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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査15巻7号

1971年07月発行

雑誌目次

カラーグラフ

早期胃癌(グラフ参照)

高木 国夫

pp.630-631

グラフ

早期胃癌—その検査法

高木 国夫

pp.633-640

 現今では,胃の検査法とは,X線,内視鏡(胃カメラ,ガストロファイバースコープ;略してGTF),細胞診,胃生検があって,これらの検査法を用いて胃内の徴細な病変を発見し,その病変の組織診断も可能となってきている.胃癌には大きく分けて,早期の癌と進行癌があって,早期癌とは,癌が胃内面の粘膜層および粘膜下層に止まるもので,胃を切除したあとの5年生存率が90%と,きわめてよい治療成績をおさめている.他方,進行癌では,手術後の5年生存率が30-40%と低い.わが国では早期胃癌の研究が検査する医師,外科医,病理学者との密接な連絡のうえにたって,世界の最先端をいく成果をおさめている.特に,早期胃癌がいかなる形態をとっているかについて,肉眼分類(6ページめ別表)が作られて,広く用いられている.

 早期胃癌を発見する検査には,X線検.査(特に二重造影法),内視鏡によつて胃内の微細な病変を発見しその肉眼的形態を詳細に検討して,さらにその病変から,ファイバースコープを用いて,直接眼で見ながら,組織を採取する胃生剣によって,癌か.否かの診断を決めることができる.細胞診け,胃生検の用いられる以前は,癌の診断として有用だったが,ファイバースコープを用いて胃内のあらゆる所から組織がとれるようになり,胃生検が人きい比重を占めるようになった.早期胃癌の症例を供覧して,参老に供したい.

寄生虫・原虫の生活環・1【新連載】

トキソプラズマ—(Toxopalasma gondii)

小山 力

pp.642-643

トキソプラズマとは

 胞子虫類に属する寄生性原虫で,哺乳類から鳥類にわたって広く寄生する,人では脳水腫,脈絡網膜炎,精神・運動障害などの病原体として重要である.栄養体は三日月形で体長6μ,体幅2μぐらいであり,嚢子虫体は大型球形の嚢子中に多数存在するが,個々の虫体の大きさや形態は栄養体によく似ている.この嚢子虫体は組織内にあって,たえず嚢子壁の拡張と虫体の増殖を続けていると予想され,その性質上,栄養体の一種とみなされるようになった.最近,ネコ体内でコクシジウムのそれに似た別の生活環のあることが報告されたが,多くの研究者の追試によって今日ほぼまちがいない事実と考えられるに至っている。

       ×      ×      ×

 現在,生活環のすべてが解明されたわけではなく,ここに記したものの中には,なお今のところ予想経路であって将来の検討にまたねばならぬところもあるが,おもに人との関連で付図により大筋を説明する.

ノモグラム・19

血清カルシウム,タンパク,無機リンの相互関係

松村 義寛

pp.645

 解説  血清中カルシウムはタンパクと結合して非透析性・結合性と呼ばれている形と遊離型で透析性・イオン型と呼ばれている2つの状態がある.一方,無機リン酸とカルシウムイオンとが溶解積の法則に従っているので,全カルシウム量がこれらの因子によって左右されているものと考えられる.Peters Eisersonは多くの分析値を整理して,成人について次の式がほぼあてはまるものとした.

総カルシウム量(mg)=−0255・P (mg)+0.556・タンパク(g)+7

検査室の便利表・19

総説

赤血球凝集反応のメカニズム

石山 昱夫

pp.649-654

はじめに

 血清学領域においては,凝集反応は沈降反応,補体結合反応とともに,あるいはこれらに比していっそう簡便かつ鋭敏な反応として利用されており,遊離細胞や細菌膜表面に局在する抗原の検出には不可欠な反応系である.また近年,抗原の純化・精製がすすむとともに,得られたサンプルを血球やカオリン,ラテックスなどの粒子に付着させ,対応する抗体を凝集反応によって検査するなど,臨床面における応用範囲も著しく拡大している.

 一方,このように簡便な凝集反応も,既知のごとく実施様式にはかなりきびしい条件が必要であり,反応メジウムの塩濃度,タンパク濃度,血球の陳旧度,血球濃度などが凝集反応の結果に著しい影響を与える.この理由としては,血球のごとき巨大かつ強い陰性荷電を帯びているコロイド粒子を取り扱う場合には,抗原抗体反応によってひき起こすと期待される現象よりも,コロイド粒子が本質的に帯びている性質のほうが強く現われてしまうからで,予期されていた抗原抗体反応系が肉眼的に観察されないということがしばしば経験される.したがってまず,血球のコロイドとしての性質について検討を加えながら,凝集反応のメカニズムを分析することが肝要であろう.

技術解説

ICG試験—(インドサイアニングリーンテスト)

上野 幸久 , 丸田 英夫 , 遠藤 了一 , 小松 行雄 , 石塚 昭信 , 船戸 光子

pp.655-661

まえおき

 肝ば生体における物質代謝の中枢として多面的な機能を営んでおり,その1つとして胆汁色素をはじめとする種々の物質を排泄する機能をもっている.特に肝により選択的に排泄れさる物質を用いて,それの負荷後の血中の停滞率または消失率をみれば肝の排泄機能を知ることができる.

 この目的をもってかなり以前からビリルビン,ローズベンガル,アゾルビンSなどの負荷が臨床に応用されてぎたが,現在では一般にBSP (ブロムサルファレイン:別名ヘパトサルファレイン)が広く行なわれている.BSPは肝全体の機能を示す最も鋭敏な検査として不可欠なものの1つではあるが,きわめてまれにショックを起こし死に到らしめることがあり,血管痛,発疹,肝臓部痛などの副作用も少なくない.また肝に対する特異性がかなり高いとはいっても一部が筋肉などにとられ胆道系へ排泄れさるのは80%前後であり,さらに胆管から腸管へ排泄されてから再吸収されて肝へ戻るという腸肝循環があり,血中停滞率の意味づけをむずかしくするという欠点がある.

オゾン化シッフ染色法によるリポタンパク分画法

河合 忠 , 桜林 郁之介 , 蓮沼 進

pp.662-671

はじめに

 近年,脂質代謝の研究が盛んに行なわれるようになったが,血清脂質の測定に関しては,直接血清から脂質と分離して定量する方法と,血清中でタンパクと結合した,いわゆるリポタンパクとして測定する方法と大きく2つに分けられる.いずれの場合にもそれぞれ特徴があり,両者を併用して行なうのが望ましい1.従来,リポタンパクの分析には超遠心分析法が用いられてきたが,近年,電気泳動法によるリポタンパク分画が簡便なため日常臨床検査として使われはじめている.今回はこの電気泳動法によるリポタンパク分画法のうちでも,セルロース・アセテート膜を用いたオゾン化シッフ染色法について詳述することにした.

 電気泳動法によるリポタンパク分画は1950年ごろから試みられてきたが,Lees2らが改良濾紙電気泳動法を開発して以来にわかに注目されるようになった.しかもこの方法を用いて,Frederickson34らが本態性高脂血症およびその類似疾患の多数例について適切な分類を行なうに至り,その重要性はさらに高まった.しかし,アルブミン加緩衝液中での濾紙電気泳動法は,泳動時間が長すぎ,検体の塗布の困難さ,再現性が悪いこと,βおよびpre-β分画の分離が困難なこと,染色溶媒にエタノールを用いているために血清脂質が溶媒中に溶出してくるおそれがあることなど,いくつかの問題点が指摘されている5

臨床検査の問題点・30

トリオソルブ・テストの問題点

土屋 武彦 , 山口 重子

pp.672-676

最近,検査室でもRIを使うチャンスは多くなってきた.その代表選手として,甲状腺機能検査のスクリーニングとしてすぐれているトリオソルブ・テストがある。今回はその原理や測定法の問題点とともに,RIを取り扱ううえでの注意点にもふれて話し合ってみることにする.(カットは放射能の測定)

コンピュータの基礎知識・6

臨床検査システム機械化の試み—東大病院の場合

山田 英夫

pp.677-683

はじめに

 臨床医学における検査の占める役割は近年ますます重要なものとなり,検査室で扱う臨床検査の種類,検体の数は増加の一途をたどっている.東大病院中央検査部で扱う検査の数は年間110万件を越える.その多くは血液・尿などを検査材料とするいわゆる検体検査である.検査の実施に関しては一般検査の試験紙法,血液検査における自動血球計算機,生化学検査における自動化学分析装置などの導入により,その処理能力は飛躍的に増加した.

 しかしそれに伴う検査の依頼,作業ノートの作成,結果の報告,諸種の統計表の作成,精度管理などはすべて用手法によってなされており,検査室業務における事務作業の占める割合は,生化学検査室の調査で28%となっている(図1).また諸種のミスを防ぐために絶えず多大の努力がはらわれている.その結果,人手不足のため当然行なわなければならない検査ですら,そのすべてを日常業務としてはなかなか実施しえない現況である.

RI検査の基礎・1【新連載】

ラジオアイソトープの性質

吉川 春寿

pp.684-688

はじめに

 衛生検査技師法が改正され,臨床検査技師・衛生検査技師になるためには,RI検査法についての知識をもっていなくてはならないことになった.RIというは,放射性同位元素(radioisotope)の略語で,日本では当初からよく用いられている略語だが,外国ではほとんど通用しない.ここにいう,RI検査法とは,臨床化学の中に含まれる一項目であって,患者から得られる検査材料についてRIを用いて検査する方法を意味する.

 RIを用いる診断方法としては,直接患者にRIを投与して,それが体内にどのように分布するか調べたり,血液や尿の中にどのように現われてくるかを測定したりする方法が現在盛んに行なわれるようになって,いわゆる核医学と呼ばれる新しい分野を形成している.RI検査法といわれるものも,患者に手を触れないで検査を行なう,核医学の一部といえないことはないが,検体について化学的操作を伴うのが普通であるために,臨床化学の一部として取り扱うのが妥当であろう.

座談会

生理検査の安全対策

本田 正節 , 本間 伊佐子 , 伊藤 弘多加 , 市河 鴻一 , 山田 和美 , 長尾 透

pp.690-697

 最近,ME機器,一般の医療器械が普及しているが,使用上の心構えや安全対策となるとまだまだの状態である.このたびの技師法改正に伴い,生理検査の内容も変わってくるであろう.生理検査の8つの定義(心電図,心音図,脳波,筋電図,基礎代謝,呼吸機能検査脈波,超音波)のほかに,いろいろな検査の組み合わせも出てきている.

 今回は環境条件を含んだ広い範囲の安全対策について,話し合ってみることにした.

論壇

健康管理と衛生検査技師

高澤 邦輔

pp.698-699

医学検査に関心をもつ人がふえた

 近代医学は臨床検査であるといわれている.それほど病気になるといろいろと検査されることが多くなった.また,新聞,雑誌などにも取り上げられるため世間の関心はしだいに高まりつつある.

 心身ともに快適で楽しく生きていくことが最高の幸せであり,だれしも健康を願わぬ人はいない.病気になってはじめてこのことを痛切に思うのである.すでに手遅れになった患者が神にすがる気持ちで検査結果を待つ姿はあわれである.医学に関する知識は,大小の差はあれだれでももっているが,病気になるとその方面の知識が明るくなり,びっくりするような専門語さえ口にするようになる.

海外だより

—欧米(北欧,東欧,西欧,米国およびカナダ)の病院検査室(1)—スウェーデンのウプサラ大学付属病院中央検査部の印象

佐々木 禎一

pp.700-703

 日進月歩の病院中央検査部門のシステムとその技術的な進歩は,目を見はるものがある.と同時に,検査室で働く者にとって外国のそれらの現状を知りたいという気持も旺盛であろう。

 著者は従来外遊のおりごとに,可能なかぎり各国の代表的病院検査室にとび込み,その現状をみつめて来て,いく回かにわたって紹介した1-5

研究

喀痰細菌の定量培養

後藤 庄助 , 茂田 士郎

pp.704-707

 喀痰の一般細菌検査に関しては2つの重要な問題点がある,第1に喀痰を採取する際の口腔内常在細菌の混入をいかにして防ぐか,第2に喀痰の粘性をいかにして均等化し分離培養にもっていくかということである.

 第1の問題点を解決するために最も必要なことは,喀痰中の細菌の正確な定量法が確立されなければならないということである.すなわち喀痰に付着した細菌の正確な定量がなされなければ,喀痰汚染の防止および汚染細菌の除去についての評価は全くできない.また,喀痰の粘性をとり除いて,細菌を単離の集落として分離することは,分離菌の定性のみならず正確な定量を行なううえの必須条件である.われわれは喀痰培養に際して従来の1エーゼ塗沫法に替えて,検体に1%Pancreatinを等量加えたあと均等化し,稀釈培養してコロニー数を数える定量法を確立し,その方法を基本として喀痰付着細菌の除去法の検討を行なった.

セルロゲル膜による血清リポタンパク泳動の検討

狩野 明 , 石戸谷 豊 , 橋本 一夫 , 伊藤 忠一

pp.708-711

 脂質代謝異常における血清リポタンパク(Lp)の動向については,Ahrens1,Fredricksonら2の報告以来,かなりの知見の集積が得られるようになり,その重要性が一般に認識されるようになってきた.

 従来血清Lpの分画定量には,緩衝液中にウシアルブミンを添加するLees&Hatchの濾紙電気泳動法3が広く用いられているが,本法による超低比重Lpの分離は必ずしも明瞭ではなく,さらに泳動染色に要する時間,濾紙の非特異的染色性などの難点が残されている.

Iron Fuchsin Redおよび塩酸フクシン液による糖原ならびに粘液染色法

松崎 真人 , 永田 告治 , 中山 裕子 , 倉岡 俊助

pp.712-713

緒言

 糖原の選択的染色法としてBestカーミン法1,2)があるが,この方法は染色液がアルカリ性を呈するため,パラフィン切片を使用する場合に切片の剥離を招くおそれがある.それゆえに現在では一般に過ヨウ素酸Schiff反応2,3)が用いられている.しかしこの方法にも,1,2の弱点がある.それはSchiff氏試薬の作製に長時間を要し,急にその染色が必要になった場合に用いることができないこと,また染色操作上の些細な不注意により目的以外の組織成分,たとえば膠原線維などが比較的に強く染色されることなどである.そこでこれらの弱点を補い,さらに染色操作においても簡便な方法を得ることを目的として今度の研究を行なった.

私のくふう

ディスク法成績判定の簡易化

金沢 裕

pp.713

 感受性ディスク法としての1濃度法は,その操作が簡易な利点があるが,成績判定が複雑な欠点がある.次のようにしてこの点をある程度解決しうると考えられる.

 図のような実物大の阻止円径感性度判定表の印刷された複写式成績表(依頼,報告,控えなど……)をあらかじめ用意する.目的とする阻止円直径を計測するように,ノギスの賞を開き,数値(mm)を読まずにそのまま上記の成績図表の上に移し,マークされた点に相当する感性嘴を記載してそのまま成績表(報告票も含む)とする.この方法によれば阻止円の実長が成績票の上にマークされているので,−,+などの判定に加えて,MICの要求される場合には,必要に応じ数値判定表からMIC近似値を知ることができる利点もある.実際に本法を行なったところ,阻止円を観察してから報告書調製までの時間をほぼ半分に短縮することができた.

新しいキットの紹介

Amylase Test ‘第一’による血清アミラーゼ測定法—その基礎的性状の検討成績

佐々木 禎一 , 大水 幸雄 , 種村 邦子

pp.714-719

はじめに

 従来血清中のα-アミラーゼ活性測定法として各種が報ぜられてきているが1,これらはamyloclastic法とsaccharogenic法とに2大別される.しかし,そのいずれもいくつかの欠点を有しており,そのため適切な測定法の普及が遅く,いまだ古典的Wohlgemuth法によっているところもかなり多い実情である2,3)

 ごく最近Rinderknechtら(1967)4)がRernazolbrilliant Blue Rと結合させたデンプン粒子,すなわちchromogenic substrateを基質とする方法を報告した.次いでReactone Red 2B-arnylopectinを用いる方法がBabsonらにより報ぜられ5),1970年代になってからもKleinら6),Babson7)らが同じくこの方法を発表している.

シリーズ・日常検査における機械化のくふう・7

コレステロール発色用断続スターラの組み立て

水野 映二 , 小野 弘毅 , 仁科 甫啓 , 北村 元仕

pp.720-721

 血清コレステロール測定も依頼件数が多く,能率化の従進が要求される項目である.塩化第二鉄・酢酸によるZak-Henlyの除タンパク法に限らず,Zurkowski法などの直接法のいずれも発色時に硫酸を使用する.

 濃硫酸を使うこれらの反応は,混合のむずかしさ,呈色の不安定さのため,発色〜比色に厳重な条件を必要とし,能率化をはばんでいる。私たちはこれらの点を解決するため,Zak-Henly法の半自動化のくふうをした.

質疑応答

検査技師の資格を取るには……

K生 , 本誌編集室

pp.722

 問 私は現在,地方都市の病院で検査関係の仕事をしていますが,資格というものをもっていません.来年あたりに日本臨床病理学会の一般臨床検査士の試験を受けたいと思っていますが,どの程度の価値があるものなのでしょうか,国家試験と違って不安です.

 また,心電図や脳波などの資格制度があるのでしょうか,養成所以外で受ける道があったらお教えください.

Senior Course 生化学

血清アルカリ・ホスファターゼアイソザイム

石戸谷 豊

pp.725

 血清アルカリホスファターゼ(AL-P)はおもに黄疸の鑑別,骨疾患の診断に応用されてきたが,現在ではそのアイソザイムの分析によって,その臨床的意義を詳細に考えうるようになってきた.

 血清AL-Pアイソザイムの測定法には,(1)電気泳動法(カンテン,デンプンゲル,セルローズアセテート,Disc),(2)阻害剤を用いる方法,(3)カラムクロマトグラフィーを用いる方法などがある.

Senior Course 血液

プロトロンビン時間(Quick 1段法)(1)

鈴木 弘文

pp.726

1.測定法

(1)試材および器具:①被検血漿(最小限0.5 mlは必要),②対照用正常血漿,③組織トロンボプラスチン液(市販品は表参照),④塩化カルシウム液(膿度は使用する組織トロンボプラスチンにより多少異なる.また市販品の中には,組織トロンボプラスチンと塩化カルシウムがすでに混合されている品があるから注意すること),⑤恒温水槽,⑥小試験管(内径8mm,長さ80mm),⑦先端目盛りメスピペット,⑧秒時計.

(2)測定操作:日本臨床病理学会血液検査室医師会議で,1966年にプロトロンビン時間測定法に関する標準法を提案している.以下はそれに基づくものである.

Senior Course 血清

ランドシュタイナーの法則に従わぬ血液型(3)

村上 省三

pp.727

2.脱落型

 次にわれわれが脱落型と呼んでいるものについて申しあげましょう.この型式に属するものは,いわゆる‘オモテ検査’の成績から,当然血清の中になければならない抗体が欠除する揚合です.すなわちオモテ検査ではO型と判定した場合,血清中には抗Aおよび抗B抗体の存在を予想しますが,たとえば抗Aしか認められない,逆にいえば,‘ウラ検査’,からはB型と判定されるといった場合です.

 このような場合も大別しますと生理的にそうである揚合と,ある病的な条件が加わってそうである場合とがあります.

Senior Course 細菌

腸炎ビブリオの検査

永井 龍夫

pp.728

 腸炎ビブリオによる食中毒はわが国における食中毒のなかで最も多く,原因食品は主として海産の魚介類であり,その発生時期は夏季,特に8-9月である.

 腸炎ビブリオはビブリオ(Vibrio)属の通性嫌気性,無芽胞グラム陰性杆菌で,一端に1本の鞭毛をもち活発に運動する.本菌はふつうカンテン培地ではほとんど発育せず,培地に3-5%塩化ナトリウムを加えると,きわめてよく発育する.腸炎ビブリオが発見当初,病原性好塩菌と呼ばれたゆえんである.

Senior Course 病理

症状と病理組織検査(7)—黄疸-Ⅱ

三友 善夫

pp.729

 黄疸は溶血性黄疸のように肝に直接異常のない場合を除くと,肝外性および肝内性黄疸のいずれも肝になんらかの病変が存在する.

 その検索には針生検が用いられ,その対象には肝硬変症(アルコール性,胆汁うっ滞性の病変も含む),肝ヘモクロマトーシス,ウイルソン病,肝癌,Gaucher病やNieman-Pick病などの脂質代謝異常疾患,糖原病,アミロイドーシス,ポジキン病,ザルコイドーシス,薬物中毒,先天性肝線維症などがある.臨床経過や臨床検査の成績から,針生検前につけられた.臨床診断の確認,2,3の想定される疾患の鑑別,全く病変の見当もつかぬ疾患の診断確立のために試みられる.したがって,病理組織標本作製のためにはあらかじめ病変検索の目的に適した固定法,染色法が選択されねばならない.たとえば脂肪肝にズダンⅢ,ズダン黒,オイル・レッドO,ナイル青,オスミック酸染色法などを,また糖原蓄積症ではPAS染色とDiastase消化試験を行なう.針生検の際非常にもろく,砕けやすい不規則な外見を呈する肝硬変症,蒼白で油ぎっており,固定液に浮遊する脂肪肝,チョコーレート色の特異な呈色を示すDubin-Johnson症候群などは肉眼像の特徴によって,臨床診断に反して標本作製法を急に変更することも必要である.

Senior Course 生理1

正常脳波(1)—覚醒時の脳波

本田 正節

pp.730

 頭皮上の2点間あるいは頭皮と,耳朶その他の不関電極(不活性電極)との間の電位差をE+�E (Eは静電位分,�Eは変動分)として表わすと,脳波としてわれわれがみているものは�Eに相当する.脳波はこのように電位差の変動分なのであるから,一般の時間的変動現象と同様に,周波数と振幅(電位差)と波型などの要素に分けることができる.このうち周波数帯を分類すると,

δ……0.5-3Hz

Senior Course 生理2

脈波のとりかた(2)—圧脈波(側脈波)

椎名 晋一

pp.731

 圧脈波の記録は動脈内に針またはカテーテルを入れて,それとマノメーターを管でつないで,動脈内圧の変動をマノメーターで読む.これではマノメーターに圧波が伝達するまでに歪みを生ずるので,波形変化が正確に表わされないので,最近は針またはカテーテルの先端にマイクロマノメーターを取りつけて歪みを防ぐくふうがなされている.しかし,これは細い動脈で測定することを不可能にしている.以上のごとく圧脈波は観血的に測定されるので,心臓カテーテル施行などの限られた場合に行なわれるのが普通である.

 一方,圧脈波を非観血的に測定することはできないので,血管自体の側方移行するための圧も加えた側脈波を測定することが,日常行なわれている.もちろん,圧波と側脈波は純粋な意味では異なるが,臨床的には側脈波で圧波に替えることが多くの場合できるので,ここでも非観血的な側脈波について述べる.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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今月の特集2 成人先天性心疾患

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今月の特集2 実は増えている“梅毒”

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今月の特集2 心腎連関を理解する

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今月の特集2 がん分子標的治療にかかわる臨床検査・遺伝子検査

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今月の特集2 脂質検査の盲点

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60巻10号(2016年10月発行)

今月の特集1 血球貪食症候群を知る
今月の特集2 感染症の迅速診断—POCTの可能性を探る

60巻9号(2016年9月発行)

今月の特集1 睡眠障害と臨床検査
今月の特集2 臨床検査領域における次世代データ解析—ビッグデータ解析を視野に入れて

60巻8号(2016年8月発行)

今月の特集1 好塩基球の謎に迫る
今月の特集2 キャリアデザイン

60巻7号(2016年7月発行)

今月の特集1 The SLE
今月の特集2 百日咳,いま知っておきたいこと

60巻6号(2016年6月発行)

今月の特集1 もっと知りたい! 川崎病
今月の特集2 CKDの臨床検査と腎病理診断

60巻5号(2016年5月発行)

今月の特集1 体腔液の臨床検査
今月の特集2 感度を磨く—検査性能の追求

60巻4号(2016年4月発行)

今月の特集1 血漿蛋白—その病態と検査
今月の特集2 感染症診断に使われるバイオマーカー—その臨床的意義とは?

60巻3号(2016年3月発行)

今月の特集1 日常検査からみえる病態—心電図検査編
今月の特集2 smartに実践する検体採取

60巻2号(2016年2月発行)

今月の特集1 深く知ろう! 血栓止血検査
今月の特集2 実践に役立つ呼吸機能検査の測定手技

60巻1号(2016年1月発行)

今月の特集1 社会に貢献する臨床検査
今月の特集2 グローバル化時代の耐性菌感染症

59巻13号(2015年12月発行)

今月の特集1 移植医療を支える臨床検査
今月の特集2 検査室が育てる研修医

59巻12号(2015年11月発行)

今月の特集1 ウイルス性肝炎をまとめて学ぶ
今月の特集2 腹部超音波を極める

59巻11号(2015年10月発行)

増刊号 ひとりでも困らない! 検査当直イエローページ

59巻10号(2015年10月発行)

今月の特集1 見逃してはならない寄生虫疾患
今月の特集2 MDS/MPNを知ろう

59巻9号(2015年9月発行)

今月の特集1 乳腺の臨床を支える超音波検査
今月の特集2 臨地実習で学生に何を与えることができるか

59巻8号(2015年8月発行)

今月の特集1 臨床検査の視点から科学する老化
今月の特集2 感染症サーベイランスの実際

59巻7号(2015年7月発行)

今月の特集1 検査と臨床のコラボで理解する腫瘍マーカー
今月の特集2 血液細胞形態判読の極意

59巻6号(2015年6月発行)

今月の特集1 日常検査としての心エコー
今月の特集2 健診・人間ドックと臨床検査

59巻5号(2015年5月発行)

今月の特集1 1滴で捉える病態
今月の特集2 乳癌病理診断の進歩

59巻4号(2015年4月発行)

今月の特集1 奥の深い高尿酸血症
今月の特集2 感染制御と連携—検査部門はどのようにかかわっていくべきか

59巻3号(2015年3月発行)

今月の特集1 検査システムの更新に備える
今月の特集2 夜勤で必要な輸血の知識

59巻2号(2015年2月発行)

今月の特集1 動脈硬化症の最先端
今月の特集2 血算値判読の極意

59巻1号(2015年1月発行)

今月の特集1 採血から分析前までのエッセンス
今月の特集2 新型インフルエンザへの対応—医療機関の新たな備え

58巻13号(2014年12月発行)

今月の特集1 検査でわかる!M蛋白血症と多発性骨髄腫
今月の特集2 とても怖い心臓病ACSの診断と治療

58巻12号(2014年11月発行)

今月の特集1 甲状腺疾患診断NOW
今月の特集2 ブラックボックス化からの脱却—臨床検査の可視化

58巻11号(2014年10月発行)

増刊号 微生物検査 イエローページ

58巻10号(2014年10月発行)

今月の特集1 血液培養検査を感染症診療に役立てる
今月の特集2 尿沈渣検査の新たな付加価値

58巻9号(2014年9月発行)

今月の特集1 関節リウマチ診療の変化に対応する
今月の特集2 てんかんと臨床検査のかかわり

58巻8号(2014年8月発行)

今月の特集1 個別化医療を担う―コンパニオン診断
今月の特集2 血栓症時代の検査

58巻7号(2014年7月発行)

今月の特集1 電解質,酸塩基平衡検査を苦手にしない
今月の特集2 夏に知っておきたい細菌性胃腸炎

58巻6号(2014年6月発行)

今月の特集1 液状化検体細胞診(LBC)にはどんなメリットがあるか
今月の特集2 生理機能検査からみえる糖尿病合併症

58巻5号(2014年5月発行)

今月の特集1 最新の輸血検査
今月の特集2 改めて,精度管理を考える

58巻4号(2014年4月発行)

今月の特集1 検査室間連携が高める臨床検査の付加価値
今月の特集2 話題の感染症2014

58巻3号(2014年3月発行)

今月の特集1 検査で切り込む溶血性貧血
今月の特集2 知っておくべき睡眠呼吸障害のあれこれ

58巻2号(2014年2月発行)

今月の特集1 JSCC勧告法は磐石か?―課題と展望
今月の特集2 Ⅰ型アレルギーを究める

58巻1号(2014年1月発行)

今月の特集1 診療ガイドラインに活用される臨床検査
今月の特集2 深在性真菌症を学ぶ

57巻13号(2013年12月発行)

今月の特集1 病理組織・細胞診検査の精度管理
今月の特集2 目でみる悪性リンパ腫の骨髄病変

57巻12号(2013年11月発行)

今月の特集1 前立腺癌マーカー
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査②

57巻11号(2013年10月発行)

特集 はじめよう,検査説明

57巻10号(2013年10月発行)

今月の特集1 神経領域の生理機能検査の現状と新たな展開
今月の特集2 Clostridium difficile感染症

57巻9号(2013年9月発行)

今月の特集1 肺癌診断update
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査①

57巻8号(2013年8月発行)

今月の特集1 特定健診項目の標準化と今後の展開
今月の特集2 輸血関連副作用

57巻7号(2013年7月発行)

今月の特集1 遺伝子関連検査の標準化に向けて
今月の特集2 感染症と発癌

57巻6号(2013年6月発行)

今月の特集1 尿バイオマーカー
今月の特集2 連続モニタリング検査

57巻5号(2013年5月発行)

今月の特集1 実践EBLM―検査値を活かす
今月の特集2 ADAMTS13と臨床検査

57巻4号(2013年4月発行)

今月の特集1 次世代の微生物検査
今月の特集2 非アルコール性脂肪性肝疾患

57巻3号(2013年3月発行)

今月の特集1 分子病理診断の進歩
今月の特集2 血管炎症候群

57巻2号(2013年2月発行)

今月の主題1 血管超音波検査
今月の主題2 血液形態検査の標準化

57巻1号(2013年1月発行)

今月の主題1 臨床検査の展望
今月の主題2 ウイルス性胃腸炎

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