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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査19巻12号

1975年12月発行

雑誌目次

カラーグラフ

切除肺病巣から検出されたMonosporium opiospermum

松井 晃一 , 村松 茂 , 山下 英秋

pp.1378-1379

 Monosporium apiospermum1〜4)は四肢の皮膚に菌腫を作る病原性菌として熱帯,亜熱帯地方に多く見出され,殊にインドのMadura foot (マヅラ足菌腫)の病源としては有名である.本菌による肺疾患は日本では極めて少なく,原発性疾患に至っては,当院で1966年7月の切除肺病巣からの分離培養による報告1)(上塚ら)が初めてである.1972年12月に本菌による肺疾患の2例目が切除肺病巣から再び確認されたので,本菌株について図説する.2例目の患者は術前に肺真菌症を疑われ,切除肺材料については特に真菌の検索を重点に培養した.空洞の内容物を懸濁してサブローブイヨン,チオグリコレートおよび小川培地に0.1 ml接種し,サブローカンテン平板にはその1エーゼを塗抹培養した.その結果小川培地(1例目も同様)だけに約1週間後多数の綿毛様の集落が培地全面に増殖して,分離後の継代培養ではサブローカンテン平板に3日問で集落を形成した.本疾患の詳細な病歴については他誌に発表したので参照されたい.

技術解説

赤血球付着法による癌組織の検出法

寺村 公 , I.Davidsohn

pp.1381-1390

 癌におけるA,B,H型物質の消失について—A,B,H型物質は赤血球以外に次の組織に存在する.①血管内皮細胞.②粘膜上皮:口腔,咽頭,食道,気管支,胃,膀胱,卵管,頸管,膣,膵,肌嚢.これらの粘膜上皮に癌ができると,上記3種類の型物質の消失することが,赤血球付着反応で検出できる.詳しくは文献を参照してほしし.

血小板の鏡検所見

雨宮 洋一

pp.1391-1396

 血小板は止血機構において最も重要な役割を果たしている細胞であるが,その機能が明らかになってきたのは,他の血球の歴史と比べて比較的近年である.

 血小板の最初の発見者はDonné(1842)であるといわれており,現在の血小板に対する考えに近い概念を唱えたのはBizzozero (1882)で,巨核球から生ずることを指摘したのはWright(1906)である.

総説

電気泳動法の最近の進歩

柴田 泰生

pp.1397-1401

 電気泳動現象を利用した分離・分析法が実用化されて,もう45年になる.開発者A.Tiseliusは1971年に亡くなられたが,彼の着想は自由境界面泳動にとどまらず,幾多のよき後進者たちによって生かされ,受け継がれて,特にタンパク質のような変性しやすい物質をできるだけ生のままの姿で分類しようというこの方法は,臨床面,研究面で必ずなすべき検査項目の一つとして,広く全世界に愛用されている.

 日本では特に電気泳動学会がこの技術を中心として,やはり1972年に亡くなられた児玉桂三先生によって創られ,医・薬・理・農学の分野の人人の研讃の場として,25年の歴史の中にこの方法への多大の貢献をしてきた。

症例を中心とした検査データ検討会・6

出血時間とPTTの延長をみる症例

小林 優美子 , 浦岡 三江子 , 熊谷 美千子 , 小宮 陽子 , 竹中 道子 , 土屋 俊夫

pp.1402-1407

 司会(竹中)今日の症例は7歳の男の子です,1975年1月5日に入院し,11日後に軽快,退院しています.いつものように討論をすすめましょう.尿検査所見からお願いします.

異常値・異常反応の出た時・36

CRP

鈴木 秀郎

pp.1408-1411

 CRP試験は手技が簡単な検査であるから,異常値,異常反応を示すことは少ない.しかし,抗血清,検体に欠陥があったり,患者血清中に特殊な物質が含まれていると異常反応を示すことがあり,特にクリオグロブリンを含む時にはCRPが見かけ上の異常高値を示すことがあるので注意を要する.

中検へ一言・中検から一言

心療内科からの要望,他

石川 中

pp.1412-1413

 心療内科にとって,中検の検査結果がもつ意義は2つある.まず第1は,除外診断である.すなわち,結核とか癌とか動脈硬化のような,明らかな身体的原因をもった身体疾患は,心身症から除外する必要がある.この除外診断は心身症の診断に当たって重要な意義を有し,明らかな身体的原因のある器質的な身体疾患を心身症と考えて,心身医学的な治療を加えることは無益であるばかりか,ときとしては,病気を進行させて危険ですらある.第2にあげられるべき意義は,心身症の中で,身体面における機能異常のあるタイプのものの場合である.例えばストレスによって発症した胃潰瘍とか,抑うつ状態にある高血圧などである.このような症例の場合は,中検による検査結果自体が病状の経過を示すことになるのである.以上の2つの面から,心療内科にとって,中検において行われる諸検査の意義は大きいが,ここに,特に心療内科の立場から,2〜3の要望を述べてみたい.第1には,心療内科の患者は一般に,検査に対して不安や恐怖を示しやすい.したがって,基礎代謝測定とか,心電図検査とか,脳波検査とか,内視鏡などのように,患者が直接,中検におもむいて検査を受ける場合には,患者の性格や精神状態なども十分考慮して扱ってもらいたいということである,医学的検査の患者心理面に対する影響は,患者に不安や恐怖を与えるという,精神面の問題ばかりでなく,それが間接的に検査結果にも影響し,医学的診断を誤らすことがある.

座談会

特殊検査センター

福見 秀雄 , 山田 昇 , 甲野 礼作 , 安田 純一 , 樫田 良精

pp.1414-1420

 多数の中央検査室が共用できる集中検査センターには,二つのタイプがある.一つはたまにしか依頼がない検査項目であるが,その検査データがないと診療上困るという検査を扱う型と,一つは,ありふれた検査項目を徹底的に集中化して,厳重な精度管理のもとに大量生産する型である.ここでは前者のタイプ=特殊検査センターを取り上げ,わが国の実情を外国と併せて紹介し,特殊検査センターのビジョンを語る.

研究

コントロール尿による尿定性検査の精度管理

川上 圭子 , 北村 元仕

pp.1421-1425

要約

(1) UR-Sure (Hyland社),TEK-CHEK (Ames社),および自製のプール尿を用いて尿定性検査の精度管理を試みたところ,2段階に達する判定値のバラツキと個人差が示され,精度管理の重要性が指摘された.

(2)バラツキと個人差は,一般に軽度陽性試料で大きく,陰性または強陽性の試料では小さかった.

(3)尿の比重には,屈折計の種類によって0.003程度の正確度差が認められた.

(4)市販のコントロール尿にはウロビリノーゲン,ビリルビンあるいはケトン体の代わりに安定な類似反応物質が添加されているものがあり,通常の反応と微妙なくい違いがある.これらにおいては,指定された以外の検査法の管理には利用できないことが示された.

(5)市販品は氷室で少なくとも5か月間安定であり,開封または再溶解後も氷室で15日間安定であった.

(6)患者尿を適当に混合してプール尿を作り,−20℃に凍結保存して管理用の尿試料とすることの可能性が示された.

OTB法による血糖測定をめぐる二,三の問題(1)

山本 五郎 , 山本 正栄

pp.1426-1427

緒言

 私たちは,テルモ真空採血管に採血した血液をRaBAsystemによって血糖定量を行っているうちに,解糖阻止剤が相対的に過剰になると,血糖値が見掛け上高く出ることに気付いた.また毎回試薬の混濁を来し,血糖定量を不可能とする患者があり,そのカルテを調べたところ,パンアミンDを使用しており,これがOTB試薬と混合すると混濁を起こすことを知り,検討を加えたので報告する.

OTB法による血糖測定をめぐる二,三の問題(2)

山本 五郎 , 山本 正栄

pp.1428-1429

緒言

 私はさきに「オルトトルイジンによる血糖測定法の知見補遺1)」と題して,表1に示すように,580nmを境として,これより長波長ではフッ化ナトリウムの影響はないが,これ以下の短波長の側ではフッ化ナトリウムの影響を考慮しなければならない.また溶血の影響は,580nmを支点として,これより短い波長側では高く,これより長波長の側では低く出るため,溶血の影響を避けるには,580nm付近のフィルターを使用すべきであると報告した.この報告をした時点では,当所の比色計はライツM型光電光度計であったが,その後コールマンJ-II型分光光度計に乗り換えたし,OT法よりOTB法に切り換えているので再検討を試みた.

 また直ちに測定に取りかかれない時,H-J法の場合のように,先に試料と試薬を混合しておいて,後から煮沸測定したところ,値が高く出ることに気付き,小実験を行ったので報告する.

α-フェトプロテイン陽性例の臨床病理学的検討

垣見 怜子 , 関 研二 , 野口 八郎 , 大川 日出夫

pp.1430-1431

はじめに

 α-フェトプロテイン(AFPと略す)がヒト胎児血清中に存在することは1956年Bergstrand1)によって見出された.その後,肝細胞癌のマウス血清中にこのAFPが出現することを1963年Abelevら2)が報告した.1964年Tatarinov3)はヒトの原発性肝癌患者血清中にAFPが高率に検出されることを発表した.以後広範な研究が行われAFPは原発性肝癌患者の60〜80%に陽性であることが分かりAFPの診断的意義が認められたのは周知のごとくである.

 AFPの測定が普及し,また測定法の進歩,特にra-dioimmunoassay法が採用されるに及んで,原発性肝癌以外の疾患──肝炎,肝硬変症,転移性肝癌,妊婦など──で陽性例が報告されるようになった.

ひろば

ああ!こんなに便利でよいのだろうか?!

近藤 友一

pp.1425

 事情があってはしばらく検査の仕事を離れていた.再就職のために,ある病院へ面接へ行った.主任らしき人が,"君,この機械知っているかね"と次々と新しい機器を見せた."いえ,初めて見ました"それらは私にとって初めて見るものばかりであった."だめだなあ,今からの技師は機械に詳しくなきゃいかん,こんな機械も知らないようじゃ,科学の進歩においていかれるぞ"私はその人の傲慢な広言に憤りを覚えるよりも,完全にこの人が機械に支配されていることのほうが心に残った.

 今や,臨床検査部門はあらゆる種類の機器や自動分析器が導入され,検査内容の充実と多数の検体処理になくてはならない物となってきた.ごく数年前までは,試薬は天秤で計り,すべて自分で作った.それがキットなる物が出現し,こりゃあ便利だと思っているうちに,自動分析器なる怪物が現れ,ボタン操作一つで値が出るようになった.なんと目覚ましい進歩であろうか.ただ驚くばかりである.もう試験管を1本1本ブラシを通す必要もなく,血球計算だってメランジュールを必要としなくなった.自慢のピペット操作も生かす機会もだんだんと減り,あれほど一所懸命覚えた検査技術は,機械技術にのみ込まれようとしている.臨床検査の目覚しい発展とともに検査項目の増大,慢性的な技師の不足を補ううえにおいて,自動化の進歩は必然だったのである.だれでも,いつでも,簡単に操作できる.

新しいキットの紹介

直接比色法による血清オルニチンカルバミルトランスフェラーゼの測定法とその臨床的意義

中尾 義喜 , 前田 敏弘 , 西畑 豊 , 林 英夫

pp.1432-1436

緒言

 血清オルニチンカルバミルトランスフェラーゼ(以下s-OCT)(EC 2,1,3,3)は肝に限局して存在し,他の臓器,組織の含有量は極めて少ない1).したがって,s-OCT測定は肝疾患の鑑別診断上有意義であると考えられている2,3).しかしながら,測定操作の煩雑などの理由で日常検査として測定されていないのが現状である.

 現在,s-OCTの測定法は,①シトルリンの比色定量法,②アンモニアの定量法,③14CO2の定量法に大別される.これら3種の測定法の中で,最も簡便で反応の鋭敏性に優れる方法はシトルリンの比色定量法である.

