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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査15巻6号

1971年06月発行

雑誌目次

カラーグラフ

重金属の組織化学

前田 隆英 , 伊原 信夫

pp.526-527

 組織化学は生体におけるいろいろな物質の所在や働きを,組織細胞の構造との関連においてとらえようとする欲の深い目標を方法論的にもっている.重金属を対象とする組織化学の分野でも,近年大きな進歩がもたらされ,種々の金属の沈着像ないし所在が鮮明な呈色反応によって認識されるようになった.

ここのカラー写真がその例で,病的に多量の金属の沈着があらわれた場合(図1,7),意識的に多量の金属を摂取して中毒を起こしたような例(図3,4),あるいは実験動物に金属を投与した場合(図2,8)や,生理的条件である特定の細胞に集中的にみられる場合(図5,6)などである.また,最近では電顕的にも新しい方法論が開拓されつつあり,組織化学はまだまだ大きな発展性を秘めている段階にあるといえる.(技術解説参照)

グラフ

東芝総合健診センター—総合的に健康をチェックアップ!

寺岡 弘平

pp.529-532

 当センターは消化器,循環器,呼吸器の疾患をはじめ,糖尿病,血液疾患など,広く成人病を対象とした,総合的多角的健康チェックァップシステムである.検査は機械化・自動化を行なっているので,多項目の検査をきわめて短時間で行なうことができ,ひいては省力化ともなり,したがって安い費用となる.

 このシステムの大きな特色の1つはコンピュータを利用していることで,記録は長く保存され,被検者の健康状態の比較検討ができ,健康管理の面でもきわめて利用価値が高いことである.

臨床化学分析機器の進歩—第18回日本医学会総合より

野本 昭三

pp.533-536

 さかのぼって医学のあゆみを見るに,その進歩が常にその時代の一般科学技術によってささえられ推進されてきたことがうかがわれる.ことに近代の医学にあっては,新しい科学機器の開発のたびにこれまで知りえなかった生物科学的現象からの情報が伝えられ,その積み重ねが現代医学の多彩な進歩となって存在していると考えられるのであるが,その1つの実証を今回の医学会総会(4月5-7日)学術展示の中にもありありと見ることができる.ここには特に"臨床化学分析の進歩"を取りあげることになったが,臨床化学分析に携わる者にとってまことに意義のあるものである.ここに展示された機器の選定はもっぱら日本分析機器工業会に一任されたということであるが,ここに展示されたもの以外にも同種のものでいくつかすぐれた製品があることはいうまでもない.そして,今後さらに科学機器の進歩がますます医療の向上に貢献することが期待される.

血球観察の基礎・6

骨髄像の読み方

衣笠 恵士

pp.538-539

38.骨髄像の理解の必要性

 血液学または血球そのものを学ぶ者にとって,骨髄像の理解ということは一番たいせつなことであり,これなくしては本当の興味ということは生まれてこない.講習会などでも熱心に骨髄細胞の勉強がされているが,各血球の幼若型を理解していないと白血病の場合のように,幼若細胞が末梢血中に出現したときの末梢血液像の算定に支障をきたすことになる.

ノモグラム・18

血液ガス計算尺(37℃)

藤本 淳

pp.541

作り方

(1)太い黒線にそって切り,×印内を切り抜く.

(2)〔Ⅰ〕の台紙を点線にそって折り,のりをつけて袋状にして,〔Ⅱ〕の台紙を間に入れる.

検査室の便利表・18

総説

オーストラリア抗原<Au抗原>

石田 名香雄 , 白地 良一

pp.545-551

Au抗原の定義

 血清肝炎の患者血清に証明される抗原で,その本態は‘血清肝炎ウイルスの核酸を含まないカプシド,あるいはエンベロープであろう’と現在のところ推定されている.

