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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査20巻12号

1976年11月発行

雑誌目次

カラーグラフ

—細菌の塗抹・培養 Ⅳ—上気道感染原因菌

小寺 健一

pp.1338-1339

 上気道感染症は乳児より高年齢者に至るまで,広い年齢層に発生し,冬期に多発して致命的となることがある.

 近年,ワクチン接種事故による接種率の低下や中止によるためか,Bordetella pertussisによる百日咳の症例が増加してきている.

技術解説

ベンスジョンズタンパクの検出・同定法

河合 忠 , 山岸 安子

pp.1341-1350

 ベンスジョンズタンパクの特有な熱凝固性を初めて確認したのはイギリスのDr.Watsonであって,1845年11月1日,土曜日の日付で彼は,当時既に有名なDr.H.Bence Jonesあてに質問の手紙を送っている.それについてDr.BenceJonesが医学雑誌に記載していることからBen-ce Jonesタンパクと呼ばれるようになった.欧米誌でも広くBence-Jones proteinと誤って書かれているが,前述のように,1人の名前を引用したのであるからBenceとJonesの間にハイフンを入れるのは間違いである.

 ベンスジョンズタンパク(以下BJPと略す)は56℃に加温すると白濁沈殿を生じ,100℃以上に加温すると再溶解する特有な熱凝固性を示すタンパクと定義された.しかしタンパク質化学の進歩によって,現在では,"単一クローン性の遊離L鎖"をBJPと呼んでいる.

細菌性毒素と抗毒素の検出法・2—下痢原性毒素

三輪谷 俊夫 , 本田 武司

pp.1351-1358

下痢原性毒素(diarrhogenic toxin)とは

 細菌毒素の研究の中で,最近特に進歩の著しいものに下痢原性毒素があげられる.その理由は,コレラ毒素(コレラーゲンcholeragenまたはコレラ・エンテロトキシンcholera-enterotoxinと呼ばれる)の高純度精製と作用機序の解明が進んだことと,その生物活性の測定法が確立されたためである.

 腸管粘膜上皮細胞に直接作用して下痢を引き起こす下痢原性毒素は,いろいろな菌種によって産生されるが,共通していることは腸管結紮ループ法および皮内反応がいずれも陽性を示すことである.Keuschら(1975)は下痢原性毒素を更に次の2群に大別している.

抗てんかん薬の分析

宮本 侃治 , 池田 佳子

pp.1359-1365

 抗てんかん薬の血中濃度測定の必要性が,我が国においても,この2,3年精神,神経,小児,脳外科などの各領域で全国的な規模で認められてきた.我々の研究室では数年来この問題を手掛け,市販されているほとんど全部の抗てんかん薬の測定を可能とし,既に2,000件にも及ぶ日本人の症例について測定を行い報告している.その経験に基づき,抗てんかん薬測定が近い将来ルーチンの臨床検査として取り上げられることが考えられるので,今回その測定方法についての技術的解説を試みる.なお,抗てんかん薬測定についての国際集会の記録1,2)もあり,著者の一人がこの問題について総説3〜5)を行っている.

総説

リポタンパクの代謝

古賀 俊逸

pp.1366-1372

 コレステロール,トリグリセリド,リン脂質などの血漿脂質はリポタンパクを形成して血漿中に溶存している.その結果,これらの脂質は吸収された場所(腸管,外因性脂質)や合成された場所(肝臓や腸管など,内因性脂質)から,貯蔵または分解される場所への輸送が可能になる.

 リポタンパクの構造,機能,代謝に関する研究は近年急速に進展し,多くの成果が得られた.リポタンパクは動脈硬化症の病因と密接な関連をもっており,更に各種の脂質代謝異常を理解するうえにもリポタンパクに対する知識が不可欠となってきた.高脂血症はFredrickson以来,そのリポタンパク像より臨床的に分類され,脂質代謝異常へのアプローチに新局面を開いた.本稿においてはリポタンパクの代謝に関する知見をなるべく平易にまとめてみたいと思う.

