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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査17巻9号

1973年09月発行

雑誌目次

カラーグラフ

細胞診に及ぼす治療と感染症の影響

天神 美夫

pp.950-951

最近,とみに盛んとなってきた細胞診は婦人科領域においても癌および異型上皮の検出に主眼がおかれている.しかし細胞診のジャンルは広さをまし,ホルモン細胞学(hormone cytology)や炎症性疾患の診断にも応用されるようになってきた.日常の細胞診でみつかる炎症性変化はトリコモナス腟炎,腟カンジダ症,老人性腟炎および慢性頸管炎などがあげられる.ここではコルポスコピーとの対比のうえから慢性頸管炎,老人性腟炎,トリコモナス腟炎をあげ参考に供したい.

技術解説

細胞診に及ぼす治療と感染症の影響

天神 美夫

pp.953-961

 婦人科の診察,特に子宮癌の診断に関しての細胞診の存在は日常の検査法の1つとして今日では欠くことのできない検査方法となりつつある.

 細胞診は癌発見の1つの方法として世に出てきたが,これがさらに患者のホルモン環境の分析や,細菌感染症,特にトリコモナスやカンジダ症の診断,さらにそれらの治療効果の判定にまで利用されてきている.しかし細胞診はその判定にかなりの習練が必要なことと一定の染色技術を得るのに時間がかかることおよび染色そのものが複雑なことなどから一般婦人科医に広く利用されているとはいいがたいのが現状であろう.

支持体電気泳動法—その最近の技術の進歩

小峰 仙一

pp.962-970

 溶液中の荷電体が電場で移動する現象を電気泳動と呼ぶ.電気泳動法を大別すると,自由電気泳動とゾーン電気泳動に分けられる.自由電気泳動は図1のごとき光学系を用いて,図2のような装置の内に,図3のセル内に試料を入れ,このセルと直結された電極槽溶液に直接電極を挿入通電する方法で,Tiseliusの考案によるところから,一般にTiseliusの装置と呼ばれており,電気泳動の理論的な間題処理は本法によるほかはないが,本法では混在する各成分をすべて純粋に取り用すことは不可能であり,またその操作にはかなりの熟練を必要とし,かつ個々の測定に相当の時間を要するため,臨床検査の面ではほとんど利用されない.

 一方ゾーン電気泳動とは濾紙,カンテン,セルロースアセテート膜などに溶媒を含ませ,その内で溶質を泳動させるもので,この溶媒を含ませる素材を支持体と呼ぶ.このためゾーン電気泳動という替わりに支持体電気泳動という呼称が広く用いられている.この支持体は無荷電であることと,溶質を吸着しないことが理想条件ではあるが,若干これらの条件を満たしえなくともさしつかえない.

第1回樫田記念賞受賞論文・3

オートアナライザーSMA 12/60の改良

宮原 洋一

pp.971-979

 現在の臨床検査室における最大の関心事は,いかにして年ごとに増加する検査材料を限られた労力で,より高精度に分析するかに集約することができる.測定ステップの簡易化,試薬のキット化などその端的なあらわれであるし,さらに自動化学分析装置による分析操作ないしデータ処理の自動化は,能率向上とともに検査精度の向上に強い期待がよせられている1)

 自動化学分析装置は分析機構によってコンティニュアスフロー・システム(連続流れ方式)と,ディスクリート.システム(分離方式)に大別でき,最も古くから臨床検査領域に進出したテクニコン社のオートアナライザー(AAと省略)は,唯一のフロー方式である.一方,分離した反応管の中で自動分析を行なうディスクリート方式は,最近急速に普及した装置で,わが国でもすでに実用期にはいっている.また省力効果をいっそう高めるため,同じ試料から同時に分析できる項目を多くした多チャンネル自動分析装置の普及も,最近の注目すべき傾向である.

