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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査18巻12号

1974年11月発行

雑誌目次

カラーグラフ

M.kansasiiの同定—一症例から

松井 晃一

pp.1266-1267

 非定型抗酸菌ならびに非定型抗酸菌症は,近年その発見頻度が高まってきており,これは検査面の開発,普及そして関心の高まったことによる1〜3).特に1972年に日本結核病学会抗酸菌分類委員会から出された試案4)は私どもの細菌室では手引きの一つとなっている.本症例もこの試案により鑑別同定したものである.患者は59歳になる女で48年7月に入院し6か月後に退院,入院時X線所見で右上肺野に空洞を認めており,微熱,咳があった.既往歴としては2年前に右乳癌で手術施行以後は60Cによる放射線治療を行ったことがある.入院時3回の喀痰検査では2回連続して本菌を検出,結核菌は認めなかった.入院後内視鏡検査による材料についても培養を行ったが,本菌も結核菌も分離できなかった.なお抗結核薬の感受性は,INH,PASは耐性,SM,KM,EB,CPMは不完全耐性,TH,VM,RFPは感性であった.また本菌が標準株P.18に比してS型集落であったことは下出5)の報告とも一致していた.

技術解説

院内感染源の検査法

金子 有之 , 大貫 寿衛

pp.1269-1276

 抗生物質の開発とともに,薬剤耐性菌による院内感染がふえている,その原因は,各種血液疾患,腎不全,糖尿病などの本来感染に対して抵抗の弱い疾患のみでなく,抗癌剤の使用,レントゲン線の照射などにより,患者が細菌の感染に対して抵抗が弱くなっていることと,抗生物質の多用によって耐性菌がふえていることにあると言えよう.

 院内感染の起因は,病原菌の付着している診療器具,あるいは医療薬品などで患者を治療する時に,病原菌を患者に,医療従事者が健康保菌者となり患者に接する,患者が細菌の付着している物に触れるなどの何らかの方法で患者が病原菌に接するところから始まる.病原菌保菌患者から医療器具,医薬品,医療従事者などを介して他の患者へ,また病原菌保菌患者から直接他の患者へと感染を起こしていく,このようにして院内感染は広がっていく.

NBT還元試験

松田 重三 , 河合 忠

pp.1277-1284

 NBT還元試験(nitroblue tetrazolium re-duction test)は,好中球機能検査法の一つであり,数多い好中球機能のうちでも,とりわけ食食能と好中球内酵素系の働きをみる検査である.

 好中球が黄色のNBT色素を取り込んでのち,還元作用により黒色のformazanを形成するが,この現象を好中球機能として間接的にとらえる方法である.

総説

プロスタグランディン—その生理的機能について

山本 皓一

pp.1285-1290

 プロスタグランディン(PG)は最近の医学,生物学領域におけるトピックスの一つで,すでに膨大な数の研究発表があり,現在なお続々と新しい知見が発表されている.紙数の関係上,それらの詳細にわたることは不可能で,きわめて表面的な概観に止めざるを得ないが,すぐれた単行書や特集,総説1〜3)が多数あるので,問題の細部についてはそれらを参照していただきたい.

 PGは図のような構造を有し,1個の5員環を持った炭素数20のモノカルボン酸で,二重結合,水酸基,ケト基などの位置の違いによりA〜Fの6群に分けられ,さらに各群に3種類が区別される.いずれの群も多彩な作用を示すが,その作用スペクトラムはそれぞれ異なり,生物活性と構造の関係を明確な規則として整理することは困難である.いずれのPGも細胞内のマイクロゾームで,アラキドン酸などの長鎖不飽和脂肪酸から合成される.生体内のほとんどすべての臓器や体液中に存するが,その濃度は10−6〜10−9/g程度であり,精嚢,腸,肺などに比較的多い.現在,F群などは合成されて市販されており,産婦人科領域で使用されている.PGの拮抗物質あるいは阻害剤として7—oxa-PGおよび5—oxa-PGの類縁体があり,またアスピリンやインドメタシンもPGの生成,放出を阻害することが知られている.

私のくふう

計算尺を用いた血色素指数の求め方

小林 重光

pp.1290

通常,血液検査をしていて意外に時間のかかるのが色素指数,平均赤血球容積などの計算である.特に色素指数の計算は,計算式

CI=Hb (g/dl)/R×3.2

 の分母,R×3.2を計算してからその分子を除すために,なかなかめんどうである.

臨床検査の問題点・69

睡眠脳波のとり方

遠藤 四郎 , 河越 弘

pp.1292-1299

睡眠脳波をとるには,やはり慣れによるコツが必要であろうし,患者検査のむずかしさも多いと思う.そして睡眠脳波のパターンがどういうものであるか,また睡眠剤や,疾患によっても現れるパターンは異なってくるものであるので,これらをよく見きわめ,知っておかなければ記録するうえで支障をきたしてしまう.それを認識するとともにコツを話し合っていただいた.(カットは覚醒から睡眠にいたる脳波と眼球運動を示している.EOGは眼球運動)

異常値の出た時・24

血小板数の変化と形態異常

塚田 理康

pp.1300-1305

 末梢血液中の血小板数の算定は,血液疾患のみならず,血液疾患以外の疾患の診断や治療に欠くことのできない重要な情報を提供してくれる.しかし血小板数の算定法は他の血球の算定法に比べて数多く存在し,このことは血小板という互いに凝集しやすく,壊れやすい,埃などとの区別がむずかしい小片を測定することがいかに困難であるかということを示している.

 ここでは現在使用されている測定法の優劣を比較しながら,見かけ上の異常値が得られる可能性について考え,真の異常値と区別する方法についておもに述べてみたい.

論壇

臨床検査に想う

入 久巳

pp.1306-1307

 1958年に検査を専門とする職種が初めて制度化されて,年々その内容は充実され,また検査技師を志す人たちも多くなり,医療の発展,充実に大きな貢献を果たしている.そして医療がさらに進歩し発展するに従って,臨床検査の役割もますます重要となり,より広い深い知識,より高度な技術も要求されてきている.

 先輩医療人がいち早く臨床検査の医療における重要性を察知し,医学教育の最初がそうであったように,検査に携わる人たちを徒弟制度的にそれまで教育していたのを,初めて学校教育として育成し,さらに制度化した功績は実に大きい.このようにしてできあがった検査を専門とする職種,衛生検査技師法成立の時期は,それ以前の徒弟制度的教育を検査の立場から第1期とすれば,第2期に相当するものと思われる.この第2期の期間中にも,ますます医療が進歩し,ついに第3期の変革が望まれ,衛生検査技師法から,修業年限も1年延長されて,臨床検査技師法が制定された.しかし第3期はまだ始まったばかりで,その成果に関して論ずることはできないが,りっぱな臨床検査技師が育っていくことはまちがいないと思われる.

新しいキットの紹介

クレアチンホスフォキナーゼのC-ZymeTM Enzyme Reagent測定法の検討

村上 郁子 , 竹久 元彬 , 八島 弘昌

pp.1308-1312

はじめに

 1934年にLohman1)がクレアチン+ATPCPK⇔クレアチンリン酸+ADPの反応が筋収縮に関与することを見出して以来,各種神経筋疾患の診断のために血清クレアチンホスフォキナーゼ(以下CPK)の測定法が研究されてきた.

現在繁用されている測定方法としては (1)正反応系における方法

 a)クレアチンリン酸からリンを遊離させて測定する2)

赤血球凝集反応によるα-フェトプロテイン測定法の検討

河合 忠 , 松田 重三

pp.1313-1318

はじめに

 胎児期に生理的に存在するα1-Fetoprotein (以下α-Fp)は生後間もなく消失し,以後健康人には証明されないが1),ある病的状態において再び出現することがわかってきた.

 特にAbelev2)およびUrielら3)などによる広範な検索の結果,ヘパトーマ患者に高頻度に検出されることが報告され,α-Fpはヘパトーマに特異的な病的タンパクとして注目されるようになった.

新しい機器の紹介

散乱光の測定を応用した中性脂肪の簡易測定法に関する検討—TGメーターおよびマイクロネフェロメーターについて

梶山 梧朗 , 水野 敏之 , 松浦 千文 , 三好 秋馬

pp.1319-1321

はじめに

 今日,血清中性脂肪の測定はコレステロールと並んで動脈硬化の臨床上不可欠のものと考えられ,その測定法にもVan Handel法,アセチルアセトン法,酵素法などが次々と登場し,すでにキットとして市販されているものも多数にのぼっている.

 さらに近年上記の方法とは全く異なった原理で,かつこれらの方法に比べ,非常に測定操作が簡単な,散乱光の測定を応用した中性脂肪の測定法が考案され実用化され始めた.

臨床化学分析談話会より・16<関東支部>

尽きない管理血清の議論—第1回分析談話会夏期講習会

菅野 剛史

pp.1322

 臨床化学分析談話会関東支部の夏期講習会は8月2,3日の2日間にわたり,慶応大学立科山荘(長野県)において,近畿支部,東海支部,北海道支部より若干の参加者を加えて行われた.参加者は約75名であり,高原の涼しさにもかかわらず,教室は熱気と活気に満ちた討論で終始した.

第1日は 1.臨床検査のあゆみと今後の問題点               北里大 斎藤 正行 2.SI単位の最近の動き               昭和大 石井  暢 3.内分泌検査の現状            北里ブリストル 佐藤 誠也 4.世界の臨床検査室              札幌医大 佐々木禎一と4氏の講演と質疑が行われ,特にSI単位の問題については活発な討論が行われ,今後の問題点として臨床家へのアピールの方法まで具体的な問題提起がなされた.

霞が関だより・29

診療報酬の改定と臨床検査の今後の方向

M K

pp.1324

 最近の医療の中で各種の臨床検査が占める割合が急速に増加しており,医療機関1施設あたりの検査件数は以前に比べると飛躍的に増加してきている.この現実に対してこれまでの健康保険の医療費体系における検査料は必ずしも十分なものではなく,臨床検査技師会や衛生検査技師会を初め各方面から検査料を引き上げてほしいという要望が出されていた.ところが今回1974年10月1日に行われた健康保険の診療報酬点数の改正では特に技術料の引き上げに重点がおかれており,平均して全体では16%の診療報酬点数の引き上げが行われたのに対して検査,麻酔,手術の3つの医療報酬点数は平均40%の引き上げが行われた.この中で臨床検査に関係の深いおもなものをあげると,次に述べるように新設されたものや2倍あるいは3倍に引き上げられた特殊な検査がある.

質疑応答

外傷性てんかんと異常脳波

K生 , 和田 豊治

pp.1326

 問 外傷性てんかんには小発作型の異常脳波は現れないといわれますが,その理由をご教示ください.

日常検査の基礎技術

免疫グロブリンの定量法

浜崎 泰昶 , 尾辻 省悟 , 山下 巧

pp.1329-1336

 血清免疫グロブリン(Ig)は,正常な免疫反応として諸種の抗原刺激に対して発現するいくつものクローンから分化した形質細胞で産生されて血中に増量するか,骨髄腫やそれらの類似疾患の時に,正常Igとは少し違ったIg,すなわちM成分として血中に出現する.一方,われわれが日常繁用するセルローズアセテート膜電気泳動像にみられるγグロブリンの増減は確かに生体内での免疫反応の亢進または低下を知らせてはくれるが,Igのクラス別の増減は十分に教えてくれない.たとえば骨髄腫の時は特定のIgだけが増えていることが多く,γグロブリンは増加している場合も正常域にある時もあり,逆に低下している場合もある.また疾患によってはIgのどのクラスが増加または減少しているかを知ることがその重症度判定や他の疾患との鑑別に有力な手がかりとなることがある.したがって各種の高および低γグロブリン血症時のIgを測定することは臨床上重要な意義を持っている.今日,IgにはIgG,IgA,IgM,IgDおよびIgEの5クラスが知られており,それらの測定には抗原抗体反応の特異性を応用した免疫学的方法が用いられている.

 本稿ではIgG,IgA,IgMあるいはIgDの定量法を,最も一般的なゲル内拡散法のうち一元平板免疫拡散法と試験管内単純拡散法について,おのおの既製キットの1つをとって具体的に述べる.

検査と主要疾患・24

痛風

御巫 清允

pp.1338-1339

 15年前の検査室を考えてみると,尿酸の測定がルーチン化している所は,日本中で数えるほどしかなかった.ところが,最近では尿酸の測定がかなり重要な検査項目となったことはご承知のとおりである.尿酸はプリン代謝の偏倚を知るためにたいせつであり,また組織崩壊の様相を示す一つの指標でもあるから,痛風のみならず,悪性腫瘍の治療上の一つの指示でもあるわけである.ここでは痛風についてのみ言及したい.

 痛風は,私のごとく特殊なクリニックでの頻度(図1)は極端としても,しだいに,その数が増しつつあることはだれも否定しない.そして,その診断にもいろいろ異論はあるにしても,その基礎には尿酸値の上昇というものがあることを否定する人はいない.

検査機器のメカニズム・36

自動染色装置—ヘマテックスライドステーナー(ヘマテック)

末廣 雅也

pp.1340-1341

1.ヘマテックの特徴

 ヘマテックは,専用の染色キット"ステインパック"を使用し塗抹標本の染色,水洗,乾燥操作を自動的に行う機器である.従来,染色液を調製した時の勘により染色時間を加減してよい標本を作製するコツを体得したものであるが,この装置はだれにでも常に均一な染色標本を作製できるように設計されている.また染色液槽を使用せず常に新しい染色液が自動的かつ連続的にしかも経済的な量が塗抹標本に流出して染色操作が行われる.

検査室の用語事典

常用病名

伊藤 巌

pp.1343

98)貧血;anemia

 流血中の赤血球数および血色素量が減少した状態で,血液あるいは造血臓器に原発性の病変があると考えられる原発性貧血(原発性再生不良性貧血など)と,他の臓器,組織の病変によって貧血が一つの症候として発生する続発性貧血(失血性貧血など)に大別される.また赤血球の平均容積(MCV),平均血色素量(MCH),平均血色素濃度(MCHC)を基準とする分類がなされる.

血清学的検査

伊藤 忠一

pp.1344

94) Tolerance (lmmunological Tolerance);免疫学的寛容

 免疫学的無反応状態の一種で,その状態にある特定の個体に本来ならば抗原として働くはずの物質を作用させてもその個体は全く免疫学的に反応しない.免疫学的寛容を誘導しうる性質を寛容原性(tolerogenicity)というが,この性質はある物質が抗原であるための重要な条件の一つである.

組織と病変の見方—肉眼像と組織像の対比

肉腫

金子 仁

pp.1345-1348

 肉腫は非上皮性悪性腫瘍である.骨肉腫,軟骨肉腫,線維肉腫,筋肉腫,リンパ肉腫など種類は多い.しかし悪性腫瘍の内では癌腫に比べれば圧倒的に少ない.肉腫の内,最も多いのは細網肉腫であるが,骨肉腫とともに前に述べてあるので今回は軟部組織肉腫の代表例を掲載する.軟部肉腫で最も多いのは線維肉腫と脂肪肉腫である.特異なものに滑膜肉腫(synovial sarcoma)がある.組織学的に肉腫ではあるが腺形成がある.また蜂巣状軟部肉種(alveolar softpart sarcoma)も肉腫であるが蜂巣状構造を示す.このほか,横紋筋肉腫,血管肉腫を出した.

病理学総論(その3)

金子 仁

pp.1349

腫瘍

1.腫瘍の定義

 細胞の自律的増殖を腫瘍と呼ぶ.自律的とは自分勝手という意味である.たとえば,手や足にケガをして欠損部ができたとすると,その反応として上皮性細胞や非上皮性細胞が増殖し欠損部を埋めてくれる.十分に欠損部を満たしたらもはや増殖しない.また,文筆家によくペンダコができるが,常にペンを持っていると最もよく当たる部分の扁平上皮が増殖する.これは当たる部分をカバーする目的で増殖したもので,ペンを捨てればもはや増殖しない.このように手足のケガを修復したり,カバーする意味で増殖するのは合目的増殖とか,反応性増殖とか呼んで腫瘍性増殖とは厳重に区別している.

Senior Course 生化学

自動化学検査・12—総括

中 甫

pp.1350-1351

 過去11回にわたってディスクリート方式自動分析機を中心に自動化学検査について述べてきた.内容は決して十分とはいえなかったが,自動分析の場合は用手法の問題点に加え分析機にまつわる問題点が含まれるので記述すべき内容が膨大なものになる.したがって自動分析における特徴的な問題にのみ焦点をしぼり,われわれの経験をおりまぜて記述した.今回は自動分析におけるフィロソフィーを含めて総体的な問題を述べまとめとしたい.

Senior Course 血液

リゾチーム

中島 弘二

pp.1352-1353

リゾチームとは

 lysozyme (ライソザイム)またはmuramidaseと一般に呼ばれ分子量14,000〜15,000の強塩基性低分子酵素であり,ある種の細菌の細胞膜物質を溶解する.細胞膜中のN—アセチルグルコサミンとN—アセチルムラミン酸間のβ−1,4結合に作用する.成熟顆粒球および単球にありAおよびB顆粒に含まれphagosome中に放出される.非病原性のMicrococcus lysodeikticusなどをよく溶解する.貪食された他の細菌の殺菌にもある種の役割を持っていると思われるが,詳細は不明である.

 健康人の血清または血漿中の測定可能なりゾチーム活性は生体内での顆粒球のturn overによるものであり(図),顆粒球または単球の崩壊によりリゾチームは血漿中にはいってくる.もし正常の3倍以上になれば尿中にリゾチームが出現する.

Senior Course 血清

ウイルスの血清学的検査

中村 正夫

pp.1354-1355

ウイルス検査の問題点

 ウイルス学の進歩はめざましいものがあり,これに伴って,臨床ウイルス検査に関しても,方法あるいは技術面に多くの進展がみられている.現在,ウイルス検査の必要性も認められ,その目的も理解されつつあると思うが,一方においては,なお問題点も多い.そのため,ウイルス検査が日常検査として,一般病院検査室などで行われる場合の障害となっている.これはウイルス血清学的検査に限った問題ではなく,ウイルス検査全般に関係していると思われるので,全体の立場からの問題点を考え,さらに,このうち特に血清検査に関係すると思われる点についても述べたいと思う.

Senior Course 病理

臨床病理学的立場よりみた電子顕微鏡学・12—細胞病理学概説

相原 薫

pp.1356

I.細胞内の膜構造

1.細胞膜(形質膜)(cell(Plasma) membrane)

 細胞の全表面を被覆しており,中に透明帯をはさんだ2本の平行に走る暗線として認められ単位膜(Unitmembrane)とも呼ばれる.平均85〜120Åの間でその表在面にcell coat(Fawcett),extracellular polysac-charide(Bennet)が存在するといわれる.

Senior Course 細菌

一般病原細菌の抗生物質感受性試験

竹田 美文 , 三輪谷 俊夫

pp.1362-1363

 抗生物質(薬剤)感受性試験には,希釈法,拡散法,比濁法があり,希釈法には寒天平板希釈法と液体培地希釈法が,拡散法には感受性ディスク法,傾斜平板法,直立拡散法などがある.このうち日常検査室で最も頻繁に使用されているのは,感受性ディスク法である.その他の方法は,特別の検査以外にはたいていの検査室でほとんど利用されていないと老えられる.果たして,感受性ディスク法による検査は,抗生物質感受性試験の本来の目的を十分に達しているであろうか.

 日常,検査室で行う抗生物質感受性試験の目的は,ほとんどの場合が,感染症の原因菌に対する各種の抗生物質(薬剤)の感受性を調べ,当該の感染症の治療に適切な抗生物質(薬剤)を選択する資料を提供することである.この目的のためには,①検査結果が正確であること,②病原細菌本来の感受性を正しく反映した結果であること,③できるだけ迅速に結果を臨床医に報告できること,などが最低限要求される条件であるといえよう.

Senior Course 生理

フィシュバーグ濃縮希釈試験

小船 善弘

pp.1364-1365

 濃縮および希釈試験は,水制限あるいは水負荷した際に,腎がどの程度高い濃度に,または低い濃度に溶質を尿中に排泄しうるかという腎の能力を調べる検査である.この濃縮希釈試験について述べる前に,その基礎生理学的な事項について若干の知識を得ておく必要があろう.

 糸球体からボーマン氏嚢に瀘過された液は血漿の成分と等しく,浸透圧を290mOsm/lを示すのであるが,続く近位尿細管を通過する間に,その約85%が等浸透圧的に再吸収される.近位尿細管からヘンレの下行脚にはいると,しだいに高張となり,その先端では1,200mOsm/lという高い浸透圧を示す.次いでヘンレの上行脚にはいった尿細管液は,特殊な尿細管細胞の性質によってNaのみが間質へ汲み出され,しだいに低張となる.汲み出されたNaは,一部ヘンレの下行脚にはいって尿細管液の高張化に関与し,一部は間質内にはいって髄質間質の高張性の形成に関与する.hairpin型をしたヘンレ氏係蹄の各部位でこのような浸透圧濃度勾配が作られる過程を名づけて,尿濃縮の対向流増幅(coun-tercurrent multiplier)と呼んでいる.

Senior Course My Planning

技術を見直す

巴山 顕次

pp.1366-1367

 臨床検査の機械化,自動化が進むにつれ,検査業に対する技師の姿勢の転換が求められている.機械にまかせられる日常検査は積極的にオートメ化し,まかせられない検査を技師自身がやる,いわゆる"考える検査"がいわれている.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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64巻12号(2020年12月発行)

今月の特集1 血栓止血学のトピックス—求められる検査の原点と進化
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64巻11号(2020年11月発行)

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64巻10号(2020年10月発行)

増刊号 がんゲノム医療用語事典

64巻9号(2020年9月発行)

今月の特集1 やっぱり大事なCRP
今月の特集2 どうする?精度管理

64巻8号(2020年8月発行)

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今月の特集2 IgG4関連疾患の理解と検査からのアプローチ

64巻7号(2020年7月発行)

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今月の特集2 薬剤耐性カンジダを考える

64巻6号(2020年6月発行)

今月の特集 超音波検査報告書の書き方—良い例,悪い例

64巻5号(2020年5月発行)

今月の特集1 中性脂肪の何が問題なのか
今月の特集2 EBLM(evidence based laboratory medicine)の新展開

64巻4号(2020年4月発行)

増刊号 これで万全!緊急を要するエコー所見

64巻3号(2020年3月発行)

今月の特集1 Clostridioides difficile感染症—近年の話題
今月の特集2 質量分析を利用した臨床検査

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今月の特集2 標準採血法アップデート

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今月の特集2 生理検査—この所見を見逃すな!

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今月の特集2 高血圧の臨床—生理検査を中心に

63巻11号(2019年11月発行)

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今月の特集2 大規模自然災害後の感染症対策

63巻10号(2019年10月発行)

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63巻9号(2019年9月発行)

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今月の特集2 現代の非結核性抗酸菌症

63巻8号(2019年8月発行)

今月の特集 知っておきたい がんゲノム医療用語集

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今月の特集2 COPDを知る

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63巻2号(2019年2月発行)

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63巻1号(2019年1月発行)

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今月の特集2 不妊・不育症医療の最前線

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62巻3号(2018年3月発行)

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今月の特集2 成人先天性心疾患

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今月の特集1 Stroke—脳卒中を診る
今月の特集2 実は増えている“梅毒”

62巻1号(2018年1月発行)

今月の特集1 知っておきたい感染症関連診療ガイドラインのエッセンス
今月の特集2 心腎連関を理解する

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今月の特集2 がん分子標的治療にかかわる臨床検査・遺伝子検査

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今月の特集2 脂質検査の盲点

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60巻10号(2016年10月発行)

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60巻8号(2016年8月発行)

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60巻6号(2016年6月発行)

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60巻5号(2016年5月発行)

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60巻4号(2016年4月発行)

今月の特集1 血漿蛋白—その病態と検査
今月の特集2 感染症診断に使われるバイオマーカー—その臨床的意義とは?

60巻3号(2016年3月発行)

今月の特集1 日常検査からみえる病態—心電図検査編
今月の特集2 smartに実践する検体採取

60巻2号(2016年2月発行)

今月の特集1 深く知ろう! 血栓止血検査
今月の特集2 実践に役立つ呼吸機能検査の測定手技

60巻1号(2016年1月発行)

今月の特集1 社会に貢献する臨床検査
今月の特集2 グローバル化時代の耐性菌感染症

59巻13号(2015年12月発行)

今月の特集1 移植医療を支える臨床検査
今月の特集2 検査室が育てる研修医

59巻12号(2015年11月発行)

今月の特集1 ウイルス性肝炎をまとめて学ぶ
今月の特集2 腹部超音波を極める

59巻11号(2015年10月発行)

増刊号 ひとりでも困らない! 検査当直イエローページ

59巻10号(2015年10月発行)

今月の特集1 見逃してはならない寄生虫疾患
今月の特集2 MDS/MPNを知ろう

59巻9号(2015年9月発行)

今月の特集1 乳腺の臨床を支える超音波検査
今月の特集2 臨地実習で学生に何を与えることができるか

59巻8号(2015年8月発行)

今月の特集1 臨床検査の視点から科学する老化
今月の特集2 感染症サーベイランスの実際

59巻7号(2015年7月発行)

今月の特集1 検査と臨床のコラボで理解する腫瘍マーカー
今月の特集2 血液細胞形態判読の極意

59巻6号(2015年6月発行)

今月の特集1 日常検査としての心エコー
今月の特集2 健診・人間ドックと臨床検査

59巻5号(2015年5月発行)

今月の特集1 1滴で捉える病態
今月の特集2 乳癌病理診断の進歩

59巻4号(2015年4月発行)

今月の特集1 奥の深い高尿酸血症
今月の特集2 感染制御と連携—検査部門はどのようにかかわっていくべきか

59巻3号(2015年3月発行)

今月の特集1 検査システムの更新に備える
今月の特集2 夜勤で必要な輸血の知識

59巻2号(2015年2月発行)

今月の特集1 動脈硬化症の最先端
今月の特集2 血算値判読の極意

59巻1号(2015年1月発行)

今月の特集1 採血から分析前までのエッセンス
今月の特集2 新型インフルエンザへの対応—医療機関の新たな備え

58巻13号(2014年12月発行)

今月の特集1 検査でわかる!M蛋白血症と多発性骨髄腫
今月の特集2 とても怖い心臓病ACSの診断と治療

58巻12号(2014年11月発行)

今月の特集1 甲状腺疾患診断NOW
今月の特集2 ブラックボックス化からの脱却—臨床検査の可視化

58巻11号(2014年10月発行)

増刊号 微生物検査 イエローページ

58巻10号(2014年10月発行)

今月の特集1 血液培養検査を感染症診療に役立てる
今月の特集2 尿沈渣検査の新たな付加価値

58巻9号(2014年9月発行)

今月の特集1 関節リウマチ診療の変化に対応する
今月の特集2 てんかんと臨床検査のかかわり

58巻8号(2014年8月発行)

今月の特集1 個別化医療を担う―コンパニオン診断
今月の特集2 血栓症時代の検査

58巻7号(2014年7月発行)

今月の特集1 電解質,酸塩基平衡検査を苦手にしない
今月の特集2 夏に知っておきたい細菌性胃腸炎

58巻6号(2014年6月発行)

今月の特集1 液状化検体細胞診(LBC)にはどんなメリットがあるか
今月の特集2 生理機能検査からみえる糖尿病合併症

58巻5号(2014年5月発行)

今月の特集1 最新の輸血検査
今月の特集2 改めて,精度管理を考える

58巻4号(2014年4月発行)

今月の特集1 検査室間連携が高める臨床検査の付加価値
今月の特集2 話題の感染症2014

58巻3号(2014年3月発行)

今月の特集1 検査で切り込む溶血性貧血
今月の特集2 知っておくべき睡眠呼吸障害のあれこれ

58巻2号(2014年2月発行)

今月の特集1 JSCC勧告法は磐石か?―課題と展望
今月の特集2 Ⅰ型アレルギーを究める

58巻1号(2014年1月発行)

今月の特集1 診療ガイドラインに活用される臨床検査
今月の特集2 深在性真菌症を学ぶ

57巻13号(2013年12月発行)

今月の特集1 病理組織・細胞診検査の精度管理
今月の特集2 目でみる悪性リンパ腫の骨髄病変

57巻12号(2013年11月発行)

今月の特集1 前立腺癌マーカー
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査②

57巻11号(2013年10月発行)

特集 はじめよう,検査説明

57巻10号(2013年10月発行)

今月の特集1 神経領域の生理機能検査の現状と新たな展開
今月の特集2 Clostridium difficile感染症

57巻9号(2013年9月発行)

今月の特集1 肺癌診断update
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査①

57巻8号(2013年8月発行)

今月の特集1 特定健診項目の標準化と今後の展開
今月の特集2 輸血関連副作用

57巻7号(2013年7月発行)

今月の特集1 遺伝子関連検査の標準化に向けて
今月の特集2 感染症と発癌

57巻6号(2013年6月発行)

今月の特集1 尿バイオマーカー
今月の特集2 連続モニタリング検査

57巻5号(2013年5月発行)

今月の特集1 実践EBLM―検査値を活かす
今月の特集2 ADAMTS13と臨床検査

57巻4号(2013年4月発行)

今月の特集1 次世代の微生物検査
今月の特集2 非アルコール性脂肪性肝疾患

57巻3号(2013年3月発行)

今月の特集1 分子病理診断の進歩
今月の特集2 血管炎症候群

57巻2号(2013年2月発行)

今月の主題1 血管超音波検査
今月の主題2 血液形態検査の標準化

57巻1号(2013年1月発行)

今月の主題1 臨床検査の展望
今月の主題2 ウイルス性胃腸炎

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