 われわれが銘記すべきことは,Au抗原陽性の血液をたとえ1単位(200ml)でも輸血すると,受血者の70%に肝炎(無黄疸であってもGOT,GPTなどの上昇する肝炎を含む)が発生することである。したがって輸血に先だってAu抗原の有無をスクリーニングすることは,今後われわれの果たすべき重要な責務である.またAu抗原を検出するため,いかなる抗原抗体反応が最も鋭敏か,またどんな種類の抗体(Anti-Au)を選べば広範囲にAu抗原を検出できるか,基礎知識をかためておく必要がある.

技術解説

重金属の組織化学(1)—その検出法

前田 隆英 , 伊原 信夫

pp.552-558

まえがき

 化学的にいわゆる重金属と称する元素はおよそ35種類*1)以上にも及ぶが,われわれの身近にあって,明らかに生体の機能に影響を及ぼしているとみなされるもの,あるいは組織化学*2)的検索の対象となりうるものは現在のところそれほど多くない.

 組織化学的にこれらの重金属の検出を行なおうとする際の主要なねらいは,どの物質がどの部位(組織か細胞の)に存在し,または沈着しているかをみきわめることにおかねる.‘どれくらい’という量を認識するための鋭敏性は方法論的な制約があって,生化学的検出法に劣る場合が多い.しかし,臓器や組織全体としての含有量は微量であっても,局部的に(たとえばある特定の細胞内に)ある程度以上の含有量がみられる場合には,組織化学的証明法は大きな力を発揮する.

臨床検査に使ったRIの正しい廃棄のしかた

望月 尚文

pp.559-563

 放射性同位元素(RI)は核医学の分野でも活発に利用されており,今後も検査技術の進歩,放射性薬品の開発に伴って,利用件数も使用場所も増加するものと思われる.しかしながら,その廃棄物は,取り扱いのいかんによっては深刻な社会不安を起こしかねない不要物であり,ことに公害問題の騒がしい今日では一層痛切に感ぜられるところである.

 一口にRIの廃棄といっても,いくつかの段階がある.臨床検査室で廃棄物を容器に投入する段階もあれば,廃棄物を廃棄業者に引き渡したり,廃棄設備でいろいろな処理を行なったりする廃棄の段階もある.この稿では,臨床検査室のテクニシャンの参考になる段階の廃棄を中心として説明し,いわゆる保健物理担当者の行なう濃縮・焼却固型化などの処理については言及しないことにした.RI廃棄は,その歴史も浅く,技術的にも未解決な問題が多いが,正しい廃棄を行なう場合の参老に供したいと思う.

私のくふう

ユニグラフ用の試験管立て

片平 宏

pp.563

 緊急時やスクリーニングの目的のために,検査物は迅速性を要求され,そのために簡易化が進み,同時に検体の量も少量で結果が得られるような方向に急速に進歩しているのであるが.それとともに結果の正確度や精密度の維持も忘れてはならないことがらとして,簡易法の取り扱いにくり返し注意が叫ばれている.

 われわれは緊急時によく使用されるユニグラフをその原理にそむかず,できるだけ取り扱いやすくするために,専用の試験管立てを考えてみたので以下にそれを紹介する.

臨床検査の問題点・29

細胞診の実際—その固定と染色

高橋 正宜 , 池田 栄雄 , 平田 守男

pp.564-569

癌の早期発見が重要視されている今日,サイトスクリーナー(細胞検査士)の果たす役割は大きい.的確な診断は,標本作成の良否にかかっている.固定法・染色法を検討し,標本作成のポイントを追究する.(カットは子宮体部癌細胞)

コンピュータの基礎知識・5

プログラミング

鈴木 次郎

pp.570-574

プログラムとは何か

 コンピュータは確かにすぐれた機械であり,多くの仕事に使える潜在的可能性をもっているが,様械それ自体だけではなんの力も発揮できない.ここにコンピュータの大きな特徴がある。ある問題を計算機に解かせるには,その仕事を分析し,論理的に一定の手順に従って計算機に指図を与えることが必要である.このことを,プログラム(Program)と呼び,プログラムを書く作業そのものをプログラミング(Programming)と呼んでいる,つまりコンピュータはプログラムというものがなければまさに‘無用の長物’であるといえる.プログラムそのものやプログラミングに役だつ知識・技術を総称してソフトウェア(Soft ware)と呼び,計算機本体の物自体をハードウェア(Hard ware)と呼ぶのはこのような理由によるものともいえる.

 このようにコンピュータ・システムをハードウェアとソフトウェアに分けて考えると表1のように定義できる.

エッペンドルフ・マイクロリッターシステムによる超微量臨床化学検査・6

緊急検査としてのブドウ糖,ビリルビンおよび血中尿素窒素の系統的迅速測定方式

鬼頭 節子 , 村尾 周子 , 冨田 重良 , 小延 鑑一

pp.575-578

 前回の酵素活性測定で血清代謝成分13種目のマイクロリッタースケールの実用的な測定方式を述べた.これらの結果からも本システムは特に除タンパクを必要とする種目の迅速測定に適しているといえる.すなわち,Marburg pipetにょる試料,試薬ならびに除タンパク上清などの迅速な秤取や高速度遠心機の効率のよさなどがマイクロリッタースケールとあいまって,その機能が発揮されている、本シリーズの最終回はこれを緊急検査に応用すべくブドウ糖,ビリルビンおよび血中尿素窒素の3種目の系統的迅速測定方式をくふうした.これはまた第1回に述べたように,臨床情報は信頼性だけでは不十分で迅速性が大きく評価されるのであり,この点は従来から‘緊急’あるいは‘データ至急’などと表現されていたのである.

 著持らはこの‘緊急’なる表現内容に2種類があることを感じている.第1は診療スケジュールに密着した検査で,心臓などの外科手術や人工腎療法などで代表されるスピードが要求される場合と,第2は交通事故などの突発的な場合のスピーディな検査.のいずれかになる.第1の場合はあらかじめ準備することができ,1坪ラボラトリーに適している.それで分析スピードを第1に考えてブドウ糖はCalbiochem社のGlucose Stat-PackによるUV法(366 nm>,ビリルビンは和光キット,血中尿素窒素はDAM-TSC試薬で,いずれも比色法(546nm)を系統的に組み合わせることで,試料血液を受理してから10分以内にブドウ糖を,20分でビリルビン,30分で血中尿素窒素と計3棚1の測定を完了できる図1に示す系統的方式を試みた.

論壇

プロの検査室を目ざす

斎藤 正行

pp.580-581

たいしたもので,自分の国が世界第2位の経済大国になったとか.どうもピンとこないがとにかくおめでたい.日本人のすばらしい,俗にいう勤勉さのおかげと考えるが,外人の多くはそうはいわず,ヒガミも手伝ってかスマート(いい意味ではなくクレージイの別表現)という.たとえば何ごとでもまねる.そして必ず行きすぎ,商品なら逆に売りつけて反感を買ったり,農薬ならアメリカの倍の使用量で公害を招いたり……,一そして私たちの検査制度も中央化しすぎてかえって不便になったり……

WHOの機構—検査活動を中心に

東 義國

pp.582-586

 上の主題が与えられたので,個々の臨床検査の術式そのものよりも,検査技術の適用の問題などを中心に,WHOの仕事のしくみ,その考え方などを述べてみたい.最近はとぎどき新聞にもその名が出るが,わが国ではWHOのことがあまり知られていないようである.他のアジア諸国と違い,日本は援助を受けるより与える側にあるのだからむりもないが,WHO加入国としての分担金も払っていることだし,その存在はもっと人に知られてもよいと思う.

