icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床検査15巻5号

1971年05月発行

雑誌目次

カラーグラフ

傍糸球体細胞顆粒の染色

西森 一正

pp.422-423

腎臓糸球体の輸入細動脈,輸出細動脈,およびMacula densaとPolkissenの4つを合わせて傍糸球装置(Juxtaglomerular apparatus;JGA)と呼ぶ(4者の位置関係は技術解説の項で示す).このJGAはレニン分泌部位として早くより注目されたが,特に糸球体にはいる直前の輸入細動脈壁細胞は特殊な顆粒をもち,これがレニンと考えられている.高血圧症や電解質などとの関連において顆粒の増減に興味がもたれ,Bowie法でこの顆粒は最も鮮明に染色できる.

グラフ

ネガティブ染色法によるウイルス感染症の臨床検査法

橋本 和夫 , 石沢 肇 , 木村 瑞雄

pp.425-428

ウイルス性疾患に対する臨床検査としては,従来ウイルス分離検査およびウイルスに対する患者血清検査が主流をなしてきたが,最近螢光抗体検査や電子顕微鏡的検査など病理形態学的検査の利用価値が高く評価されてきた.

われわれは,皮膚ウイルス性疾患を中心に日常検査として,ネガティブ染色法によるウイルスの電顕的検出を1年あまりにわたって行なってきた結果,本法は十分実用にたえることを知ったので紹介する.

組織と病変の見方 肉眼像と組織像の対比—循環器とその病変(1)

金子 仁

pp.429-432

循環器は心臓と血管である.

成人の心は楕円形で,表面平滑,重量ほぼ250gである.肥大すると1000gくらいまでになる.きわめて大きいのを牛心という.左心室が肥大することが多いが,肺疾患があるとよく右心室が肥大する.肥大と拡張はしばしばいっしょにくるが,肥大とは心室壁が厚くなることであり,拡張とは心室腔が広がることである.

血球観察の基礎・5

骨髄穿刺時の手技

衣笠 恵士

pp.434-435

28.穿刺液の性状

 穿刺液は吸引された骨髄実質細胞と小組織片と静脈洞血(末梢血液と同じ)の混合液であり,吸引量が多いほど静脈洞血の混合比は大となる.また穿刺液は算定する部分によって細胞密度が不均等である.

ノモグラム・17

酸塩基平衝障害とbase excess—アストラップ法

藤本 淳

pp.437

求め方 測定値pH=7.30,PCO2=46mmHg,Hb量=12.5g%とする.まずpH,PCO2よりA点を求める.次に12.5g%に相当するbuffer base=47mEq/l(B点)と,base excess=0のC点よりそれぞれ等しい量だけ両曲線に沿って移動させ,A点を通る直線Iを引く.その交点が求める値で,D(buffer base)=43mEq/l,E(standard bicarbonate)=20.5mEq/l,F(base excess)=-4mEq/lとなる.この値は酸素飽和度が100%としての値であるので,実際の血液酸素飽和度に対して補正をする必要がある.酸素飽和度はpH,PO2より求めたとして60%が与えられているので,不飽和血の場合,次の算出値だけ右方へ移動させることになる.

移動量=0.3×(Hb濃度)×(1-酸素飽和度/100=0.3×12.5×(1-60/100)=1.5mEq/l

検査室の便利表・17

細菌検査のための分離培地

高橋 昭三

pp.439

 検体から病原菌を分離する際に,検出の予想される菌が,よく発育する分離培地を用いなければならない.ヘモフィルスと肺炎球菌の分離が予想されるならば,チョコレートカンテンと血液カンテンを併用する.腸内細菌類も検出される可能性があれば,腸内細菌の発育する●印の培地と,それの発育しない,しかし肺炎球菌のよく発育するコリスチン血液カンテンと,チョコレートカンテンを併用するのが能率的である.ジフテリア,リステリアの場合は,コリネバクテリウムの下に●のある培地を選ぶ.緑膿菌感染の可能性のある検体については,他の菌に対する培地とともに,NAC培地を併用することが適当である.目的菌がはっきりしていないときは,表のすべての菌がうまく配分されるような培地の組み合わせが必要となる.

 この表から,目的菌はよく発育し,他の不要な菌がなるべく発育しないような培地を選ぶようにすればよい.また,前述のように,分離菌種の範囲の狭い培地をいくつか組み合わせるのもよいであろう.

