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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査16巻11号

1972年11月発行

雑誌目次

特集 輸血業務と臨床検査

カラーグラフ

血液の色

徳永 栄一 , 松村 義寛

pp.1176-1177

 血液は赤いとされているが,よく見ると千差万別である.全血の色にしても酸素の含量,ヘモグロビンの多寡,異常ヘモグロビンの有無によって左右される.血漿,血清の色はおもにビリルビンの黄色を示すものであるが,さらに食物に由来する各種の変化が加わる.最もしばしば見られるのは食物中の脂質によって起こる乳麋血(リペミー)で,白く濁ってくる.ニンジン,カボチャ,アサクサノリの多食によりカロチン類による黄赤色はビリルビンの色に車ぎらわしい.薬剤の服用によっては種々の色調を示すが,ことにリボフラビン(総合ビタミン剤中に多量含まれる)に由来する緑色の螢光は顕著である.

 ここでは保存血について健康人の血液の色を示しておく.ACDが加えられているのでいくらか淡い色となっている.

グラフ

輸血部のレイアウトとインテリア

臼井 亮平

pp.1179-1185

 今までの輸血部に対する考え方は建築のうえからも,病院内の諸事情からも,地階の小さな部屋がレイァウトされていた.

 ここに紹介する輸血部はそのようなイメージとは逆に,病院の診療科と同格の場所に171.9m2の面積をとり,待合室,受付,予診室,採血準備室,採血室,回復室,第1検査室,第2検査室,血液保存室,ロッカー室の区画に分けてある.

オーストラリア抗原の検査法

白地 良一

pp.1186-1194

 オーストラリア抗原(Au抗原)はB型肝炎の病原体そのものではないが,ウィルス病原体と密接に関連した抗原であると現在考えられている1-6).Au抗原陽性血液を輸血すると受血者の多くに肝炎を発生させることは確実である7,8).すなわち輸血に先だってすべての輸血用血液からAu抗源陽性血液を除去することはわれわれの重要な責務である.

 さらにAu抗原のスクリーニングはもとより,B型肝炎の診断,研究などにとっても,検査法の基準化が特に望まれる現況である.現在まで開発されたAu抗原,抗体の検査法は9種類(表1)あるが,検査方法によって感度や特異性が異なるので,どの方法がその目的に最も適しているか十分認識しておく必要がある.

採血用・運搬用器具とその使用法

大久保 嘉明

pp.1195-1201

血液は生きている.採血されてから患者に輸血されるまで,管理には細心の注意が必要である.管理者の取り扱い方と同時に,どのような器具,容器を使用するかもたいせつになってくる.これら器具類も年々改良されて,便利で合理的になってきた.現段階で一般に使われているものをあげておいたので,読者の病院,検査室にマッチしたものを選択して使用してもらいたい.

順天堂冷凍血液センターオープン

pp.1202

 昨今の慢性的な血液不足の一因は保存血の有効期間が3週間と短いことにある.血液を−85℃あるいは−196℃で凍結すれば半永久的な保存が可能となり,稀有型の常時保存や自己輸血もできる.さらに解凍後の洗浄は肝炎防止のうえで最も効果的な方法であり,臨床上も種々の特徴がある.本センターでは冷凍血液と同時にその一環としての血液の成分輸血を一体化して行なうことを目的としている.血小板や白血球の凍結保存や液体窒素による保存も予定している.

巻頭言

輸血関係の技術認定試験と同学院

緒方 富雄

pp.1204-1205

 今日では,輸血が行なわれそれが完了するまでに,おどろくほど複雑な過程を経る.

 昔の輸血は簡単であった.大型の注射器に抗凝固剤を入れておいて,それへ供血者の静脈から採血し,これを時を移さず受血者の静脈内に注入する.それが輸血であった。そのような時代でも,供血者と受血者の血液型を調べて,血液の適合・不適合を見た.ところが血液型の亜型がだんだん詳しくわかり,輸血との関係が明らかになるにつれて,輸血関係者にほこの知識が必要になり,それに伴う検査技術を身につけることも必要になってきた.

