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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査20巻10号

1976年10月発行

雑誌目次

カラーグラフ

超生体染色標本の活用

高橋 正宜

pp.990-991

細胞を生のまま観察すると,核形質と呼ばれる核内構造は核縁と核小体を識別できるのみで無構造な形状として認められる.一方,細胞質に関しては,種々の色素の選択的透過性や親和性を応用して細胞構造を観察することができ,超生体染色として古くから細胞学,血液学の分野に利用されてきた.代表的なものとして,ヤーヌスグリンはチトクロム酸化酵素に富む糸粒体に親和性があり,中性紅は分泌顆粒(分布域からゴルジ野に関連しているらしい)やライソゾームに一致して染まるといわれる,アクリジンオレンジ螢光色素(AO)は核のDNAを帯黄緑色に染め,細胞質のRNAや酸性粘液多糖体を赤染する.生きた細胞では中性紅の微細顆粒と同位置に異染性の赤色顆粒を示す.トリパン青やニグロシンは細胞の生死判別法として組織培養に活用されている.また,尿沈渣の検索においてSternheimer-Malbin染色を代表として超生体染色法(超生染)は日常検査に用いられ,臨床検査の応用域ははなはだ広い.

技術解説

血小板抗体検査・2

安永 幸二郎 , 大熊 稔

pp.993-1000

抗グロブリン消費試験

 抗グロブリン消費試験の原理は,抗グロブリン血清の力価を抗D抗体感作赤血球であらかじめ測定しておき,自己抗体があると推測される検体を抗グロブリン血清に加えて反応させて,その抗グロブリン血清力価の低下度から,検体における抗体の有無を推定するものである(図1).本法の判定は赤血球の凝集によって行われるから,血小板のごとく非特異的凝集反応を来しやすいものでは便利である.血小板抗体の検出に用いられる抗グロブリン消費試験には直接法と間接法があり,直接法は患者の血小板を用いるもので,自己抗体の判定に信頼度が高いが,血小板減少症患者の血液から必要量の血小板(2×109の血小板)を得るためには大量の採血(100〜200ml)を要するので,臨床検査としては適当といえず,一般には正常血小板を被検血清で感作して用いる間接法が行われる.

細菌性毒素と抗毒素の検出法・1—溶血毒

三輪谷 俊夫 , 本田 武司

pp.1001-1008

 細菌の産生する毒素には(菌体)外毒素と(菌体)内毒素があるが,本稿では外毒素について述べることにする.外毒素はタンパク性の毒性物質であり,微量で特異的な毒作用を示すが,大まかに毒作用を大別すると,(I)溶血活性,(II)下痢原性,(III)致死活性,(IV)その他をあげることができる(表1).本文では紙面の関係もあり,これらのうち代表的な毒素を取り上げ,その検査法を紹介する.

アンチトロンビン測定法

桜川 信男

pp.1009-1013

 Seegers (1954)1)は血漿中に生理的に存在するトロンビン阻害物質をアンチトロンビンIIIと命名したが,今日では6種類が存在してそれぞれアンチトロンビンⅠ(フィブリンはトロンビンを吸着するのでアンチトロンビンIとされる),アンチトロンビンⅡ(heparin cofactor),アンチトロンビンIV (凝固過程で発生してくるアンチトロンビン)2),アンチトロンビンⅤ(Rheumaticarthritisの患者に発生する)およびアンチトロンビンⅥ(フィブリンのプラスミンによる分解産物)が認められている,これとは別に,生化学的に純化した型での命名で,protease inhibitorとしてα1—antitrypsin, inter—α—trypsin inhibitor,α2—macroglobulin, C1—inhibitor,β—lipoproteinthrombin inhibitorおよびantithrombinIIIなどである,このうちアンチトロンビンIIIが血液中のアンチトロンビン作用の主力を示すものであるが,ヘパリンの存在下ではconformationchange3)を起こしてimmediate inhibitorに変わって急速にトロンビン阻害作用を示すが,ヘパリンがなくても徐々にトロンビンを阻害する,いわゆるprogressive inhibitorである.

総説

Bergeyのマニュアル

中谷 林太郎

pp.1014-1031

 1923年に初版が出版され,1957年発行の第7版以来,実に17年ぶりの改訂版として発行された第8版について,改訂の主旨,使用法,および臨床細菌検査に影響するところが多いと思われる主要な改正面について解説する.