総説

臨床生理検査室

江部 充

pp.441-444

 本年1月の法律改正に伴い,検査技師も生理検査に携わることができるようになった.しかし,一概に生理検査といっても,その範囲はあまりに広いし,また医師との分業形態もまだ確立されていない.今月はその複雑な生理検査室について概説する.

技術解説

傍糸球体細胞顆粒の染色法(カラーグラフ参照)

西森 一正

pp.445-449

傍糸球体装置構造の概略

 腎の傍糸球体装置Juxtaglomerular apparatus(JGA)と呼ばれているのは輸入細動脈,輸出細動脈,その両細動脈にはさまった遠位尿細管でMacula densaと名づけられた部分,および両細動脈に接した糸球体血管極に存する特殊な細胞群(Polkissen)の4つの部分から構成されている(図1).

 1924年,杉山らがマウスでこの細胞群について最初の報告をしているが,1930年にGoormaghtigらが傍糸球体装置をレニン分泌部位と想定して以来,多くの人々の関心を呼ぶに至った.

ネガティブ染色法によるウイルス感染症の臨床検査法(グラフ参照)

橋本 和夫 , 石沢 肇 , 木村 瑞雄

pp.450-453

はじめに

 従来ウイルス性疾患は,その臨床症状に特徴あるものが多いため,細菌性疾患とは異なり,必ずしも病原体を確認することなしに診断が下される傾向にあった.

 これはポリオ,日本脳炎,痘瘡などは別として,一般にウイルス性皮膚疾患では,一定の臨床経過を経て全治するものが多く,たとえ確診が得られなくとも予後は概して良好であるという事実や,また従来のウイルス学的診断法があまりに経費と時間を要し,結果が出た時点ですでに臨床的に無価値になることが多かったためと考えられる.

臨床検査の問題点・28

抗生物質療法と臨床検査

真下 啓明 , 坂上 ノリ子

pp.454-458

最近の抗生物質療法の進展はめざましいものがある.抗生物質が効果的に治療に貢献するかどうかは,検査データがいかに‘正確に,早く’臨床へ帰るかによるところが大きい.そこで検体の出し方,菌の分離,感受性試験の解釈と問題点を検討してみる.(カットはカナマイシンの化学構造式)

コンピュータの基礎知識・4

システム設計

鈴木 次郎

pp.459-463

システムとは

 手近にある英和辞典でSystemという単語を調べてみよう.研究社の英和辞典では次のように意味が分類されている.

1) a.組織,体系

私のくふう

簡易な染色台の作り方

橋本 嘉夫

pp.463

 近年,化学療法の発達で細菌培養成績が陰性の場合があり,染色検鏡することの意義は大きなものがあります.染色にはグラム染色をはじめ結核菌の加温染色,その他いろいろの染色法がありますが,その染色に用いる簡易な染色台を,薬剤のあきかんと針金(8番線)を利用して作り,現在利用していますので報告します.

エッペンドルフ・マイクロリッターシステムによる超微量臨床化学検査・5

血清中のGOT,GPT,Al-P,LDHの活性測定

岡村 研太郎 , 村尾 周子 , 山戸 玲子 , 小延 鑑一

pp.464-467

はじめに

 前報1)までに本システムにより,血清10-200μlを用い,血清中の重金属,窒素化合物および脂質の微量比色定量を能率よく行なうことができた.今回は血清中のトランスアミナーゼ(GOT,GPT),アルカリホスファターゼ(Al-P),乳酸脱水素酵素(LDH)の4種目の活性測定を比色法で行なってみた.

 本システムは反応容器がプラスチック製であり,また恒温器がエアバス型となっている点から,酵素反応に適しているとはいいがたい.測定にあたってはあらかじめ基質溶液を恒温器中で十分に加温しておいたのちに,試料血清に加えることにした.微量ならびに時間短縮化のため基質の容積と血清容積の比率を替え,呈色液あるいは反応停止液の容積や濃度を変更して検量線の直線化をはかった.

座談会

分光光度計の構造と機能

渡辺 寔 , 飯田 初代 , 松村 義寛

pp.468-475

‘器械に弱いから’といって当たらず触らず逃げ回っていられないのが近ごろの検査室.そこで,比較的なじみの潔い器械のひとつである分光光度計を取り上げて,メーカーとユーザーの双方の立場から日常的に困った点やわからなくてまごついた経験などについて話し合っていただいた.