総説

アフィニティー・クロマトグラフィーの原理

阿南 功一

pp.980-984

クロマトグラフィーの発展

 クロマトグラフィーははじめTsvet (1906)がアルミナないし炭酸カルシウムのカラムに抽出した植物色素を加え,溶媒を流すと色素が色とりどりに帯状(バンド)に分離されることを発見したことから始まつた.このように着色帯になることから,クロマトグラフィー—ギリシャ語の色(chromo)に由来—と名付けられた.天然の吸着剤,その加工物,合成物(リン酸カルシウム・ゲル,ハイドロキアパタイトなど)の種種のものが用途に応じて用いられてきた.

 吸着クロマトグラフィーにおいては各物質のある条件下での吸着剤への吸着力と溶媒への溶解度の間のバランスによって類似物質の分離が可能となる.図1に示すように固相(担体)は吸着剤である.吸着現象そのものはときにはイオン的(静電気的)結合,非極性間の引力,van der Waals力などさまざまのものの総合である.

私のくふう

心電図記録紙切断のり付け器

大竹 敬二

pp.985

 心電図記録が最近多くなり,記録後の記録紙の整理が大変で,特に台紙に貼りつける作業は時間がかかり,午後の検査にも影響するようになった.

 整理方法にもビニール・チューブに入っている糊,瓶に入っているアラビヤ糊などを用いて,鋏・物差しで記録紙を切断したものを台紙に貼る方法か,はめ込み式の台紙に差込んで整理する方法が主に用いられているが,80%前後の検査室では前者糊付け方法を用い整理を行なっているようである.

臨床検査の問題点・55

抗グロブリン試験

安田 純一 , 藤原 ムチ

pp.986-991

臨床的に広範囲な領域をもつ抗グロブリン試験(クームス試験)は,その抗血清の使い方,選び方により判定に影響する.特に市販抗血清の場合,その性質,外国製品との違いなどをよく認識して使用することが肝要である.(カットは試験管法による陽性反応・左)

異常値の出た時・9

LDH(乳酸脱水素酵素)の高い時,低い時

谷中 誠

pp.992-996

 LDH(Lactate dehydrogenase)はグルコースからピルビン酸にいたる嫌気性解糖系の最終段階に働く酵素であり,ピルビン酸から乳酸への変換を可逆的に触媒する酵素でありNADを補酵素とする.

 反応はpH7.2-7.4では乳酸の生成に,pH8.3-8.8ではピルビン酸の生成に傾く.

論壇

現在の実感

宮地 隆興

pp.998-999

 現在の臨床検査は,日とともにその種類や設備がマンモス化してきた.最初は,個々の検査について測定法の確立をめざして努力とくふうがつみかさねられていたものが,しだいと機械化され,自動化され,検査室は1台何百万円から何億円という自動機械を並べ,しかも次々と便利と能率化という美徳(?)の名のもとにこの種の機械を押しつけられている状態である.検査の機械化,自動化は経済的な負担の増大のみならず,検査量の氾濫とともに,検査に対する意識も機械的になり,本来の使命をその中に埋没させる危惧を感ずる.私達はこのような現状を批判的に受けとめ臨床検査の本質をみつめ,本来の姿に沿って検査のありかたを考え,日常の検査の取捨選択の基礎を明らかにしておく必要がある.

化学検査のうつりかわり・9

脂質リンと無機リン

春日 誠次

pp.1000-1002

 臨床検査でのリン脂質の定量というと,過去・現在ともに脂質を抽出し,その中のリン酸すなわち脂質リンを定量するのが大部分の方法である.

 1932年The Williams&Wilkins Companyから発行されたJohn P.PetersとDonald D.Van Slykeの著になる「Quantitative ClinicalChemistry」の中で記されている脂質リンの定量法としては次のような方法があげられている.

研究

市販コレステロールキットの信頼性に関する検討

松永 義朗

pp.1003-1006

はじめに

 臨床検査の進歩と検査件数の増加に伴い,検査室作業の能率化の一助として,現在臨床化学検査のキット類が多数市販されるようになった.私達の検査室においても,数種の検査に市販キットを導入しているが,各メーカーからそれぞれ異なる原理のさまざまな製品が発表されており,選択に苦しむことが多い.

 1965年Barnett1)は臨床化学検査の測定技術の検討法を設定し,その方法によって市販キツト類の信頼性を比較検討し1,2),製品によっていろいろな問題点のあることを明らかにした.私達もこれにならい,わが国で市販されているコレステロール測定用キット5種を選び,その精密度および正確度について比較検討を行なった.

呼吸器感染症の起炎菌検索に関する検討—第1報喀痰定量培養法

西岡 きよ , 助川 善兵衛 , 渡辺 貴和雄 , 宇塚 良夫 , 松本 慶蔵

pp.1007-1009

はじめに

 一般細菌による呼吸器感染症の起炎菌決定に際しては,上気道常在菌の除去が最も大きい問題であり,多くの研究がなされているが要すれば,材料採取方法をくふうし肺内より直接痰を採取するものと,喀出された痰について培養方法によってこの点を解決しようとするものとの二通りに分けられよう.東北大学第1内科においては,前者に関しては気管支局所採痰法1)を開発し,後者についてはわれわれ独自の喀痰定量培養法2)を試み,呼吸器感染の実態を確実に把握すべく努力してきている.そこでこの10年来われわれがルーチンに行なっている定量培養法について総括したのでその方法の紹介と,具体的成績,本法の利点などにつき報告する.

チモールフタレインなどを用いての便潜血反応の検討

佐藤 栄良治

pp.1010-1012

はじめに

 消化器疾患の診断および治療に胃カメラなどのすぐれた機械により直接的に肉眼で観察することができ,検査に非常な進歩をもたらしているが患者に苦痛をあたえず,手軽に検査ができるまでには至っていない現在では,便の潜血反応も捨てがたい方法であると思われ,今後も消化器疾患の診断および治療経過を追ううえで大切な検査の1つとして多数の検体が処理されるであろう.一方臨床検査試薬の人体に対する無害化が所々で話題になっている昨今,従来すぐれた試薬として使用されている中にも決して安心して使用できるものだけとは限らない.

 特に発癌性のおそれのある薬品が問題になっているところである.一般に便潜血反応に使用されているベンチジンもすぐれた試薬であるが残念ながら発癌性物質1,2)の1つとされており,そのおそれのない試薬を用いての検討も必要であろうと思われる.そこで非発癌性の試薬(チモールフタレイン,ジフェニールアミン)による潜血反応について追試し,その成績と以前に報告したベンチジン濾紙反応時間5,6)との相関関係について調べ若干の知見を得たので報告し,諸賢のご指導ご批判を仰ぐ次第である.

新しい機器の紹介

抗核抗体検出用螢光スライドキット(KW)の使用経験

岩田 進 , 安達 真二 , 手塚 千恵子

pp.1014-1017

はじめに

 抗核抗体の証明は,SLE,自己免疫性疾患および膠原病などのスクリーニングテストとして重要な検査の1つとなっている.この抗体の検出法には,種々あるが1),血清学的には一般に螢光抗体法(間接法)が行なわれている2,3).この方法に使う抗原は,これまで市販のものはなく,各施設で検査のつど作成しているが,その中でも動物の臓器の氷結切片とヒトの白血球,Hela細胞などが好んで用いられてきた4-6).しかし,いずれも抗原の作成には特殊な器械器具を必要とし,技術および材料などの点で簡易ではなく,しかもそれに要する時間と煩雑さを考えると日常検査としては必ずしも適当でない面があった.

 われわれは,さきにニワトリ赤血球を用いる方法の改良法を発表したが7),今度日本凍結乾燥研究所が,これにさらに改善を加えキット化して抗核抗体検出の簡易化を計った.今回そのキットを入手する機会を得たので,その使用成績およびキット内容を紹介する.

オートアナライザーによる血清鉄,鉄結合能測定法の検討

宮原 洋一 , 臼井 敏明

pp.1018-1019

 血清鉄は血液疾患,肝臓疾患の鑑別診断上必須の検査として,日常検査の1つに数えられているが,その含有量はきわめて微量で,正確な測定には相当の熟練を必要とし,また使用器具の脱鉄処理,および操作中の鉄汚染など細心の注意と技術を必要としている.ところが連続流れ方式の自動分析装置であるテクニコン社のオートアナライザー(AAと省略)は,外気と接触しない完全閉塞流路内で反応が進行するため,血清鉄測定に利用すると汚染の危険はなく,繁雑な準備もいらなくなり,初心者でも能率的に測定することが可能となる.

 その意味から著者らはトリピリジル・トリアジン(TPTZと省略)による自動分析法を報告1)してきたが,最近,同じ測定原理で試薬を単純化したキット試薬(Fe試薬‘栄研’およびFe補助試薬‘栄研’栄研化学製造発売)が発売され,これをAAにそのまま利用して,ほとんど同じ血清量によって日常検査を処理することができたので紹介する.

新しいキットの紹介

ICG測定値の安定性について—各条件下及び経時変動

二宮 光子 , 朝倉 エミ子 , 堂満 憲一 , 中津川 泰子 , 当摩 正美 , 秋山 雄一

pp.1021-1024

緒言

 肝の総合的能力を容易に把握できるところから,従来よりBSP法が色素排泄試験として広く利用され,その臨床的意義が高く評価されてきた.しかしBSP法にも種々の欠点がある.特に腸肝循環や肝外排泄を受けるため必ずしも適確に肝機能を反映せず結果が不正確となる場合がある.また重篤なアレルギー性反応を起こす危険がある点などである.これらの欠点を十分補うものとして,近年Indocyanine Green(以下ICGと略)が注目され色素排泄試験としてルーチン化されつつある.

 周知のごとくICGはBrookerおよびHeseltineによって開発された暗緑色のTricarbocyanine系の色素で,初めは心拍出量など循環機能をみるために1957年Fox1),Wheeler2)らにより臨床研究に導入された.また本色素が選択的に肝に取り込まれ尿中排泄がきわめて少なく2-4),腸肝循環も行なわず2,3)大部分が胆汁中に排泄されるという特性を持つところから1959年にはLeevy5),Hunton6)らにより肝の排泄機能検査として紹介された.本邦でも上田7),広瀬4),浪久8)らの報告を経て臨床検査法としての手技の確立が日本消化器病学会肝臓機能研究班9)によりなされ,現在ではその簡易化によりルーチン検査の方向を辿っている.

臨床化学分析談話会より・2

きめ細かな研究・検討を展開!

菅野 剛史

pp.1025

□北海道支部の活動

 談話会の北海道支部は過去数年間以上,当札幌市を会場に毎月開催してきた.この9月で第100回となるが,その生いたちと従来までの活動の概要並びに現在抱えている問題を紹介する.

 第1回目は「Cholesterolの測定法をめぐる諸問題」について斎藤正行先生の特別参加のもとに1961年6月9日に行なわれた。これを機会に北大薬学部の木村,岩本両先生を中心に札幌近郊の病院検査部の幹部約10名が世話人会となって談話会は発足した.1964年度より,「大規模な特別講演のみでなく,新しい分析法の紹介,研究成果,各自対面している問題点の提起など,身近な問題も含めて隔月あるいは毎月実施しよう」との意見から,今日までどうにか毎月定例的に行なっている.

霞が関だより・16

医療従事者の身分法・1—その定義と業務

I K

pp.1026

 法律には,制定の目的とか趣旨とかを条文で明らかにしているものと,そうでないものとがある。条文で規定した背景にどのような意味があるのかは知らないが,ざっと見渡したところ,戦後に制定された法律に,目的(趣旨)とか定義が条文化されていることが多いように思える。

 さて,身分法と言えば,代表的なものに民法第4編があるが,ここでは医療関係者の身分法についで述べてみることとした.

質疑応答

ブロメリン法かクームス法か—交差適合試験

村上 省三

pp.1027

 問 ルーチン検査では,血清法とブロメリン法を併用しているのですが,AB型の患者(以前に輸血を受けたことあり)の交差試験で全部(保存血3単位,新鮮血3単位)が血清法適合,ブロメリン法主試験適合,同副試験不適合の結果だったので保存血について間接クームス試験を実施したら陰性だった.この場合の最終判定は,ブロメリン法とクームス法のどちらがよいのでしょうか.

 後者の場合だったらその非特異的反応が考えられるのか,それとも他に原因があるのでしょうか.また室温放置か37℃インキュベートかの問題はいかがでしょうか.

走査電顕の目・9

骨髄実質

小川 哲平

pp.1029-1030

 骨髄は全身の骨格の髄腔を満たしていて,その重量は平均約2,600gに達し,肝や脳に匹敵する大きな臓器である.骨髄は血液細胞の産生,分化,成熟,遊出という造血機序の他に,これに随伴して種々の物質代謝が活発に営まれている.

 骨髄組織は,静脈洞が四通八達しており,この静脈洞網の網眼を満たすのは,造血機能の状況に応じて増減する脂肪細胞である.これらの脂肪細胞は細網細胞に由来すると思われる.

シリーズ・一般検査 尿検査・3

尿沈渣検査のポイント

猪狩 淳

pp.1031-1032

 尿沈渣検査は一般検査の中でも,バラツキの大きい検査の1つである.標本作成から鏡検までの過程で,誤差の原因となる因子の多い検査であるために,いかに誤差を少なくするかが検査のポイントといえる.それには正しい標本の作成と,沈渣を見る目を養う以外によい方法はない.

組織と病変の見方—肉眼像と組織像の対比

造血器とその病変(1)

金子 仁

pp.1033-1036

造血器のおもなものは骨髄,脾,リンパ節である.今回は骨髄について述べる.骨髄疾患の内,最も主要な疾患は白血病である.白血病を大別すると骨髄性白血病とリンパ性白血病に分けられる.いずれも末梢血中の白血病が異常に増し,悪性腫瘍の一種といわれている.

骨髄から発生する腫瘍の代表的なものは骨髄腫(Myeloma)である.多数の骨に多発するので多発性骨髄腫の名がある.

検査と主要疾患・9

甲状腺疾患

畠山 茂

pp.1038-1039

 今日,放射性ヨードを利用した諸種の診断法の発達により,甲状腺疾患の診断法は,臓器診断としては最も進歩した完成された体系を有している.

 甲状腺は内分泌臓器として甲状腺ホルモンであるl-サイロキシン(T4)とl-トリヨードサイロニン(T3)を分泌するが,上位にある下垂体前葉の向甲状腺ホルモン(TSH)によって支配されている.すなわちTSHの過剰分泌ないし投与により機能は亢進し,臚胞上皮の丈が高くなり,立方上皮から高円柱上皮化し,臚胞内のコロイド(サイログロブリン)の吸収が高まりホルモンの合成分泌の回転も速くなってくる.それに比例して甲状腺の131Iの摂取率が上昇し,血中のタンパク結合ヨード(PBI)の量が増す.ホルモンの増量で組織の酸素消費量が高まって基礎代謝率(BMR)が増し,逆に血清コレステロール値が低くなる(図).このようなTSHの作用は,サイログロブリンに対するタンパク分解酵素の活性を高めかつ血中ヨードの利用率を上げる働きにあるとされている.

検査機器のメカニズム・21

低温恒温槽

柿沼 建

pp.1040-1041

1.装置の設計における考慮点

 恒温器(主として培養を行なう)はその目的からみて常に庫内の温度を正確に一定に維持することを絶対的必要条件としている.

 これらを満足させるための最良な装置とは,当然のことながら庫内の温度と調節する温度誤差範囲が常に±零度以内で動作する微細な調節装置でなくてはならないことが不可欠の要素であるが,現状ではかなりの許容誤差のある製品が多いのも事実である.しがるに設計関係者間ではこの範囲内にはいるようできるだけ誤差を少なくすることを最重点目標において設計に努力しているが,製品価格とのかね合いもあってなかなか困難な要素も多い.自然対流による恒温維持とサーキュレーター方式による恒温維持とについても,調節装置と温度恒定との間に対する温度誤差という点が必ず介在するので,種々の要素や条件を常に考慮しておく必要がある.

検査室の用語事典

自動化学分析

北村 元仕

pp.1043

44) Plunger;プランジャー

 Diluterやdispenserとして用いる注射筒のピストンなどのように,往復運動をする円柱ないし円筒状の部品をいう.

細菌学的検査

坂崎 利一

pp.1044

54) Methyl red test;メチルレッドテスト

菌の鑑別と同定に,VPテストとならべて行なわれるテストで,ブドウ糖リン酸塩ペプトン水で,4-5日間培養後,培地が酸性となっているか,あるいはアルカリ性となっているかを調べる.メチルレッド試液を1-2滴加えて,酸性(赤色)が陽性,アルカリ性(黄色)が陰性である.

Senior Course 生化学

LAP,γ-GTPの初速度測定法

内田 壱夫

pp.1045

 臨床化学検査室で酵素活性を測定するのに,多くは一定条件下での反応後,反応生成物の量を比色定量するような方法が用いられているが,酵素活性の測定は,化学量論的測定法以上の直線性をもった反応速度論的測定法が本質的な有利さをもっている.最近は,多数検体処理に適した反応速度自動分析機も多く開発され,GOT,GPT,LDH,CPK,ALPなどを中心に初速度測定法が取り入れられつつある.ここでは,KnightとHunter1)が報告したALPおよびSzasz2)のγ-GTP初速度測定法を記す.

Senior Course 血液

Senior Course 血清

細胞性免疫検出の実験例

伊藤 忠一

pp.1047

 今まで数回にわたり細胞性免疫とは何が,またそれを検出する方法にはどんなものがあるかについて述べてきた.今回は少し趣向を変えて前述したようないろいろの方法を利用して生体内における細胞性免疫の機構や各種疾患において細胞性免疫はどのようになっているかなどを検索した2,3の実験例を紹介したいと思う.

 最初はR.M.Blaeseら(Cellular Immunology.4,228,1972)の実験である.抗原によって誘導されるリンパ球の試験管内幼若化現象はリンパ球単独の環境では起こらず単球または大食細胞の介在が必要であり,2種類の細胞の協同作用によって初めて起こることは以前から知られている(Fishmanら,1963).

Senior Course 細菌

非発酵性グラム陰性杆菌を再同定する時の注意事項(2)

藪内 英子

pp.1048

7)平板上の孤立集落から釣菌した純培養について光学顕微鏡で鞭毛の有無を調べ,もし鞭毛があればその数と位置を確認する.最も簡単には運動性のある菌株だけについて鞭毛染色を行なえばよいが,鞭毛があっても運動性のない菌のあることは考慮に入れておかねばならない.普通は液体培養菌にホルマリンを加えてから遠沈洗浄したものまたは固形培地上の菌を直接蒸留水に浮遊させたものについて鞭毛染色を行なえばよいのであるが,Chromobacterium violaceumやVibrio Parahae-molyticusのように液体培地では極単毛,固形培地では周毛になる菌のあることも知っておかねばならない.それはともかくとして予定したすべての被検菌株の純培養について集落の性状,運動性の有無,鞭毛形態,およびoxidase反応,catalase反応を検し終われば,次にいろいろな培地を使った試験にとりかかる.

Senior Course 病理

酵素組織化学(1)

堀 浩

pp.1049

1.アルカリ性ホスファターゼ

 テスト材料は腎か,腸.0-4℃の10%ホルマリンで1夜固定し凍結切片とするか,固定せずに新鮮凍結切片としてから,冷10%ホルマリンで1-5分固定する.

Senior Course 生理

直流除細動装置

三浦 茂

pp.1050

 心筋の至るところに異常な興奮が多発すると心臓は有機体として収縮しなくなり,うごめくように動く.血圧は当然0,この状態が数分間続けば患者は死に至る.致死的不整脈,‘心室細動’である.

 心室細動は,急性心筋硬塞症や心臓手術で起こりやすい.ちなみに急性心筋硬塞症による死亡の約半数は,不整脈の頻発から心室細動に陥るといわれている.

Senior Course My Planning

検査技師とはどうあるべきか・3

松永 清輝

pp.1051

この欄で,小島けい子氏は‘技師という職業の独立性を’(4月号),また清水一枝氏は‘臨床とのコンタクトをもっと密に’(7月号)と主張されていますが,私自身,これからの技師像には少なからず関心をもっている.その考え方として,技師とは単なる一医療技術者というよりは,病院という屋根のもとで協力して働く医療チームのメンバーの一員という認識を出発点としたい.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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62巻4号(2018年4月発行)

増刊号 疾患・病態を理解する—尿沈渣レファレンスブック

62巻3号(2018年3月発行)

今月の特集1 症例から学ぶ血友病とvon Willebrand病
今月の特集2 成人先天性心疾患

62巻2号(2018年2月発行)

今月の特集1 Stroke—脳卒中を診る
今月の特集2 実は増えている“梅毒”

62巻1号(2018年1月発行)

今月の特集1 知っておきたい感染症関連診療ガイドラインのエッセンス
今月の特集2 心腎連関を理解する

60巻13号(2016年12月発行)

今月の特集1 認知症待ったなし!
今月の特集2 がん分子標的治療にかかわる臨床検査・遺伝子検査

60巻12号(2016年11月発行)

今月の特集1 血液学検査を支える標準化
今月の特集2 脂質検査の盲点

60巻11号(2016年10月発行)

増刊号 心電図が臨床につながる本。

60巻10号(2016年10月発行)

今月の特集1 血球貪食症候群を知る
今月の特集2 感染症の迅速診断—POCTの可能性を探る

60巻9号(2016年9月発行)

今月の特集1 睡眠障害と臨床検査
今月の特集2 臨床検査領域における次世代データ解析—ビッグデータ解析を視野に入れて

60巻8号(2016年8月発行)

今月の特集1 好塩基球の謎に迫る
今月の特集2 キャリアデザイン

60巻7号(2016年7月発行)

今月の特集1 The SLE
今月の特集2 百日咳,いま知っておきたいこと

60巻6号(2016年6月発行)

今月の特集1 もっと知りたい! 川崎病
今月の特集2 CKDの臨床検査と腎病理診断

60巻5号(2016年5月発行)

今月の特集1 体腔液の臨床検査
今月の特集2 感度を磨く—検査性能の追求

60巻4号(2016年4月発行)

今月の特集1 血漿蛋白—その病態と検査
今月の特集2 感染症診断に使われるバイオマーカー—その臨床的意義とは?

60巻3号(2016年3月発行)

今月の特集1 日常検査からみえる病態—心電図検査編
今月の特集2 smartに実践する検体採取

60巻2号(2016年2月発行)

今月の特集1 深く知ろう! 血栓止血検査
今月の特集2 実践に役立つ呼吸機能検査の測定手技

60巻1号(2016年1月発行)

今月の特集1 社会に貢献する臨床検査
今月の特集2 グローバル化時代の耐性菌感染症

59巻13号(2015年12月発行)

今月の特集1 移植医療を支える臨床検査
今月の特集2 検査室が育てる研修医

59巻12号(2015年11月発行)

今月の特集1 ウイルス性肝炎をまとめて学ぶ
今月の特集2 腹部超音波を極める

59巻11号(2015年10月発行)

増刊号 ひとりでも困らない! 検査当直イエローページ

59巻10号(2015年10月発行)

今月の特集1 見逃してはならない寄生虫疾患
今月の特集2 MDS/MPNを知ろう

59巻9号(2015年9月発行)

今月の特集1 乳腺の臨床を支える超音波検査
今月の特集2 臨地実習で学生に何を与えることができるか

59巻8号(2015年8月発行)

今月の特集1 臨床検査の視点から科学する老化
今月の特集2 感染症サーベイランスの実際

59巻7号(2015年7月発行)

今月の特集1 検査と臨床のコラボで理解する腫瘍マーカー
今月の特集2 血液細胞形態判読の極意

59巻6号(2015年6月発行)

今月の特集1 日常検査としての心エコー
今月の特集2 健診・人間ドックと臨床検査

59巻5号(2015年5月発行)

今月の特集1 1滴で捉える病態
今月の特集2 乳癌病理診断の進歩

59巻4号(2015年4月発行)

今月の特集1 奥の深い高尿酸血症
今月の特集2 感染制御と連携—検査部門はどのようにかかわっていくべきか

59巻3号(2015年3月発行)

今月の特集1 検査システムの更新に備える
今月の特集2 夜勤で必要な輸血の知識

59巻2号(2015年2月発行)

今月の特集1 動脈硬化症の最先端
今月の特集2 血算値判読の極意

59巻1号(2015年1月発行)

今月の特集1 採血から分析前までのエッセンス
今月の特集2 新型インフルエンザへの対応—医療機関の新たな備え

58巻13号(2014年12月発行)

今月の特集1 検査でわかる!M蛋白血症と多発性骨髄腫
今月の特集2 とても怖い心臓病ACSの診断と治療

58巻12号(2014年11月発行)

今月の特集1 甲状腺疾患診断NOW
今月の特集2 ブラックボックス化からの脱却—臨床検査の可視化

58巻11号(2014年10月発行)

増刊号 微生物検査 イエローページ

58巻10号(2014年10月発行)

今月の特集1 血液培養検査を感染症診療に役立てる
今月の特集2 尿沈渣検査の新たな付加価値

58巻9号(2014年9月発行)

今月の特集1 関節リウマチ診療の変化に対応する
今月の特集2 てんかんと臨床検査のかかわり

58巻8号(2014年8月発行)

今月の特集1 個別化医療を担う―コンパニオン診断
今月の特集2 血栓症時代の検査

58巻7号(2014年7月発行)

今月の特集1 電解質,酸塩基平衡検査を苦手にしない
今月の特集2 夏に知っておきたい細菌性胃腸炎

58巻6号(2014年6月発行)

今月の特集1 液状化検体細胞診(LBC)にはどんなメリットがあるか
今月の特集2 生理機能検査からみえる糖尿病合併症

58巻5号(2014年5月発行)

今月の特集1 最新の輸血検査
今月の特集2 改めて,精度管理を考える

58巻4号(2014年4月発行)

今月の特集1 検査室間連携が高める臨床検査の付加価値
今月の特集2 話題の感染症2014

58巻3号(2014年3月発行)

今月の特集1 検査で切り込む溶血性貧血
今月の特集2 知っておくべき睡眠呼吸障害のあれこれ

58巻2号(2014年2月発行)

今月の特集1 JSCC勧告法は磐石か?―課題と展望
今月の特集2 Ⅰ型アレルギーを究める

58巻1号(2014年1月発行)

今月の特集1 診療ガイドラインに活用される臨床検査
今月の特集2 深在性真菌症を学ぶ

57巻13号(2013年12月発行)

今月の特集1 病理組織・細胞診検査の精度管理
今月の特集2 目でみる悪性リンパ腫の骨髄病変

57巻12号(2013年11月発行)

今月の特集1 前立腺癌マーカー
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査②

57巻11号(2013年10月発行)

特集 はじめよう,検査説明

57巻10号(2013年10月発行)

今月の特集1 神経領域の生理機能検査の現状と新たな展開
今月の特集2 Clostridium difficile感染症

57巻9号(2013年9月発行)

今月の特集1 肺癌診断update
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査①

57巻8号(2013年8月発行)

今月の特集1 特定健診項目の標準化と今後の展開
今月の特集2 輸血関連副作用

57巻7号(2013年7月発行)

今月の特集1 遺伝子関連検査の標準化に向けて
今月の特集2 感染症と発癌

57巻6号(2013年6月発行)

今月の特集1 尿バイオマーカー
今月の特集2 連続モニタリング検査

57巻5号(2013年5月発行)

今月の特集1 実践EBLM―検査値を活かす
今月の特集2 ADAMTS13と臨床検査

57巻4号(2013年4月発行)

今月の特集1 次世代の微生物検査
今月の特集2 非アルコール性脂肪性肝疾患

57巻3号(2013年3月発行)

今月の特集1 分子病理診断の進歩
今月の特集2 血管炎症候群

57巻2号(2013年2月発行)

今月の主題1 血管超音波検査
今月の主題2 血液形態検査の標準化

57巻1号(2013年1月発行)

今月の主題1 臨床検査の展望
今月の主題2 ウイルス性胃腸炎

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