臨床検査の問題点・83

電気生理の安全対策

斎藤 正男 , 小野 哲章

pp.1032-1040

ME機器の安全対策は日ごとに強調されている.それは,一つには国際的な安全基準である医用電子機器安全基準の設定により,安全基準に対する考えが変わり,機器に対する責任が,メーカーからユーザーに求められるようになったからであろう.つまり,事故が起きてから"機械がダメだから"ではすまされないわけである.検査室としてどう対処していくか…….(カットは脳波検査)

異常値・異常反応の出た時・46

アミラーゼ

山崎 富生 , 大槻 真 , 馬場 茂明

pp.1041-1047

 一般にデンプンに作用して加水分解を行う酵素を総称してアミラーゼと呼ぶが,加水分解とともに転移作用を行う酵素は除かれている.アミラーゼはその分解生成糖の旋光性が負であるか正であるかにより,α型とβ型に大別されており,ヒトを含む動物組織に存在するものはすべてα-アミラーゼ(1,4-α-Dglucanglucanohydrase,E.C.3.2.1.1)である.分子量は45,000,至適pHは6.9であるがpH4,8〜11の範囲で比較的安定である.

 α-アミラーゼはデンプン,グリコーゲン,アミロペクチンおよびそれらの変性物質で,3個以上のD-glucoseを含むポリサッカライドのα−1-4glucoside結合を加水分解し,最終反応生成物としてマルトースの他に少量のブドウ糖,マルトトリロース,リミテッドデキストリンを生ずる.

新しい肺機能検査法・Ⅳ

トノメーター

太田 保世

pp.1048-1053

 トノメーター(tonometer)は,いろいろな液体に既知のガス分圧を与える装置であり,むしろequilibratorとでもいうほうが理解しやすいであろう.歴史的にかなり古い本装置が,いまだに耳新しくひびくことがあるのは,我が国での驚くほど低い普及ぶりにも一因があるようである.確かに多くの臨床検査の場合などで,無くても済むものでもあるが,呼吸生理学的な研究部門においてすら軽視されている風潮には寒心のきわみである.

 本稿の第1の目的は,トノメーターとはどのようなものかを改めて考えてみることで,現在最も使いやすく,信頼のおける装置として,Farhi1)のトノメーターについてやや詳しい説明を加えることが第2である.なお,トノメーターについて「呼吸と循環」誌に高木・太田2),横山3)の解説がある.

中検へ一言・中検から一言

CPCにも参加を,他

吉田 弥太郎

pp.1054-1055

大病院の中検では医療の専門化と並行して検査業務が細分化され,技師は特定の部門のみを分担する傾向にある.今日の医療に臨床検査が不可欠のものであることが社会的にも浸透してきているので,検査項目も検体数も絶えず増加してゆくものと思われ,今後ともこの専門化と分担の趨勢は変わらないだろう.そこで願わくば検査技師の方々には検査の重要性をよく認識していただき,単に検体を時間内にこなすだけではなく,個々のデータに責任をもって対処していただきたい.例えば,異常値を呈した検体があれば,それが血清のように保存可能なものなら必ず保存しておき,後々の再検討や臨床経過に対応した経時的検索に備えて欲しい.また異常値の報告に際しても,中検から臨床側に再検討の必要性を指示するとともに,もう一歩進んで次は何を検査すべきか,どういう診断が考えられるかなどの諸点につき積極的に進言するくらいの姿勢が欲しい.その意味で本誌19巻10号の「診断名"再生不良性貧血"早急に骨髄穿刺を施行されたし!」と題する田端中央病院近藤氏の努力には敬意を表したい.私事にわたるが,当大学中検では血液像で異常細胞が出現したり,白血球減少のある検体では,可能な限り,buffy coatの塗抹標本を作って再検するように心掛けている.一方,医師の側でもただ伝票を切るだけでなく,返されてきたデータを正しく把握し,疑問があれば中検へ出向いて行って討論をすべきであろう.

座談会

Bergeyのマニュアル

坂崎 利一 , 藪内 英子 , 光岡 知足 , 上野 一恵 , 中谷 林太郎

pp.1056-1066

「Bergeyのマニュアル」(Bergey's Manual of DeterminativeBacteriology)が17年ぶりに改訂され,1974年末に改訂第8版が出版された.我が国でも細菌分類学の権威書として普及しているので,ここでは第7版と比べて主な改訂点のうち特に臨床細菌に関連の深いところを専門家に話し合っていただく.(総説参照)

質疑応答

反応血球の保存について

N生 , 中嶋 八良

pp.1068

 問 交差適合試験済反応血球の保存は必要性があるのでしょうか.また,医療事故発生時における法的有用性はどの程度でしょうか.

研究

アンモニア電極による尿素窒素の自動分析法

中根 清司 , 梅田 芳 , 高阪 彰

pp.1069-1072

緒言

 血液および尿の尿素窒素(Urea-N)定量は臨床診断,治療,予後判定などに重要である.したがって,臨床化学検査の中でも依頼件数は非常に多く,しかも緊急性を要する検査である.

 現在,測定方法はDiacetylmonoxime法1,2)あるいはUrease-Indophenol法3,4)が多くの検査室で行われている.最近,Urease-Glutamate Dehydrogenase-NADH系の酵素法も報告されている5〜8)

免疫拡散板による血清α1-リポタンパクの測定法

宮谷 勝明

pp.1073-1075

緒言

 一般に,リポタンパクは電気泳動学的にα1-リポタンパク,プレ-β-リポタンパクおよびβ-リポタンパクに分画1)されるが,食後では更にカイロミクロンが現れる.その他に閉塞性黄疸時にはポストβ-リポタンパク分画にリポタンパクXなども出現2)することが知られている.

 α1-リポタンパク(以下α1-Lp. と略記)を測定するには超遠心分析法3),沈殿比色法4),電気泳動法5),一元平板免疫拡散法6)などがあってそれぞれ特徴を有するが,著者はManciniら6)の方法に従い血清α1-Lp. を用いて行う場合の測定条件について検討を加えるとともに,併せてこの拡散板を用いて健常成人男女の値をも測定したので,その成績を報告する.

編集者への手紙

自動検査機器と公害防止

鳥居 賢治

pp.1076

Letter to Editor

 昭和45年に水質汚濁防止法が施行されて以来,年々その規制対象は拡大され,また規制自身も強化されてきました.昭和49年末からは病院や検査機関も規制の対象とされ,今後新設されるものについては,その排水を公共下水道などに排出する場合,何らかの排水処理が必要とされるようになりました.

 臨床検査科では特に検査のために多種の化学物質を試薬として使用しており,その中には明らかに毒性を指摘されているものも多い.特に自動検査機器はその性能が大きいところから,検体当たりの試薬の使用量は手法に比べ少ないとしても,総量から考えれば多量の有害物質を排出する可能性をもつものと考えられます.今後,公害防止という観点からも自動検査機器を考える必要があります.

新しいキットの紹介

Radioimmunoassay法による血中T4の測定

宮崎 忠芳 , 岡本 邦雄 , 吉村 学 , 間嶋 崇哉 , 梶田 芳弘 , 越智 幸男

pp.1077-1081

はじめに

 血中T4(Thyroxine)濃度の測定はタンパク結合ヨード(PBI)およびブタノール抽出ヨード(BEI)として化学的方法で測定されてきた.近年Ekins1)によりCompetitive Protein Binding Analysis(CPBA)法が導入され,Murphy2),Nakajima3),らにより精度の良い簡便な方法が検討され,数年来,数種のキット(Terasorb,Res-o-Mat T4,Thyopac−4,Tetraluteなど)が臨床検査用として繁用されてきている.しかしこれらの方法は被検血清中のT4結合タンパク(TBP)からT4を抽出せねばならず,非常に少量の被検血清から精度の良いしかも簡便な操作で測定する方法としては,現在のところRadioimmunoassay(RIA)が最適である.T3(Triiodethyronine)は1970年Brown4)がRIA法を発表して以来,現在では血清中のT3を直接測定するキットが発売され,日常の甲状腺機能検査に大いに利用されている,T4のRIA法も1972年ごろ5,6)より,検討され,1975年より国内でキットが発売され始めた.我々もT4RIA法とCPBA法を比較し,両者の値が非常によく相関していることを既に発表している7)

検査と主要疾患・46

von Willebrand病

神谷 忠

pp.1086-1087

 von Willebrand (v.W)病は1926年vonWillebrandによりフィンランドのÅland島の住民の中に皮膚,粘膜の出血を主徴とし,家族的に男女両性に出現する先天性出血性疾患として報告された疾患である.当時,それまでに知られていた血友病に類似した疾患であることからpseu-dohemophiliaと呼ばれた.その後,多数の類似症例が報告され,本症にはoriginalからvariantな症例も存在することが分かった.ここでは典型的なv.W病の病態および診断について述べる.

検査機器のメカニズム・58

モルフォメトリー—自動映像解析装置

横山 武 , 桜井 達夫 , 早乙女 幸恵

pp.1088-1089

 病理形態学においては,モルフォメトリー(Mo-rphometry)に関して多数の研究が成されている.簡単なものは,組織標本内の細胞,核の大きさの測定である.普通この種の研究の対象になるのは肝細胞核が多く,この場合核は球ないし楕円球とみなされるので,核の直径または長径および短径を測定する.現在この際に使用されるのは回転式ミクロメーター(Schraubenmikrometer)で,測定値がデジタルに表現される器械もある.この径から円,楕円,または球,楕円球として計算する.組織標本を写真に撮り,拡大し,プラニメーターで測定するような方法もある.

 戦後になっていわゆるPoint counting methodがよく使われるようになった.これは組織標本のある部分の占める面積比を算出するように工夫された原理である.すなわち肝細胞核のように大凡円,楕円形を示すものであれば,その径から面積は算出できるが,一定の形をとらぬものには応用できない,Point countingの原理(図1)は,一定数の平等に分布した点を,測定する組織の部分が占める比率で表現されるわけである.同一部分を方向を変えて何回も測定すれば精度は良くなる.この原理に従った一定の装置,Integrating Microme-ter-disk Turret I (C.Zeiss社)があり,デジタルになっているものもある(Contron社;MOP).

検査室の用語事典

臨床検査のRI用語

山県 登 , 松村 義寛

pp.1091

31)電子ボルト(eV)

放射線のエネルギーは電子ボルトで表される.1電子ボルトというのは電子が1ボルトの電位差の所を通過するときに得るエネルギーである.電子銃から発射された電子がテレビ受像器のブラウン管にぶつかるとき,この電子のもつエネルギーは1万ボルト掛けられているとすれば1万電子ボルトになる.キロ電子ボルト(keV),百万電子ボルト(MeV).

臨床検査のコンピューター用語

鈴木 孝治 , 春日 誠次

pp.1092

102) MODEM (モデム)

変調装置と復調装置を総合した装置の呼び名で,コンピューターを離れた点から利用する場合,情報の送受に電話線を利用するのに用いられる.

臨床化学分析談話会より・38<関東支部>

診断から治療へのアプローチ—肝機能検査と薬物代謝

戸谷 誠之

pp.1093

 第193回分析談話会関東支部会(1976.6.15)は東大薬学部講堂において開催された.診断へのアプローチシリーズ第2回は肝機能検査と薬物代謝という面から,千葉大薬学部の北川春男先生と,国立武蔵療養所の宮本侃治先生から話題提供がなされた.

 初めに,薬物代謝系酵素と題し,北川先生は①薬物代謝機構について,②配合剤の代謝について,③薬物代謝系の酵素測定の点に焦点をしぼって話を進められた.

Senior Course 生化学

—臨床化学検査における酵素化学—酵素による定性・定量分析 Ⅹ

山下 辰久

pp.1094-1095

共役反応を用いる定量法・2

 共役反応を用いる測定法のうち,前回は転換反応の生成物が標示反応によって測定される(a)の方法について述べたが,今回は,①転換反応の結果生じた生成物(PまたはP')がそのまま基質として用いられるような有効な標示反応が見い出されない場合とか,②転換反応の反応物質が入手し難いとか,または非常に不安定な物質であるため測定時に先行反応によって作らせたほうがよい場合,とかにしばしば用いられる(b)の方法について述べてみることにする.

Senior Course 血液

線溶現象について

黒川 一郎

pp.1096-1097

 体外に取り出した血液が,いったん凝固しても,やがて再び流動性を取り戻すことから線溶現象が注目されてきた.この現象をおし進める血中物質をプラスミンと呼んでいる.そして,これは生体内での一つの生理的現象と考えられる.個々の凝固因子は,それぞれ生物学的半減期があり,一定のサイクルで生成消滅する.プラスミンは,このような凝固因子の代謝に一定の役割を果たしていると思われる.同じ役割の一部は細網内皮系と考えられている.線溶現象は傷口の治癒過程で,皮膚の白いはん痕が健常な皮膚に置き換えられることが例としてあげられる.しかし,プラスミンは血中のみならず,筋肉,実質臓器,内皮細胞など広く種々の組織の中でも活動し,凝固系と同じくその活動も神経,内分泌系,炎症,アレルギー反応,創傷治癒過程,悪性腫瘍,出産,手術など広い範囲で研究対象とされ,各科共通の問題となっている.

 生理的現象である線溶が手術・急性感染症などで爆発的に亢進して発現すると,既存の凝固因子が破壊され,病的なoozing (じわじわとなかなか止まらない出血)を起こす.

Senior Course 血清

—血清検査の基礎—Rh式血液型の判定法

浅川 英男

pp.1098-1099

 O型の受血者にO型の供血者の血液を輸血して問題は起こらないかと問われれば,即座に否という言葉がもどってくるほど今日では常識的である.そのときいちばん問題になるのがRh式血液型である.ABO式血液型に次いでRh式血液型の判定が重要視されるのは,Rh陰性者にRh陽性血球が輸血されたとき,ABO式はたとえ同型であっても,抗Rh抗体が生じ,しいては輸血副作用を起こしうる.またRh陰性の婦人がRh陽性者と結婚,妊娠したとき,やはり胎児がRh陽性であれば抗Rh抗体が妊婦に生じて,第2回目の出生のとき新生児溶血性疾患を引き起こす.このRh式血液型は臨床的意義からも重要視され注目されたわけで,今日ではABO式血液型とともに,Rh式血液型はルーチンの仕事として日常の輸血部の業務となっている.

 Rh式血液型は,1970年LandsteinerとWienerにより発見されたが,当初アカゲザル(Macacus rhesus)赤血球に対するウサギ,モルモットの免疫血清によって見出されたが,ヒト血清中にはより多くの因子がその抗体中に存在することが明らかとなり,表1のようにFisher&RaceとWienerは別の命名法がとられている.その中でRh陽性というのはD抗原を有するものをいう.臨床的に重要な意味があるのは抗原性の最も強いD抗原であり,免疫同種抗体である抗D抗体は通常IgGに属する.

Senior Course 細菌

腸内細菌の分類 Ⅶ

坂崎 利一 , 田村 和満

pp.1100-1101

Edwardsietla属

 Edwardsiellaが腸内細菌の新しい菌群として注目されたのは1960年以後のことで,わが国では,坂崎(1962)らが最初にヘビから分離し,これをAsakusa群として報告した.ところが同じころアメリカではEwi-ng (1964)が同様な性状をもつ菌をBiotype 1483-59と仮称し,またKing&Adler (1964)もEwingとは関係なく同様な菌を研究し,Bartholomew groupと呼んだ.しかし,これらの名前はいずれも通俗名であったために,Ewing et al.(1966)がこの菌に対しEdwardsiella tardaという名を提案し,その学名が承認されてきた.ところが最近になって1962年にHoshinaがウナギの病原菌として報告したParacolobactrum anguillimortiferumがE-dwardsiella tardaであることがわかり,命名規約上"tarda"よりも"anguillimortiferum"が優先するので,その種名はEdwardsiella anguillimortiferaでなければならない.いまこの命名についてどちらを正式名とするかは国際裁定委員会で審議中である.

Senior Course 病理

—病理検査の技術と知識—ミクロトームとメスとぎ

武石 詢

pp.1102-1103

 ミクロトームを考える場合,当然ミクロトームとメスを区別しなければならない.

 薄切に際して実際に物を切るのはメスであり,術者の希望どおりの,しかもコンスタントな薄切操作を保障するのがミクロトームである.

Senior Course 生理

—電気生理検査に必要な電気の基礎知識—パルス回路マルチバイブレーター

石山 陽事

pp.1104-1105

 最近の電気生理検査は,単に生体の電気現象を記録するだけではなく,検出した電気信号を一時磁気テープや電子計算機のメモリーに記憶し,それをいろいろな形で処理したり,遠くに伝送することが行われている.一方これとは別に,外部からの刺激によって生体の反応を見ようとする検査(各種の誘発電位)も行われている.しかし,こういった検査の陰には増幅回路だけではなく,パルス回路の働きも大きな役割を演じている.今回はこういったパルス回路を中心に述べることにする.

Senior Course 共通

電気による災害予防

長尾 透

pp.1106-1107

 臨床生理検査室で使われているME機器は,ほとんど交流電源から得られた電流で動かされている.この交流電流が万一の事故により人体に流れ込めば電撃を受け,不幸な場合には死ぬこともある.電流が人の組織内をどのような経路で,どのような電流密度で流れたかによって,その危険度も大きく異なる.一つはマクロショックと呼ばれる電撃で,これは電流が皮膚を通じて体外から流れ込み,体外に流れ出たときである,他の一つはミクロショックと呼ばれるもので,これは電流が皮膚を通さず,組織を通じて直接心臓に流れ込み,体外に出るものである.我が国で日常使われている交流は,100V,50または60Hzの電流である.

 電撃の際の人の反応をみると,マクロショックのときには1mVくらいでビリビリと感じ,この電流を最小感知電流という.次いで電流が増すと,電流の出入部位の筋肉がけいれんを起こし,苦痛を伴うようになる.そして電源から手を離すことができなくなる.このときの電流を離脱電流と呼んでいる.その限界は10〜20mAといわれている.更に強まれば,痛み,気絶,激しい疲労を起こし,ついに心臓,呼吸系統は興奮する.そして100mA〜3Aくらいとなれば心室細動を起し死に至る.この中で安全対策に大切な値は最小感知電流であり,電流それ自体に危険はないが,不意のショックを受げると,驚いて,二次的災害を起こすおそれがある.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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60巻7号(2016年7月発行)

今月の特集1 The SLE
今月の特集2 百日咳,いま知っておきたいこと

60巻6号(2016年6月発行)

今月の特集1 もっと知りたい! 川崎病
今月の特集2 CKDの臨床検査と腎病理診断

60巻5号(2016年5月発行)

今月の特集1 体腔液の臨床検査
今月の特集2 感度を磨く—検査性能の追求

60巻4号(2016年4月発行)

今月の特集1 血漿蛋白—その病態と検査
今月の特集2 感染症診断に使われるバイオマーカー—その臨床的意義とは?

60巻3号(2016年3月発行)

今月の特集1 日常検査からみえる病態—心電図検査編
今月の特集2 smartに実践する検体採取

60巻2号(2016年2月発行)

今月の特集1 深く知ろう! 血栓止血検査
今月の特集2 実践に役立つ呼吸機能検査の測定手技

60巻1号(2016年1月発行)

今月の特集1 社会に貢献する臨床検査
今月の特集2 グローバル化時代の耐性菌感染症

59巻13号(2015年12月発行)

今月の特集1 移植医療を支える臨床検査
今月の特集2 検査室が育てる研修医

59巻12号(2015年11月発行)

今月の特集1 ウイルス性肝炎をまとめて学ぶ
今月の特集2 腹部超音波を極める

59巻11号(2015年10月発行)

増刊号 ひとりでも困らない! 検査当直イエローページ

59巻10号(2015年10月発行)

今月の特集1 見逃してはならない寄生虫疾患
今月の特集2 MDS/MPNを知ろう

59巻9号(2015年9月発行)

今月の特集1 乳腺の臨床を支える超音波検査
今月の特集2 臨地実習で学生に何を与えることができるか

59巻8号(2015年8月発行)

今月の特集1 臨床検査の視点から科学する老化
今月の特集2 感染症サーベイランスの実際

59巻7号(2015年7月発行)

今月の特集1 検査と臨床のコラボで理解する腫瘍マーカー
今月の特集2 血液細胞形態判読の極意

59巻6号(2015年6月発行)

今月の特集1 日常検査としての心エコー
今月の特集2 健診・人間ドックと臨床検査

59巻5号(2015年5月発行)

今月の特集1 1滴で捉える病態
今月の特集2 乳癌病理診断の進歩

59巻4号(2015年4月発行)

今月の特集1 奥の深い高尿酸血症
今月の特集2 感染制御と連携—検査部門はどのようにかかわっていくべきか

59巻3号(2015年3月発行)

今月の特集1 検査システムの更新に備える
今月の特集2 夜勤で必要な輸血の知識

59巻2号(2015年2月発行)

今月の特集1 動脈硬化症の最先端
今月の特集2 血算値判読の極意

59巻1号(2015年1月発行)

今月の特集1 採血から分析前までのエッセンス
今月の特集2 新型インフルエンザへの対応—医療機関の新たな備え

58巻13号(2014年12月発行)

今月の特集1 検査でわかる!M蛋白血症と多発性骨髄腫
今月の特集2 とても怖い心臓病ACSの診断と治療

58巻12号(2014年11月発行)

今月の特集1 甲状腺疾患診断NOW
今月の特集2 ブラックボックス化からの脱却—臨床検査の可視化

58巻11号(2014年10月発行)

増刊号 微生物検査 イエローページ

58巻10号(2014年10月発行)

今月の特集1 血液培養検査を感染症診療に役立てる
今月の特集2 尿沈渣検査の新たな付加価値

58巻9号(2014年9月発行)

今月の特集1 関節リウマチ診療の変化に対応する
今月の特集2 てんかんと臨床検査のかかわり

58巻8号(2014年8月発行)

今月の特集1 個別化医療を担う―コンパニオン診断
今月の特集2 血栓症時代の検査

58巻7号(2014年7月発行)

今月の特集1 電解質,酸塩基平衡検査を苦手にしない
今月の特集2 夏に知っておきたい細菌性胃腸炎

58巻6号(2014年6月発行)

今月の特集1 液状化検体細胞診(LBC)にはどんなメリットがあるか
今月の特集2 生理機能検査からみえる糖尿病合併症

58巻5号(2014年5月発行)

今月の特集1 最新の輸血検査
今月の特集2 改めて,精度管理を考える

58巻4号(2014年4月発行)

今月の特集1 検査室間連携が高める臨床検査の付加価値
今月の特集2 話題の感染症2014

58巻3号(2014年3月発行)

今月の特集1 検査で切り込む溶血性貧血
今月の特集2 知っておくべき睡眠呼吸障害のあれこれ

58巻2号(2014年2月発行)

今月の特集1 JSCC勧告法は磐石か?―課題と展望
今月の特集2 Ⅰ型アレルギーを究める

58巻1号(2014年1月発行)

今月の特集1 診療ガイドラインに活用される臨床検査
今月の特集2 深在性真菌症を学ぶ

57巻13号(2013年12月発行)

今月の特集1 病理組織・細胞診検査の精度管理
今月の特集2 目でみる悪性リンパ腫の骨髄病変

57巻12号(2013年11月発行)

今月の特集1 前立腺癌マーカー
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査②

57巻11号(2013年10月発行)

特集 はじめよう,検査説明

57巻10号(2013年10月発行)

今月の特集1 神経領域の生理機能検査の現状と新たな展開
今月の特集2 Clostridium difficile感染症

57巻9号(2013年9月発行)

今月の特集1 肺癌診断update
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査①

57巻8号(2013年8月発行)

今月の特集1 特定健診項目の標準化と今後の展開
今月の特集2 輸血関連副作用

57巻7号(2013年7月発行)

今月の特集1 遺伝子関連検査の標準化に向けて
今月の特集2 感染症と発癌

57巻6号(2013年6月発行)

今月の特集1 尿バイオマーカー
今月の特集2 連続モニタリング検査

57巻5号(2013年5月発行)

今月の特集1 実践EBLM―検査値を活かす
今月の特集2 ADAMTS13と臨床検査

57巻4号(2013年4月発行)

今月の特集1 次世代の微生物検査
今月の特集2 非アルコール性脂肪性肝疾患

57巻3号(2013年3月発行)

今月の特集1 分子病理診断の進歩
今月の特集2 血管炎症候群

57巻2号(2013年2月発行)

今月の主題1 血管超音波検査
今月の主題2 血液形態検査の標準化

57巻1号(2013年1月発行)

今月の主題1 臨床検査の展望
今月の主題2 ウイルス性胃腸炎

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