論壇

臨床検査技師としての条件

中 甫

pp.476-477

3つの条件

 毎年検査室に新しく就職してくる若き検査技師に私が必ず話すことばの中に,検査技師としての条件がある.最もたいせつな条件を第1に話し,次々に3つの条件について説明し,最初の課題としてもらうことにしている.それは,(1)検査法の手順に従って忠実に確実に検査を行なうこと,(2)創意くふうをこらし能率に留意すること,(3)自己の能力を最大にいかすことである.これがすべてであるとは決して思わないが,われわれがまず第1に心がけねばならないことであると信じている.次にこれを具体的に解説してみよう.

 臨床検査には数多くの方法がある.これらの1つ1つは決して偶然生まれたわけではない.測定法の途中で加えるわずかな試薬も,その背景には,数限りない検討が加えられていることを知らねばならない.検討なしの我流や近道は許されないのである.これは検査法すべてが完全なものであるということを意味しているのではない.多くの検査法はまだまだ改良の余地が残っている.しかしその原法に忠実に従って得たデータなしには比較はできないのである.この誤ちは定性検査において特に犯しやすい.

研究

超微量のためのガラス管採血と電解質値の検討

伊藤 佑士 , 山下 文雄 , 津川 信 , 林 真夫 , 船津 多賀子 , 高崎 好生 , 小池 茂之 , 吉浦 千尋 , 屋形 倭子 , 山崎 晴一朗

pp.478-482

はじめに

 低出生体重児未熟児では少量の採血と思っても,成人に換算すれば,相当大量の採血となる.体重1.5kgとすれば,1mlの採血は,おとなの40ml採血に相当し,5mlは200mlに相当する(図1).したがってできるだけ少ない試料で分析することは,小児科医(内科,外科ほか)の義務であり,小児の権利でもある.すでに超微量定量法については,斎藤正行,丹羽正治,柴田進,佐々木匡秀1-3)らが先駆者として努力をしているが,現在の大学を含む一般総合病院の中央検査室では,おとな中心の微量法程度にとどまっており,小児科医でありながらこのことを全く意に介せず,医原病としての貧血を作っている場合がある.われわれは,新生児でビリルビン,血糖,電解質,酸塩基など代謝試験の重要性を強調し,そのbatteryの項目決定と,それらの超微量による正確簡便な測定法を検討しているものであるが4),ここでは超微量測定法の基礎として,採血の各種条件を検討した結果を報告する.

市販クーム試薬の検討

宮川 千恵子 , 峯島 博子

pp.483-485

 セファロスポリン剤が赤血球に吸着することにより,クームス試験が陽性になるので,当中検において基礎的実験を行なった1,9)が,その際,市販のクームス試薬の種類により,陽性の出かたに差がみられた.そこで4種類の市販クームス試薬を用いて,性質,力価などについて2,3検討したので,結果を報告する.

尿線虫症4例とその虫体の観察

湯田 和郎 , 後藤 秀一

pp.486-488

 1965年10月,仙台市内の病院において,たまたま自律神経症と診断された患者の尿沈渣を鏡検したところ,線虫ようの虫体を見いだした.その後,わずか3週間の間に同様の患者3例を確認することができ,いずれも,線虫の幼虫(または虫卵)が尿中に見いだされ,短期間に,しかも4例中3例は仙台市居住者という限られた地区に発生したことなど興味ある点が多いので,患者の主要症状と尿を主とした臨床検査および,検出された線虫の幼虫について計測を行なったので,その概略について報告する.

東北大病院産婦人科におけるRh-Hr式血液型不適合に関する検査

田中 礼子

pp.489-493

はじめに

 先に東北大産婦人科における1964年から1969年までの母児間血液型不適合に関し,検査の進め方,検査方法,件数および依頼目的の変動について報告したが,そのうちRh-Hr式血液型不適合についてさらに詳しく報告する.

アゾスティックの洗浄液についての検討

岡田 尚武 , 田中 良枝 , 山下 八王子

pp.494-496

緒言

 アゾスティックの洗浄液としては,水を用いるのが普通であるが,退色がすみやかであるので,1,2秒間で洗浄し,洗浄後5秒以内に比色しなげればならないとされている.このような短時間内に比色しうるようになるには,かなり熟練を必要とするので,未熟練者が行なうとかなりの低値に判定し,正確度が悪い.

 われわれはアゾスティックの洗浄液を水以外のものに変えることにより,退色を抑制し,比色を安定化しうるのではないかと考え,種々の溶液について試みた結果,50%程度のグリセリン溶液でほぼ満足しうる結果を得たので報告する.

ひろば

検査と心理的コントロール

村田 徳治郎

pp.496

 毎日元気で働ける身体を保持する注意は,いわゆる‘健全な肉体と健全な精神’でこそ正しい検査を行なうことができるのではあるまいか.検査操作についてもなかなか満足できない.常に疑問と不安に追いかけられどおしである.肉体の疲労よりむしろ精神的な負担がこたえる.実際の業務時間は8時間でも,仕事の内容に関する下調べ,反省,操作上のくふうなどむしろ時間外にやることが多い.

 器械,試薬に添付してある使用説明書も,解説どおりに操作してもうまくそのとおりになってくれない.

新しいキットの紹介

細胞診固定法の比較検討—Cytoropの使用経験を中心として

福元 茂 , 小牧 謙蔵 , 久保 佳子 , 高橋 紀代子 , 岡田 聰

pp.497-500

はじめに

 塗抹細胞診における検体処理の問題,特に固定法の巧拙は以後の診断に多大の影響を及ぼすことは衆知のとおりである.

 従来から固定液はエーテル・アルコール(E-A)が最良とされ,その他種々の固定液が追試考案され,数多くの固定法が報告されている.われわれも日ごろから種々研究し,安定性と簡素化を図っている.今回はCytoropの固定液の使用経験について,従来のE-A法との比較検討を試みた.

新しい血清総コレステロール直接定量法の検討

田口 凉子 , 影山 信雄

pp.501-503

はじめに

 血清総コレステロールの測定は,動脈硬化研究班が標準法と定めたZak-Henly変法1)が最も広く採用されている2)

 しかしこの方法においても,最近のように日常検査件数の増加,あるいはこれに伴う迅速化の要求を満たすには,やや操作の繁雑さを認めざるをえない.

第4回国公私立大学病院臨床検査技術者研修会—講義形式による興味深い分科会

pp.505-508

 文部省主催による第4回国公私立大学病院臨床検査技術者研修が,1970年11月13日より11月20日まで全国42大学から67名が参加し,東京大学付属病院看護講堂において行なわれた.

 日程表のように3日間の総合的な講義と4日間の領域別分科会(生化学,血液学)が行なわれ,今回は実習に替わっておもに専門的講義形式により行なわれた.

シリーズ・日常検査における機械化のくふう・5

ミニペット分注器の作り方

水野 映二 , 小野 弘毅 , 仁科 甫啓 , 北村 元仕

pp.510-511

 日々に増加する化学検査の能率化を図るとき,試薬添加段階に分注器を導入することは効果的である.しかし,多くの分注器は操作の複雑さ,維持のむずかしさ,または価格や故障などの問題をもっている.これらの立場で私たちは精密度,目盛り合わせの難易,耐薬品性,分注速度,操作・洗浄の難易および価格について市販品の性能をチェックした結果,検査室での条件に適するものとしてミニペット分注器を選んだ.

 本器は活栓付き注射筒がハンドルによって180度半回転できるようになっており,ピストンが重力で上下して試薬の吸引一排出が連続して行なわれる.初期の市販品では測容ピストンが自由に回転し分注の再現性が悪くなりやすかった.そこで改良としてカーテンレールを用いてピストンの回転を防止して,すぐれた精度をあげることができた.従来のメスピペット・ホールピペットの替わりに本器を導入して能率化を図ったところ,試験管50本処理あたり従来の1/3-1/12に短縮できるようになった.私たちはミニペット分注器を日常検査に70台以上も導入して成果をあげている.

質疑応答

尿中Cdの定量法

A生 , 葛原 由章

pp.512

 問 本誌第14巻第13号の座談会‘重金属公害病と臨床検査’にCdの定量法について説明されておりますが,未熟な私たちには十分活用できる内容になっておりません.

 下記の2点についてご説明くださいますようお願いします.

Senior Course 生化学

ICGによる肝機能検査

石戸谷 豊

pp.513

 従来肝色素排泄機能険査としてBSP法が広く用いられてきたが,なおその特異性に幾多の疑問があり,また中等度黄疸のある疾患の成績判定に難点が伴った.また副作用として時に血管炎,重篤なアレルギー反応を起こすことが知られてからは,しだいにルーチン検査として用いられなくなってきた.

 Indocyanine Green(ICG)は1957年,Eastman Kodak研究所のBrookerらによって合成され,Foxらにより初めて循環動態の検査に応用された色素であるが,その後この色素が体内にはいると,急速にアルブミンと結合して全身の血管に分布したのち,選択的に肝にとり入れられ,その大部分が胆汁中に排泄され,しかも腎から排泄もなく,腸肝循環もなく,かつ副作用がほとんどないことから,BSP法にかわる有力な色素として今日脚光をあびるにいたった.

Senior Course 血液

出血時間(Bleeding time)

鈴木 弘文

pp.514

1.原理と意義

 皮膚を穿刺して毛細血管に小さな傷をつけ,その出血が化学的あるいは物理的な操作を加えずに自然に止血するまでの時間を測定する検査法である正したがって出血時間は血小板血栓(白色血栓)形成の時間,状態を測定する検査法といえる.出血時間はおもに血小板機能(特に粘着能),血小板数,血管機能あるいは組織液などが関与し,これらのどこかに異常がある場合には延長値を示す.

 一方,凝固因子機能は出血時間にはあまり影響しない調したがって凝固因子欠損に基づく出血性素因の場合は出血時間は正常域の値を示す.しかし2次出血時間(secondary bleeding time)は凝固血栓(赤色血栓)形成の状態が影響するため凝固因子欠損,特に血友病などの場合は異常値が認められる.また,von Willebrand病(血管性血友病,偽血友病)は第Ⅷ因子欠乏と出血時間の延長が認められる特異な疾患である.

Senior Course 血清

ランドシュタイナーの法則に従わぬ血液型(1)

村上 省三

pp.515

 ランドシュタイナーの法則というものがあります.あまり聞きなれない術語かもしれませんが,聞けば‘なんだ’と思われるようなものです.すなわちヒトのABO式血液型は抗Aおよび抗B判定用血清を使うと,それに対する血球の反応性から判定できることは皆様もよくご存じですが,逆にすでにA型およびB型とわかった血球を使って,血清の中にある抗体(抗Aまたは抗B)の有無を調べることによって確認することができます.そしてこの場合,両方から推定した血液型が一致するのが普通です.その関係を表に示しておきます.このきわめてたいせつなルールをいつからとはなしに,ABO式血液型発見者であるカール・ランドシュタイナー博士の名を冠して呼ぶようになったのだそうです.

 臨床医学でどの血液型が一番たいせつかと申しますと,なんといってもABO式血液型であると申さねばなりません.神がかり的な表現を許していただげるならば,神はABO式血液型が一番たいせつであればこそ,2つの方法で判定し,確認できるように作ってくださっているのだといってもよいと思います.ところが人間は罪深いものでありまして,神のせっかくのご好意をもすなおに受けいれず,判定用血清を使う方法のみを行なって,やらずもがなの誤ちを起こしているわけです.そしてときには患者の死をもってすら報いられているわけです.

Senior Course 細菌

ブドウ球菌の検査

永井 龍夫

pp.516

 ブドウ球菌はグラム陽性で,その培養菌(特に固形培地上の)がブドウの房状の配列を示すところからこの名がある.ブドウ球菌には黄色色素,コアグラーゼ,核酸分解酵素(DNase)などを産生しマンニット分解性,溶血性を示す黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)と,これらの活性を欠く表皮ブドウ球菌(Staphylococcusepidermidis)とがあり,前者が病原性ブドウ球菌として主役を演じている.

 患者材料の直接塗抹染色標本では,双球菌状や短い連鎖状を呈することがあるから注意を要する.

Senior Course 病理

症候と病理組織検査(5)—色素異常沈着

三友 善夫

pp.517

 色素の異常沈着は皮膚,口腔粘膜,腸粘膜の生検材料の検索にみられ,肝,腎,心,肺,脾,リンパ節などの剖検材料でもしばしば見うけられ,特にこれらの主要臓器では褐色色素の沈着が多い.色素沈着はその出現法から次のように分類されている.

(1)瀰漫性型—全身性病変として表われ,アジソン病,ヘモクロマトーシス,ベラグラ,肝硬変症,ポルフィリン症,オクロノーシス,砒素,銀,クロールプロマジンなどの薬剤中毒,長期間の輸血,脊髄性進行性筋萎縮症などの神経性病変,ウィップル病,ニーマン・ピック病,ゴーシェ病,みかん,柿,にんじん,かぼちゃなどの過食時にみるカロチン血症など.

Senior Course 生理1

ガスクロマトグラフィー(1)—その原理

村林 彰

pp.518

 Gas-chromatography (GC)が呼吸生理学の分野で,呼吸気ガス分析,血中ガス分析などに使用されているが,これは従来の化学的・物理的測定法に比し,少ない試料でよい精度が得られる,操作が簡単で分析時間が短い,呼吸生理関係のほとんどのガスが分析できる,記録・データ処理の自動化ができるなどの利点があるからと思われる.

 GCの原理は,シリカゲル,モレキュラーシーブなどの吸着剤を充填したカラム(固定相)に,吸着性の小さいガス,H2,Heなどをキャリヤーガスとして資料とともに流し(科動相),資料中の個々のガスに対する吸着剤の保持時間の差によって,それぞれのガスを分離するもので,通常,熱伝導度計によって,各ガスの熱伝導度差による電位差を検出,記録する.記録された各成分ガスのピーク曲線から,あらかじめ純物質により求めた保持時間で同定し,同じくあらかじめ求めた各成分の試料送入量とピーク面積の関係から定量を行なう.

Senior Course 生理2

心筋活動と心電図(2)

家本 武

pp.519

1.心電図の有用性とその限界

 心電図の与える情報は,大きく分けて,

(1)心臓の電気的位置,回転度など

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

64巻12号(2020年12月発行)

今月の特集1 血栓止血学のトピックス—求められる検査の原点と進化
今月の特集2 臨床検査とIoT

64巻11号(2020年11月発行)

今月の特集1 基準範囲と臨床判断値を考える
今月の特集2 パニック値報告 私はこう考える

64巻10号(2020年10月発行)

増刊号 がんゲノム医療用語事典

64巻9号(2020年9月発行)

今月の特集1 やっぱり大事なCRP
今月の特集2 どうする?精度管理

64巻8号(2020年8月発行)

今月の特集1 AI医療の現状と課題
今月の特集2 IgG4関連疾患の理解と検査からのアプローチ

64巻7号(2020年7月発行)

今月の特集1 骨髄不全症の病態と検査
今月の特集2 薬剤耐性カンジダを考える

64巻6号(2020年6月発行)

今月の特集 超音波検査報告書の書き方—良い例,悪い例

64巻5号(2020年5月発行)

今月の特集1 中性脂肪の何が問題なのか
今月の特集2 EBLM(evidence based laboratory medicine)の新展開

64巻4号(2020年4月発行)

増刊号 これで万全!緊急を要するエコー所見

64巻3号(2020年3月発行)

今月の特集1 Clostridioides difficile感染症—近年の話題
今月の特集2 質量分析を利用した臨床検査

64巻2号(2020年2月発行)

今月の特集1 検査でわかる二次性高血圧
今月の特集2 標準採血法アップデート

64巻1号(2020年1月発行)

今月の特集1 免疫チェックポイント阻害薬—押さえるべき特徴と注意点
今月の特集2 生理検査—この所見を見逃すな!

63巻12号(2019年12月発行)

今月の特集1 糖尿病関連検査の動向
今月の特集2 高血圧の臨床—生理検査を中心に

63巻11号(2019年11月発行)

今月の特集1 腎臓を測る
今月の特集2 大規模自然災害後の感染症対策

63巻10号(2019年10月発行)

増刊号 維持・継続まで見据えた—ISO15189取得サポートブック

63巻9号(2019年9月発行)

今月の特集1 健診・人間ドックで指摘される悩ましい検査異常
今月の特集2 現代の非結核性抗酸菌症

63巻8号(2019年8月発行)

今月の特集 知っておきたい がんゲノム医療用語集

63巻7号(2019年7月発行)

今月の特集1 造血器腫瘍の遺伝子異常
今月の特集2 COPDを知る

63巻6号(2019年6月発行)

今月の特集1 生理検査における医療安全
今月の特集2 薬剤耐性菌のアウトブレイク対応—アナタが変える危機管理

63巻5号(2019年5月発行)

今月の特集1 現在のHIV感染症と臨床検査
今月の特集2 症例から学ぶフローサイトメトリー検査の読み方

63巻4号(2019年4月発行)

増刊号 検査項目と異常値からみた—緊急・重要疾患レッドページ

63巻3号(2019年3月発行)

今月の特集 血管エコー検査 まれな症例は一度みると忘れない

63巻2号(2019年2月発行)

今月の特集1 てんかんup to date
今月の特集2 災害現場で活かす臨床検査—大規模災害時の経験から

63巻1号(2019年1月発行)

今月の特集1 発症を予測する臨床検査—先制医療で5疾病に立ち向かう!
今月の特集2 薬の効果・副作用と検査値

62巻12号(2018年12月発行)

今月の特集1 海外帰りでも慌てない旅行者感染症
今月の特集2 最近の輸血・細胞移植をめぐって

62巻11号(2018年11月発行)

今月の特集1 循環癌細胞(CTC)とリキッドバイオプシー
今月の特集2 ACSを見逃さない!

62巻10号(2018年10月発行)

増刊号 感染症関連国際ガイドライン—近年のまとめ

62巻9号(2018年9月発行)

今月の特集1 DIC診断基準
今月の特集2 知っておきたい遺伝性不整脈

62巻8号(2018年8月発行)

今月の特集 女性のライフステージと臨床検査

62巻7号(2018年7月発行)

今月の特集1 尿検査の新たな潮流
今月の特集2 現場を変える!効果的な感染症検査報告

62巻6号(2018年6月発行)

今月の特集1 The Bone—骨疾患の病態と臨床検査
今月の特集2 筋疾患に迫る

62巻5号(2018年5月発行)

今月の特集1 肝線維化をcatch
今月の特集2 不妊・不育症医療の最前線

62巻4号(2018年4月発行)

増刊号 疾患・病態を理解する—尿沈渣レファレンスブック

62巻3号(2018年3月発行)

今月の特集1 症例から学ぶ血友病とvon Willebrand病
今月の特集2 成人先天性心疾患

62巻2号(2018年2月発行)

今月の特集1 Stroke—脳卒中を診る
今月の特集2 実は増えている“梅毒”

62巻1号(2018年1月発行)

今月の特集1 知っておきたい感染症関連診療ガイドラインのエッセンス
今月の特集2 心腎連関を理解する

60巻13号(2016年12月発行)

今月の特集1 認知症待ったなし!
今月の特集2 がん分子標的治療にかかわる臨床検査・遺伝子検査

60巻12号(2016年11月発行)

今月の特集1 血液学検査を支える標準化
今月の特集2 脂質検査の盲点

60巻11号(2016年10月発行)

増刊号 心電図が臨床につながる本。

60巻10号(2016年10月発行)

今月の特集1 血球貪食症候群を知る
今月の特集2 感染症の迅速診断—POCTの可能性を探る

60巻9号(2016年9月発行)

今月の特集1 睡眠障害と臨床検査
今月の特集2 臨床検査領域における次世代データ解析—ビッグデータ解析を視野に入れて

60巻8号(2016年8月発行)

今月の特集1 好塩基球の謎に迫る
今月の特集2 キャリアデザイン

60巻7号(2016年7月発行)

今月の特集1 The SLE
今月の特集2 百日咳,いま知っておきたいこと

60巻6号(2016年6月発行)

今月の特集1 もっと知りたい! 川崎病
今月の特集2 CKDの臨床検査と腎病理診断

60巻5号(2016年5月発行)

今月の特集1 体腔液の臨床検査
今月の特集2 感度を磨く—検査性能の追求

60巻4号(2016年4月発行)

今月の特集1 血漿蛋白—その病態と検査
今月の特集2 感染症診断に使われるバイオマーカー—その臨床的意義とは?

60巻3号(2016年3月発行)

今月の特集1 日常検査からみえる病態—心電図検査編
今月の特集2 smartに実践する検体採取

60巻2号(2016年2月発行)

今月の特集1 深く知ろう! 血栓止血検査
今月の特集2 実践に役立つ呼吸機能検査の測定手技

60巻1号(2016年1月発行)

今月の特集1 社会に貢献する臨床検査
今月の特集2 グローバル化時代の耐性菌感染症

59巻13号(2015年12月発行)

今月の特集1 移植医療を支える臨床検査
今月の特集2 検査室が育てる研修医

59巻12号(2015年11月発行)

今月の特集1 ウイルス性肝炎をまとめて学ぶ
今月の特集2 腹部超音波を極める

59巻11号(2015年10月発行)

増刊号 ひとりでも困らない! 検査当直イエローページ

59巻10号(2015年10月発行)

今月の特集1 見逃してはならない寄生虫疾患
今月の特集2 MDS/MPNを知ろう

59巻9号(2015年9月発行)

今月の特集1 乳腺の臨床を支える超音波検査
今月の特集2 臨地実習で学生に何を与えることができるか

59巻8号(2015年8月発行)

今月の特集1 臨床検査の視点から科学する老化
今月の特集2 感染症サーベイランスの実際

59巻7号(2015年7月発行)

今月の特集1 検査と臨床のコラボで理解する腫瘍マーカー
今月の特集2 血液細胞形態判読の極意

59巻6号(2015年6月発行)

今月の特集1 日常検査としての心エコー
今月の特集2 健診・人間ドックと臨床検査

59巻5号(2015年5月発行)

今月の特集1 1滴で捉える病態
今月の特集2 乳癌病理診断の進歩

59巻4号(2015年4月発行)

今月の特集1 奥の深い高尿酸血症
今月の特集2 感染制御と連携—検査部門はどのようにかかわっていくべきか

59巻3号(2015年3月発行)

今月の特集1 検査システムの更新に備える
今月の特集2 夜勤で必要な輸血の知識

59巻2号(2015年2月発行)

今月の特集1 動脈硬化症の最先端
今月の特集2 血算値判読の極意

59巻1号(2015年1月発行)

今月の特集1 採血から分析前までのエッセンス
今月の特集2 新型インフルエンザへの対応—医療機関の新たな備え

58巻13号(2014年12月発行)

今月の特集1 検査でわかる!M蛋白血症と多発性骨髄腫
今月の特集2 とても怖い心臓病ACSの診断と治療

58巻12号(2014年11月発行)

今月の特集1 甲状腺疾患診断NOW
今月の特集2 ブラックボックス化からの脱却—臨床検査の可視化

58巻11号(2014年10月発行)

増刊号 微生物検査 イエローページ

58巻10号(2014年10月発行)

今月の特集1 血液培養検査を感染症診療に役立てる
今月の特集2 尿沈渣検査の新たな付加価値

58巻9号(2014年9月発行)

今月の特集1 関節リウマチ診療の変化に対応する
今月の特集2 てんかんと臨床検査のかかわり

58巻8号(2014年8月発行)

今月の特集1 個別化医療を担う―コンパニオン診断
今月の特集2 血栓症時代の検査

58巻7号(2014年7月発行)

今月の特集1 電解質,酸塩基平衡検査を苦手にしない
今月の特集2 夏に知っておきたい細菌性胃腸炎

58巻6号(2014年6月発行)

今月の特集1 液状化検体細胞診(LBC)にはどんなメリットがあるか
今月の特集2 生理機能検査からみえる糖尿病合併症

58巻5号(2014年5月発行)

今月の特集1 最新の輸血検査
今月の特集2 改めて,精度管理を考える

58巻4号(2014年4月発行)

今月の特集1 検査室間連携が高める臨床検査の付加価値
今月の特集2 話題の感染症2014

58巻3号(2014年3月発行)

今月の特集1 検査で切り込む溶血性貧血
今月の特集2 知っておくべき睡眠呼吸障害のあれこれ

58巻2号(2014年2月発行)

今月の特集1 JSCC勧告法は磐石か?―課題と展望
今月の特集2 Ⅰ型アレルギーを究める

58巻1号(2014年1月発行)

今月の特集1 診療ガイドラインに活用される臨床検査
今月の特集2 深在性真菌症を学ぶ

57巻13号(2013年12月発行)

今月の特集1 病理組織・細胞診検査の精度管理
今月の特集2 目でみる悪性リンパ腫の骨髄病変

57巻12号(2013年11月発行)

今月の特集1 前立腺癌マーカー
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査②

57巻11号(2013年10月発行)

特集 はじめよう,検査説明

57巻10号(2013年10月発行)

今月の特集1 神経領域の生理機能検査の現状と新たな展開
今月の特集2 Clostridium difficile感染症

57巻9号(2013年9月発行)

今月の特集1 肺癌診断update
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査①

57巻8号(2013年8月発行)

今月の特集1 特定健診項目の標準化と今後の展開
今月の特集2 輸血関連副作用

57巻7号(2013年7月発行)

今月の特集1 遺伝子関連検査の標準化に向けて
今月の特集2 感染症と発癌

57巻6号(2013年6月発行)

今月の特集1 尿バイオマーカー
今月の特集2 連続モニタリング検査

57巻5号(2013年5月発行)

今月の特集1 実践EBLM―検査値を活かす
今月の特集2 ADAMTS13と臨床検査

57巻4号(2013年4月発行)

今月の特集1 次世代の微生物検査
今月の特集2 非アルコール性脂肪性肝疾患

57巻3号(2013年3月発行)

今月の特集1 分子病理診断の進歩
今月の特集2 血管炎症候群

57巻2号(2013年2月発行)

今月の主題1 血管超音波検査
今月の主題2 血液形態検査の標準化

57巻1号(2013年1月発行)

今月の主題1 臨床検査の展望
今月の主題2 ウイルス性胃腸炎

icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら