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高級技術講義
脳腫瘍組織診断の基本構造
著者: 向井紀二12
所属機関: 1東大医学部病理学教室 2東京都監察医務院
ページ範囲:P.583 - P.598
文献購入ページに移動はじめに
脳腫瘍の組織学的な性格の基礎をなしている細胞の生物学的な態度や,形態のうえの特性はきわめて整然とした体系のなかで,すでに見紛うことのない存在となつているにもかゝわらず,その組織学的な診断には意外な困難がともなうものとおもわれがちである。そして,その難かしさの中心をなしているようにみえるのは,やはりなんといつてもグリオーム(神経膠腫)の分類にみられる骨組のちよつとした複雑さであらう。とくに,腫瘍細胞の分化が,いくつかの段階にわたつてしばしば幅広い形態の変化(多型性)をもつために,気軽に一枚のH.E標本で診断をつけようとするような場合には,実際困惑させられることも多い。
ここで,まず腫瘍化の各段階にそれぞれ対応した正常の脳細胞の発生過程へのただしい理解が,唯一の標準Criterionとしてわれわれのまえに存在する。この壁を具体的な体験によつてとびこえない限り,その多面的な仮装を見破ることはまず不可能といつてよい。
脳腫瘍の組織学的な性格の基礎をなしている細胞の生物学的な態度や,形態のうえの特性はきわめて整然とした体系のなかで,すでに見紛うことのない存在となつているにもかゝわらず,その組織学的な診断には意外な困難がともなうものとおもわれがちである。そして,その難かしさの中心をなしているようにみえるのは,やはりなんといつてもグリオーム(神経膠腫)の分類にみられる骨組のちよつとした複雑さであらう。とくに,腫瘍細胞の分化が,いくつかの段階にわたつてしばしば幅広い形態の変化(多型性)をもつために,気軽に一枚のH.E標本で診断をつけようとするような場合には,実際困惑させられることも多い。
ここで,まず腫瘍化の各段階にそれぞれ対応した正常の脳細胞の発生過程へのただしい理解が,唯一の標準Criterionとしてわれわれのまえに存在する。この壁を具体的な体験によつてとびこえない限り,その多面的な仮装を見破ることはまず不可能といつてよい。
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