用すると,実に微細な模様まで忠実に模写できて非常に好つごうである.組織材料の切り出しの部位,あるいは病巣の形,大きさなどを正確に記入しておくことは,後日,検鏡時にミクロとグロスの所見の対比のためにたいせつなことであるが,近ごろのように手術材料の増加と,加えてその1つ1つの検索が詳細をきわめる傾向にあると,手でスケッチしたり,写真を引き伸ばしたりしていては,時間と手間がかかって間に合わないことが多い.

エッペンドルフ・マイクロリッターシステムによる超微量臨床化学検査・3

血清尿酸,クレアチニンおよびクレアチンの測定

岡村 研太郎 , 村尾 周子 , 山戸 玲子 , 小延 鑑一

pp.261-264

はじめに

 前報1)までに血清鉄,銅の微量比色測定について述べたが,今回は窒素を含む化合物で除タンパク操作を必要とする尿酸,クレアチニンおよびクレアチンを和光キット試薬を用い,本システムで定量を行なってみた.ただしリンタングステン酸法による尿酸の比色定量は,生成するリンタングステン酸ブルーの吸光度が時間とともに増大し,次いでなだらかに低下する傾向があるので,この際キットによらない方法ではあるが,著者らの1人,小延が発表した銅ネオクプロイン法2)をもあわせて行なってみた。クレアチニン,クレアチンはキット試薬を用いたが,クレアチンからクレアチニンへの閉環反応にオートクレープを使用し,10096反応が進行することを知つた.

 使用した血清量は尿酸クレァチニンともに50μ」で,測定に要した時間を従来法のほぼ1/2に短縮しえた.

論壇

臨床検査に新しく求められているもの

関根 隆光

pp.266-267

 昨年,一級および二級臨床検査技師試験(日本臨床病理学会主催)の臨床化学部門を受持った関係で,臨床検査について何か書けとのことである.しかしながら,私はこの`専門領域'で管理はおろか実技の経験もない全くのしろうとである.

 もっとも,1951年順天堂大学に奉職して生化学教室を創立してから中央臨床検査室ができるまでの数年間,教室として臨床化学検査を受持っていた時代があった.また虎の門病院でその開設当初から1962年ごろまで,続いて東京警察病院でずっとプロの臨床検査技師の諸君とおつきあい願っているので,アマといってもけがのできる程度の生兵法はかじっているということになるのかもしれない.

研究

ビリルビン測定法(特に新生児用)の現状

山下 文雄 , 山崎 晴一朗 , 有馬 正 , 橋本 武夫 , 武谷 茂 , 高崎 好生

pp.268-270

はじめに

 臨床検査は精度,再現性,信頼性の高い自動分析と微量から,さらに超微量化の方向に向かっている.

 このことは新生児の血清ビリルビン測定にとっても必要な条件である。いつでも,正確に,生体への侵襲が最も少ない方法でビリルビン値を知ることによって,一生苦しむことになるかもしれない脳傷害(核黄疸→脳性小児麻痺)を防ぐことが可能となるからである.

結核菌耐性検査におけるリング拡散法の研究—第1報リング拡散法の手技

平峰 繁

pp.271-273

はじめに

 増大する抗結核剤耐性検査を能率的に処理するため,このたび新しい耐性検査法を考案した.本法は,すでに行なわれているディスク拡散の原理を応用し,一定のシャーレ内で2剤を同時にリング状(ドーナツ状)に拡散させ,あらかじめ稀釈法濃度に相関対比した判定表によって,簡単にその成績をみることができる方法である.

東北大病院産婦人科における母児間血液型不適合に関する検査

田中 礼子

pp.274-277

はじめに

 母児間血液型不適合に関する検査体制の整備は,わが国では欧米に比べて著しく遅れているが,数年来,この方面への関心をもつ人が多くなり,地区のセンター的な役割をもつ施設も増加しつつある.

 東北大病院産婦人科教室でも,研究と地区のセンター的役割の両面の必要に応じて,1964年1月からRh-Hr式血液型検査を始め,その後免疫抗体,羊水分析などの検査も実施しているので,血清ビリルビンの超微量定量をも加えて,その方法や検査件数の変動などについて報告したい.

