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文献詳細

雑誌文献

臨床検査16巻6号

1972年06月発行

文献概要

Senior Course 細菌

大腸菌の抗原成分—特にK抗原について

著者: 橋本雅一1

所属機関: 1東京医歯大・微生物

ページ範囲:P.670 - P.670

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 大腸菌属(genus Escherichia)は,その生物学的性状によりただ1つのsub-genus E.coliから成り,その分類は抗原構造の違いによる血清学的性状によって行なわれる.したがって,個々の菌種は,たとえばE. coli1:1:7,あるいはE. coli 111:8:12というというように記載されなければならない.そして,このような抗原構造の区別は,特に病原大腸菌と呼ばれる1群の大腸菌群を鑑別するのに重要であることは周知のとおりである.この抗原構造の記載にあたって,まず最初にO抗原が,最後にH抗原の性状が書かれているのであるが,真中に書かれた数字がK抗原と呼ばれる特殊な抗原の性状を記載したものである.
 これらの抗原成分について若干の注釈を加えると,O抗原は菌体成分であり,H抗原は鞭毛抗原であることはすぐに理解できるのであるが,K抗原と述べたときにまず思い浮かべるのは,たとえばKlebsiellaなどに存在する莢膜抗原(Kapsel Antigen, capsular antigen)を意味しているのであろうというのである.しかし大腸菌のK抗原は,決して莢膜の抗原成分のみを表わしているのではなく,少なくともエンベロープ(envelope)あるいは莢膜性抗原のどちらかを示しているのであって,しかも正確には前者はLとB,後者はA抗原と呼ばれてそれぞれ異なった性質をもつ成分を総括したものであることに注意しておく必要がある.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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