新しい機器の紹介

CYTO-TEKスライドステイナーの使用経験—自動パパニコロウ染色装置

竹田 繁美 , 山本 格士 , 五井 早苗

pp.1437-1440

はじめに

 悪性腫瘍細胞を診断する検査法の一つである細胞学的診断(以下細胞診)は,急速に普及し検査件数も年ごとに増加の一途をたどる昨今,染色を従来の用手法から(半)自動化の方向に指向させようとしていることは周知のとおりであり,既に性能の良い国産の自動染色装置が開発され市販されている.

 著者らは,この度米国Ames社の自動パパニコロウ染色装置CYTO-TEKを使用する機会を得た.しかし自動化の条件は均一な染色性,操作の簡便,迅速性あるいは省力化などが期待されるものでなければ使用する意義は少ない.したがってこのような点に留意しながら,本CYTO-TEKを使用し,その経験から得た特徴ならびに有用性について述べてみたい.

AFPプレートの使用経験

向島 達 , 富田 啓子 , 大倉 久直 , 中山 昇

pp.1441-1444

はじめに

 Human Alpha-fetoprotein (AFP)は,1956年Berg-strand1)により正常血清成分の一つとして報告された.この物質は胎児期の主要血清成分であるが,出生後速やかに減少し,一般的な免疫化学的手技では証明できない2,3).この消失したAFPが,原発性肝癌患者,胎児性癌に高頻度に出現することが報告され,また,各種の測定方法が開発され4〜9),それら結果と出現する疾患などについて多くの報告が行われている.今回,我々は単拡散法によるAFPプレート(エーザイ社製)について特異性,測定領域などを検討する機会を得たので報告する.

細胞診セミナー・3

細胞診スクリーニング—観察と判定の仕方

浦部 幹雄 , 高橋 正宜

pp.1445-1449

症例1 食道ブラシ(中央鉄道病院出題)

 司会(浦部) それでは第1例,鉄道病院の食道ブラシの症例で,まず主治医の大塚先生に臨床経過の紹介をお願いします.

 大塚(俊通,中火鉄道病院胸部外科,医師) この患者は,1970年ごろから悸肋部の疼痛と胸骨部の不快感がありました.胃の透視と前後5回の食道鏡をやりまして異常なかったのですが,1973年の食道鏡所見で,食道と胃粘膜の移行部に潰瘍を認めまして,そこで擦過細胞診をやり,その時の報告はクラスⅢcということです.更に経過を見まして,再度食道鏡をやった時に問題になった細胞が見られたわけです.臨床的には潰瘍の治療を行ったわけですが,どうも潰瘍は治らず,かえって拡大していくような感じがしました.手術をした理由は,一つはそういう難治性の潰瘍というものは,外科的に手術すべきであるということの意味合いです.

質疑応答

分画線上の血球の算定

O生 , 新谷 和夫

pp.1451

 問 赤血球を計算板で数える時,線に接した血球を数えるかどうかについてお教えください.

 上図の線上の血球(①〜③)を数える時,A.①,③のみを数えて②は数えない.

 B.①,②,③とも数えない.

日常検査の基礎技術

検査用水の純度検査

横関 善三

pp.1453-1460

 水道水,簡易水道水,井戸水に含まれる不純物は,各種溶存塩類,懸濁物質,溶存有機物に大別できる.これら不純物により,障害が懸念される検査川水には,蒸留器,イオン交換器で精製された精製水が一般に使用される.日本薬局方1)に,水の使用目的に準じて,常水,精製水,滅菌精製水,注射用蒸留水などの製造方法,水質を規定している(麦1).これらは臨床検査に用いる水の考え方の参考になるが,すべてを包含していないので,用途により詳細を検討し,製造方法,純度検査項目を決定すべきである.また日常業務においては,水中不純物に対する認識を高め,常に純度検査を行い,水による障害が発生した時,その問題点を的確に把握解決し,純度検査の参考とすべきである.そこで,日常業務として純度検査を行うと便利な検査項目について,検査方法の概要を示す.

検査と主要疾患・36

供血者の事前検査

柴田 洋一 , 遠山 博

pp.1462-1463

供血者の採血前検査の目的は,健康で献血可能な人を選別し,血液型その他血液諸性状を明確にして,受血者に安全で有効な輸血が行われるようにすることである.そのための事前検査は次のようなものである.①問診による(図),②実測による(血圧・血液比重),③血液型,異常抗体の有無,④血清学的検査(GOT, GPT, HB抗原,梅毒血清反応).これらの方法によりまず献血可能な人を選別する.すなわち

検査機器のメカニズム・48

加湿器

飯島 浩

pp.1464-1465

 わが国が湿気が多いというのは,主として夏の話で,冬は雪の裏日本は別として太平洋岸はずいぶん乾燥する.空気の湿り具合を表すには,空気に含まれる水蒸気量をパーセントで表した相対湿度が普通使われている.水蒸気が含まれる最大限度の量は温度によって違い,温度が上がるほど増える.だから部屋を暖房して人工的に温度を上げていく時,水蒸気を補給してやらないと,空気はどんどん乾いていく.例えば,乾球温度4℃,相対湿度60%は東京の1月の平均気温だが,暖房により乾球温度を20℃にすると相対湿度が20%になり,これはサハラ砂漠の気候と同じになる(図1).

検査室の用語事典

臨床化学検査

坂岸 良克

pp.1467

91) Rhodanate;ロダン酸塩

 チオシアン酸塩.Benedict法による尿糖の定量に還元された銅をCuCNSとして空気酸化を防ぐためKCNSが使われ,塩化物イオン定量ではHg (CNS)2としてHgCl2とSNS-を生じさせ,後者をFe3+と反応させて赤色のFe (CNS)3とし480 nmで比色する.

病理学的検査

若狭 治毅

pp.1468

109) Toxoplasmosis;トキソプラスマ症(Piringer-Kuchinka病)

 Toxoplasnia gondii (protozoa)による感染症で,組織学的には類上皮細胞類似の細胞が小集団をなし,実質やリンパ洞内,更に濾胞内にも入り込んでいる,トキソプラスマの嚢胞はPAS染色でまれに認められるが,多くは血清学検索を要する.

臨床化学分析談話会より・28<第2回夏期セミナー>

体験を基に活発な討論—臨床化学の教育

菅野 剛史

pp.1469

 第2回の分析談話会の夏期セミナーは,臨床化学会,臨床化学分析談話会の主催で,8月7〜9目の2泊3日のスケジュールで,慶応大学立科山荘で開催された.

 参加者は関東支部をはじめ,北海道,近畿,東海の各支部に加え,新潟,信州と各地より参加し,宿泊施設の関係から84名と限られはしたが,多彩なメンバーの集まりであった.

Senior Course 生化学

—酵素の初速度測定—ALP Ⅱ

大場 操児

pp.1470-1471

1.他の測定法との相関

 図1に日立500自動分析機(Kind-King法)とキットによる初速度測定法(p-nitrophenol法)の測定値の相関を示した.検体は中検に提出されたものをアトランダムに選んだ(η=12).

 日立500とA社キットとの相関はγ=0.99,y=0.84x-0.31,B社キットとの相関はγ=0.98,γ=0.92x+1.6であった.初速度法はいずれもKind-King法と良い相関を得たが,B社が若千高値を示した.その傾向は,図2に示したA社とB社との相関図に明らかである.γ=0.99,y=1.52x-0.76であった.

Senior Course 血液

—検査室からみた血液疾患の特徴—異常ヘモグロビン症

松原 高賢

pp.1472-1473

 異常ヘモグロビン(Hb)症は黒人や地中海沿岸住民に多い遺伝病で,わが国には存在しないと考えられていた.ところが,岩手県に昔からあった黒血病がHbM症であることが判明したのがきっかけとなって全国的調査が行われ,異常Hb症がわが国にも存在することが明らかになった.住民4,000人につき1人の割合で,種類は約30に及んでいる。本症の診断は血液検査によって初めて可能であり,また本症ではないかとの疑いを抱くきっかけも,臨床所見よりはむしろ日常の血液検査所見である.

Senior Course 血清

—最新の免疫学的検査法—M成分のSubclassの同定法

冨永 喜久男

pp.1474-1475

Subclassの免疫化学的意義

 単クローン性Ig異常症で血中にみられるいわゆる"M成分"は,WHO専門委員会のすすめにより現在ではIgG (κ)とか,IgA (λ)とか記す方法が定着してきた,しかし,外国の論文を読むとG,Aなどの文字の後に1,2などと番号がつき,例えばIgG1(κ),IgA2(λ)などとなっている.Gでは1〜4,Aでは1〜2,の中のどれかであるが,これはSubclass (以下sub.と略す)と呼ばれる抗原性で,IgGの場合,そのパパイン処理で生じる2個のフラグメントの中の1つであるFc (3月号,Homology Regionの項で説明したCγ2+Cγ3に相当する)の部分の構造で規定される.正常人はすべてのsub.に属するIgG, IgAを一定の割合で持っているが,M成分はその産生の単一クローン性を反映してどのsub.かに属するわけである.

 IgGのsub.別の差については既に多くのことが知られている.例えば,全IgGの内訳(IgG1が最も多く65%,以下23%,8%,IgG4の4%),それぞれのsub.の中でのκ/λ比(1:1〜5:1),Gm因子のsub.別の分布,半減期,異化率,補体との結合能,皮膚感作能,各種抗原に対する抗体の分布,などである.

Senior Course 細菌

—病原性球菌の分離,同定—嫌気性菌の同定の基礎

鈴木 祥一郎 , 二宮 敬宇

pp.1476-1477

 嫌気性菌は同定法の進歩が好気性菌より遅れている.以下紙面の関係で,臨床細菌学的に重要な菌種に限り,同定に関して記してみたい.

Senior Course 病理

—新しい病理組織標本の作り方—標本作製中に起こる人工産物 Ⅱ

平山 章

pp.1478-1479

 いうまでもなくいわゆる人工産物は手術材料あるいは生検材料を採取する時点から発生する可能性をもち,染色標本の封入が完了するまでつきまとうものである.

Senior Course 生理

ICU,CCUにおける心電図モニターの実際

小野 哲章

pp.1480-1481

 近年,傾斜管理方式(Progressive Patient Care)の考えに基づいて,ICU (Intensive Care Unit)およびCCU (Coronary or Cardiac Care Unit)などが一般病院に急速に普及しつっある.

 ICUとは一般に,手術後(心臓外科手術が多い)の重篤な時期に,昼夜,集中的に監視,看護,治療するための施設であり,CCUは主に冠状動脈疾患の患者に対して集中的に監視,看護,治療に当たる施設である.

Senior Course 一般検査

関節液

池内 宏

pp.1482-1483

関節液とは

 関節液は血漿のprotein-containing dialysateに滑膜細胞に由来するムチンが加わったもので,血管のない関節軟骨の栄養を司どると同時に,潤滑油的機能を果たすものと考えられている.正常関節液の量はRopesらによると,0.13〜3.5 ml,平均1.1 mlであるが,仰臥位で外側膝蓋上または膝蓋下穿刺で得られる量は多くて2ml以下である.わずかに粘稠な液が注射針内に入るだけで定量できない場合が多い.検査のためには採取時,局所麻酔薬や血液の混入を避けなければならない.正常関節液は白色または黄白色でほぼ透明な非常に粘稠な液である.放置してもフィブリノゲンがないので凝固しない.

 病的関節では液量が増加し,膝関節では30〜40 ml,ときには120mlも貯留することがあり,多くは黄色調が強くなり,比粘度が低下し混濁が増強する.痛風や仮性痛風では尿酸塩結晶やピロリン酸カルシウム結晶が存在し,小関節の液は白濁するが,膝関節の場合には必ずしも強い白濁はみられない.外傷の部位や疾患によっては全く血性のこともある.病的関節液は放置すると血液のように凝固する.採取直後の関節液を標準液を調製して比較検討してみると,大体細胞数と一致する.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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62巻4号(2018年4月発行)

増刊号 疾患・病態を理解する—尿沈渣レファレンスブック

62巻3号(2018年3月発行)

今月の特集1 症例から学ぶ血友病とvon Willebrand病
今月の特集2 成人先天性心疾患

62巻2号(2018年2月発行)

今月の特集1 Stroke—脳卒中を診る
今月の特集2 実は増えている“梅毒”

62巻1号(2018年1月発行)

今月の特集1 知っておきたい感染症関連診療ガイドラインのエッセンス
今月の特集2 心腎連関を理解する

60巻13号(2016年12月発行)

今月の特集1 認知症待ったなし!
今月の特集2 がん分子標的治療にかかわる臨床検査・遺伝子検査

60巻12号(2016年11月発行)

今月の特集1 血液学検査を支える標準化
今月の特集2 脂質検査の盲点

60巻11号(2016年10月発行)

増刊号 心電図が臨床につながる本。

60巻10号(2016年10月発行)

今月の特集1 血球貪食症候群を知る
今月の特集2 感染症の迅速診断—POCTの可能性を探る

60巻9号(2016年9月発行)

今月の特集1 睡眠障害と臨床検査
今月の特集2 臨床検査領域における次世代データ解析—ビッグデータ解析を視野に入れて

60巻8号(2016年8月発行)

今月の特集1 好塩基球の謎に迫る
今月の特集2 キャリアデザイン

60巻7号(2016年7月発行)

今月の特集1 The SLE
今月の特集2 百日咳,いま知っておきたいこと

60巻6号(2016年6月発行)

今月の特集1 もっと知りたい! 川崎病
今月の特集2 CKDの臨床検査と腎病理診断

60巻5号(2016年5月発行)

今月の特集1 体腔液の臨床検査
今月の特集2 感度を磨く—検査性能の追求

60巻4号(2016年4月発行)

今月の特集1 血漿蛋白—その病態と検査
今月の特集2 感染症診断に使われるバイオマーカー—その臨床的意義とは?

60巻3号(2016年3月発行)

今月の特集1 日常検査からみえる病態—心電図検査編
今月の特集2 smartに実践する検体採取

60巻2号(2016年2月発行)

今月の特集1 深く知ろう! 血栓止血検査
今月の特集2 実践に役立つ呼吸機能検査の測定手技

60巻1号(2016年1月発行)

今月の特集1 社会に貢献する臨床検査
今月の特集2 グローバル化時代の耐性菌感染症

59巻13号(2015年12月発行)

今月の特集1 移植医療を支える臨床検査
今月の特集2 検査室が育てる研修医

59巻12号(2015年11月発行)

今月の特集1 ウイルス性肝炎をまとめて学ぶ
今月の特集2 腹部超音波を極める

59巻11号(2015年10月発行)

増刊号 ひとりでも困らない! 検査当直イエローページ

59巻10号(2015年10月発行)

今月の特集1 見逃してはならない寄生虫疾患
今月の特集2 MDS/MPNを知ろう

59巻9号(2015年9月発行)

今月の特集1 乳腺の臨床を支える超音波検査
今月の特集2 臨地実習で学生に何を与えることができるか

59巻8号(2015年8月発行)

今月の特集1 臨床検査の視点から科学する老化
今月の特集2 感染症サーベイランスの実際

59巻7号(2015年7月発行)

今月の特集1 検査と臨床のコラボで理解する腫瘍マーカー
今月の特集2 血液細胞形態判読の極意

59巻6号(2015年6月発行)

今月の特集1 日常検査としての心エコー
今月の特集2 健診・人間ドックと臨床検査

59巻5号(2015年5月発行)

今月の特集1 1滴で捉える病態
今月の特集2 乳癌病理診断の進歩

59巻4号(2015年4月発行)

今月の特集1 奥の深い高尿酸血症
今月の特集2 感染制御と連携—検査部門はどのようにかかわっていくべきか

59巻3号(2015年3月発行)

今月の特集1 検査システムの更新に備える
今月の特集2 夜勤で必要な輸血の知識

59巻2号(2015年2月発行)

今月の特集1 動脈硬化症の最先端
今月の特集2 血算値判読の極意

59巻1号(2015年1月発行)

今月の特集1 採血から分析前までのエッセンス
今月の特集2 新型インフルエンザへの対応—医療機関の新たな備え

58巻13号(2014年12月発行)

今月の特集1 検査でわかる!M蛋白血症と多発性骨髄腫
今月の特集2 とても怖い心臓病ACSの診断と治療

58巻12号(2014年11月発行)

今月の特集1 甲状腺疾患診断NOW
今月の特集2 ブラックボックス化からの脱却—臨床検査の可視化

58巻11号(2014年10月発行)

増刊号 微生物検査 イエローページ

58巻10号(2014年10月発行)

今月の特集1 血液培養検査を感染症診療に役立てる
今月の特集2 尿沈渣検査の新たな付加価値

58巻9号(2014年9月発行)

今月の特集1 関節リウマチ診療の変化に対応する
今月の特集2 てんかんと臨床検査のかかわり

58巻8号(2014年8月発行)

今月の特集1 個別化医療を担う―コンパニオン診断
今月の特集2 血栓症時代の検査

58巻7号(2014年7月発行)

今月の特集1 電解質,酸塩基平衡検査を苦手にしない
今月の特集2 夏に知っておきたい細菌性胃腸炎

58巻6号(2014年6月発行)

今月の特集1 液状化検体細胞診(LBC)にはどんなメリットがあるか
今月の特集2 生理機能検査からみえる糖尿病合併症

58巻5号(2014年5月発行)

今月の特集1 最新の輸血検査
今月の特集2 改めて,精度管理を考える

58巻4号(2014年4月発行)

今月の特集1 検査室間連携が高める臨床検査の付加価値
今月の特集2 話題の感染症2014

58巻3号(2014年3月発行)

今月の特集1 検査で切り込む溶血性貧血
今月の特集2 知っておくべき睡眠呼吸障害のあれこれ

58巻2号(2014年2月発行)

今月の特集1 JSCC勧告法は磐石か?―課題と展望
今月の特集2 Ⅰ型アレルギーを究める

58巻1号(2014年1月発行)

今月の特集1 診療ガイドラインに活用される臨床検査
今月の特集2 深在性真菌症を学ぶ

57巻13号(2013年12月発行)

今月の特集1 病理組織・細胞診検査の精度管理
今月の特集2 目でみる悪性リンパ腫の骨髄病変

57巻12号(2013年11月発行)

今月の特集1 前立腺癌マーカー
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査②

57巻11号(2013年10月発行)

特集 はじめよう,検査説明

57巻10号(2013年10月発行)

今月の特集1 神経領域の生理機能検査の現状と新たな展開
今月の特集2 Clostridium difficile感染症

57巻9号(2013年9月発行)

今月の特集1 肺癌診断update
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査①

57巻8号(2013年8月発行)

今月の特集1 特定健診項目の標準化と今後の展開
今月の特集2 輸血関連副作用

57巻7号(2013年7月発行)

今月の特集1 遺伝子関連検査の標準化に向けて
今月の特集2 感染症と発癌

57巻6号(2013年6月発行)

今月の特集1 尿バイオマーカー
今月の特集2 連続モニタリング検査

57巻5号(2013年5月発行)

今月の特集1 実践EBLM―検査値を活かす
今月の特集2 ADAMTS13と臨床検査

57巻4号(2013年4月発行)

今月の特集1 次世代の微生物検査
今月の特集2 非アルコール性脂肪性肝疾患

57巻3号(2013年3月発行)

今月の特集1 分子病理診断の進歩
今月の特集2 血管炎症候群

57巻2号(2013年2月発行)

今月の主題1 血管超音波検査
今月の主題2 血液形態検査の標準化

57巻1号(2013年1月発行)

今月の主題1 臨床検査の展望
今月の主題2 ウイルス性胃腸炎

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