海外だより

Hôpital Cantonal de Genéve(スイス,ジユネープ州立病院)の中央検査部に勤務して

若林 祐子

pp.587-589

はじめに

 何年か前からばく然とでしたが"外国の,特に欧州の近代的病院で衛生検査技師として自分の力を試してみたい……"という望みをいだいておりましたが,最近具体化し,昨年8月からこのスイスのGenéve市にある最大の規模を誇る州立病院(Hôpital Cantonal de Genéve)の中央検査部門(Laboratoire Central)に就職勤務することがでぎました.

 すべてが初めての経験ということの連続でしたが,日本で習得した力量をそのまま発揮できる同じ職種であること,Laboratoireの皆がとても親切であり,さらに10月末から約3週間ほど札幌医大中央検査部の佐々木先生がここで研究を行なっていったことなどもあって,ほぼ半年ほど経った今では,いつの間にか毎日の生活,検査の仕事にも慣れてまいりました.

研究

Weigert's弾性線維染色法の基礎的検討

鈴木 昭

pp.590-593

 弾性線維染色法にはWeigert's Resorcin-Fuchsin法,Orcein法,Verhoeff氏法,Gomori's Aldehyde-Fuchsin法などあり,多用されている.しかしそれぞれ染色液の作り方,染色法などに一長一短があり,これが最もいいといいきれる,安定度の高い方法であると限定することは困難なことである.

 中でもWeigert's Resorcin-Fuchsin法はResorcin-Fuchsin(以下R・Fと略す)の作製法の困難性をのぞけばかなりの染色性が得られ,微細な弾性線維まで染めうる点,他の弾性線維染色法と比較すればすぐれていると思われる.

梅毒血清反応の検討(Ⅱ)—主として臨床診断からみたFTA-ABS,TPHAの成績について

吉岡 秀雄 , 磯部 淳一 , 篠原 紀美代 , 庄野 和子 , 山中 学

pp.594-597

 現行のカルディオライピンを抗原とした梅毒血清反応(Serologic test for syphilis以下STS)は,抗原活性をもつと考えられるカルディオライピンが,梅毒病原体のトレポネーマ・パリダム(TP)と無関係のリン脂質であるため,梅毒以外の血清でも,しばしば生物学的偽陽性反応(Biological false positive reaction以下BFP)を起こすことが知られている.

 このBFPを除外する方法としてTPを抗原とした検査法の開発が進められ,1949年Nelsonら1)によりTPIテストが発表されたのを端緒として,種々の方法が考案されている.—ところで,このTP反応にも求められることは,まず第1に鋭敏度,特異度が高いこと,もう1つは日常の臨床検査に導入が可能な,技術的に簡単な検査法であることの2点である.当検査室においても多年STS,TP反応について比較検討を行なっているが,前回,STS3法,RPCF,FTA−200,TPHAについて検討を行なった結果,TP反応においても,なお鋭敏度,特異度において問題があることを指摘した2)

結核菌耐性検査におけるリング拡散法の研究—第2報 成績判定表の作成

平峰 繁

pp.598-601

 培地内にディスクをおき,薬剤を拡散させて行なう結核菌の薬剤耐性検査には,直立拡散法があるが,従来の試験管を特定のシャーレに替えて,1枚の平板培地上で同時に2種ないし3種類の耐性測定が行なえるようにした能率的なリング拡散法を考案し,さきに報告した1).今回は本法の成績判定表を作るためにリング拡散法と,主として稀釈法との相関関係をSM,INH,PAS,KMについてみたので報告する.

肝疾患患者における血清IgGとそのタンパク分画について

宮谷 勝明 , 福井 巌

pp.602-604

 免疫学的沈降反応を用いた抗原微量定量法が開発されてから,数多くの検体を単に操作できるようになった.この方法を用いて血漿(血清)あるいは他の体液のタンパクを定量することにより,他の方法では検索しえなかった病変が発見でき,診断1),経過の観察2)および予後3)などの判定に資する場合が少なくない.

 すでに各種疾患時における血中IgA,IgMおよびIgGの量的変動については数多くの報告4-6)がみられる.われわれは肝疾患患者(慢性肝炎,肝硬変症)における血清IgGとそのタンパク分画の量的変動およびその両者の関係について検討を加えたので,その成績を報告する.

