icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床検査18巻6号

1974年06月発行

雑誌目次

カラーグラフ

飲料水の細菌学的試験

松本 浩一

pp.598-599

普通,飲料水の細菌学的試験は水の屎尿汚染の指標としての大腸菌群と,有機汚濁の指標としての一般細菌数の両試験を行う.大腸菌群は検水50mlにつき検出されてはならず,一般細菌数は1mlの検水で形成される集落数が100以下でなければならぬ.これらの基準と試験法は水道法と上水試験方法に定められているが,ここではこれらの試験結果を紹介する.

技術解説

滅菌技術—検査室を中心に

大塚 正和 , 清水 喜八郎 , 小林 寛伊

pp.601-609

 医療によって起こる感染の防止についての研究は,かの有名なゼンメルワイスにはじまり,近年この方面への関心が多く払われるようになってきた.

 このことは,薬剤による耐性菌の出現が感染管理上の問題として,提起されるようになってきたこと,肝炎ウィルスに対する感染防止の問題など,いくつかの対処すべき事柄が提起されてきたためである.

飲料水の細菌学的試験

松本 浩一

pp.610-616

器具ならびに培地**

(1)採水びん,ハイロート採水器:いずれも容量約100mlの良質共せんガラスびんを用いる.後者は水槽などの任意の深さの水を採水するのに用い,採水びん,びん固定枠,支持鎖,開せん用鎖,およびこれら全部を収めて滅菌できる金属製携帯箱からなる.なお,採水びんはガス滅菌を行ったポリエチレン製のびんを用いてもよい.

(2)メスピペット:1mlおよび10mlで,先端目盛でないものがよい.

総説

検査事故とその対策

北村 元仕

pp.617-624

 データの報告まちがいなどの検査事故は,日常臨床に伏在する問題であるが,これに関する調査研究は内外を通じてきわめて乏しく,その実態も明らかではない.私たちはこの問題を重視し,過去10年間,事例ごとに対策を講じてきたが,その自発的記録をすでに258例集積した.

 事故の原因は多岐にわたるが,報告不能となったものでは遠心中の検体破損が最も多く,報告が遅延した例では比色計や記録計の故障が圧倒的であった.また報告まちがい例の内容は記録事務手順のミスと検体のとり違いが主体であり,特に多忙な曜日で多発した.

 最近,Grannisらは日常化学検査に投入した管理血清の実に3.5%で報告ミスを発見しており,私たちの事例が氷山の一角にすぎないことを示唆したが,両者の内容は著しく類似し,検査事故が臨床検査室に共通する重大なテーマであることをうかがわせた.

検査データによる臨床検討会

閉塞性黄疸の一症例—日大病院検査科合同研修会

藤井 司 , 岡田 賢二郎 , 奥窪 伸之 , 武元 聡 , 田中 和雄 , 桑島 実 , 中野 栄二 , 土屋 俊夫

pp.625-628

日大病院(板橋,駿河台)では毎月,両検査室の技師と臨床病理医が集まって合同研究修会を開いている.これは,そこで初めて行われた技師をまじえてのR-CPCの収録である.この主旨は,決して診断のためでなく,技師自身が自分たちの出したデータをどうみたらよいか,また臨床とどうかかわっているのかを知るためである.

ちなみに,R-CPC (Reversed Clinical Pathologi-cal Confernce)とは,臨床検査データのみから病気の経過を判断し,診断をする一種の診断演習で,検査データの"読み方"の練習である.

異常値の出た時・18

血清タンパク分画

谷内 昭 , 赤保内 良和

pp.629-635

 最近,種々の精密な物理化学的方法および免疫化学的方法が導入され,詳細な血清タンパクの分析が可能となり,臨床診断および治療上応用されてきているが,そのスクリーニングテストとして糸口を与えてくれるのはセルロース・アテート膜電気泳動法(以下,CAEp)である.この方法は血清タンパクの日常検査法の第一歩として手軽に実施でき,しかも比較的精度が高いため,その分画濃度および泳動像を注意深く分析することにより種々の病態像の解明に重要な手がかりを与えてくれる場合が多い.

 本稿ではCAEpにおいてその分画濃度および泳動像に異常が生じた場合どのようにそれを捕えて分析し,諸種病態像を解析してゆくかを中心として述べてみたい.

論壇

臨床病理に対する考え

坪倉 篤雄

pp.636-637

 医学がそうであるように,その一部門の臨床病,理も細分化して,おのおの専門化した分野においてさらに高度な突込みがなされて発展してきたし,発展しつつある.その結果として専門の分野だけしかカバーできない,いわゆる視野の狭い臨床病理医や臨床検査技師ができあがりつつある.

 ややもすれば我田引水になって特定の臨床検査の価値を過大評価しすぎるきらいがないでもない.そこでわれわれ臨床病理に携わる者は,名古屋における第17回医学会総会のテーマであった"分化と統合"ということを常に念頭におかなくてはならないと思う.すなわち,生理学的検査と生化学的および血清学的検査との相関・対応はもちろんであるが,さらにこれらの検査値と病理形態的変化または細菌学的血清学的変化が相関対応として理解されることが望ましい.

座談会

検査室と計算

斧田 大公望 , 宮沢 正治 , 三橋 文子 , 松村 義寛

pp.638-645

毎日の仕事の中で計算ということは常に出てくるもので,特に変動係数とか相関係数,標準偏差,バラツキなどの計算となるとむずかしいものだと思われがちである.一方,電卓も普及されており,そのコツというか処理のしかたさえ知っていれば,計算というものは決して逃げまくるようなものではない.

研究

ブロムクレゾールパープルを用いる血清アルブミンの定量

岡村 研太郎

pp.646-650

はじめに

 血清アルブミンの測定には塩析法,電気泳動法,色素結合法が行われてきた1).このうち色素結合法には,アゾ色素のHABCA2,3)やメチルオレンジ4,5)を用いる方法があり,さらにスルホフタレン型色素のブロムスルホフタレン6),フェノールレッド7)を用いる方法がある.最近スルホフタレン型の色素として,ブロムクレゾールグリーン(以下BCGと略)を中性付近のpHで用いる方法がRodkey8)によって報告され,酸性側pHで用いる方法がDoumas9),水田10),林11)によって検討され,キット試薬も市販されはじめた.一方,同じ型の色素ブロムクレゾールパープル(以下BCPと略)を用いる方法がLouderback12),Carter13)によって報告された.

 われわれはBCG,BCPと構造が類似するスルホフタレン型のpH指示薬である,ブロムフェノールブルー(以下BPBと略)およびブロムチモールブルー(以下BTBと略)を選び,BCG,BCPをも含めて血清アルブミン測定の基礎的条件について検討した.この結果血清アルブミンとのみ反応するのはBCPであったので,BCPを用いる血清アルブミン測定法を定め,HABCA法,Beckmanマイクロゾーン電気泳動法で測定したアルブミン値と比較したので報告する.

新しいキットの紹介

BM Test3およびUgen-Testの使用経験とその評価

手嶋 格 , 伊藤 久吉 , 千崎 みどり , 伊藤 光昌 , 井上 邦勝 , 松本 博行

pp.651-654

はじめに

 初診患者に対しては,尿の反応(pH),タンパク,糖ウロビリノーゲンの検査を行うことは診断の必須条件であり,特に前3者は,内科における新来患者について基本的診療として取り扱われ,必ず実施することに定められている.このように重要にしてかつ測定頻度の高い検査は,人手のつこう上,どうしても簡便な方法に頼らざるを得ない.われわれはBoehringer mannheim社のBMTest 3およびUgen-Testについて試用する機会を得,特に試薬含有部が網目になっている点,ならびにUgen-Testの性能の優秀性を認め,次のような検討を行った.

直接比色法(Ammonia Test・Wako)による血中アンモニアの測定に関する検討

久城 英人 , 高野 圭以 , 庄山 雅子 , 福井 巌

pp.655-658

緒言

 血中アンモニア(以下,NH3)の測定は肝障害,特に肝脳症候,肝性昏睡の鑑別診断に必須の検査で緊急的に測定を依頼されることが多い1).したがって,血中NH3の測定法には簡易,迅速性が最も要求される.

 現在,血中NH3の測定法は測定原理のうえから,①拡散法,②イオン交換樹脂法,⑧直接法,④酵素法に大別される2)

新しい機器の紹介

Hospital Automationの一環としてのJCA−10Kの使用について

舟谷 文男 , 溝口 香代子 , 菅野 剛史 , 入 久己

pp.659-664

はじめに

 中央検査部の医療における目的は,客観性の高い検査情報の診療側への提供にあるといえる.しかしながら近年の検査数の増加はこの目的を希薄にし,いたずらに医師や検査技師を混乱に陥れる結果となってきた.そこで大量検体の迅速処理という要求を満たすために,自動分析機の導入が試みられるようになり,ここ2,3年のうちに30チャンネルの分析,酵素活性を初速度解析する装置などが急速な進歩で開発されるに至っている1,2)

 一般に検査室では複数台のオートアナライザーなどを使用した初歩的な自動化により迅速処理は可能となったものの,検査精度を維持するだけのために多大な保守点検の時間を費やすようなものであって,さらに的確なデータ管理を行うために余剰時間を作りだすのが反面の課題となっている.この時続いて要求されるのが検査室を病院総合システムの一環として設計されたシステムに合致する分析機であろう.

臨床化学分析談話会より・10<関東支部>

分析目的を理解した分析を—monoclonal proteinをめぐって

菅野 剛史

pp.665

 第170回分析談話会関東支部会は2月19日東大薬学の記念講堂にて"Monoclonal proteinを見出した場合"

(1)臨床医は何を考え,どのような検索を進めるか

霞が関だより・25

あるテーマと対応策

I K

pp.666

今回は,"動く社会"に対応して医療供給の面からみたいくつかの対応策(テーマに対するもの)を紹介してみる.施策的に全く新しいもの,今までもどこかで,あるかたちでやってはきたが,国の正規の施策として今後さらに進展をはかるものなどがあるが,読者諸氏には十分参考になると思う.なお,これは厚生省が各都道府県に対して明らかにしたうちの一部分の紹介であり,筆者が意訳したものである.

質疑応答

%肺活量について

関原 敏郎

pp.667

 問 本誌2月号掲載の日本臨床病理学会の2級試験の「生理(ガス代謝)・問3」について2,3おたずねします.

(3)ベネジクト・ロス型レスピロメーターを用いてスパイロメトリーを行い,次に示す結果を得た.

日常検査の基礎技術

保存・輸送培地

坂井 千三 , 伊藤 武

pp.669-676

各種の臨床材料中の病原菌は,材料を採取してから時間が経過するに従って,乾燥,温度,紫外線などの物理的な影響や,材料中の共存細菌の増殖に伴う代謝産物の影響によって急速に死滅,減少していく.したがって,検査材料中の病原菌をより正確に検出するためには,採取された材料はできるだけすみやかに検査を進めることがたいせつである.

しかし,実際には遠隔地から検査材料を輸送する時や,多数の検体を同時に取り扱わねばならない場合もあって,材料を採取してから検査を実施するまでに長い時間の経過を避けられないことも少なくない.

検査と主要疾患・18

心筋硬塞の心電図による部位診断・2

佐藤 利平

pp.678-679

1.心筋硬塞の硬塞部位と異常曲線の現れる誘導

 心筋硬塞はその発生部位によって前壁および後壁硬塞に大別され,それぞれ次のように分類される.

検査機器のメカニズム・30

分光光度計

渡辺 寔

pp.680-681

1.原理

 試料室は大きく分けて2つのタイプがある.1つは,吸収セルに試料を入れて試料室内に設置するタイプであり,他の1つは,フローセルを持つ自動化されたタイプである.このタイプは多数試料の測定に向いているので,特に臨床検査室を中心に普及しつつある.

 光学系は単光束,複光束,2波長などがある.吸収セルの光学系で基本的なことは,セル内を光束が通過する時,光束全体が試料中を通り抜ける必要があることである.つまり光束の一部がセルの側壁を通ったり,液面の上を通ったりしてはならない.このことは特殊な小容量のセルを利用する時や,セルに試料を満たす時に注意を要する.

検査室の用語事典

常用病名

伊藤 巌

pp.683

44)心室中隔欠損;ventricular septal defect(VSD)

先天性心疾患のひとつで,左右心室の隔壁に欠損があり,通常左室から右室への血液短絡をきたす.聴診所見から診断を推定できることが多いが,心臓カテーテル検査により診断の確定,短絡量の算出が可能である.手術により欠損を閉鎖しうる.

検査室の用語自典

血清学的検査

伊藤 忠一

pp.684

44) Hapten;ハプテン,付着体

動物に投与した場合,抗体産生をうながすという免疫原性(生体内抗原性)がきわめて弱いかまたはそれを欠くけれども,試験管内で抗体と特異的に反応するという反応原性(試験管内抗原性)または免疫学的寛容(無反応)誘導性という抗原としての特性の一部分だけを持っている物質をいう.脂質,多糖体,分子量の比較的小さい薬剤などの多くはハプテンである.しかし,ハプテンをadjuvantと混合して与えたり,高分子のタンパクと結合して与えたりすると免疫原性を獲得する.