血球計算の誤差について

臼井 敏明

pp.278-280

 私たちが検査室で計測する場合,比色計のように目盛りを読み取るものと,血球計数のように1個ずつを数える場合とがある.現代の流行語で表現すると,アナログ計測とディジタル計測ということになろう.検査過程の手技による誤差はさておき,最終の目盛りの読み取り,あるいは計数時における誤差を考える場合,前者は目盛りの間隔や電流計の指針のふらつきなどから,なんとなく計測値の中に誤差が含まれていることが感じられるのに比べて,計数の場合は,自分の目で確認しながら1個1個数えるのだから,誤差がはいりえないようにも思われるが,決してそうではない。

 血球計数を例にとると,私たちは決して血液中の全血球を数えるのではなく,その一部を採って計数し,全体を推定するのであるから,その一部分が正しく全体を代表するかどうかが問題であり,そこに誤差の起こる可能性が存在する.ここではその誤差を理論的に取り扱い,それが血球計数時の実測値とよく一致することを示した.

遊離脂肪酸のDuncombe変法による測定法の検討とその臨床的意義について

松尾 武文 , 吉田 睦 , 石浜 義民 , 太田 耕治

pp.281-284

 遊離脂肪酸の測定方法には滴定法と比色法があり,滴定法はDole (1956年)によって始められた方法で,現在標準的な方法として広く使用されている.比色法はDole法に比べて検体が徴量ですみ,多数の測定が一時にできるため,最近普及してきた.この比色法といわれている方法に,大きく分けて2つある.すなわち脂肪酸と銅塩を作る方法とコバルト塩を作る方法とである.いずれにしろ,血液中でアルブミンと結合している遊離脂肪酸を特異的に金属塩として抽出し,金属塩の金属を呈色させ比色定量する操作に基づいている.

 私たちは遊離脂肪酸(以下FFAと略〉の比色法の中で,銅塩法であるDuncombe変法(Haury)について,測定方法の検討と臨床的意義について考察を加えた.

腎性尿タンパク分画について

加藤 忠雄

pp.285-288

緒言

 尿タンパクが臨床的に問題になるのは,腎前性タンパク尿と腎性タンパク尿であり,換言すれば,尿タンパクの質的あるいは量的異常であるともいえよう.

 腎性尿タンパクについていえば,タンパクの基底膜の透過と尿細管における非特異的な再吸収が,各種疾患によってそれぞれ特徴があり,逆に尿タンパクの分画から基底膜の損傷を推論しうるのではないかと考えられ,また,疾患によって,より明確な病態の把握にもなると考えられる.しかしながら,血清タンパン電気泳動分析に比し尿タンパクのそれは,あまり一般化されていない.このことは市場1)も指摘するように,尿ではタンパク濃度が著しく低く,尿タンパクの泳動像に特徴的変化をきたす疾患が少なく,したがって臨床的意義づけがむずかしいこと,また正常尿のタンパク分画像について確立されたパターンがないため,比較ができないことなどがその原因であろうと思われる.

第16回 衛生検査技師国家試験 問題と解答—(1970年10月12日実施)

pp.290-300

問題

公衆衛生概論

 問題1 昭和43年のわが国のおよその人口はどれか.

シリーズ・日常検査における機械化のくふう・3

比色計のフローセル方式の組み立て(1)

水野 映二 , 仁科 甫啓 , 小野 弘毅 , 北村 元仕

pp.302-303

 今回は日常化学検査の大半が比色分析法であることから,比色操作の能率化として比色計をフローセル方式に改造することを試みた.これによって比色操作時間より従来の1/3-1/6に短縮され,能率化された.本法の実用化の条件は,①比色計のメーター指示が安定であること,②比色計の単色光ビームがなるべく細いこと,③フローセルにおける前試料の汚染がないこと,④測定時聞は1検体あたり5秒以内である,などである。①②に対して日立の比色計を選んだ,③④の条件に対して容積70μlのフローセル(直径3mm,光路10mmと,吸引量自在の電磁弁制御装置を製作した.また前試料の汚染率算出法は松岡ら(臨床病理,3,303,1965)に従って行ない,実例は,図1に示すとおりである。これより,A/G測定では吸引旦2.5ml以上で汚染は皆無となる.他の定量法についても同様にして求めればよい。費用はおよそ6.5万円かかるが,別に本法を参考にした市販品もある.

質疑応答

検査技師の業務範囲について

N生 , 楠本 欣史

pp.304

問 血液交差適合試験および血液型検査についておたずねします.

 われわれの病院では医師らの依頼により,血液交差適合試験および血液型検査の判定まで技師が行なっております.ところが最近,これは違法行為ではないかという話が出ました.もしこのような法律がありましたらご紹介ください.

Senior Course 生化学

血漿タンパク

石戸谷 豊

pp.305

1.測定法—特に電気泳動法

 血清総タンパクの測定には屈折計が広くかつ安易に用いられているようである.しかしこれは,溶液の屈折率(R)が溶質の濃度と比例することを利用したものであるので,屈折率の強い物質(たとえば脂質)を多量に含んでいる血清(たとえばネフローゼ)では実際の総タンパク量よりかなり高い値を報告することになる.このような場合には,RによらないKieldahl法,Biuret法などによって求めなければならない.また市販屈折計(精度0.1-0.2g/dl)は会社独自で,あらかじめ血清タンパク濃度とRとの関係を求めて,直読目盛りをつけているので製品によって,同一試料でも差があることを心得ておくのがよい.操作のうえで特に光源(陽光,電燈,螢光)を一定にすることがたいせつでCV:10%以内が望ましい.簡単な機械だけに十分意を用いて選択しなくてはならない.

 血清タンパク分画測定はセルローズ・アセテート電気泳動法が一般に普及した.実施法についいては電気泳動学会の標準法がある.一般に電気泳動法は機械的条件に大きく影響されやすいので,まず使用する膜に合った定電流装置,泳動箱,デンシトメーター(光学的密度直線性のもの)などを選択する必要があり,これを誤ると正しい値を出すまでに長期間むだな努力を費すことになる.

Senior Course 血液

凝固検査に用いる試材の調整法(1)

鈴木 弘文

pp.306

1.採血方法

 血液凝固検査の目的にて採血する場合は,特に組織液の混入を避けねばならない.そのためには2本注射器法(two-syringes method)を用いるのが理想的であるが,1本の注射器でも21G−17Gの針を用いて慎重に操作すれば,測定値への影響もほとんど認められず,手技も簡単である.注射器にあらかじめ抗凝固剤を入れておいて採血する方法もあるが,少量採血(1-2ml)の場合はともかくとして,3-5ml以上採血する場合は抗凝固剤をあらかじめ試験管に用意しておいて,採血後ただちに血液を注入し混和したほうがよい.患者によっては採血が困難な場合があり,特に小児では必要量の血液を採取することができないこともあり,抗凝固剤が余分になる可能性もある.

Senior Course 血清

抗白血球抗体(2)

村上 省三

pp.307

1.その検出方法

 前回にもお話しいたしたように,抗白血球抗体は臨床的にもたいへん重要な役割を演じております.また抗体の性格としても自己抗体として認められることも,同種抗体として見られることもありますが,ここでは主として後者の場合を取り上げることにします.

 抗白血球抗体の検出方法としては凝集反応を利用する方法,補体結合反応を利用する方法,さらには細胞毒性反応を利用する場合もあります.その他混合凝集反応や抗グロブリン試薬消費試験などがありますが,特殊の目的に利用される程度で,ルーチンには先に書いた3つの方法が採用されております.そのうち補体結合反応は,多くの場合は,白血球と血小板とが共通の抗原をもつことが多いので,血小板を使っての補体結合反応が一般には用いられますが,血小板が少ない人の場合などはどうしても,白血球そのもので行なわなければならぬことがあります.

Senior Course 細菌

結核菌の検査

永井 龍夫

pp.308

1.チール・ネルゼン染色について

 結核菌の染色法として広く行なわれているもので,染色要領はグラム染色のようにむずかしいことはない.石炭酸フクシンの加温染色を微加温でやり,塩酸エタノールによる脱色を標本面の赤味が完全になくなるまで十分にすればきれいな染色標本ができる.

 結核菌の検査では喀痰が検体になる場合が多いが,喀痰中の菌の分布は必ずしも一様ではないから染色標本の塗抹には注意を要する.実際に喀痰の塊の異なる場所を採って染色すると,極端な場合には一方では結核菌が認められるのに他方では認められないこともある.簡単に喀痰の一部をちょっと塗抹して染色するのは,検査精度上ほめたやり方ではない.あらかじめ喀痰をできるだけ均等にほぐしてから塗抹染色することが望ましい.

Senior Course 病理

症状と病理組織検査(3)—腎性浮腫

三友 善夫

pp.309

 前号に浮腫成因の機序を述べたが,腎疾患の浮腫は病変によって(1)腎炎性,(2)ネフローゼ症候群性,(3)心性浮腫(腎性高血圧から心肥大を招き,毛細血管圧亢進による)に分けられ,その鑑別には尿タンパク,尿沈渣,血漿の生化学的値の測定が用いられ,ある程度の腎病変の種類,程度,活動性を推定している.しかし,腎疾患の確定診断には腎生検が有用である.

 電顕法や螢光抗体法まで行なわれる.図が示すように腎は糸球体,尿細管,血管を含む主成分が問題であり,腎血管は栄養血管よりもむしろ機能血管として作用し,腎皮質の血流量が糸球体濾過値を左右し,髄質では浸透圧勾配を形成して尿濃縮に関係する.腎内循環の変化は尿細管のNa,水の再吸収に影響し,糸球体尿細管のバランスを乱す.浮腫の発生には①腎血流量の低下,②糸球体濾過量の低下,③Naの排泄減少(腎静脈圧亢進による水,Naの再吸収の増加)が関係する.図のいずれの部分に病変が発生しても①,②,③の機序で浮腫を生ずる.

Senior Course 生理1

電極の装着と導出法(1)

吉井 信夫

pp.310

 脳波の記録は電極を頭皮上の一定の位置に配置し,固定することから始まる.電極の正確でしっかりした配置がまず重要で,次はどのような電極の組み合わせで脳波を導出するかが問題となる.ここではまず電極の配置について述べるとともに,代表的な電極の装着法について述べ,最後に単極双極誘導について記す.

Senior Course 生理2

肺拡散量の測定—CO1回吸入法の手技

宮沢 正治

pp.311

 被検者に低濃度のCO, Heを含む四種混合ガス(例O221%,CO O.3%,He 3.0%,残りN2)を吸入させてから約10秒間呼吸を停止し,その間に血液中にはいったCO量,平均肺胞気CO分圧を求める.COを摂取する前の肺胞内CO濃度,肺胞気量,CO摂取開始t秒間後の肺胞CO濃度がわかると肺拡散量(DLCO)は,

DLCO=VA・60/(B−47) t 1n (FACO0/FACO

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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60巻10号(2016年10月発行)

今月の特集1 血球貪食症候群を知る
今月の特集2 感染症の迅速診断—POCTの可能性を探る

60巻9号(2016年9月発行)

今月の特集1 睡眠障害と臨床検査
今月の特集2 臨床検査領域における次世代データ解析—ビッグデータ解析を視野に入れて

60巻8号(2016年8月発行)

今月の特集1 好塩基球の謎に迫る
今月の特集2 キャリアデザイン

60巻7号(2016年7月発行)

今月の特集1 The SLE
今月の特集2 百日咳,いま知っておきたいこと

60巻6号(2016年6月発行)

今月の特集1 もっと知りたい! 川崎病
今月の特集2 CKDの臨床検査と腎病理診断

60巻5号(2016年5月発行)

今月の特集1 体腔液の臨床検査
今月の特集2 感度を磨く—検査性能の追求

60巻4号(2016年4月発行)

今月の特集1 血漿蛋白—その病態と検査
今月の特集2 感染症診断に使われるバイオマーカー—その臨床的意義とは?

60巻3号(2016年3月発行)

今月の特集1 日常検査からみえる病態—心電図検査編
今月の特集2 smartに実践する検体採取

60巻2号(2016年2月発行)

今月の特集1 深く知ろう! 血栓止血検査
今月の特集2 実践に役立つ呼吸機能検査の測定手技

60巻1号(2016年1月発行)

今月の特集1 社会に貢献する臨床検査
今月の特集2 グローバル化時代の耐性菌感染症

59巻13号(2015年12月発行)

今月の特集1 移植医療を支える臨床検査
今月の特集2 検査室が育てる研修医

59巻12号(2015年11月発行)

今月の特集1 ウイルス性肝炎をまとめて学ぶ
今月の特集2 腹部超音波を極める

59巻11号(2015年10月発行)

増刊号 ひとりでも困らない! 検査当直イエローページ

59巻10号(2015年10月発行)

今月の特集1 見逃してはならない寄生虫疾患
今月の特集2 MDS/MPNを知ろう

59巻9号(2015年9月発行)

今月の特集1 乳腺の臨床を支える超音波検査
今月の特集2 臨地実習で学生に何を与えることができるか

59巻8号(2015年8月発行)

今月の特集1 臨床検査の視点から科学する老化
今月の特集2 感染症サーベイランスの実際

59巻7号(2015年7月発行)

今月の特集1 検査と臨床のコラボで理解する腫瘍マーカー
今月の特集2 血液細胞形態判読の極意

59巻6号(2015年6月発行)

今月の特集1 日常検査としての心エコー
今月の特集2 健診・人間ドックと臨床検査

59巻5号(2015年5月発行)

今月の特集1 1滴で捉える病態
今月の特集2 乳癌病理診断の進歩

59巻4号(2015年4月発行)

今月の特集1 奥の深い高尿酸血症
今月の特集2 感染制御と連携—検査部門はどのようにかかわっていくべきか

59巻3号(2015年3月発行)

今月の特集1 検査システムの更新に備える
今月の特集2 夜勤で必要な輸血の知識

59巻2号(2015年2月発行)

今月の特集1 動脈硬化症の最先端
今月の特集2 血算値判読の極意

59巻1号(2015年1月発行)

今月の特集1 採血から分析前までのエッセンス
今月の特集2 新型インフルエンザへの対応—医療機関の新たな備え

58巻13号(2014年12月発行)

今月の特集1 検査でわかる!M蛋白血症と多発性骨髄腫
今月の特集2 とても怖い心臓病ACSの診断と治療

58巻12号(2014年11月発行)

今月の特集1 甲状腺疾患診断NOW
今月の特集2 ブラックボックス化からの脱却—臨床検査の可視化

58巻11号(2014年10月発行)

増刊号 微生物検査 イエローページ

58巻10号(2014年10月発行)

今月の特集1 血液培養検査を感染症診療に役立てる
今月の特集2 尿沈渣検査の新たな付加価値

58巻9号(2014年9月発行)

今月の特集1 関節リウマチ診療の変化に対応する
今月の特集2 てんかんと臨床検査のかかわり

58巻8号(2014年8月発行)

今月の特集1 個別化医療を担う―コンパニオン診断
今月の特集2 血栓症時代の検査

58巻7号(2014年7月発行)

今月の特集1 電解質,酸塩基平衡検査を苦手にしない
今月の特集2 夏に知っておきたい細菌性胃腸炎

58巻6号(2014年6月発行)

今月の特集1 液状化検体細胞診(LBC)にはどんなメリットがあるか
今月の特集2 生理機能検査からみえる糖尿病合併症

58巻5号(2014年5月発行)

今月の特集1 最新の輸血検査
今月の特集2 改めて,精度管理を考える

58巻4号(2014年4月発行)

今月の特集1 検査室間連携が高める臨床検査の付加価値
今月の特集2 話題の感染症2014

58巻3号(2014年3月発行)

今月の特集1 検査で切り込む溶血性貧血
今月の特集2 知っておくべき睡眠呼吸障害のあれこれ

58巻2号(2014年2月発行)

今月の特集1 JSCC勧告法は磐石か?―課題と展望
今月の特集2 Ⅰ型アレルギーを究める

58巻1号(2014年1月発行)

今月の特集1 診療ガイドラインに活用される臨床検査
今月の特集2 深在性真菌症を学ぶ

57巻13号(2013年12月発行)

今月の特集1 病理組織・細胞診検査の精度管理
今月の特集2 目でみる悪性リンパ腫の骨髄病変

57巻12号(2013年11月発行)

今月の特集1 前立腺癌マーカー
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査②

57巻11号(2013年10月発行)

特集 はじめよう,検査説明

57巻10号(2013年10月発行)

今月の特集1 神経領域の生理機能検査の現状と新たな展開
今月の特集2 Clostridium difficile感染症

57巻9号(2013年9月発行)

今月の特集1 肺癌診断update
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査①

57巻8号(2013年8月発行)

今月の特集1 特定健診項目の標準化と今後の展開
今月の特集2 輸血関連副作用

57巻7号(2013年7月発行)

今月の特集1 遺伝子関連検査の標準化に向けて
今月の特集2 感染症と発癌

57巻6号(2013年6月発行)

今月の特集1 尿バイオマーカー
今月の特集2 連続モニタリング検査

57巻5号(2013年5月発行)

今月の特集1 実践EBLM―検査値を活かす
今月の特集2 ADAMTS13と臨床検査

57巻4号(2013年4月発行)

今月の特集1 次世代の微生物検査
今月の特集2 非アルコール性脂肪性肝疾患

57巻3号(2013年3月発行)

今月の特集1 分子病理診断の進歩
今月の特集2 血管炎症候群

57巻2号(2013年2月発行)

今月の主題1 血管超音波検査
今月の主題2 血液形態検査の標準化

57巻1号(2013年1月発行)

今月の主題1 臨床検査の展望
今月の主題2 ウイルス性胃腸炎

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