技術解説
アフィニティクロマトグラフィーを用いる線溶能の検査
著者:
五十嵐紀子1
松本光民2
竹内節夫2
浅田敏雄3
所属機関:
1東邦大生化学
2東邦大第2外科
3東邦大・生化学
ページ範囲:P.713 - P.722
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血液が血液凝固を完了すると血餅ができる.これはフィブリンの網の目に血球が丸め込まれたようなもので,管壁からはがしてしばらく置くと,自然に血餅中に含まれる血小板の作用で血餅の退縮現象が起こりその中から血清がしみ出し,やがて血清の中に血餅の球が浮かぶような状態になる.ここへ一般にプラスミンアクチベーターと呼ばれるところの尿中より採られたウロキナーゼとか,細菌製剤のストレプトキナーゼ(以下,Sk)などを与えるとその血餅の網目がほぐれるように切れて内部に包み込まれた赤血球などが猛烈に落下してくる.顕微鏡下ではフィブリンの糸が1つ1つ切れて溶けていくのが観察される.つまりこのように線維素(フィブリンの糸)が溶けてくる現象を線維素溶解現象(以下,線溶)といいこれに関与する酵素やアクチベーター(以下,Act),インヒビター(抗プラスミン以下,Anti-Pl)群をひとまとめにして線溶系と呼んでいる.その中でフィブリンの糸を切断しているのはプラスミン(以下,Pl)という一種のタンパク分解酵素で,トリプシンに対するトリプシノゲンやトロンビンに対するプロトロンビンのようにプラスミノゲン(以下,Plg)という酵素原として血漿タンパク中に含まれている.通常の場合はウロキナーゼ(以下,Uk)とかSkの添加によって活性化し,こういう現象を起こすのであるが,強いストレスを与えられたヒトの血液やある種の疾患の患者血では,何も加えなくてもこのような現象を認めることがある.たとえば,窒息死したヒトの血液が固まらないことは有名である.このような場合は多量の活性化されたPlが,凝固したフィブリンを分解するだけではなく,その原料のフィブリノゲンまで切断したためにもう凝固できない血液となっているからである.