供血者の選択と採血法

山崎 順啓

pp.1206-1215

 輸血という特殊な医療行為の原点は供血者の選択と採血にある.‘人から人へ'という動かしがたい特異性の基盤にたってこそ,はじめて輸血の問題の本質にふれ,過去をふり返り将来を見とおし,さらに集積されたデータからよりよい方向への具体的な開発が可能となる.他の問題とまったく同じように,輸血問題といえども取り上げる時点によってまったく様相が異なることは当然だが,少なくとも現在のところ‘human to human'という特殊性を着実に把握しなければ輸血を論じ来たり論じ去るわけにはいかない.

 体は与えるが血は1滴もやらないと痛快に見栄を切るベニスの商人の戯曲ではないが,まさしく血がなければすべて始まらないのだ.もちろん血液という自然の傑作から,人類の英知が作り出す人工血液へ切り替わるであろう可能性はすでに時間の問題かもしれないし,将来の必然性でもある.それはごく望ましい自然な流れであり,その方向への着実な研究が前進している事実は非常に喜ばしいことではあるが,今現在の段階ではやはりnothing like bloodといわざるをえないのが実情であろう.

輸血用血液の臨床検査

1.生化学的検査

松村 義寛

pp.1217-1220

トランスアミナーゼ活性

 輸血の副作用として頻繁に見られるうえに,受血者に不愉快な症状を発現させるものの1つに血清肝炎(輸血後肝炎)がある.この原因とされる病原体の有無を検査すべきことは当然であるが,この実施は現在のところ困難であるので,間接的に病原体の有無を察知するような方法がとられるのである.

 血清肝炎の患者には肝障害に伴って血清中のトランスアミナーゼ活性が著しく増加する事実がある.肝炎の主要な症状である黄疸,発熱などに先んじて血清中トランスアミナーゼ活性値が上昇し,肝炎症状の軽快とともに下降する経過を示す.時には黄疸などの症状を示さないでも,輸血後のある時期にトランスアミナーゼの血清中活性上昇・下降の経過をたどる,いわゆる無黄疸性の肝炎症状のあることが知られている.

2.血液型と抗体スクリーニング

細井 武光

pp.1221-1230

 輸血が行なわれる時,まず要求されることは受血者と供血者の血液型が同一であるということである.輸血は広い意味での臓器移植であろう.しかし,赤血球には寿命があり,やがては受血者の血中から消えてゆくから,救急のための一手段ではある.しかし,供血者血液が受血者に適合しないものであれば,激しい拒絶反応によって供血者血球は急速に受血者血中から除去され,その過程で激しい症状をひき起こす.もし,輸血時供血者血球に対する抗体がないか,ごく弱いものであれば,その時は無症状に過ぎても抗体が産生されるに及ぶと,時には遅延溶血反応の形で供血者血球が破壊される.

 輸血用血液,現在では献血血液について血液型検査や抗体スクリーニングを行なう血液センターでは,大量の検体を取り扱うということを考慮しなければならない.これには,献血者の受付,試験採血,検診,本採血,各種検査による廃棄などのふるい分け,ラベリング,血液台帳の作製,供給などの保存血液としての主たる仕事の流れのほかに,仕事の内容は同じであっても製品としては質を異にするヘパリン血,新鮮血,洗浄血,凍結新鮮血漿,濃縮血小板血漿など種々の成分輸血に必要な血液の検査を含む処理が併存している.

3.供血者梅毒のスクリーニング検査

福岡 良男

pp.1231-1233

 輸血に関して医師,まはた歯科医師の準拠すべき基準(1952年6月23日,厚生省告示第138号)が定められている.供血者の選択にあたっては梅毒に特に注意をはらい,梅毒血清検査の方法として性病予防法の規定により,厚生大臣が指定した梅毒血清反応検査のうち1つ以上の検査を行なうことと定められている.

 一方,生物学的製剤基準では保存血液を作る場合には,原理の異なる反応をそれぞれ1つずつ以上行なうことが定められている.

4.オーストラリア抗原

富岡 一

pp.1234-1240

 オーストラリア抗原(Au抗原)ははじめはダウン症候群,ポジキン病,白血病,結節癩などとの関連性から注目された1,2).しかしその後Blumbergら2),大河内ら3),Prince4)などによって1967-68年にかけてウイルス性肝炎との関係がしだいに明らかにされた.今日では血清肝炎の病原関連因子として大方の関心を集めている.しかしAu抗原の発見者であるBlumberg,大河内などが用いたゲル内二重拡散沈降反応は,今日からみれば検出感度の低い検出法である.その結果,たとえば献血者血液でのAu抗原の検出頻度が0.5-1.0%程度であるのに,輸血後肝炎の発生率が20%前後であるなどして,またAu抗原から核酸が証明できないことも手伝い,一部にウイルス性肝炎におけるAu抗原の意義づけに疑念をいだくむきさえみられたことがあった.

 かかる状態のなかにあってAu抗原の検出法の開発には多くの熱意がそそがれ,その結果最近数年間のうちに10種に余る検出法が開拓された.これら開拓された各検出法での検出感度は術式により著しく異なる.またAu抗原,抗体の検出態度のうえにもそれぞれの特徴が知られている.しかも検出法を実際に行なうにあたっては,技術的な面のみならず,資材の入手上の難易,判定の明確さ,経費などが問題となる.特に術者への感染その他の危険性も十分考慮されなくてはならない.以下これらの概況にふれながらAu抗原の解説をこころみたい.

5.白血球と血小板の型

辻 公美

pp.1241-1247

 従来の‘輸血’に関しては,原則として赤血球型が主役を演じてきたが,HL-A系の急速な研究,発展とともに,白血球型および血小板型の臨床検査の必要性がたかまってきた.

 さらに,HL-A抗原の臨床的意義として,おもなものは癌免疫,癌患者の免疫遺伝学,特定疾患とHL-A抗原との関係,人類発生学,産婦人科領域への応用,臓器移植などへの貢献があげられる.

赤血球交差適合試験

小暮 正久 , 遠山 博

pp.1248-1252

 交差適合試験は受血者(患者)および供血者の血清中に,相手の赤血球と反応する抗体が存在するか否かをあらかじめ検査し,輸血に適合する血液を選ぶ試験であることは周知のことである.この検査の目的は輸血副作用(溶血反応)を防止することにある.

 ここで念頭においておきたいことは,受血者と供血者との血液について,ABO式血液型が同型で,Rh0(D)因子が一致し,交差適合試験で異常反応が認められなければ,輸血は安全であると考えられるが,赤血球の膜にある抗原がまったく同一である人間は一卵性双生児のほかには存在しないとされているから,輸血された赤血球は受血者の体内で時には異物として作用し,免疫抗体を産生させることがありうること,それから受血者の血清中に存在する抗体が検出限界以下に落ちている場合には,輸血された赤血球が既往性免疫反応(anamnestic immune response)を引き起こし,抗体量を急速に増加させ,輸血後7-10日めに輸血赤血球の急速な破壊が起こること(delayed hemolytic transfusion reaction)もありうることである.

受血者血液の特殊検査

1.輸血副作用の検査

小島 健一

pp.1253-1262

 輸血ほど医療行為のなかで副作用を多く伴いやすいものはないといっても過言ではない.しかし,副作用の原因は多岐にわたり,原因をつきとめることは必ずしも容易ではない.

 副作用の検査としては,副作用の徴候に関するものと,原因に関するものがある.

2.まれな血液型とその対策

安田 純一

pp.1263-1269

 ‘まれな血液型の国際パネルがある'というと,何か学会のパネル・ディスカッションのような集会ないし専門委員会(Expert Panel)のような組織に参加することかと誤解されることがある.血液型抗体同定のために配布してもらえる赤血球のセット(パネルセル)のことかと思われたりもする.これからの話は,そんな恰好のよい,あるいは耳寄りなことではなくて,まれな血液型の人がお互に助け合えるような情報交換と供血あっせんの組織作りのことなのである.

3.凝血因子の障害とその対策

藤巻 道男

pp.1270-1275

 凝血因子の障害とその対策を得るためには,止血機構に関する検査が必要であり,特に手術前における患者の出血性素因の検索はもとより,術中術後を通じての出血に対する止血の管理を行なううえにも,また出血性素因に対する欠乏因子の補充療法を行なうためにも血液凝固検査は必要なものである.

 止血機構は,(1)血管機能,(2)血小板機能,(3)血液凝固機能,の調和した複合作用によって止血が行なわれる.これらの止血機構のいずれか,または組み合わさったものの障害によって出血傾向は起因するものである.

輸血用血液の取り扱い

1.保存

三浦 健 , 石田 正統

pp.1276-1287

輸血用血液保存のための冷蔵庫1)

 家庭用の普通の冷蔵庫は保存血の保存には不適当である.血液保存専用に作られた冷蔵庫(図1,2)を設置しなければいけない.血液保存用冷蔵庫には次のような条件を備えた冷却器,扇風器,温度自動記録装置,警報装置などが付属している.

2.取り扱いと運搬

大久保 嘉明

pp.1288-1296

 輸血用血液には下記のような種類がある.

(1)保存血(採血後5-21日)

輸血用血液の種類と作り方および輸血の適応

安部 英

pp.1297-1309

輸血用血液の種類とその使用目的

 輸血に用いられるヒトの血液としては,これまでおもに‘新鮮血液’と‘保存血液’とが取り上げられ,その作り方や保存方法,検査法や使用法,適応症や副作用などが考えられてきたが,これらはいうまでもなく,供血者から血液を採ったのちこれを輸液するまでの体外保存時間の長短による区別であって,その成分は供血者の血液そのままであった.ところが近時,外科技術が進歩してきわめて大がかりな手術や特殊な手術ができるようになり,いきおい必要な輸血量も著しく増してくるとともに,交通事故が頻発してそのために必要な輸血量も増し,また内科領域でも疾患の病理が解明されるにつれて,ヒトの血液を診断や治療に用いる範囲や回数がふえ,またそれらに必要な血液量が急増してきた.

 しかしこれら輸血を必要とする場合を考えてみると,血液の成分全部のいるものは案外に少なく,それぞれの症例で目的とする血液成分は限られているのが実際の大部分であり,一方輸血用血液の供給源にも限界があって,あまりにも急な需要側の伸びに応ずることができないので,採取した血液(全血)から成分を分離し,状況によってはさらにこれを精製してこの成分のみを輸注する,いわゆる‘血液成分療法(blood componenttherapy)’が行なわれるようになった.このようにすれば,従来1人分として用いられていた血液は,成分ごとに何人分にも使用することができるからである.

輸血用器具

佐治 博夫

pp.1310-1319

 1947年,ACD加血液から血漿を取り除いても残りの赤血球は,なお全血と同じ21日間の保存期間中,安全に使用できる能力を保っていることが知られ1),次いで血小板を生きたまま分離することも可能となった2).また白血球輸血についても成功に期待がかけられ,骨髄移殖も試みの段階から実用化へ進みつつある.輸血療法は全血の輸血から,血液成分療法(Component Therapy)の時代にはいったといってよい.しかし特にわが国において,血液成分療法の実際が,その研究の進歩よりはるかに遅れているという事実は,医師が進歩についていけないためではなく,これらの目的を達成させる適切で安全な血液成分の分離法が,最近になるまで利用できなかったからである.

 それが‘血液バッグ・システム’である.世界中の学者が,現在おもに行なわれているガラスびんでは,安全で十分な血液成分療法は行ないえないことを認めている.

産婦人科ならびに新生児・小児科における輸血手技の特異性

白川 光一

pp.1320-1328

 輸血は近代医学における最有力な治療手段の1つであるが,産婦人科はその必要度,ことに緊急輸血の最も大なる科の1つであり,また新生児期には交換輸血という独特の輸血療法が不可欠となっており,さらに新生児〜小児期においては,近年その外科手術成績の向上が刮目されるに至っているが,その最大の原因の1つとしては輸血(液)手技の進歩をあげなければならないものと考えられる.そしてこれらの領域における輸血に関しては主として微小手技的(microtechnique)な純粋の手技上の特殊性が要求される点が少なくないほか,使用血液選択に関しても特殊の血清学的考慮が要求される.そして本特集号に著者へのテーマが設けられたゆえんもここに存在すると考えられるので,本稿ではこれらの特殊事情に重点をおいて述べることとする.

血液透析と輸血

太田 和夫

pp.1329-1333

 血液透析は血液そのものを治療の手段として使用するのであるが,もっぱら興味の中心は血液透析を受けている患者の病態についてであり,従来から血液それ自体の変化を追求した研究は比較的少なかったといわざるをえない.一方,輸血に関しては,肝炎の発生予防の見地から,また白血球抗原による患者の感作があとに腎移植をやった場合に問題となることより,何とかして血液の使用量を減少させようと多大の努力がはらわれている段階なのである.

 ここでは臨床検査や輸血業務に携わる方々に血液透析の実際を紹介するとともに,解決をせまられている2,3の問題について触れてみよう.

輸血部の運営

1.輸血安全対策

三穂 乙実

pp.1334-1338

 外科における手術成績の向上は,麻酔法や抗生物質の発達とともに,輸血,輸液の発展によりもたらされているといっても過言ではない.特に近年,輸血の使用量は激増の一途をたどっている.

 1900年にLandsteinerによってはじめてABO式血液群が発見されてから70年の間に,保存血の発達,血液銀行の開発などが,驚くべき速さで行なわれてきた.わが国では近代的な輸血がはじめて行なわれたのは,1920年ごろといわれるから,わずか50数年の間に今日の発展をみているのである.一方,このような輸血需要の急激な増加に対して,その安全性については,必ずしも十分な対策が講じられていたとはいえない.もっとも,かつては血液群や血液型に対する知見が,現在のように詳細なものではなく,ごく単純なものであったし,認識も薄かったのであるが,免疫学的血清学的研究が進み,輸血に際して起こる異常反応を調べていくうちに,種々の因子や,免疫抗体の存在が明らかとなってきたのである.

2.管理と運営

村上 省三

pp.1339-1346

こし方をふり返って

 輸血部ないしは院内血液銀行と呼ばれるものが,わが国に生まれてから,すでに20年の歳月がながれている.すなわち1951年3月に故加藤勝治先生のご努力により東京医大に生まれたのが第1号である.同じ年の5月には東大に,7月には伊豆逓信病院に,10月には日赤中央病院にと続続と誕生している.これよりさき1948年に,有名な東大分院産婦人科における輸血梅毒事件が起こり,連合軍からも厚生省や東京都に対して保存血液を主力とした国家的な血液対策の樹立が勧告されており,その勧告に従って,1949年5月,各国に準じて,その主役は日本赤十字社がになうことに決められた.

 しかし日赤として本格的に着手したのは,前記の日赤中央病院の輸血部を発展的解消して,東京血液銀行を作ったのがはじめであり,そのかげには加藤勝治先生や東陽一先生,さらには古畑種基先生,緒方富雄先生などのご尽力があったわけである.日赤のめざしたものは,多くの外部の病院に血液を提供しようとするものであり,院内血液銀行とは本質的に性格が異なるものであった.

3.レイアウトとインテリア

臼井 亮平

pp.1347-1351

 戦後の外科学の進歩は衆知の認めるところであるが,これらの原動力として大量輸血が可能になった事実に注目しなければならない.

 1936年アメリカのシカゴ市にあるCook County Hospitalに最初の血液銀行が設置されてから,36年経過した今日,血液銀行は現在わが国の医療機関においては必須の施設となるに至った.

輸血とその法的解釈

野田 金次郎

pp.1352-1359

 医学とはという問いかけに対してまず考えておきたい.

 医学の分野で行なわれていることは,応用生物学の範疇に属する問題である.ただその対象が自分自身の属している社会の集団の一員であり,その健康管理をするということ,つまり自分と同属の人間を管理するという点のみが,応用生物学とはまったく異なった重要な点であり,この点が科学の1分科として医学が独立している,たった1つの論拠であると同時に,医学関係者たる者だれもが,まず十分のうえにも十分なこの点の認識をもつのが必須の前提条件であることを肝銘すべきである.

座談会

輸血業務と臨床検査

村上 省三 , 徳永 栄一 , 竹内 直子 , 大久保 嘉明 , 松村 義寛 , 松橋 直

pp.1361-1371

最近,各地で病院輸血部や輸血センターができてはきたが,全体としてみるとまだまだの感がある.一方,業務が専門化されるに従って,そこに勤務する技師の資格づけなども要求されてきている.

この座談会では,輸血部のあり方,かかえている問題点を各施設の方々にお話し合いいただき,この特集のまとめとする.

blood banking technology memo

輸血の副作用

日本輸血学会

pp.1215

連銭形成

松橋 直

pp.1216

 交差適合試験を行なっているとき,受血者の血清が供血者の赤血球を強く凝集する.ABO,Rhなどの血液型の不適合はない.何本もの供血者赤血球と反応させても同様,何か珍しい血液型に対する抗体がありはしないか?と考える前に,凝集の状態を顕微鏡で観察してみる必要がある.

 10円玉を積み重ねて,横倒しにしたような赤血球の塊がみられたら,連銭形成である.凝集塊は不規則の方向の赤血球が集まったものである.しかし,連銭形成には規則性があるから一見してわかる.

輸液の目的と種類

小出来 一博

pp.1220

汚染血輸血の発見法と治療法

福田 , 島田 信勝

pp.1275

血液型の頻度

松橋

pp.1333

新鮮血が患者に輸血されるまで

大久保 嘉明

pp.1346

救急病院などにおいて,交通事故や手術中の大出血で,手もとに保存血もなく予定された検査ずみの供血者もいなかった場合,患者の周囲にいる同じ血液型の人から採血し,クロスマッチだけ行なって輸血するような事態が起こりうる.しかしもし少しでも時間的余裕があれば,下記の検査行程が予想される.

輸血とアレルギー

松橋 直

pp.1351

 輸血のとき現われる蕁麻疹,気管支攣縮などのアレルギー症の成立には,(1)受血者の側に原因がある場合,(2)供血者の側に原因がある場合,の2つの基因が考えられる.

(1)受血者が花粉,家塵,牛乳,卵などのようなごくありふれたアレルゲンに対して敏感なアトピック性の者である場合,血液や血漿を注入すると,中等度から重症の蕁麻疹,腹部痙攣,血圧降下などを起こすことがある。このような症状は,患者の状態によっても,注入する血液,血漿によっても,軽重様々である.輸注に用いた血液や血漿中に,受血者に対してアレルゲンとなるような物質がはいっていたために起こるものと考えられる.

赤十字血液センター一覧表

日本赤十字社血液事業部

pp.1360

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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今月の特集2 感染症の迅速診断—POCTの可能性を探る

60巻9号(2016年9月発行)

今月の特集1 睡眠障害と臨床検査
今月の特集2 臨床検査領域における次世代データ解析—ビッグデータ解析を視野に入れて

60巻8号(2016年8月発行)

今月の特集1 好塩基球の謎に迫る
今月の特集2 キャリアデザイン

60巻7号(2016年7月発行)

今月の特集1 The SLE
今月の特集2 百日咳,いま知っておきたいこと

60巻6号(2016年6月発行)

今月の特集1 もっと知りたい! 川崎病
今月の特集2 CKDの臨床検査と腎病理診断

60巻5号(2016年5月発行)

今月の特集1 体腔液の臨床検査
今月の特集2 感度を磨く—検査性能の追求

60巻4号(2016年4月発行)

今月の特集1 血漿蛋白—その病態と検査
今月の特集2 感染症診断に使われるバイオマーカー—その臨床的意義とは?

60巻3号(2016年3月発行)

今月の特集1 日常検査からみえる病態—心電図検査編
今月の特集2 smartに実践する検体採取

60巻2号(2016年2月発行)

今月の特集1 深く知ろう! 血栓止血検査
今月の特集2 実践に役立つ呼吸機能検査の測定手技

60巻1号(2016年1月発行)

今月の特集1 社会に貢献する臨床検査
今月の特集2 グローバル化時代の耐性菌感染症

59巻13号(2015年12月発行)

今月の特集1 移植医療を支える臨床検査
今月の特集2 検査室が育てる研修医

59巻12号(2015年11月発行)

今月の特集1 ウイルス性肝炎をまとめて学ぶ
今月の特集2 腹部超音波を極める

59巻11号(2015年10月発行)

増刊号 ひとりでも困らない! 検査当直イエローページ

59巻10号(2015年10月発行)

今月の特集1 見逃してはならない寄生虫疾患
今月の特集2 MDS/MPNを知ろう

59巻9号(2015年9月発行)

今月の特集1 乳腺の臨床を支える超音波検査
今月の特集2 臨地実習で学生に何を与えることができるか

59巻8号(2015年8月発行)

今月の特集1 臨床検査の視点から科学する老化
今月の特集2 感染症サーベイランスの実際

59巻7号(2015年7月発行)

今月の特集1 検査と臨床のコラボで理解する腫瘍マーカー
今月の特集2 血液細胞形態判読の極意

59巻6号(2015年6月発行)

今月の特集1 日常検査としての心エコー
今月の特集2 健診・人間ドックと臨床検査

59巻5号(2015年5月発行)

今月の特集1 1滴で捉える病態
今月の特集2 乳癌病理診断の進歩

59巻4号(2015年4月発行)

今月の特集1 奥の深い高尿酸血症
今月の特集2 感染制御と連携—検査部門はどのようにかかわっていくべきか

59巻3号(2015年3月発行)

今月の特集1 検査システムの更新に備える
今月の特集2 夜勤で必要な輸血の知識

59巻2号(2015年2月発行)

今月の特集1 動脈硬化症の最先端
今月の特集2 血算値判読の極意

59巻1号(2015年1月発行)

今月の特集1 採血から分析前までのエッセンス
今月の特集2 新型インフルエンザへの対応—医療機関の新たな備え

58巻13号(2014年12月発行)

今月の特集1 検査でわかる!M蛋白血症と多発性骨髄腫
今月の特集2 とても怖い心臓病ACSの診断と治療

58巻12号(2014年11月発行)

今月の特集1 甲状腺疾患診断NOW
今月の特集2 ブラックボックス化からの脱却—臨床検査の可視化

58巻11号(2014年10月発行)

増刊号 微生物検査 イエローページ

58巻10号(2014年10月発行)

今月の特集1 血液培養検査を感染症診療に役立てる
今月の特集2 尿沈渣検査の新たな付加価値

58巻9号(2014年9月発行)

今月の特集1 関節リウマチ診療の変化に対応する
今月の特集2 てんかんと臨床検査のかかわり

58巻8号(2014年8月発行)

今月の特集1 個別化医療を担う―コンパニオン診断
今月の特集2 血栓症時代の検査

58巻7号(2014年7月発行)

今月の特集1 電解質,酸塩基平衡検査を苦手にしない
今月の特集2 夏に知っておきたい細菌性胃腸炎

58巻6号(2014年6月発行)

今月の特集1 液状化検体細胞診(LBC)にはどんなメリットがあるか
今月の特集2 生理機能検査からみえる糖尿病合併症

58巻5号(2014年5月発行)

今月の特集1 最新の輸血検査
今月の特集2 改めて,精度管理を考える

58巻4号(2014年4月発行)

今月の特集1 検査室間連携が高める臨床検査の付加価値
今月の特集2 話題の感染症2014

58巻3号(2014年3月発行)

今月の特集1 検査で切り込む溶血性貧血
今月の特集2 知っておくべき睡眠呼吸障害のあれこれ

58巻2号(2014年2月発行)

今月の特集1 JSCC勧告法は磐石か?―課題と展望
今月の特集2 Ⅰ型アレルギーを究める

58巻1号(2014年1月発行)

今月の特集1 診療ガイドラインに活用される臨床検査
今月の特集2 深在性真菌症を学ぶ

57巻13号(2013年12月発行)

今月の特集1 病理組織・細胞診検査の精度管理
今月の特集2 目でみる悪性リンパ腫の骨髄病変

57巻12号(2013年11月発行)

今月の特集1 前立腺癌マーカー
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査②

57巻11号(2013年10月発行)

特集 はじめよう,検査説明

57巻10号(2013年10月発行)

今月の特集1 神経領域の生理機能検査の現状と新たな展開
今月の特集2 Clostridium difficile感染症

57巻9号(2013年9月発行)

今月の特集1 肺癌診断update
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査①

57巻8号(2013年8月発行)

今月の特集1 特定健診項目の標準化と今後の展開
今月の特集2 輸血関連副作用

57巻7号(2013年7月発行)

今月の特集1 遺伝子関連検査の標準化に向けて
今月の特集2 感染症と発癌

57巻6号(2013年6月発行)

今月の特集1 尿バイオマーカー
今月の特集2 連続モニタリング検査

57巻5号(2013年5月発行)

今月の特集1 実践EBLM―検査値を活かす
今月の特集2 ADAMTS13と臨床検査

57巻4号(2013年4月発行)

今月の特集1 次世代の微生物検査
今月の特集2 非アルコール性脂肪性肝疾患

57巻3号(2013年3月発行)

今月の特集1 分子病理診断の進歩
今月の特集2 血管炎症候群

57巻2号(2013年2月発行)

今月の主題1 血管超音波検査
今月の主題2 血液形態検査の標準化

57巻1号(2013年1月発行)

今月の主題1 臨床検査の展望
今月の主題2 ウイルス性胃腸炎

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