臨床検査の問題点・84

デンシトメトリー

島尾 和男 , 山岸 安子

pp.1374-1380

 タンパク分画測定法には分画抽出法とデンシトメトリー法があるが,現在では後者が多くの検査室で使われている.自記式デンシトメーターの性能,泳動図の適不適,正しい使い方,検定用フィルムによる管理など,日常検査レベルで検討する(カットは正常血清のデンシトメトリー).

異常値・異常反応の出た時・47

リポタンパク

菅野 剛史

pp.1381-1385

 リポタンパクの異常には,家族性に観察されるいわゆる家族性高脂血症と,原疾患を別にする続発性のリポタンパク異常,更には正常人に認められない異常リポタンパクの出現する疾患群と,いくつかに分けて考える必要がある.しかし,いずれにしてもその異常および異常リポタンパクの検出は分析法との関連で論ずる必要があることは事実である.分析法の中には,抗βリポタンパクなどを用いた免疫学的な方法による分析1),または硫酸多糖類を用いた分析2),超遠心を用いた分析3)などが認められるが,ここでは単に単独のリポタンパク分子種のみを観察するのではなく,すべてのリポタンパク分子について観察が可能である泳動分析による異常パターン,異常値について考えてみることにする.

 一方リポタンパクの分析においてその値を評価する場合には,必ず血清脂質の分析値は当然参考にされねばならぬものであり,その間でのデータの矛盾を考えることは,脂質検査のデータ管理という観点で最も重要なことである.

私のくふう

免疫電気泳動標本の簡易な写真撮影法

中西 十束

pp.1385

 カンテンを用いた免疫電気泳動において出現した沈降線を写真に撮り記録として残す場合に,一般には観察箱と写真機を用いて撮影を行っているが,まとめて行う場合は良いが少数の場合は面倒なので,これを簡単に写真に記録する方法として次のように行っているが,割合にきれいなものを得ていますので紹介いたします.

 まずバット(または適当な容器)に水を入れ,でき上がったカンテン標本(沈降線が十分に現れたとき)を水中に沈める.水の量は標本が十分につかる程度であれば適当でよい.そして,標本の下に写真用印画紙(2号または3号)を沈めて敷く.これに適当な光源ランプにて1〜2秒間(実験にて定める)焼き付けを行う.

蒸留水の満タン警報装置

松崎 正明

pp.1415

 脱イオン水20lで満タンを知らせる警報装置を試作し,1年以上使用して好結果を得たので紹介します.

 材料はヘルスメークーと玄関先に付けるチャイムです.まずヘルスメーターの上蓋を開けて適当なところにコンセントを設けます.次いで,銅線で絶縁に注意しながら目盛板の20kg付近に接点を作り,これと接触して,チャイムの回路が通じるようにポイントを作ります.あとリード線でコンセントに導き,一方チャイムは先端に差し込みをつけてヘルスメーターに接続します.

新しい肺機能検査法・Ⅴ

ダイナミックコンプライアンス呼吸数依存性の測定

石川 皓 , 金原 章郎 , 前原 和平 , 井上 敏久

pp.1386-1391

 細気管支領域は慢性閉塞性肺疾患の初期病変の場となること1),更に本領域病変の検出法として従来よりの肺機能検査が必ずしも満足しえないことが明らかにされ2〜3),肺疾患の"silent zone"として注目を集めている.ダイナミックコンプライアンス(dynamic compliance;Cdyn(l))周波数依存性の測定は本領域病変の検出法としてクロージングボリューム,フローボリューム曲線などとともに検討されてきている.本検査法は極めて鋭敏な方法であって,厳密に施行することにより他の検査法の検定手段としても応用できるものである.

中検へ一言・中検から一言

注意深い観察眼,他

鳥飼 勝隆

pp.1392-1393

 私たちの病院で,発熱で入院してきた患者の髄液から肺炎球菌が検出されたことがある.その検査成績が分かったとき,担当検査員がすぐに検査成績をもって,自分で病棟まで届けにきてくれたことがある.別に自分で病棟まで来なくとも,検査成績をいつものルートで送ったり,あるいは電話ですますこともできたかもしれない.しかし,彼女はこの成績は重要で,抗生剤の投与がすぐにでも必要になるかもしれないと思い,主治医に確実に手渡したかったし,その患者がどんな状態かも知りたかったとのことであった.自分の出した検査成績がどんな意味をもっているかをよく認識し,その仕事ぶりは単なる成績の製造業に終わっていないことに大変感心させられた.一方,検査室で次から次へと依頼されてくる同じような検査材料を毎日検査していくことは,ある意味では変わりばえのない単調な仕事であるかもしれない.実際,そのような悩みを聞かされることが時折ある.しかし,これらの検査材料には,それぞれ検査をする理由があって送られてくることも事実である.このことを考えると,単調になりがちであっても,検査室の仕事は単中検から一言なる成績の製造業で終わってはならないことも確かである.この問題点にどう対処するかである.もし,個々の検査材料の送られてくる理由がもう少し検査員にも分かると,仕事の単調さがかなり解消されるであろうか.

座談会

日本臨床病理同学院

緒方 富雄 , 小酒井 望 , 河合 忠 , 内海 邦輔 , 松村 義寛

pp.1394-1402

 日本臨床病理同学院(College of Clinical Pathology of Japan;CCPJ)が発足してほぼ1年になる.そこで,この新しい学術団体の性格,事業内容,また臨床病理学会との関係,特に技師の資格認定試験の主催者や既得の免状について,同学院の役員の方々から,松村氏(本誌編集顧問)にお聞きいただく.

見学実習記

米国における白血球自動分類装置

寺田 秀夫

pp.1403-1406

 日常のルーチン血液検査の中で,血液像の自動分類機の出現は,毎日何百枚かの血液像の観察に追われる中検血液検査の能率に,画期的進歩をもたらすものである.

 私は昨年夏渡米して直接ヘマトラック(Hematrak)とラーク(Larc)を実習見学する機会を得たので,その印象をまとめてみた.

研究

Immune Adherence Hemagglutination Test用ヒトO型赤血球の凍結保存に関する研究

下水流 保範 , 岸 恵実子 , 吉田 喬 , 滝本 義一 , 守本 富昭

pp.1407-1410

はじめに

 Immunne Adherence Hemagglutination (IAHA)反応1)は極めて高感度に抗原および抗体を検出する方法として知られ,HBsAg2)やHBcAg3)更にHAAg4)およびその抗体の検出などに広く応用されている.しかし本反応には生のヒトO型赤血球を必要とし,反応性のよい赤血球が容易に入手できないこと,反応性に個体差があるため,結果の再現性に影響を受けることがある.我々は,これらの点を改善するため,IAHA用ヒト0型赤血球の長期保存法を取り上げ,凍結,保存,解凍の各段階について詳細な検討を行うとともに,凍結赤血球のIA活性についても種々検討した.

編集者への手紙

自動分析装置の故障とその対応策—ベックマンDSA 560を例として

三井 悦三

pp.1411-1412

Letter to Editor

 自動分析装置が臨床検査室に導入されるようになって大変便利になりましたが,いったん故障が起これば大変苦労させられます.機械の故障といっても機種によりまちまちですが,検査技師でも十分に直せる故障も少なくないと思われます.そこで自動分析装置ベックマンDSA 560(1973年10月購入,ディスクリート方式,2チャンネル)を使用していて,その故障に対してどのように対応しているのかを報告いたします.

新しいキットの紹介

Latex凝集法による無および低ハプトグロビン血症のスクリーニング法

大谷 英樹 , 川尻 由子 , 湯田 美江子

pp.1413-1415

緒言

 α2グロブリンに属する血清ハプトグロビン(Hapto-globin;Hp)は,遺伝によって決定される主な三つの型に区別される.すなわち,1-1型,2-1型および2-2型である.一方,臨床的にHp値は各種病態において特徴ある変動を示すので,疾患の診断ならびに予後の判定に有用である.しかしHpの測定が余り普及していないのは,Hpの正常値が型別に異なるのでHp値を臨床的に正しく評価するためには型別に比較する必要があり,したがって型判定に手間がかかるためと考えられる1)

 今回著者らは,Behringwerke社製のLatex凝集反応に基づく方法により,Hpの著減ないし欠如する血清をスクリーニングする簡易法について検討する機会を得たので,その知見について報告する.

新しい機器の紹介

酵素電極法による血糖の迅速定量—Glucose Analyzerの使用経験

中根 清司 , 村井 誓子 , 高阪 彰

pp.1416-1419

緒言

 血糖定量法は,糖の還元反応を利用したHoffman法1),酸化的縮合反応であるOTB法2)など数多くの方法が紹介され,両者とも日常検査の中に広く利用されている.しかし,還元反応を利用した方法はシアン発生の可能性ある化合物がよく使われる.また,酸化的縮合法は強酸などが使われる.これらの方法では廃液処理をしなければならない.

 最近,公害性試薬を使用しない血糖測定法としてGl-ucose oxidase3-5)法が検討され利用されるようになった.更に,酵素(Glucose oxidase)を膜やチューブに固着させ(固定化酵素)6-10),この膜またはチューブに試料(血清)を接触させ生成した物質を測定して血糖値を求める方法が開発された.

質疑応答

EDTA塩とCRP試験

O生 , 松田 重三

pp.1420

 問 毛細管法によるCRP試験に使う抗血清にEDTA塩が添加されているとのことですか,なぜですか.

検査と主要疾患・47

原発性心筋疾患

加納 達二 , 岡田 了三

pp.1422-1423

1.定義・分類

 原因が不明で心筋が一次的に侵される一群の心疾患で,その定義,名称,分類は数多く報告されている."原発性心筋疾患(PMD)"の名称は狭義と広義の解釈に相違があり,最近は世界保健機構(WHO)の決定に従いIdiopathic cardiomyo-pathy ("特発性心筋症")の名称が広く用いられているが,もちろん疾患単位をなすものでなく,"心筋疾患"と総称名を用いる考え方もある.高血圧,先天性心疾患,弁膜症,冠状動脈硬化症,心筋炎をはじめ内分泌,代謝性疾患,膠原病など全身性疾患の一部としての二次性心疾患も除外して診断可能となるため,その診断は必ずしもクリアカットではない.臨床的にはGoodwinらによる分類があり,ウッ血型と肥厚型に大別され,後者は更に閉塞性と非閉塞性に分けられる(図1)1)

検査機器のメカニズム・59

デンシトメーター

島尾 和男

pp.1424-1425

 デンシトメーターは,言葉のうえでは"吸光度(optical density)を測定する装置"ということであるが,膜状の試料のいろいろな場所の吸光度を測定する装置の総称である.被測定物の種類や測定の目的によりいろいろなものが作られているが,ここでは,主として血清タンパク分画の電気泳動図の吸光度を測定して分画百分率を求めることを目的として作られたデンシトメーターについて述べる.

検査室の用語事典

臨床検査のRI用語

山県 登 , 松村 義寛

pp.1427

41)ヒューマン・カウンター(human counter)

Whole-body counterともいう.厚いしゃへい(→21)を施した室内で人体内からの放射線を計測し,体内にある微量の放射性物質を検出,定量,あるいは分布を測定する装置で,主としてr線を用いNaI(Tl)またはプラスチックシンチレーターが使われる.小型のものが実験動物に用いられアニマル・カウンターと呼ばれる.

臨床検査のコンピューター用語

鈴木 孝治 , 春日 誠次

pp.1428

114) Pqper Tqpe Reader:紙テープ読取機

 コンピューターの指令のもとに,紙テープにせん孔された情報を読み取る装置のことをいう.タイプライターに付属して,10ch/秒程度の速度で読み取るものと,この10倍以上の高速の紙テープ読取機とがある.

臨床化学分析談話会より・39<関東支部>

化学検査の有用性とその限界—閉塞性黄疸の診断をめぐって

仁科 甫啓

pp.1429

 第194回分析談話会関東支部例会(1976.7.20)は東大薬学部の記念講堂にて開催された.今回は診断へのアプローチ・シリーズ(3)として,閉塞性黄疸を取り上げ,①分析の立場から;obstructive enzymeのhete-rogeneityについてと題して慶応大中検の等々力徹先生,②臨床の立場から;肝機能検査からどのようなことが読み取れるかと題して,東海大内科,岩村健一先生が話題提供された.

 初めの等々力先生の話題は基礎的な分析技術の内容のものかと思っていたところ,そうではなく,新しい発想とユニークな実験方法で行った研究的内容のものであった.

Senior Course 生化学

—臨床化学検査における酵素化学—酵素による定性・定量分析 ⅩⅠ

山下 辰久

pp.1430-1431

固定化酵素・1

 これまで物質の定量にその特異性の高さから酵素を用いる測定法が優れていることを述べ,これら酵素測定法を用いる場合に遭遇するいろいろの問題点の処理の仕方について具体例を示しながら解説してきたが,現在用いられている測定法ではすべて酵素は水に溶解させて用い,これを水溶液中で一定時間基質と反応させた後,酵素を失活除去させる方法がとられているが,このように遊離の状態の酵素を用いた場合には,(1)酵素はその都度使い捨てとなるため,特に高価な酵素の場合には非経済的である,(2)水に溶解された酵素は一般に不安定で失活しやすく,その扱い方や保存法について注意しなければならない,など──本誌20(1)108参照──の欠点があるため,その特異性の高さにもかかわらず,現在酵素測定法が臨床化学分析に余り用いられていない原因の一つになっている.

Senior Course 血液

溶血性貧血について

黒川 一郎

pp.1432-1433

 赤血球膜は60〜80Åの厚さをもち,赤血球内の脂質(主にリン脂質コレステロール)が集中している.膜のモデルとしてDanielliの二重層膜があげられるが,最近混合型モデルといわれる,脂質層とタンパク層が場所によって密にあるいは緩やかに結合しているものが提示されている.膜タンパク質としてエリニン,ストロマチン(ムコタンパク)などがあり,形態の保持,血液型,ウイルス受容,各種の免疫現象などに関連があるとされる.膜にはまたNa, K依存性ATP ase,コリンエステラーゼ,アテニレートキナーゼなどがある.

Senior Course 血清

交差適合試験,梅毒の血清学—血清検査の基礎

浅川 英男

pp.1434-1435

交差適合試験

 交差適合試験は輸血のための検査には欠くことができない.通常ABO式,Rh式血液型以外の不規則性抗体は本方法による以外に容易に見出す方法はない.ABO式,Rh式血液型による輸血の適合性の確認とともに交差適合試験が重要であることが理解できる.

 交差適合試験は受血者血清中に供血者血球に対する抗体の有無(オモテ試験),供血者血清中に受血者血球に対する抗体の有無(ウラ試験)を試すことである.1人の受血者に複数の供血者の血液を輸血するときには供血者間の血液についての交差適合試験が必要となってくる.したがって交差適合試験のプランをたてることが大切である.例えば,健康人の血清中には5℃で反応する非特異的凝集素があるので,交差適合試験を5℃というような低温度で行ってはいけない.抗体の試験管内でのいろいろの反応態度をよく知っておくことが交差適合試験を計画するうえで重要で,抗A,抗B,抗M,抗Pは食塩水中で通常凝集する.しかし,Rh式抗体の大部分は食塩水以外のメディウムを用いない限り凝集せず,Kell Duffy,Kiddなどの抗体はメディウムを工夫してもだめで,抗グロブリン試験を用いなければならない.また,抗体によって補体を血球に結合させる能力により検出されるものもある.

Senior Course 細菌

腸内細菌の分類 Ⅷ

坂崎 利一 , 田村 和満

pp.1436-1437

Enterobacter属

 EnterobacterはHorrnaecheとEdwards(1960)により,Aerobacter cloacaeあるいはCloaca cloacaeとして知られてきた菌に対して提案された属名である.Bejjerinck(1900)が提案したAerobacterが多くの混乱と誤解を招いたことは既述のとおりで,HormaecheとEdwardsも,運動性のAerobacterをEnterobacterに変えることによって,この混乱が除かれると考えたのである.Cloacaもまた同意語であるが,その代表菌のCloaca cloacaeは種の形容詞と属の名称が同一であり,このような命名は命名規約25条に違反するため,彼らは"Cloaca"の名を廃棄名とすることを裁定委員会に提訴し,承認された,しかし,この時点ではまだ"Aerobacter"は生きており,それ以後もKlebsiellaとの問に混乱があったことは周知のとおりである.いまや,Aerobacterも廃棄名となり,またCloacaもまた廃棄名で,Enterobacterは何ら混乱のない合法的な属名である.

Senior Course 病理

—病理検査の技術と知識—脱灰

武石 詢

pp.1438-1439

メス研摩(続き)

 メス研摩の目的は刃尖を鋭くすることである.メスの鋭さの確認に最も確実な方法は,走査電顕で10,000倍くらいに拡大して尖端を見ることである.これによると一般に尖端は不正台形を呈し,これを形成する曲率半径(以下アール)が0.5μm以上だと"切れない"という感じになる."よく切れる"という感じを与えるにはアールは0.2μm以下でなければならない.すなわちアールが0.5μmか0.2μmでは大変な差があるといえる.

 ところが,実際にこのような確認を毎回行うことは不可能であるから,砥ぎ上がりの判定は経験に頼らざるを得ない.

Senior Course 生理

—電気生理検査に必要な電気の基礎知識—刺激装置を用いた検査の実際

石山 陽事

pp.1440-1441

 前回はパルス回路として非安定,単安定,双安定の各マルチバイブレーターの動作原理について説明したが,これらの回路は電気生理検査機器においては,陰の力ともいうべき働ぎをしている.特にブラウン管やデータ処理用計算機の時間軸掃引,あるいは電気刺激装置,光刺激装置などの動作に引き金(トリガー)となるトリガーパルスは欠くことのできないものである.

 今回はこういったパルス回路の働きを中心に,実際的な電気生理検査法を例にとって説明する.

Senior Course 共通

成績・検体の整理と報告の要領

斎藤 正行

pp.1442-1443

 現在私の所でやっている成績や検体の整理と報告の要領などを,"あって欲しい姿"も混じえて述べてみたいと思う.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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今月の特集2 感染症診断に使われるバイオマーカー—その臨床的意義とは?

60巻3号(2016年3月発行)

今月の特集1 日常検査からみえる病態—心電図検査編
今月の特集2 smartに実践する検体採取

60巻2号(2016年2月発行)

今月の特集1 深く知ろう! 血栓止血検査
今月の特集2 実践に役立つ呼吸機能検査の測定手技

60巻1号(2016年1月発行)

今月の特集1 社会に貢献する臨床検査
今月の特集2 グローバル化時代の耐性菌感染症

59巻13号(2015年12月発行)

今月の特集1 移植医療を支える臨床検査
今月の特集2 検査室が育てる研修医

59巻12号(2015年11月発行)

今月の特集1 ウイルス性肝炎をまとめて学ぶ
今月の特集2 腹部超音波を極める

59巻11号(2015年10月発行)

増刊号 ひとりでも困らない! 検査当直イエローページ

59巻10号(2015年10月発行)

今月の特集1 見逃してはならない寄生虫疾患
今月の特集2 MDS/MPNを知ろう

59巻9号(2015年9月発行)

今月の特集1 乳腺の臨床を支える超音波検査
今月の特集2 臨地実習で学生に何を与えることができるか

59巻8号(2015年8月発行)

今月の特集1 臨床検査の視点から科学する老化
今月の特集2 感染症サーベイランスの実際

59巻7号(2015年7月発行)

今月の特集1 検査と臨床のコラボで理解する腫瘍マーカー
今月の特集2 血液細胞形態判読の極意

59巻6号(2015年6月発行)

今月の特集1 日常検査としての心エコー
今月の特集2 健診・人間ドックと臨床検査

59巻5号(2015年5月発行)

今月の特集1 1滴で捉える病態
今月の特集2 乳癌病理診断の進歩

59巻4号(2015年4月発行)

今月の特集1 奥の深い高尿酸血症
今月の特集2 感染制御と連携—検査部門はどのようにかかわっていくべきか

59巻3号(2015年3月発行)

今月の特集1 検査システムの更新に備える
今月の特集2 夜勤で必要な輸血の知識

59巻2号(2015年2月発行)

今月の特集1 動脈硬化症の最先端
今月の特集2 血算値判読の極意

59巻1号(2015年1月発行)

今月の特集1 採血から分析前までのエッセンス
今月の特集2 新型インフルエンザへの対応—医療機関の新たな備え

58巻13号(2014年12月発行)

今月の特集1 検査でわかる!M蛋白血症と多発性骨髄腫
今月の特集2 とても怖い心臓病ACSの診断と治療

58巻12号(2014年11月発行)

今月の特集1 甲状腺疾患診断NOW
今月の特集2 ブラックボックス化からの脱却—臨床検査の可視化

58巻11号(2014年10月発行)

増刊号 微生物検査 イエローページ

58巻10号(2014年10月発行)

今月の特集1 血液培養検査を感染症診療に役立てる
今月の特集2 尿沈渣検査の新たな付加価値

58巻9号(2014年9月発行)

今月の特集1 関節リウマチ診療の変化に対応する
今月の特集2 てんかんと臨床検査のかかわり

58巻8号(2014年8月発行)

今月の特集1 個別化医療を担う―コンパニオン診断
今月の特集2 血栓症時代の検査

58巻7号(2014年7月発行)

今月の特集1 電解質,酸塩基平衡検査を苦手にしない
今月の特集2 夏に知っておきたい細菌性胃腸炎

58巻6号(2014年6月発行)

今月の特集1 液状化検体細胞診(LBC)にはどんなメリットがあるか
今月の特集2 生理機能検査からみえる糖尿病合併症

58巻5号(2014年5月発行)

今月の特集1 最新の輸血検査
今月の特集2 改めて,精度管理を考える

58巻4号(2014年4月発行)

今月の特集1 検査室間連携が高める臨床検査の付加価値
今月の特集2 話題の感染症2014

58巻3号(2014年3月発行)

今月の特集1 検査で切り込む溶血性貧血
今月の特集2 知っておくべき睡眠呼吸障害のあれこれ

58巻2号(2014年2月発行)

今月の特集1 JSCC勧告法は磐石か?―課題と展望
今月の特集2 Ⅰ型アレルギーを究める

58巻1号(2014年1月発行)

今月の特集1 診療ガイドラインに活用される臨床検査
今月の特集2 深在性真菌症を学ぶ

57巻13号(2013年12月発行)

今月の特集1 病理組織・細胞診検査の精度管理
今月の特集2 目でみる悪性リンパ腫の骨髄病変

57巻12号(2013年11月発行)

今月の特集1 前立腺癌マーカー
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査②

57巻11号(2013年10月発行)

特集 はじめよう,検査説明

57巻10号(2013年10月発行)

今月の特集1 神経領域の生理機能検査の現状と新たな展開
今月の特集2 Clostridium difficile感染症

57巻9号(2013年9月発行)

今月の特集1 肺癌診断update
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査①

57巻8号(2013年8月発行)

今月の特集1 特定健診項目の標準化と今後の展開
今月の特集2 輸血関連副作用

57巻7号(2013年7月発行)

今月の特集1 遺伝子関連検査の標準化に向けて
今月の特集2 感染症と発癌

57巻6号(2013年6月発行)

今月の特集1 尿バイオマーカー
今月の特集2 連続モニタリング検査

57巻5号(2013年5月発行)

今月の特集1 実践EBLM―検査値を活かす
今月の特集2 ADAMTS13と臨床検査

57巻4号(2013年4月発行)

今月の特集1 次世代の微生物検査
今月の特集2 非アルコール性脂肪性肝疾患

57巻3号(2013年3月発行)

今月の特集1 分子病理診断の進歩
今月の特集2 血管炎症候群

57巻2号(2013年2月発行)

今月の主題1 血管超音波検査
今月の主題2 血液形態検査の標準化

57巻1号(2013年1月発行)

今月の主題1 臨床検査の展望
今月の主題2 ウイルス性胃腸炎

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