走査電顕の目・18

尿沈渣—膿尿

木下 英親 , 田崎 寛

pp.685-686

 膿尿は血尿と同様,泌尿器系疾患の重要な症状である.尿沈渣検査において尿中白血球の消長をみることは,腎盂腎炎,膀胱炎,尿道炎,前立腺炎(前立腺マッサージ後の検尿も含めて)などの炎症性疾患の診断治療にとって同時に行われる尿中細菌の検索とともに必要不可欠なものである.

 急性膀胱炎は,泌尿器科外来において日常しばしばみられる疾患で,多くは単純性細菌性膀胱炎で,その起炎菌の大半は大腸菌(Escherichia coli)である.女性に多く,3分の2は20〜30歳台に発生する.男性では年齢にあまり関係なく,前立腺炎,前立腺肥大症,後部尿道炎などから二次的に発生することが多い.おもな症状は排尿痛,頻尿,尿混濁で,尿中白血球,細菌の存在によって診断され,起炎菌に対する化学療法によって大多数は容易に治癒にいたる.再発をくり返したり,難治性な場合は,腎膀胱結核や膀胱腫瘍などと鑑別をする必要があり,またほかに原因を探索するために,尿路レントゲン検査,膀胱鏡検査などの泌尿器科的検査を行わなければならない.

シリーズ・一般検査 胃液検査

酸度中和滴定法

猪狩 淳

pp.687-688

胃レントゲン診断技術の進歩により胃液検査,特に胃液酸度検査をないがしろにする傾向がある.しかし,胃液分泌機能の状態を知るには必要な検査であり,また悪性貧血の診断には欠かすことのできない検査でもある.今回は胃液酸度中和滴定検査,おもに滴定操作で注意しなければならない点をあげてみよう.

私たちの検査室

ワンルーム方式で能率アップ—社会保険中京病院検査部

pp.689-692

名古屋市の南部工業地帯にはいろうとするあたりにあって,近くを新幹線が走っている.外来数は1日平均1,200〜1,300名で,ベッド数は632である.

昭和12年に建てられた三菱航空機病院を買収し,22年12月1日に開院した.そののち逐次増築して現在に至る.検査部は45年1月に完成した7階建の中央診療棟にある.1階は280m2で,生体を対象に,2階は425m2のワンルーム方式で,検体を対象に検査している.検体検査部門に隣接して研究部がある.

付・私たちの検査室

ただベストを尽くすのみ

稲生 富三

pp.693

 戦災による焼野原に残っていた2階建の旧三菱航空機病院,それを厚生省が買収し,健康保険の被保険者を対象として昭和22年12月1日に開院した.当時の病床数は55であった.周囲に民家が,町工場が,さらに高層アパートがつぎつぎと建ち,診療圏が広がるにしたがって外来棟,病棟その他が増築され,いまでは外来も冬が1,000〜1,200,夏には1,300〜1,400となり,病床数も632となった.

 内科に付随したような形で2名の職員を配し,23年3月から整備されだした臨床検査室は,病院の飛躍と臨床検査の進歩発展が相まって拡張され,中央化制度を採用して中央検査科と改めたのが35年6月である.検査量の増大に応じて他目的の部屋を譲り受けながら経過し,41年4月には機構の改革によって検査部となり,45年1月に完成した7階建の中央診療棟に移った.配置図のように,1階は280m2で生理検査を行い,2階は425m2のワンルームで,細菌,血液,化学,免疫,病理などの検査を行っている.

Senior Course 生化学

自動化学検査・6—GOT,GPT

中 甫

pp.694-695

 GOT,GPTの測定法はKarmen法で代表される紫外部吸収法(UV法),Reitman-Frankel法(比色法),Bason法(比色法,GOT測定に利用)などがある.これらの測定法のいずれもディスクリート自動分析機に応用されているが,第5回臨床検査自動化研究会(1973)サーベイ成績報告によると16機種(フロー方式も含む),77施設で使用されている方法は,Reitman-Frankel法(以下R-F法)が最も多く,次にUV法,GOTで2機種,8施設においてBabson法となっている.先号でも述べたが,機種による特性からすべての方法が応用できるとは限らない.

 R-F法は標準法では反応時間がGOTでは90分(うち酵素反応60分),GPTでは60分(うち酵素反応30分)となっている.したがってほとんどの機種で反応時間を短縮した変法を用いている.特にマルチチャンネルでは全項目の反応時間を一致させる必要のあることからそれぞれ応用にくふうがなされている.一方,最近はUV法を応用できる機種も多くなってきている.この場合は反応時間も比較的短くてすみ自動化も容易であるが,特殊な装置を必要とする難点もある.ここではR-F法とUV法について自動化の際の考え方および問題点を解説する.

Senior Course 血液

M-タンパクの認められた時

中島 弘二

pp.696-697

M-タンパクとは

 免疫グロブリン(以下,免グ)の分子は2つのH鎖と2つのL鎖から成り,これら4つのポリペプチド鎖がS-S結合している(図).この構造が免グの基本単位となっている.ただしIgMは5個の基本単位が重合し,またIgAの分泌型は2個の基本単位が重合している.最近J鎖が発見され,IgM,IgAにおける重合体形成においての役割が注目されている.H鎖の違いによりIgG(γ鎖),IgA (α鎖),IgM (μ鎖),IgD (δ鎖)およびIgE(ε鎖)に区別される.これら5つの免グはさらに無数の不均一なタンパクの集団であって,いろいろの抗体を含んでいるわけである.一方,L鎖はK型(κ鎖)とL型(λ鎖)の2種があり,これらは抗原性の差異により区別される.正常血清ではK型とL型が混在している.

 正常人の免グは無数のクローンによって産生されるが,易動度の異なった成分の集団として電気泳動上観察される.しかしその中で単独のクローンから産生されていると考えられる単独の免グが増加している場合がある.電気泳動により幅の狭いシャープなバンドとしてみられる.Monoclonal (単一クローン:単一細胞から発生した細胞群を意味し単一,または均一性の免グを産生する)のMをとってM-タンパクあるいはM-成分と呼ぶ.免疫学的に単一のL鎖またはH鎖より成っている.

Senior Course 血清

ウイルスの血清学的検査

中村 正夫

pp.698-699

血清反応の微量化(マイクロタイター法)(続)

 前回,血清検査の微量化について,マイクロタイター法の特徴,利点,問題点などにも触れてその概略を述べた.マイクロタイターに用いられる器具一式はセットとして市販されている.使用目的によって多少の違いはあるが,一般的なものについて簡単に述べたいと思う.

Senior Course 細菌

喀痰の検査法

三輪谷 俊夫 , 吉崎 悦郎

pp.700-701

 喀痰は主として呼吸器系気道粘膜のいろいろな部位から分泌・排泄され絨毛上皮細胞の働きによって喀出されるもので,生理的な分泌物のほかに炎症,うっ血,組織破壊などによる病的成分や外界から吸入した異物などを含有する.正常な健康人でも,気道よりの分泌物は相当量にあるが無意識に嚥下され,意識して喀出される痰の量はほとんどないのが普通である.なんらかの原因によって気道粘膜上皮が刺激されれば粘液の分泌は亢進され喀痰の量は増加する.前号で述べた尿所見の重要性と同様に,喀痰の肉眼的,顕微鏡的所見は呼吸器系疾患の診断上重要な指針となるので検査する必要がある.

Senior Course 病理

臨床病理学的立場よりみた電子顕微鏡学・6—超薄ミクロトームを中心に

相原 薫

pp.702-703

1.超薄ミクロトームの種類

 超薄切片法は超薄ミクロトーム,試料作成法およびナイフ作製法の技術の進歩に伴って発展をとげてきた.現在市販されている主要ミクロトームは下記のごとくである.これは電磁送り(Electromagnetic advance)法を用いた日立MUM-2型以外のミクロームは機械送り(Mechanical advance)および熱膨張(Thermal ad-vance)法の原理に基づいている.前者はらせんネジとテコを利用し,宙づりした試料支持軸が機械的原理で前進し試料を薄切する.後者の場合は,試料をつけた伸張棒の一部に導線をまき,電圧をかけて試料に連続的に超微送りを与え切片をつくる.いずれの場合も一定の前進をしたのちは軸をもとに戻す操作が必要で,これをRe-setといっている.

Senior Course 生理

心電図の自動診断

小林 亨

pp.704-705

 高速な処理能力と優秀な記憶能力を有するコンピューターは医学領域にも広く応用されている.しかし,この領域での実用化の面からみれば,診療事務会計,自動臨床血液・生化学検査データ処理,心電図の波形認識・計測と健診センター業務ぐらいが採算がとれ信頼のおけるものであろう.ことに心電図は,その波形が胸部レントゲン写真,心音図,脳波や病理細胞診などに比べてはるかに簡単なので,コンピューターによる医学的図形認識処理の対象として早くから取りあげられ1),ほぼ完成をみるに至った.その背景には,心臓の電気現象の記録である心電図を研究する医師の多くがエレクトロニクスを理解していたことと,そのエレクトロニクスの目ざましい発展でコンピューター用心電計や性能のすぐれた小型コンピューターの実現したことなどがある.

Senior Course My Planning

"かたわ"の技師になるな

影山 信雄

pp.706-707

経験豊かな諸氏が,すでにこの欄で技師の教育についてご意見を寄せられ,それをいつも拝読している.学校あるいは実習生の指導について経験のない私には意見を述べるだけの知識がない.しかし,20年のあいだ臨床検査の業務に携わり,そのなかでつねづね考えている教育のことを述べてみたい.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

64巻12号(2020年12月発行)

今月の特集1 血栓止血学のトピックス—求められる検査の原点と進化
今月の特集2 臨床検査とIoT

64巻11号(2020年11月発行)

今月の特集1 基準範囲と臨床判断値を考える
今月の特集2 パニック値報告 私はこう考える

64巻10号(2020年10月発行)

増刊号 がんゲノム医療用語事典

64巻9号(2020年9月発行)

今月の特集1 やっぱり大事なCRP
今月の特集2 どうする?精度管理

64巻8号(2020年8月発行)

今月の特集1 AI医療の現状と課題
今月の特集2 IgG4関連疾患の理解と検査からのアプローチ

64巻7号(2020年7月発行)

今月の特集1 骨髄不全症の病態と検査
今月の特集2 薬剤耐性カンジダを考える

64巻6号(2020年6月発行)

今月の特集 超音波検査報告書の書き方—良い例,悪い例

64巻5号(2020年5月発行)

今月の特集1 中性脂肪の何が問題なのか
今月の特集2 EBLM(evidence based laboratory medicine)の新展開

64巻4号(2020年4月発行)

増刊号 これで万全!緊急を要するエコー所見

64巻3号(2020年3月発行)

今月の特集1 Clostridioides difficile感染症—近年の話題
今月の特集2 質量分析を利用した臨床検査

64巻2号(2020年2月発行)

今月の特集1 検査でわかる二次性高血圧
今月の特集2 標準採血法アップデート

64巻1号(2020年1月発行)

今月の特集1 免疫チェックポイント阻害薬—押さえるべき特徴と注意点
今月の特集2 生理検査—この所見を見逃すな!

63巻12号(2019年12月発行)

今月の特集1 糖尿病関連検査の動向
今月の特集2 高血圧の臨床—生理検査を中心に

63巻11号(2019年11月発行)

今月の特集1 腎臓を測る
今月の特集2 大規模自然災害後の感染症対策

63巻10号(2019年10月発行)

増刊号 維持・継続まで見据えた—ISO15189取得サポートブック

63巻9号(2019年9月発行)

今月の特集1 健診・人間ドックで指摘される悩ましい検査異常
今月の特集2 現代の非結核性抗酸菌症

63巻8号(2019年8月発行)

今月の特集 知っておきたい がんゲノム医療用語集

63巻7号(2019年7月発行)

今月の特集1 造血器腫瘍の遺伝子異常
今月の特集2 COPDを知る

63巻6号(2019年6月発行)

今月の特集1 生理検査における医療安全
今月の特集2 薬剤耐性菌のアウトブレイク対応—アナタが変える危機管理

63巻5号(2019年5月発行)

今月の特集1 現在のHIV感染症と臨床検査
今月の特集2 症例から学ぶフローサイトメトリー検査の読み方

63巻4号(2019年4月発行)

増刊号 検査項目と異常値からみた—緊急・重要疾患レッドページ

63巻3号(2019年3月発行)

今月の特集 血管エコー検査 まれな症例は一度みると忘れない

63巻2号(2019年2月発行)

今月の特集1 てんかんup to date
今月の特集2 災害現場で活かす臨床検査—大規模災害時の経験から

63巻1号(2019年1月発行)

今月の特集1 発症を予測する臨床検査—先制医療で5疾病に立ち向かう!
今月の特集2 薬の効果・副作用と検査値

62巻12号(2018年12月発行)

今月の特集1 海外帰りでも慌てない旅行者感染症
今月の特集2 最近の輸血・細胞移植をめぐって

62巻11号(2018年11月発行)

今月の特集1 循環癌細胞(CTC)とリキッドバイオプシー
今月の特集2 ACSを見逃さない!

62巻10号(2018年10月発行)

増刊号 感染症関連国際ガイドライン—近年のまとめ

62巻9号(2018年9月発行)

今月の特集1 DIC診断基準
今月の特集2 知っておきたい遺伝性不整脈

62巻8号(2018年8月発行)

今月の特集 女性のライフステージと臨床検査

62巻7号(2018年7月発行)

今月の特集1 尿検査の新たな潮流
今月の特集2 現場を変える!効果的な感染症検査報告

62巻6号(2018年6月発行)

今月の特集1 The Bone—骨疾患の病態と臨床検査
今月の特集2 筋疾患に迫る

62巻5号(2018年5月発行)

今月の特集1 肝線維化をcatch
今月の特集2 不妊・不育症医療の最前線

62巻4号(2018年4月発行)

増刊号 疾患・病態を理解する—尿沈渣レファレンスブック

62巻3号(2018年3月発行)

今月の特集1 症例から学ぶ血友病とvon Willebrand病
今月の特集2 成人先天性心疾患

62巻2号(2018年2月発行)

今月の特集1 Stroke—脳卒中を診る
今月の特集2 実は増えている“梅毒”

62巻1号(2018年1月発行)

今月の特集1 知っておきたい感染症関連診療ガイドラインのエッセンス
今月の特集2 心腎連関を理解する

60巻13号(2016年12月発行)

今月の特集1 認知症待ったなし!
今月の特集2 がん分子標的治療にかかわる臨床検査・遺伝子検査

60巻12号(2016年11月発行)

今月の特集1 血液学検査を支える標準化
今月の特集2 脂質検査の盲点

60巻11号(2016年10月発行)

増刊号 心電図が臨床につながる本。

60巻10号(2016年10月発行)

今月の特集1 血球貪食症候群を知る
今月の特集2 感染症の迅速診断—POCTの可能性を探る

60巻9号(2016年9月発行)

今月の特集1 睡眠障害と臨床検査
今月の特集2 臨床検査領域における次世代データ解析—ビッグデータ解析を視野に入れて

60巻8号(2016年8月発行)

今月の特集1 好塩基球の謎に迫る
今月の特集2 キャリアデザイン

60巻7号(2016年7月発行)

今月の特集1 The SLE
今月の特集2 百日咳,いま知っておきたいこと

60巻6号(2016年6月発行)

今月の特集1 もっと知りたい! 川崎病
今月の特集2 CKDの臨床検査と腎病理診断

60巻5号(2016年5月発行)

今月の特集1 体腔液の臨床検査
今月の特集2 感度を磨く—検査性能の追求

60巻4号(2016年4月発行)

今月の特集1 血漿蛋白—その病態と検査
今月の特集2 感染症診断に使われるバイオマーカー—その臨床的意義とは?

60巻3号(2016年3月発行)

今月の特集1 日常検査からみえる病態—心電図検査編
今月の特集2 smartに実践する検体採取

60巻2号(2016年2月発行)

今月の特集1 深く知ろう! 血栓止血検査
今月の特集2 実践に役立つ呼吸機能検査の測定手技

60巻1号(2016年1月発行)

今月の特集1 社会に貢献する臨床検査
今月の特集2 グローバル化時代の耐性菌感染症

59巻13号(2015年12月発行)

今月の特集1 移植医療を支える臨床検査
今月の特集2 検査室が育てる研修医

59巻12号(2015年11月発行)

今月の特集1 ウイルス性肝炎をまとめて学ぶ
今月の特集2 腹部超音波を極める

59巻11号(2015年10月発行)

増刊号 ひとりでも困らない! 検査当直イエローページ

59巻10号(2015年10月発行)

今月の特集1 見逃してはならない寄生虫疾患
今月の特集2 MDS/MPNを知ろう

59巻9号(2015年9月発行)

今月の特集1 乳腺の臨床を支える超音波検査
今月の特集2 臨地実習で学生に何を与えることができるか

59巻8号(2015年8月発行)

今月の特集1 臨床検査の視点から科学する老化
今月の特集2 感染症サーベイランスの実際

59巻7号(2015年7月発行)

今月の特集1 検査と臨床のコラボで理解する腫瘍マーカー
今月の特集2 血液細胞形態判読の極意

59巻6号(2015年6月発行)

今月の特集1 日常検査としての心エコー
今月の特集2 健診・人間ドックと臨床検査

59巻5号(2015年5月発行)

今月の特集1 1滴で捉える病態
今月の特集2 乳癌病理診断の進歩

59巻4号(2015年4月発行)

今月の特集1 奥の深い高尿酸血症
今月の特集2 感染制御と連携—検査部門はどのようにかかわっていくべきか

59巻3号(2015年3月発行)

今月の特集1 検査システムの更新に備える
今月の特集2 夜勤で必要な輸血の知識

59巻2号(2015年2月発行)

今月の特集1 動脈硬化症の最先端
今月の特集2 血算値判読の極意

59巻1号(2015年1月発行)

今月の特集1 採血から分析前までのエッセンス
今月の特集2 新型インフルエンザへの対応—医療機関の新たな備え

58巻13号(2014年12月発行)

今月の特集1 検査でわかる!M蛋白血症と多発性骨髄腫
今月の特集2 とても怖い心臓病ACSの診断と治療

58巻12号(2014年11月発行)

今月の特集1 甲状腺疾患診断NOW
今月の特集2 ブラックボックス化からの脱却—臨床検査の可視化

58巻11号(2014年10月発行)

増刊号 微生物検査 イエローページ

58巻10号(2014年10月発行)

今月の特集1 血液培養検査を感染症診療に役立てる
今月の特集2 尿沈渣検査の新たな付加価値

58巻9号(2014年9月発行)

今月の特集1 関節リウマチ診療の変化に対応する
今月の特集2 てんかんと臨床検査のかかわり

58巻8号(2014年8月発行)

今月の特集1 個別化医療を担う―コンパニオン診断
今月の特集2 血栓症時代の検査

58巻7号(2014年7月発行)

今月の特集1 電解質,酸塩基平衡検査を苦手にしない
今月の特集2 夏に知っておきたい細菌性胃腸炎

58巻6号(2014年6月発行)

今月の特集1 液状化検体細胞診(LBC)にはどんなメリットがあるか
今月の特集2 生理機能検査からみえる糖尿病合併症

58巻5号(2014年5月発行)

今月の特集1 最新の輸血検査
今月の特集2 改めて,精度管理を考える

58巻4号(2014年4月発行)

今月の特集1 検査室間連携が高める臨床検査の付加価値
今月の特集2 話題の感染症2014

58巻3号(2014年3月発行)

今月の特集1 検査で切り込む溶血性貧血
今月の特集2 知っておくべき睡眠呼吸障害のあれこれ

58巻2号(2014年2月発行)

今月の特集1 JSCC勧告法は磐石か?―課題と展望
今月の特集2 Ⅰ型アレルギーを究める

58巻1号(2014年1月発行)

今月の特集1 診療ガイドラインに活用される臨床検査
今月の特集2 深在性真菌症を学ぶ

57巻13号(2013年12月発行)

今月の特集1 病理組織・細胞診検査の精度管理
今月の特集2 目でみる悪性リンパ腫の骨髄病変

57巻12号(2013年11月発行)

今月の特集1 前立腺癌マーカー
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査②

57巻11号(2013年10月発行)

特集 はじめよう,検査説明

57巻10号(2013年10月発行)

今月の特集1 神経領域の生理機能検査の現状と新たな展開
今月の特集2 Clostridium difficile感染症

57巻9号(2013年9月発行)

今月の特集1 肺癌診断update
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査①

57巻8号(2013年8月発行)

今月の特集1 特定健診項目の標準化と今後の展開
今月の特集2 輸血関連副作用

57巻7号(2013年7月発行)

今月の特集1 遺伝子関連検査の標準化に向けて
今月の特集2 感染症と発癌

57巻6号(2013年6月発行)

今月の特集1 尿バイオマーカー
今月の特集2 連続モニタリング検査

57巻5号(2013年5月発行)

今月の特集1 実践EBLM―検査値を活かす
今月の特集2 ADAMTS13と臨床検査

57巻4号(2013年4月発行)

今月の特集1 次世代の微生物検査
今月の特集2 非アルコール性脂肪性肝疾患

57巻3号(2013年3月発行)

今月の特集1 分子病理診断の進歩
今月の特集2 血管炎症候群

57巻2号(2013年2月発行)

今月の主題1 血管超音波検査
今月の主題2 血液形態検査の標準化

57巻1号(2013年1月発行)

今月の主題1 臨床検査の展望
今月の主題2 ウイルス性胃腸炎

icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら