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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査16巻2号

1972年02月発行

雑誌目次

カラーグラフ

好銀性染色について

鬼頭 花枝

pp.120-121

 人の手術および解剖材料を用いて染色標本を作製していると,まれならず銀還元性(argentaffin)あるいは好銀性(argyrophil)染色の依頼を受ける.ここでいう銀還元性は細胞内頼粒がアンモニア銀液中でホルマリンなどの還元剤の添加なしに銀イオンを還元する能力を示し,好銀性とは顆粒が還元剤の存在下ではじめて銀を析出することである.それゆえ反応機構上からいっても,銀還元性顆粒が同時に好銀性を示すことは当然であるが,好銀性顆粒は必ずしも銀還元性であるとはかぎらない.実際,強い好銀性を示す細胞でも,全く銀還元性をもたぬことがしばしば観察される(たとえば膵島).

 今回私は当がんセンター研究所第1病理部の協力を得て,ここで蒐集されたいわゆるFunctioning tumorsと呼ばれる腫瘍材料を中心に,諸種好銀性染色を実施してみた.原法の染色条件を若干改良して,ほぼ満足できる染色標本を得ることができたので,ここにその概要を紹介し,参考に供したいと思う.

技術解説

マイクロタイターの活用法

富山 哲雄

pp.123-132

 TakatsyおよびSeverによって開発されたマイクロタイター法は,血清反応にはじまって細菌感受性試験から組織培養に至るまで広く応用されている,今回は,病院の血清検査室で通常行なわれている検査という意味で,ASLOを中心に各検査法について,具体的な検査のすすめ方を述べてみたい.

 なお,一般的な実験手技については,本誌前回の解説2)を参照していただきたい.

ウイルスのプラックフォーメーションテスト—(plaque formation test)

赤尾 頼幸

pp.133-140

 Dulbecoがポリオウイルスおよび西部ウマ脳炎ウイルスを,単層細胞培養に接種して中性紅を加えた寒天を重層して,変性を起こした細胞によって,プラックが形成されることを報告して以来,急速にいろいろのウイルスに用いられるようになった.

 細菌の寒天平板培地上の1個のコロニーが1個の細菌から作られるように,1個のプラックは1個の感染性ウイルス粒子によって形成される,したがってプラック形成法をウイルス学的研究に応用することによって,(1)ウイルスの定量が従来の方法に比べて,感染性ウイルス粒子を直接数えることができるので,より正確になった.(2)プラック法によって中和後の生存ウイルスが正確に定量されるので,中和抗体の定量に応用され,詳しいウイルスと抗体との中和反応の解析ができる.(3)独立した1個のプラックからウイルスの純系(クローン)を分離することができる。(4)プラックの大きさや形状の差異は,ウイルス株間の遺伝的なマーカーとして利用することができるなど,ウイルス学の分野で果たす役割は大きい.

緩衝液—その種類と選びかた

長谷川 福市

pp.141-145

 臨床検査が普及発展して,医療の大きな分野として定着し,分析機器の発達と相まって,分析方法も固定化しつつある.このような背景のもとにあって,各種試薬類は‘キット’の形で販売されているものが多くなった.このように,仕組まれた一貫作業のみを追っていると,自分のやっている仕事すらわからなくなってしまうであろう.これから述べようとする緩衝液についても同様であって,指示どおりに計量・溶解すればよいようになっている.こうして販売されている緩衝液は,正しいものと信じて疑わない.危険なことである.時々は自分で作って,市販の緩衝液をチェックする姿勢が望ましい.

 臨床化学研究を進めるうえで,しばしばpHの恒常性を保つということが重要な問題となる.そのように基本的な事がらである緩衝液について,企画された編集者の意図もそこにあるのではなかろうか.

総説

臨床検査と医療過誤

北浜 睦夫

pp.146-150

 医療における医師の過失の有無をめぐって,医師側と患者側との間で争われるケースが,最近とみにふえてきた.このようなケースにおいて,医師側に明らかな過失があれば,医療過誤として法律上の責任を問われることになる.

 しかしながら,診療の結果,病状の増悪や死に至ったということで,ただちにその法律上の責任が問われるものではない.すなわち悪い結果をもたらした原因が医師側の過失によると認められた場合にはじめてその過失の内容・程度に応じて責任が追求されるのである.

学会印象記

第22回電気泳動学会総会—進むアイソザイム測定の研究

桜林 郁之介

pp.151

 第22回電気泳動学会総会は,昨年10月21,22日の両日,青森県弘前市の青森県リンゴ商業会館において,弘前大学医学部第2内科の大池弥三郎教授総会長のもとに開催された.

 弘前は晩秋の空が青く澄み渡り,行きかう人々の顔には早や冬の気配を感ずる肌寒いころであった.会場の青森県リンゴ商業会館は弘前駅に近い近代的な4階建のビルで,全国各地から提出された一般演題58題.シンポジウムは追加発言を加え8題を数え,比較的盛況であった.本学会の特徴は電気泳動法を用いた研究なら医学以外の分野の演題でも発表できることであり,それだけ議論も活発で,かつ広い分野の知識を得られることにあるのだが,今回は一般演題中,生物学関係から4題が提出されたのみで,ちょっとさみしい感じがした.

臨床検査の問題点・37

正常値の求め方

玄番 昭夫 , 川島 勝士郎

pp.152-157

正常値とは何か,正常範囲以外は異常,つまり病気なのか…….正常健康人の年齢,性,また検体の分析法によって正常範囲はかなり影響を受ける.それらをふまえ,信頼できる正常値を求める筋道を検討する.(カットは進歩する自動分析機器)

私のくふう

圧電着火装置を利用した電子ブンゼン燈

大竹 敬二

pp.157

 いままで,マッチなどで点火していたブンゼン燈を,家庭用ガス器具,ガスライターに使われている圧電素子を利用して,瞬間的に定められた炎を検査室で使用できないものか,とくふうしてみた.

 現在私たちが毎日使っているブンゼン燈は,各ガス会社のカロリーに合ったものでないと危険であるが,点火には,マッチその他を使用されていると思うが,まずコックをひねり,ブンゼン燈の下部リングを回しながらガスを噴出し,点火しながらガス量を増し,空気を加え完全燃焼させながら,自分の使用に対し理想の炎を得ている.

ME機器の安全対策・2

IEC国際安全規格

竹村 靖彦

pp.158-163

 前回の対話の中から,われわれは日常の検査の中にも思いがけぬ危険がいっばいあることを知ったと思う.わが国においても急速に発展した工業を中心とした経済発展の中に,すでに承知のように,公害の問題がクローズアップされ,国民の健康,ときにはその生命の存在すら危ぶまれてきている.同様に本来疾病の診断,治療を目的とした医用電気機器が,その使用環境や,機器の欠陥,使用上の不注意から,取り返しのつかぬ事故を起こすことは,悲しい現実といわなければならぬ.

 これを周到な計画と,綿密な準備と,万全の注意によって未然に防ぐことは,われわれ医療従事者にとっては至上の義務である.ややもすると技術の発展に目をうばわれて,人間の生命に対する心がまえがわれわれに欠けているともいわれている現在,その立ち遅れが目だっていることは大きな問題である.そこで今回は安全対策に対する各国の関係者の基本的考え方を紹介する.ここでは,約3年ほど前から,各国の総合的な意見の討論が活発になされ,安全に対する各国のこれまでの研究,調査の中から‘IEC国際安全規格’が生まれ,1972年春までには成文化される見とおしが確実となってきたので,これをさしせまった世界の総意と考えて,その国際安全規格の底を流れる,基本姿勢その安全に対する基本的考え方などを紹介する.

論壇

継続教育—Continuing Education

富田 仁

pp.166-167

 最近アメリカのオレゴン医科大学臨床病理学教室における1年間の留学を終わり,帰国した.アメリカにおいて最もすばらしいと思ったものは,教育のやり方であるので,教育,特に検査技師の教育に関して,感ずる所を論述したい.

座談会

第1回臨床検査技師国家試験を顧みて—職域進出と新たな責任と

丹羽 正治 , 井川 幸雄 , 杉山 育男 , 宮沢 正治 , 芹沢 香 , 深谷 順子 , 高橋 昭三

pp.168-175

 昨年8月,初の臨床検査技師国家試験により2万5000の臨床検査技師が誕生した.高度化・多様化する医療技術のなかで,臨床検査の分野にも,電気生理はもとより医用電子工学(ME)やRIの知識・技術も必要となりつつある.それらの新しい領域をカバーした試験の出発であるだけにあらゆる意味で注目を集めた.そこで,受験者,技師会,試験の事情に詳しい医師にそれぞれの立場から感想,意見,展望を語っていただく.

第1回 臨床検査技師国家試験 問題と解答

pp.176-179

臨床生理学

 問題1 心電図交流障害の原因とならないものはどれか.

1.アースの断線 2.電極と皮膚問の接触抵抗

昭和46年第23回,24回二級臨床病理技術士資格認定試験学科筆記試験

pp.199-206

臨床化学

 I次の文章の( )中に適切な語又は数字を入れなさい.

1)健康人の血糖値はSomogyi法で測定すると空腹時で大体(1) mg/dl,ブドウ糖50g径口負荷後(2)時間が最も高いことが多く(3)mg/dl程度となる.

海外だより

—欧米(北欧,東欧,西欧,米国およびカナダ)の病院検査室(6)—ハンガリーのブタペスト市にブタペスト大学医学部実験研究所とザムメルウァイス大学医学部小児科検査室を訪ねて

佐々木 禎一

pp.180-183

はじめに

 私の東欧社会主義共和国の病院見学の印象記も,とつとつとして先報1-3)のユーゴのベオグラードまでやって来た.本報ではハンガリーのブタペスト市で訪ねた病院検査部門の内容を紹介してみよう.それは,

 ①ハンガリーのブタペスト市にあるOrvostudomànyi Egyeten,Kisérleti Kotató Laboratorium(=Experimental Research Dept.,University Medical School,Budapest:ブタペスト大学医学部実験研究所)と

研究

小児脳波記録における検査前夜の睡眠時間に関する一考察

児玉 昭信 , 三藤 孝

pp.184-186

はじめに

 小児脳波の完全な記録は比較的困難とされているが,社会の進歩に伴って自閉症や行動異常など,小児脳波記録を要する疾患が増加し,単に異常脳波を検出するのみでなく,小児期における脳の発達の面が重視され,覚醒から自然睡眠に至る完全な記録が要求される時代となっている.従来小児脳波記録における前処置の一方法として,検査前夜の睡眠制限が行なわれてきた.しかしこの方法では完全な覚醒脳波が得られないおそれがあり,私たちは前夜の睡眠制限を特に指示することなく,自然のリズムにまかせて翌日覚醒から自然睡眠,さらに再覚醒に至る完全な脳波を記録することを試み,2,3の興味ある知見を得たので報告する.

結核菌の耐性検査における拡散法と希釈法との比較

松井 晃一 , 山本 美智子

pp.187-190

はじめに

 近年結核菌の培養および耐性検査は,抗結核剤の種類の増加と結核患者の病状の経過を的確に把握する必要から,頻回に行なわれるようになり,検査件数も著しく増大して細菌検査室にとって大きな負担となりつつある.

 結核菌耐性検査法としての直立拡散法1-5,10))は手技が平易で試験管の数も少なくてすみ,しかも連続的に菌耐性の移行部1,2,4,5))を測定できる利点があり,従来の薬液濃度希釈法6)との相関性も高いことは多くの諸研究者1,3,7,10,11)によって報告されている.私どももこの方法を1967年1月から実施してきたので,直立拡散法と薬液濃度希釈法の2法を併用した成績から両者の比較を行ない,その信憑性について検討を加えてみた.

色素結合基質(DyAmyl)による血清アミラーゼ活性値測定法

片平 宏 , 天野 訓子 , 松平 道子 , 斎藤 レイ子 , 吉野 二男

pp.191-195

はじめに

 現在,広く用いられているアミラーゼ活性値の測定法は,大きくわけてアミラーゼの作用後に残存する基質のデンプン量をヨード・デンプン反応を利用して測定するAmyloclastic法と,生成された還元糖量を測定するSaccharogenic法の2者に分類できると思う1).前者に代表される測定法にはわが国で最も多く,また長く採用されてきたWohlgemuth法があるが,現今ではその定量性と表現単位の不合理性から,Caraway2)とその変法3)などに移行しつつある.しかしながらこのヨード・デンプン反応は共存タンパクとデンプン分子との間の競合により発色がある程度阻害されるといわれ,日差変動などの点その他にもいろいろと問題点は多い4)

 一方,後者に代表される測定法にはSomogyi法があるが,わが国においてはその手技の繁雑さからあまり採用されておらず,むしろ近年各種測定法の微量化と関連してそのすぐれた再現性のために,3,5—dinitrosalicylicacidを使用した微量法5-7)が各所で採用されている.しかし測定操作は前者に比較すると繁雑さはまぬがれず,加えて高血糖時の高ブランク値はいろいろと問題を含み,高単位活性の場合の検量線における直線性等もよくない.さらに根本的に重要なことは,その両者とも基質そのものの不均一性に最大の悩みがあった.したがって基質に関しては,精製アミロースを使用するなど多角的な検討がなされている8)

ひろば

指さし呼称の提案

村田 徳治郎

pp.186

 毎日,私は駅頭で電車の乗り降りや停止・発進の際,駅員が手を左右にあげて安全を確認するサインにいっも感心する.安全を確保するためには単に頭や目で判断するだけではまだ完全とはならない,という証明のように思われる.

 私どもの毎日の検査業務の初め終わりに,火災やガスもれの防止にそこの責任者だけが気をつけるだけでは不充分で,電気やガスを使用する器械が特に多い検査室では,ひとりひとりが十分気をつける必要があるのはいうまでもない.まして試薬や器械には発火性の高いものが多い.特に炎光光度計のように空気とガスを使用する場合,ちょっとという気持で点火したまま席をはずす人が多い.そこにエーテルを,他の検査をしていたものが置いて,いま少しでとりかえしのつかない事故を起こすところであった,と知人は話していた.

新しいキットの紹介

血清遊離脂肪酸比色定量法に関する検討—NEFA測定キット(NEFA・栄研)について

久城 英人 , 高野 圭以 , 福井 巌

pp.196-198

 血清遊離脂肪酸(以下FFAと略)の定量法は滴定法1-4)と比色法5-11))に大別される.

 滴定法はFFAを有機溶媒で抽出し,希アルカリで滴定を行ない,その消費量から計算によってFFA値を求める方法である.これにはDole1,2),Gordon3)およびTrout4)らの方法があるが,いずれも必要とする血清量が多く,終末点の判定に個人差がはいりやすく,血清中に共存するリン脂質,乳酸などが正誤差を与え,その除去のための抽出後の精製が必要なことなど,日常臨床検査に要求される微量,精密,迅速の条件に欠け,特に多数検体の処理には難点が多い.

質疑応答

テステープ判定と尿糖定量の相関は……

北村 元仕 , 十字生

pp.209

 問 テステープ(定性)と尿糖定量(Somogyi法)が一致しない場合があり(ビタミンCの服用を別として),薬剤色の強い尿が高く出るのですが,この処理方法をご教示ください.

 また1時間に20-30検体を調べる他の適切な方法がありましたら,お教えください.

Senior Course 病理

筋疾患の電顕による検索

三杉 和章 , 三杉 信子

pp.223

 筋疾患の種類は数多いが,一般に筋自体に異常のあるもの(筋原性),支配する神経系に異常のあるもの(神経性),内分泌器管や電解質異常によるもの(代謝性)などに大別されている.診断確認のために筋力テスト,神経学的検査,家族歴の調査,クレアチンホスフォキナーゼやアルドラーゼなどの生化学検査,筋電図,筋生検などが行なわれる.これらの所見を総合して診断が決定されるが,筋生検の病理学的検索は中でも重要な位置を占めている.検査法としては通常のH・E,PTAH,アザン染色のほかに,酵素活性や神経筋接合部の検索のために種々な組織化学的染色が用いられている.最近では電顕も盛んに使用され,光顕では見いだしえなかったいく多の変化を明らかにしているので,そのいくつかを記したい.

 正常の筋を電顕でみると,アクチンとミオシンの規則正しい配列によって生ずるA,I,Z,H,Mなどの帯と,それを複雑にとりまく小胞体系や糸粒体がみられる.筋原性疾患の代表ともいえる進行性筋ジストロフィー症では,筋原線維の配列の乱れ,断裂,消失など多彩な変化とともに図1(210ページ)に示すようなZ帯を中心としたZ帯の流れと呼ばれる変化を示す.これに似た変化は一見正常にみえる保因者(患者の母親など)の筋にも軽度ではあるが,しばしばみることができる.それゆえ,電顕による検索は保因者の検索,あるいは患者の早期発見の方法としてきわめて有用なものと思われる.

Senior Course 生化学

色素結合法による血清アルブミンの定量とその際の変色機構

坂岸 良克

pp.219

 アルブミンを血清の他のタンパク分画から分離することは電気泳動法,カラムクロマトグラフィーによってかなり確実に実施することができる.アルブミンに興味をいだく人びとは,その構造を決めるため精製した血清アルブミン標品のアミノ酸組成を調べたりしているが,同時にアセチル化を行なったり,色素などを結合させて立体的構造も追求している.

 臨床化学者にとっての切実な問題は,むしろ血清のままでアルブミンを定量することである.種々の物質を運搬し,保護膠質作用を及ぼし,血液の浸透圧を保つアルブミンは,臨床化学検査のうちでもかなり重要な項目であることはまちがいない.しかし,セルロースアセテート膜などで泳動分離しても染色方法によるかぎり,それぞれの分画の色素結合能が異なるので,定量法として十分なものとは見なせない.

Senior Course 血液

血小板粘着能

安永 幸二郎

pp.220

 血小板粘着能は止血,凝固機序の解明にも重要な意義があるが,凝固亢進ないし血栓傾向を知るための資料も提供する.血小板の粘着は血小板が異物面に接したときに生ずるもので,凝集は血小板相互の集塊形成をいうが,凝集にも粘着が加味されるから,厳密な区別は困難であるが,両者の機序は若干異なるものであり,臨床上両者に介離がみられることもあるから,別に検査するほうがよい.

 血小板粘着能のin vitroの測定は,フラスコ回転法(Wright法),ガラス繊維法(Moolten法,Vroman法),ガラスフィルター法(田中法),ガラス粒子法(Hellem法,O'Brien法,Salzman法)などがあるが,このうちSalzman法は,測定血液に抗凝固剤が加えてなく方法も簡単で,測定成績も再現性に富み推奨される.

Senior Course 血清

オーストラリア抗原(1)

稲井 真弥

pp.221

 最近注目されている検査の1つにオーストラリア抗原の検出法がある.この抗原は血清肝炎の発生と密接な調係をもって検出されるので,Hepatitis-AssociatedAntigenとも呼ばれている.

Senior Course 細菌

Vi抗原と線毛抗原

橋本 雅一

pp.222

 今回は,日常の血清学的診断にあたって問題になるいくつかの抗原成分を取り上げる.

Senior Course 生理

電極の電気化学

深井 俊博

pp.224

 生体電気現象をできるだけありのままに記録するには,電極の役割をよく理解することが必要である.今回は特に電極電位およびその変動(雑音),分極などわれわれが日常問題とする現象を取り上げ,それを通して電極の働きというものを考えてみよう.

Senior Course 業務指導のポイント

検体保存の可否

荒木 仁子

pp.225

 検体保存の可否について,ここでは問題を血液の臨床化学検査に限ることにする,採血したのち全血のまま放置すると,血漿化学成分は共存する細胞成分によって分解されたり,採取に伴う環境変化のための分解も起こる.石井によれば放置による血液成分の変化は,

(1)赤血球解糖作用によりブドウ糖が減少しこれに対応して乳酸,ピルビン酸が増加,pHおよびCO2張力に変化が起こる.

検査技師のための解剖図譜・2

心臓

三島 好雄

pp.212-213

 心臓の機能は上・下大静脈を介して全身の静脈血を集め,この静脈血を肺動脈を経て肺に送り,肺胞でガス交換を行なって酸素の供給を受けた動脈血を肺静脈を介して受け,大動脈からこの動脈血を全身に送り出すポンプ作用である,すなわち体循環(大動脈—大静脈系)と異なって肺循環では動脈系の中を静脈血が,静脈系の中を動脈血が流れている(前号の図参照,濃赤は動脈血を,薄赤は静脈血を示す).

 心臓の律動は交感神経と迷走神経によって調節されており,刺激伝導系を介してこれらの神経線維からの刺激が一定のリズムをもって伝導されている.交感神経の刺激によってリズムは速くなって頻脈を呈し,迷走神経を刺激するとリズムは遅くなって徐脈となる.また心臓には自発的に運動する能力があるので,刺激伝導系のどこかに障害が起こった場合にはそれより末梢部の心筋は自動的に収縮するようになる.

検査機器のメカニズム・2

脳波計

瓜谷 富三

pp.214-215

1.脳波計

 前回,心電計についてその構造を説明したが,脳波計も構造的にみて共通する部分が多い.両者の構造上の違いのおもなものは次のようになる.

(1)一般に多チャンネル(8,12,13,16など)である.

検査室の用語事典・2

一般検査,血液学的検査

寺田 秀夫

pp.216-217

7) Azotemia;窒素血症

 血液中のタンパク質以外の成分中の窒素の総和を残余窒素または非蛋白性窒素(NPN)といい,正常では25-35mg/dlである.この値が40-45mg/dl以上に増加した状態をいう.80mg/dl以上は腎機能障害以外は考えられない.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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64巻12号(2020年12月発行)

今月の特集1 血栓止血学のトピックス—求められる検査の原点と進化
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64巻11号(2020年11月発行)

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64巻10号(2020年10月発行)

増刊号 がんゲノム医療用語事典

64巻9号(2020年9月発行)

今月の特集1 やっぱり大事なCRP
今月の特集2 どうする?精度管理

64巻8号(2020年8月発行)

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64巻7号(2020年7月発行)

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今月の特集2 薬剤耐性カンジダを考える

64巻6号(2020年6月発行)

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64巻4号(2020年4月発行)

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64巻3号(2020年3月発行)

今月の特集1 Clostridioides difficile感染症—近年の話題
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64巻2号(2020年2月発行)

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今月の特集2 高血圧の臨床—生理検査を中心に

63巻11号(2019年11月発行)

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増刊号 維持・継続まで見据えた—ISO15189取得サポートブック

63巻9号(2019年9月発行)

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今月の特集2 現代の非結核性抗酸菌症

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今月の特集 知っておきたい がんゲノム医療用語集

63巻7号(2019年7月発行)

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今月の特集2 COPDを知る

63巻6号(2019年6月発行)

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今月の特集2 薬剤耐性菌のアウトブレイク対応—アナタが変える危機管理

63巻5号(2019年5月発行)

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増刊号 検査項目と異常値からみた—緊急・重要疾患レッドページ

63巻3号(2019年3月発行)

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今月の特集1 てんかんup to date
今月の特集2 災害現場で活かす臨床検査—大規模災害時の経験から

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今月の特集2 現場を変える!効果的な感染症検査報告

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今月の特集2 不妊・不育症医療の最前線

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62巻3号(2018年3月発行)

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今月の特集1 Stroke—脳卒中を診る
今月の特集2 実は増えている“梅毒”

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60巻10号(2016年10月発行)

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今月の特集2 感染症診断に使われるバイオマーカー—その臨床的意義とは?

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今月の特集2 smartに実践する検体採取

60巻2号(2016年2月発行)

今月の特集1 深く知ろう! 血栓止血検査
今月の特集2 実践に役立つ呼吸機能検査の測定手技

60巻1号(2016年1月発行)

今月の特集1 社会に貢献する臨床検査
今月の特集2 グローバル化時代の耐性菌感染症

59巻13号(2015年12月発行)

今月の特集1 移植医療を支える臨床検査
今月の特集2 検査室が育てる研修医

59巻12号(2015年11月発行)

今月の特集1 ウイルス性肝炎をまとめて学ぶ
今月の特集2 腹部超音波を極める

59巻11号(2015年10月発行)

増刊号 ひとりでも困らない! 検査当直イエローページ

59巻10号(2015年10月発行)

今月の特集1 見逃してはならない寄生虫疾患
今月の特集2 MDS/MPNを知ろう

59巻9号(2015年9月発行)

今月の特集1 乳腺の臨床を支える超音波検査
今月の特集2 臨地実習で学生に何を与えることができるか

59巻8号(2015年8月発行)

今月の特集1 臨床検査の視点から科学する老化
今月の特集2 感染症サーベイランスの実際

59巻7号(2015年7月発行)

今月の特集1 検査と臨床のコラボで理解する腫瘍マーカー
今月の特集2 血液細胞形態判読の極意

59巻6号(2015年6月発行)

今月の特集1 日常検査としての心エコー
今月の特集2 健診・人間ドックと臨床検査

59巻5号(2015年5月発行)

今月の特集1 1滴で捉える病態
今月の特集2 乳癌病理診断の進歩

59巻4号(2015年4月発行)

今月の特集1 奥の深い高尿酸血症
今月の特集2 感染制御と連携—検査部門はどのようにかかわっていくべきか

59巻3号(2015年3月発行)

今月の特集1 検査システムの更新に備える
今月の特集2 夜勤で必要な輸血の知識

59巻2号(2015年2月発行)

今月の特集1 動脈硬化症の最先端
今月の特集2 血算値判読の極意

59巻1号(2015年1月発行)

今月の特集1 採血から分析前までのエッセンス
今月の特集2 新型インフルエンザへの対応—医療機関の新たな備え

58巻13号(2014年12月発行)

今月の特集1 検査でわかる!M蛋白血症と多発性骨髄腫
今月の特集2 とても怖い心臓病ACSの診断と治療

58巻12号(2014年11月発行)

今月の特集1 甲状腺疾患診断NOW
今月の特集2 ブラックボックス化からの脱却—臨床検査の可視化

58巻11号(2014年10月発行)

増刊号 微生物検査 イエローページ

58巻10号(2014年10月発行)

今月の特集1 血液培養検査を感染症診療に役立てる
今月の特集2 尿沈渣検査の新たな付加価値

58巻9号(2014年9月発行)

今月の特集1 関節リウマチ診療の変化に対応する
今月の特集2 てんかんと臨床検査のかかわり

58巻8号(2014年8月発行)

今月の特集1 個別化医療を担う―コンパニオン診断
今月の特集2 血栓症時代の検査

58巻7号(2014年7月発行)

今月の特集1 電解質,酸塩基平衡検査を苦手にしない
今月の特集2 夏に知っておきたい細菌性胃腸炎

58巻6号(2014年6月発行)

今月の特集1 液状化検体細胞診(LBC)にはどんなメリットがあるか
今月の特集2 生理機能検査からみえる糖尿病合併症

58巻5号(2014年5月発行)

今月の特集1 最新の輸血検査
今月の特集2 改めて,精度管理を考える

58巻4号(2014年4月発行)

今月の特集1 検査室間連携が高める臨床検査の付加価値
今月の特集2 話題の感染症2014

58巻3号(2014年3月発行)

今月の特集1 検査で切り込む溶血性貧血
今月の特集2 知っておくべき睡眠呼吸障害のあれこれ

58巻2号(2014年2月発行)

今月の特集1 JSCC勧告法は磐石か?―課題と展望
今月の特集2 Ⅰ型アレルギーを究める

58巻1号(2014年1月発行)

今月の特集1 診療ガイドラインに活用される臨床検査
今月の特集2 深在性真菌症を学ぶ

57巻13号(2013年12月発行)

今月の特集1 病理組織・細胞診検査の精度管理
今月の特集2 目でみる悪性リンパ腫の骨髄病変

57巻12号(2013年11月発行)

今月の特集1 前立腺癌マーカー
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査②

57巻11号(2013年10月発行)

特集 はじめよう,検査説明

57巻10号(2013年10月発行)

今月の特集1 神経領域の生理機能検査の現状と新たな展開
今月の特集2 Clostridium difficile感染症

57巻9号(2013年9月発行)

今月の特集1 肺癌診断update
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査①

57巻8号(2013年8月発行)

今月の特集1 特定健診項目の標準化と今後の展開
今月の特集2 輸血関連副作用

57巻7号(2013年7月発行)

今月の特集1 遺伝子関連検査の標準化に向けて
今月の特集2 感染症と発癌

57巻6号(2013年6月発行)

今月の特集1 尿バイオマーカー
今月の特集2 連続モニタリング検査

57巻5号(2013年5月発行)

今月の特集1 実践EBLM―検査値を活かす
今月の特集2 ADAMTS13と臨床検査

57巻4号(2013年4月発行)

今月の特集1 次世代の微生物検査
今月の特集2 非アルコール性脂肪性肝疾患

57巻3号(2013年3月発行)

今月の特集1 分子病理診断の進歩
今月の特集2 血管炎症候群

57巻2号(2013年2月発行)

今月の主題1 血管超音波検査
今月の主題2 血液形態検査の標準化

57巻1号(2013年1月発行)

今月の主題1 臨床検査の展望
今月の主題2 ウイルス性胃腸炎

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