FTA-ABSについて

河瀬 正晴 , 原 功

pp.605-608

はじめに

 梅毒血清反応として,従来からカルジオライピン1)を抗原とした各種反応が行なわれてきた.しかし,カルジオライピンはトレポネーマ・パリーダムとは無関係のリン脂質であるため,梅毒以外の疾患に際してもかなりの率で陽性を呈する.この偽陽性反応は生物学的偽陽性反応(BFP)として古くより知られていた.この問題を解決するにはトレポネーマ・パリーダムそのものを抗原とする反応を採用することが最善の方法であることは明白である.

 そこでわれわれはTP抗原を使用した反応として,TPHA2,3)とFTA-ABS4-7)を採用した.特にTPHAは術式が簡単で特別な機械なども不要であるため,日常検査として広く採用されている.反面,FTA-ABSは螢光顕微鏡8)を必要とし,術式も複雑であるため,日常検査として広く採用されるにはぼお多くの問題を残している.

常時閉鎖式の簡易弁を用いた分注装置の作成,ならびにその基礎実験

奥村 明 , 魚住 光郎

pp.609-610

はじめに

 臨床検査ならびに多方面の実験室において,一定量の液体を測り採る操作がくり返されることが頻繁に行なわれている.このことは特に臨床検査室において最も基本的なことで,かつたいせつな作業である.このくり返しの操作を手際よく,能率的にする目的で手動,あるいは電動の分注装置が多くの実験・研究室において用いられている.

 これらの分注装置は便利であるにもかかわらず,一般にピペット程度には用いられていない。その原因は,まず第1にピペットに比べて高価であること,第2には,微量の測定には制限が加わるなどによる.

新しいキットの紹介

Boehringerキットを用いたトリグリセライドの酵素的測定

仁科 甫啓 , 北村 元仕 , 林 幸子 , 浅沼 洋子

pp.611-613

はじめに

 脂質分析技術の発展に伴って,生体内におけるトリグリセライド代謝,役割も多岐にわたって解明されつつある.同時に,各種疾患におけるトリグリセライドの臨床的意義もしだいに明らかとなり,検査室におけるトリグリセライド分析の重要性が認識されてきている.

 トリグリセライドの測定はトリグリセライド自体が化学的な特異性に乏しかったために,従来はVan Handelらによって確立されたクロモトロープ酸発色による方法や,その改良法が主として用いられてきた2).これらの方法はかなり煩雑で長時間を要し,また,高度の分析技術が要求された.

シリーズ・日常検査における機械化のくふう・6

ミニペット分注器の使い方(2)

水野 映二 , 小野 弘毅 , 仁科 甫啓 , 北村 仕元

pp.614-615

 前号(1)で組み立てたミニペット分注器(以下ミニペット)をルーチンに導入するにあたり,そのまま使用しても十分な効果を有するが,さらに検査の目的に合わせていろいろくふうを加えるといっそう効用が期待される.

 実際に私たちの検査室でくふうした例について説明する.

Senior Course 生化学

GOTアイソザイム

石戸谷 豊

pp.617

1.GOT-mとGOT-s

 GOTは動物組織に最も広く分布し,臨床的にも数多く研究されてきた代表的酵素である.最近に至り,細胞内局在を異にするmitochondrial GOT(GOT-m)とcytoplasmic GOT(GOT-s)の2種類のアイソザイムが存在することが明らかにされ,その病態生理学的意味の解明がすすみつつある.

 動物の肝や心を材料として,硫安分画,遠心沈殿,クロマトグラフィーなどを巧みに組み合わせて抽出するとGOT-mとGOT-sをほぼ単一な酵素として分離することができる.表に牛肝より精製したGOT-sとGOT-mの性質を和田らの成績1)を引用し,さらに著者の経験を追加し一括して示した.基質に対するKmの差はGOTアイソザイムの基本的性質の差の1つであり,その細胞内機能の分担に大きな意味を有するものと考えられている.

Senior Course 血液

毛細血管抵抗試験—(eapillary resistance tests)

鈴木 弘文

pp.618

 皮膚の毛細血管に外部より一定の陽圧あるいは陰圧を加え,一定時間後に溢血斑の算定を行なうことにより毛細血管の抵抗性を検査する方法である.陽圧を加える方法を陽圧法,陰圧を作用させる方法を陰圧法という.

Senior Course 血清

ランドシュタイナーの法則に従わぬ血液型(2)

村上 省三

pp.619

1.余剰型

 これは‘おもて検査’の成績からはランドシュタイナーの法則にあてはめますと,‘存在するはずのない’抗体が血清の中にあるため‘うら検査’'の成績と一致しない場合です.一般にはランドシュタイナーの法則が適用できたときにみられる血清中の抗体以外の抗体を,不規則性抗体(irregular antibody)と1呼]んでいます.この項のケースにみられるような抗体や,Rh0(D)陰性のヒトに免疫でできた抗Rh0(D)抗体〔Rh0(D)陰性のヒトでも血清中には抗Rh0(D)抗体はないのが普通〕などがそれの中に入れられています.

 余剰型にはたとえば‘おもて’からみるとA型であるのに,‘うら’では抗A抗体も抗B抗体も検出されるので,O型のように見える場合などがあげられます.この場合は詳しく申しますとこの人は,A2(またはそれ以外のA型亜型であることもある)型で,血清中には当然あるべき抗B抗体のほかに抗A1抗体があったのだということになります.もちろんこの場合,不規則性抗体としての抗A1抗体は普通の抗A抗体に比べますと,抗体価も一段と低く(せいぜい16倍くらいまで,普通は多くは64-256倍くらい),しかもその反応は低温でかなり強いが,高いところ,たとえば37℃ではほとんどまたは全く反応がみられません.普通の抗A抗体でも低温のほうが強いのですが,それでも37℃でもまだ32倍前後の抗体価は示します.またご当人のA型血球はこの場合の抗A1抗体とは反応しませんが,普通の抗A抗体はこの人の血球とも反応します.多少弱いことがあるかもしれませんが.

Senior Course 細菌

レンサ球菌の検査

永井 龍夫

pp.620

1.溶連菌と緑連菌

 レンサ球菌が典型的な連鎖状の配列を示すのは,固型培地上の培養菌よりも液体培養の場合である.通常本菌の培養には血液カンテン培地が使用されるが,血液加培地は本菌の発育増殖に好適であるのみでなく,分類の基本となる溶血態度を観察できるので便利である.

 レンサ球菌の溶血態度には2つの型があり,溶血環が緑色を呈するものをα型溶血,溶血環が完全に透明になるものをβ型溶血と呼び,溶血を示さぬものをα型,β型と対比させる意味でγ型と呼んでいる.

Senior Course 病理

症状と病理組織検査(6)—黄疸

三友 善夫

pp.621

 黄疸(Jaundice,Icterus,Ikterus,Gelbsucht)は胆汁色素が血液中に増加し,身体の組織が黄色に着色する状態で,皮膚が黄色ないし黄褐色となり,眼の鞏膜は黄色尿はビール色を呈する.これは血中のビリルビンの増加により診断されるので高ビリルビン血症とも呼ばれる.

 黄疸の分類はその成りたちによって,①ビリルビンの産生過剰,②ビリルビンの肝臓からの排泄,③胆道の通過障害,また発生の機序から,①溶血性黄疸,②肝細胞性黄疸,③閉塞性黄疸,さらに肝臓を中心として,①肝前性黄疸,②肝性黄疸,③肝後性黄疸などに分けられてている.

Senior Course 生理1

ガスクロマトグラフィー(2)—応用

村林 彰

pp.622

1.血液ガス

 Van Slyke法によるO2含量の測定は,測定に時間がかかり,熟練を要するなどの欠点があり,前回のGC法の原理で述べたように,操作が簡単で分析時間が短く,精度がよい,データ処理が可能であるなどの点で,GC法がVan Slyke法に替わろうとしている.

 ガス抽出法には,(1) Van Slyke装置を利用するもの,(2)高真空抽出装置を用いる法,(3)キャリヤーガスのBubblingによるもの,などがある.ここでは,(3)について,測定法を述べる.

Senior Course 生理2

脈波のとりかた(1)—容積脈波—光電式指尖容積脈波計の場合

椎名 晋一

pp.623

 容積脈波の測定にはストレンゲージ法,インピーダンス法,光電法などがあるが,ここでは最も普及している光電法について解説する.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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60巻10号(2016年10月発行)

今月の特集1 血球貪食症候群を知る
今月の特集2 感染症の迅速診断—POCTの可能性を探る

60巻9号(2016年9月発行)

今月の特集1 睡眠障害と臨床検査
今月の特集2 臨床検査領域における次世代データ解析—ビッグデータ解析を視野に入れて

60巻8号(2016年8月発行)

今月の特集1 好塩基球の謎に迫る
今月の特集2 キャリアデザイン

60巻7号(2016年7月発行)

今月の特集1 The SLE
今月の特集2 百日咳,いま知っておきたいこと

60巻6号(2016年6月発行)

今月の特集1 もっと知りたい! 川崎病
今月の特集2 CKDの臨床検査と腎病理診断

60巻5号(2016年5月発行)

今月の特集1 体腔液の臨床検査
今月の特集2 感度を磨く—検査性能の追求

60巻4号(2016年4月発行)

今月の特集1 血漿蛋白—その病態と検査
今月の特集2 感染症診断に使われるバイオマーカー—その臨床的意義とは?

60巻3号(2016年3月発行)

今月の特集1 日常検査からみえる病態—心電図検査編
今月の特集2 smartに実践する検体採取

60巻2号(2016年2月発行)

今月の特集1 深く知ろう! 血栓止血検査
今月の特集2 実践に役立つ呼吸機能検査の測定手技

60巻1号(2016年1月発行)

今月の特集1 社会に貢献する臨床検査
今月の特集2 グローバル化時代の耐性菌感染症

59巻13号(2015年12月発行)

今月の特集1 移植医療を支える臨床検査
今月の特集2 検査室が育てる研修医

59巻12号(2015年11月発行)

今月の特集1 ウイルス性肝炎をまとめて学ぶ
今月の特集2 腹部超音波を極める

59巻11号(2015年10月発行)

増刊号 ひとりでも困らない! 検査当直イエローページ

59巻10号(2015年10月発行)

今月の特集1 見逃してはならない寄生虫疾患
今月の特集2 MDS/MPNを知ろう

59巻9号(2015年9月発行)

今月の特集1 乳腺の臨床を支える超音波検査
今月の特集2 臨地実習で学生に何を与えることができるか

59巻8号(2015年8月発行)

今月の特集1 臨床検査の視点から科学する老化
今月の特集2 感染症サーベイランスの実際

59巻7号(2015年7月発行)

今月の特集1 検査と臨床のコラボで理解する腫瘍マーカー
今月の特集2 血液細胞形態判読の極意

59巻6号(2015年6月発行)

今月の特集1 日常検査としての心エコー
今月の特集2 健診・人間ドックと臨床検査

59巻5号(2015年5月発行)

今月の特集1 1滴で捉える病態
今月の特集2 乳癌病理診断の進歩

59巻4号(2015年4月発行)

今月の特集1 奥の深い高尿酸血症
今月の特集2 感染制御と連携—検査部門はどのようにかかわっていくべきか

59巻3号(2015年3月発行)

今月の特集1 検査システムの更新に備える
今月の特集2 夜勤で必要な輸血の知識

59巻2号(2015年2月発行)

今月の特集1 動脈硬化症の最先端
今月の特集2 血算値判読の極意

59巻1号(2015年1月発行)

今月の特集1 採血から分析前までのエッセンス
今月の特集2 新型インフルエンザへの対応—医療機関の新たな備え

58巻13号(2014年12月発行)

今月の特集1 検査でわかる!M蛋白血症と多発性骨髄腫
今月の特集2 とても怖い心臓病ACSの診断と治療

58巻12号(2014年11月発行)

今月の特集1 甲状腺疾患診断NOW
今月の特集2 ブラックボックス化からの脱却—臨床検査の可視化

58巻11号(2014年10月発行)

増刊号 微生物検査 イエローページ

58巻10号(2014年10月発行)

今月の特集1 血液培養検査を感染症診療に役立てる
今月の特集2 尿沈渣検査の新たな付加価値

58巻9号(2014年9月発行)

今月の特集1 関節リウマチ診療の変化に対応する
今月の特集2 てんかんと臨床検査のかかわり

58巻8号(2014年8月発行)

今月の特集1 個別化医療を担う―コンパニオン診断
今月の特集2 血栓症時代の検査

58巻7号(2014年7月発行)

今月の特集1 電解質,酸塩基平衡検査を苦手にしない
今月の特集2 夏に知っておきたい細菌性胃腸炎

58巻6号(2014年6月発行)

今月の特集1 液状化検体細胞診(LBC)にはどんなメリットがあるか
今月の特集2 生理機能検査からみえる糖尿病合併症

58巻5号(2014年5月発行)

今月の特集1 最新の輸血検査
今月の特集2 改めて,精度管理を考える

58巻4号(2014年4月発行)

今月の特集1 検査室間連携が高める臨床検査の付加価値
今月の特集2 話題の感染症2014

58巻3号(2014年3月発行)

今月の特集1 検査で切り込む溶血性貧血
今月の特集2 知っておくべき睡眠呼吸障害のあれこれ

58巻2号(2014年2月発行)

今月の特集1 JSCC勧告法は磐石か?―課題と展望
今月の特集2 Ⅰ型アレルギーを究める

58巻1号(2014年1月発行)

今月の特集1 診療ガイドラインに活用される臨床検査
今月の特集2 深在性真菌症を学ぶ

57巻13号(2013年12月発行)

今月の特集1 病理組織・細胞診検査の精度管理
今月の特集2 目でみる悪性リンパ腫の骨髄病変

57巻12号(2013年11月発行)

今月の特集1 前立腺癌マーカー
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査②

57巻11号(2013年10月発行)

特集 はじめよう,検査説明

57巻10号(2013年10月発行)

今月の特集1 神経領域の生理機能検査の現状と新たな展開
今月の特集2 Clostridium difficile感染症

57巻9号(2013年9月発行)

今月の特集1 肺癌診断update
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査①

57巻8号(2013年8月発行)

今月の特集1 特定健診項目の標準化と今後の展開
今月の特集2 輸血関連副作用

57巻7号(2013年7月発行)

今月の特集1 遺伝子関連検査の標準化に向けて
今月の特集2 感染症と発癌

57巻6号(2013年6月発行)

今月の特集1 尿バイオマーカー
今月の特集2 連続モニタリング検査

57巻5号(2013年5月発行)

今月の特集1 実践EBLM―検査値を活かす
今月の特集2 ADAMTS13と臨床検査

57巻4号(2013年4月発行)

今月の特集1 次世代の微生物検査
今月の特集2 非アルコール性脂肪性肝疾患

57巻3号(2013年3月発行)

今月の特集1 分子病理診断の進歩
今月の特集2 血管炎症候群

57巻2号(2013年2月発行)

今月の主題1 血管超音波検査
今月の主題2 血液形態検査の標準化

57巻1号(2013年1月発行)

今月の主題1 臨床検査の展望
今月の主題2 ウイルス性胃腸炎

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