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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査20巻13号

1976年12月発行

雑誌目次

カラーグラフ

下垂体前葉内分泌細胞の鑑別染色—特に好銀性染色法および鉛・ヘマトキシリン法の適用

鬼頭 花枝

pp.1448-1449

 下垂体前葉を構成する内分泌細胞は,諸色素による染色性から,およそ3種類に区別される.すなわち好酸性のα細胞,好塩基性(あるものはPAS陽性)のβおよびò細胞と,色素嫌性細胞である.α細胞からは成長ホルモン(STH),乳汁分泌ホルモン(LTH)を,β細胞は甲状腺刺激ホルモン(TSH),副腎刺激ホルモン(A-CTH),ò細胞は性腺刺激ホルモン(FSH, LH)を産生分泌すると考えられている.今回,私は下垂体前葉細胞の同定に従来から行われてきたAzan-Mallory, Aldehyde-Fuchsin, Aldehyde-Thionin-Orange G-PASなどの特殊染色法に,最近開発されたGrimelius (1968)の好銀性染色(Medical Technology,3(2),カラーアトラス,1975参照),Solciaら(1969)のLead-Hematoxylin染色(同誌参照)を併用した結果,従来ò細胞とみなされた細胞と少数の色素嫌性細胞(色素嫌性腺腫を含む)に好銀性顆粒を証明し,またα細胞がLead-Hematoxylin染色(膵島ではD細胞が強陽性)により鮮明に染色されることを見出した.ここでは構成内分泌細胞の同定を確実にするため,可能なかぎり同一切片を用いて観察するようにした.

技術解説

HBs抗原の検出測定とそのサブタイピング—R-PHA法とHI法

馬場 清 , 津田 文男 , 福田 全子 , 山主 公子 , 大谷 純子 , 石川 周子 , 稲葉 久江 , 岩切 重憲 , 老沼 明 , 山口 正衛 , 矢那瀬 裕子 , 山下 忍 , 伊藤 行夫 , 久松 幸恵 , 矢崎 和盛 , 高橋 和明 , 今井 光信 , 赤羽 賢浩 , 千代田 晨 , 吉沢 浩司 , 真弓 忠

pp.1451-1458

 B型肝炎ウイルスは肝細胞に感染し,急性感染状態では一過性に,慢性感染状態では持続的に,血中にHepatitis B抗原タンパク(HB抗原)を放出している.HB抗原にはsurface抗原,core抗原,e抗原の3種類が現在区別されており,それぞれHBs抗原,HBc抗原,e抗原と略記される.HB抗原のうち,surface抗原(HBs抗原)は,感染肝細胞より血中に多量に放出されている.またサブタイプと呼ばれる抗原性の違いが,感染B型肝炎ウイルスの種類によってHBs抗原にはみられる.我々は,この血中HBs抗原を検出測定およびサブタイプすることにより,B型肝炎ウイルスの感染状態とその種類とを知るのである.我々の研究室で日常行っているHBs抗原の検出測定およびサブタイピングの方法を以下図を混じえて説明する.

カテコールアミン測定法

今井 一洋

pp.1459-1463

 種々の方法論の発展によるのであろうか,ここ数年におけるカテコールアミン測定法の進歩には著しいものがある.振り返ってみると,螢光分析に始まり,ガスクロマトグラフィー,二重アイソトープ標識化法,マスフラグメントグラフィー,液体クロマトグラフィー,ラジオイムノアッセイなど,数多くの方法が発表されてきた.

 これらのうちマスフラグメントグラフィー1〜4)は感度も選択性も高いが装置が高価であり,二重アイソトープ標識化法5,6)は煩雑な処理操作を必要とする.また,ラジオイムノアッセイ7)は現在研究の緒についたばかりで,実用に供されるには間があろう.したがって,現時点で,簡便で比較的安価で,臨床検査室で用いられるのは,ガスクロマトグラフィー8〜10)および液体クロマトグラフイー11〜13)による方法ではないかと考えられる.

極く微小な電位の体表からの記録

江部 充

pp.1464-1468

 1961年米国のMITで開発された電圧加算コンピューター,CAT (Computer of AveragingTransient)は雑音の中から小さな信号を取り出すための装置として優れた機能を発揮し,我が国でも早速同様の製品が開発され,生理学の分野での研究に広く利用されるとともに,その成果が臨床検査にも応用され,今日では検査室でも日常使用されるに至った.

 この装置1)の原理と操作の説明は省略するとして,現在我々が検査室でよく使用する検査としては,光や音の刺激,皮膚の知覚刺激によって反応する大脳皮質での誘発電位の頭皮上での記録,四肢の知覚神経興奮伝導速度の測定の指標となる活動電位の皮膚上での記録,網膜電位図(ERG)の皮膚上からの記録などがあげられる.これらの記録された反応電位は雑音としての背景電位の変動に比して振幅が小さく,10μV前後の電位変動である.なんといっても,このような小さな生体の電位を,患者を傷けることなく,すなわち無侵襲の状態で記録ができるということに最大のメリットが見出される.

総説

サイクリックAMP

岡 博

pp.1469-1475

 サイクリックAMP (cAMP)は,Sutherlandによっでグルカゴンやエピネフリンのグリコーゲン分解作用を仲介する物質としで1958年に発見された.次いで数多くのホルモンが,それぞれの標的細胞のcAMPを増加させること,またcAMPによってそれらのホルモン作用が再現できることが1960年代の半ばごろまでに明らかにされるに及び,単に一部のホルモン作用に関連するのみではなく,生体の多くのホルモン性代謝調節に重要な役割をもつ物質として注目を集めるようになった.更に60年代後半から70年代にかけて,その簡易な測定法が開発されたこともあっで,cAMPに関する研究は質的にも,量的にも大きな発展を遂げ,現在では,cAMPはホルモン作用のみでなく,もっと広く,生体の多くの機能に密接な関係をもつことが明らかにされている,もっとも,これらすべでの現象において,cAMPが何らかの役割を演じていることは確実としても,その意義や作用機構がすべで解明されたわけではなくて,cAMPの関与が明らかになるとともに,むしろそれに伴って他の因子,例えばCa2+などの重要性もあらためて強調されているというのが現状である.cAMPに関しては既に多くの単行本や特集があるので1〜6)詳細な点はそれらを参考にしていただきたい.

 ここでは,cAMPの作用についで概説するとともに,その測定法,および臨床検査の分野における意義を中心に述べる.

臨床検査の問題点・85

血中アンモニア測定

石井 暢 , 小出 朝男 , 小林 一二美

pp.1476-1483

酵素法,ごく最近のアンモニァ電極法の登場により,血中アンモニア測定もかなり安定した成績が得られるようになったが,極微量の成分(正常域28〜70μg/dl)を測定するという点で,臨床検査の難題の一つであることには変わりがない.検体採取から測定までの取り扱いが成績を大きく左右することになるが…….(カットはエスカラブ分光光度計)

異常値・異常反応の出た時・48

ウイルスの血清抗体価

藤井 良知 , 中村 健

pp.1484-1488

 ウイルス感染症に際して血清抗体価の測定が要求されることが多いが,それは診断の目的であって,ウイルス感染に対して特殊治療法のほとんどない現状においては,それが治療に直接に結びつくことは少なかった.

 診断の目的には急性期・回復期のペア血清をそろえて同時に同じ条件で抗体価の測定を行い,その回復期における有意上昇を証明することが必要である.回復期の単一血清に高い抗体価を証明しても近い過去にその感染を経過したことを想像はさせるが,しかし診断上確定的のものとはならない.

新しい肺機能検査法・Ⅵ

残気量の測定

大久保 隆男 , 長島 純夫

pp.1489-1495

 全肺気量,機能的残気量などの肺の容積の測定は,最大呼出後も肺内に一部の空気(残気量)が残るために,スパイロメトリーでは測定できない.これらの肺内気量の測定1〜3)は,古く1800年初頭より種々の方法が開発され,現在ではいくつかある検査法の一つが,それぞれの臨床呼吸機能検査室でルーチン化されて取り入れられている.

 残気量,機能的残気量,全肺気量などの本検査から得られる一連の肺気量分画の値は,換気力学,拡散,クロージングボリュームなど,すべての肺機能検査の成績を評価する際の基礎となるものである.本稿では,肺気量の生理学的な意味,測定法,肺機能検査評価への応用などについて述べる.

中検へ一言・中検から一言

ぜひ検査部の当直制を!,他

滝野 辰郎

pp.1496-1497

 私はここで大学病院における内科医として中央検査部に望む点をあげてみたい.その第一は緊急検査,特に時間外緊急検査の実施である.過去には臨床検査はすべて臨床医の手で行われ,不十分ながら緊急事態に対処し,医師自らが解決していた.しかし検査項目が増加,繁雑化するとともに臨床検査の中央化が進められ,より正確な成績を得ることができ,同時に確実な質的量的診断の下に的確な治療が施せるようになった.しかし,これら臨床検査は通常,検査部独自のスケジュールに従って消化されており,疾病の急変あるいは突発的事態の発生に要求される緊急検査は24時間受け付けの体制にはなっていない所が多い.このような場合,臨床医はやむを得ず不正確な簡易測定法あるいは一部の検査のみ行うことによって対処しているのが現状で,これとてベッドサイドにほとんど拘束されている医師一人には不可能で,同僚医師の肩代わりの下に行いうるものである.医療従事者は診療各科をはじめ放射線科技師,看護部などは当直または交替制によって24時間体制になっているが,検査技師には女性が多いという理由からか当直制を敷いていない施設が多く,特に大学病院にこの傾向が強いようである.

座談会

多種目同時測定のデータ解析

牧野 秀夫 , 春日 誠次 , 只野 寿太郎 , 溝口 香代子 , 日比谷 淑子 , 河合 忠

pp.1498-1507

 血液化学検査をはじめとする検査件数の増加と自動化健診の普及により,多種目同時測定はその需要を高めると同時に新しい病態解明のアプローチとして汎用されている.多種目同時測定の特殊性,それに伴う問題点,更にはデータの読み方を現場の技師をまじえて話し合う.

質疑応答

試験紙法と照明

K生 , 斎藤 正行

pp.1508

 問 尿定性を試験紙法で行うとき,室内の照明は何が良いのですか.

研究

GPT型とGPT血清活性値に関する検討

北 武 , 佐々木 洋子 , 斉藤 幸子 , 及川 真理子

pp.1510-1513

緒言

 グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ(Gluta-mic-Pyruvic transaminase:GPT, E.C.2.6.1.2)は,臓器・組織中に広く存在するトランスアミナーゼの一種であり,血清中のGOT, GPTの活性値は,心筋硬塞,肝炎などで上昇するというLaDueら(1954)1),Wrób-lewskiら(1955)2)の報告以来,傷害細胞より血中に著明に遊出する酵素として,殊に肝疾患において極めて鋭敏に変動することなどより,臨床検査に繁用されている.この血清中GPT活性値の正常値については,報告者および測定方法により若干の差のある成績が報告されており,疾患によっては,いわゆる正常値とオーバーラップする成績も報告されている.

 赤血球のGPTについて,Chenら(1971)3)は2個の対立遺伝子Gpt1,Gpt2によって支配され,メンデルの法則に従い,GPT 1型,GPT2-1型,GPT 2型の3個の正常表現型を発現する多型性現象の存在について報告し,更にその後,Chenら(1972)4),Welch (1972)5)は,GPT型別に分類された赤血球のGPT活性値について,1型の活性値は高く,2型は低く,2-1型がその中間に位置するという型と活性値の関係について報告している.

Mycoplasma pneumoniae感染症の診断における間接的赤血球凝集反応の検討

升田 隆雄 , 森 正樹 , 五十川 豊治 , 三原 和栄 , 安藤 百利子

pp.1514-1516

緒言

 M.Pneumoniae感染症の血清学的診断には何を用いるべきであろうか.現在までに,①補体結合反応,(CF),②間接的赤血球凝集反応(IHA),③増殖抑制反応として発酵抑制反応(FI)あるいはテトラゾリウム還元抑制反応(TRI),④間接螢光抗体法(IMF),など多くの方法が用いられている.しかし筆者らの経験では,最も感度が高いとされているIMFも感染鶏胎肺の凍結切片を作る繁雑さがあり,また最も特異性が高いとされているFIも結果を得るのに数日を要し,しかも再現性にやや問題があるようである.したがって日常検査の段階で行うには,鋭敏度特異性のみならず簡便性も重要な条件として望まれる.

 IHAについてはTaylor-Robinsonら1)により,鋭敏度が高く早期診断に有用なことが報告されている.また本邦では既に新津ら2)の報告があるが,感作血球の作製・保存の問題から応用が一般化されるには至らなかった.今回国産2社(富土臓器株式会社(F),日本凍結乾燥研究所)の凍結乾燥血球が開発されたのを機会に,M.pneumoniae感染症におけるIHAの診断的意義について検討を行った.

心臓の電気活動が脳波記録に混入する要因—血圧と体格との相関

阪本 実男

pp.1517-1521

はじめに

 脳波の記録はアーチファクトとの戦いであると言われるほど,アーチファクトの混入が多い.その中でも被検者に由来するものが高率を占めるようである.このアーチファクトで比較的連続して見られるものに心電図の混入があり,単極誘導の記録で目立つ.この原因は次の三つに大別されよう.①電極接触抵抗値が高値である,②被検者が接地された金属に触れている,③被検者の体格や機能的要因により心臓の電気的位置が横位である.ここで,⑧は経験的に知られているが,この種の報告が一,二あるだけで統計的に検討したものはみない.著者は,この現象を臨床的所見と無関係に視覚的観察による心電図との関係を統計的に検討して報告1,2)した.

 今回は心電図,血圧,体格と本現象の相関について視覚的観察で統計的に検討した.

酵素—比色法による血清トリグリセライド定量法

木梨 園子 , 猪俣 美栄子 , 田原 保昭 , 野村 耕一 , 佐藤 信彦 , 畠中 陳夫 , 深田 満子 , 真喜志 康一郎 , 内田 壱夫

pp.1522-1526

(1) LPL-GDH系酵素—比色法による血清TG測定法の基礎的検討を行った.

(2)検体盲検値の内容につき検討を加え,遊離グリセロール,リン脂質,タンパク結合SH基群,脱水素酵素群および未知物質による非特異呈色が誤差の主なる要因であることを確かめた.

(3)溶血による正誤差の機序は主にヘモグロビン由来のSH基によるもので,これは反応系にSH阻害剤を添加することにより阻止できた.

(4)遊離グリセロール,リン脂質,脱水素酵素群および未知物質由来による非特異呈色は,各種血清間で変動が小さく,二次標準物質としてプール血清を用いることにより平均的に消去が可能と考えられる.

私のくふう

解剖用防水ガウン

武田 勇 , 三原 道夫

pp.1513

 剖検の必要性が叫ばれている昨今,少しでもその作業が快適にできるよう次のような防水ガウンを考案した.

 材料は雑貨用ビニール(高砂ゴム(株)),または農業用ビニール(アポニール・ム水テキ;岡本理研)である.普通のビニールでは水滴がついたり,ビニール同志がお互いに接着し離れ難くなったり不便であるが,上記のものはそのようなことはなく使いやすい.

編集者への手紙

週休2日制とCRP検査

黒河 和彦

pp.1527

Letter to Editor

 最近,週休2日制を実施している企業が増えています.公務員も人事院の勧告に基づき試験的に週休2日制を行うことになりました.やがては医療機関にも波及することと思われますが,その場合,臨床検査ではCRP検査のように翌日判定の検査の処置について困ることになると思います.

 そこでCRPについて翌日判定と更に3日後にどう変化するかを比較してみたところ,別表のようになりました.周知のようにCRPは37℃に2時間,氷室に1昼夜で判定しますが,更に翌々日,3日後と経過を追ってみました(表1).また,定性試験を37℃ 2時間で行い,氷室4時間後の結果を併せて調べてみました(表2).

特別寄稿

ボツリヌス菌の検出法

伊藤 武 , 坂井 千三

pp.1531-1534

 我が国で発生したボツリヌス中毒は現在までに72事例,患者数397名,そのうち99名が死亡している.これらの大部分は北海道や東北地方で,魚を原料にした"いずし"を原因食品とするE型菌によるものである.ところが1976年8月12日,東京都内の一家庭で突発的にA型菌による中毒が発生した(4名中2名発症,そのうち1名死亡).本事例の原因食品は不明であるが,患者2名の血液よりボツリヌス菌A型毒素,および患者ふん便から本邦で初めてA型菌が検出された.今回の事例経験を参考にしてボツリヌス菌の検査法の概要を紹介する.

検査と主要疾患・48

う蝕

杉中 秀寿 , 小谷 尚三

pp.1536-1537

 う蝕とは,歯牙硬組織が限局性かつ進行性に破壊される疾患である.病因論については,Millerが化学細菌説を提示して以来,乳酸杆菌が主役とされてきた.近年,う蝕病巣から分離されるレンサ球菌,Streptococcus mutansが高しょ糖加飼料で飼育した実験動物にう蝕を誘発し,乳酸杆菌はこのような病原性をほとんど示さないことが判明した.

 S.mutansは主としてプラーク(歯苔)に局在し,唾液や粘膜部からはほとんど検出されない.プラークとは主として微生物およびその産生物より成り,歯面に強く固着した構築物である.プラーク細菌叢の中で最も大きな割合を占めるのはレンサ球菌で,中でもStreptococcus sanguisならびにう蝕部位ではS.mutansが主流を占めている.Streptococcus salivariusはプラーク中にはほとんど存在しない.

検査機器のメカニズム・60

走査形電子顕微鏡

四本 晴夫

pp.1538-1539

 走査形電子顕微鏡(SEM)は主として二次電子を用いて,試料表面の凹凸によって構成されている構造を観察する装置である.極めて細く絞られた電子線(プローブ)で試料表面を走査すると,照射された試料の表面から二次電子などが発生する.この発生した二次電子を検出器で受けて,その量的な変化を電気的信号に変換する,この信号で,プローブの走査と同期して走査するブラウン管のビームの輝度を変調することによって,試料像をブラウン管面に再成表示をする(図1).

検査室の用語事典

臨床検査のRI用語

山県 登 , 松村 義寛

pp.1541

51)ホット(hot)

 コールド(cold)に対して使われる."ホットラボ","ホットセル"などというと,かなり高い放射能を扱う場所を意味するが,更に一般化して通常のRI実験室でも,放射線管理区城(→46)の境界から内側をホット,外側をコールドと呼ぶ.反跳作用などで生じた高エネルギーの新原子をホットアトムという.

臨床検査のコンピューター用語

鈴木 孝治 , 春日 誠次

pp.1542

127) Transaction File (トランザクションファイル)

マスターファイルを更新したり,創設したり,あるいは挿入したりするのに使われる入力レコードのことをいう.

臨床化学分析談話会より・40<第3回夏期セミナー>

熱気にあふれた討論

戸谷 誠之

pp.1543

 分析談話会の第3回夏期セミナーは臨床化学会と臨床化学分析談話会の主催により7月29日から31日の2泊3日で慶応大学立科山荘を拝借して行われた.

 すっかり夏の行事として定着したこのセミナーは,事務局の済生会中央病院グループ(代表:堀内聡)のご尽力により,関東支部をはじめ北海道,東海,近畿,山陰の各支部に長野,新潟,秋田,岡山,広島の各地から112名という多数の参加者を集めて開催された.

Senior Course 生化学

—臨床化学検査における酵素化学—酵素による定性・定量分析 ⅩⅡ

山下 辰久

pp.1544-1545

固定化酵素・2

1)担体結合法(続き)

(2)イオン結合法

Senior Course 血液

耳朶・静脈血検体の評価

黒川 一郎

pp.1546-1547

 血液検査の検体の特徴は,時間的変性の早いこと,採血条件,保存条件で計数値がバラつくことである.精度管理のための血液標本も例外ではなく,この改善は焦眉の急といえる.

Senior Course 血清

—血清検査の基礎—梅毒の血清学

浅川 英男

pp.1548-1549

 梅毒罹患の有無の診断法は臨床所見と患者血清中におけるカルジオライピン(CL),およびTreponemapallidum (TP)の菌体成分そのものに対する抗体の検索による.CLによる血清反応の歴史は古い.しかしCLそのものは動物の臓器ばかりではなく植物や細菌中にも存在し,もちろんヒトの組織中にも似たものが存在している.またウシの心臓から抽出したリン脂質という意味でCLと呼ばれるが,抗原としてはこれにレシチンを加えた場合,その抗原性はいっそう強くなる(CL-Lec).TPに感染したものにCLに対する抗体が出現し,それによって梅毒感染と言い切ることができる(ある症例を除く)のは抗原,抗体二つの側から考慮が必要であろう.第一には,先に述べたようにCLそのものが,TPにも存在しうるということ.抗原構造がTPに存在するものとCLとが似ているということである.第二には,TPの感染によってヒトの体成分が破壊されて,ヒトの組織中にあるCLに似たものが修飾されて流血中に出現する.第三には,自己と非自己の識別能の不備な状況から,自己の体組織中のCLに対して容易に抗体を作りうるなどである.したがって第三の場合はある症例を除くことを意味し,その症例はSLEに代表される疾患であり,梅毒の血清反応の側からみると生物学的偽陽性ということになる.

Senior Course 細菌

腸内細菌の分類 Ⅸ—Proteus属の分類

坂崎 利一 , 田村 和満

pp.1550-1551

 Proteusという菌名は1885年にHauserによって命名された.この名は彼の研究した菌種(Proteus vulga-lisおよびP.mirabilis)がふつうのカンテン培地表面で集落をつくらずに,表面に拡がって発育する性状(スウォーミング)をもつことから,その形をいろいろに変形する海洋神プロテウスの名にちなんでつけられたものである.

Senior Course 病理

—病理検査の技術と知識—細胞診検査法

室谷 光三

pp.1552-1553

細胞診の目的と意義

 細胞診は,臨床細胞学ともいい,患者細胞材料の病理細胞学的精査で異常細胞を検出する.悪性腫瘍の鑑別や小寄生体感染,染色体異常の発見など対象範囲は広い.子宮など採取しやすい部位の癌の追跡調査と早期発見の意義は大きい.

Senior Course 生理

—電気生理検査に必要な電気の基礎知識—ME機器をめぐる安全対策

石山 陽事

pp.1554-1555

 医療技術の急速な発達に伴い医療機器の安全性に関する種々の問題が討議されるようになった.そこにはもはや単体機器による検査の安全を考えるのではなく,それを使用する環境,高度な医療技術に全く無抵抗,無防備な患者,それを使うだけで精一杯の医師やパラメディカルスタッフなどを含めた,一つのシステムとしての安全を考えなくてはならない.

 既に単体の医用機器(ME機器)ではかなり安全を考慮したものが市販されているが,検査システムという点からは,やはりまだまだ不十分な点が多い.殊に今後コンピューターやその端末器のような医療機器としての仕様以外の機器が,医療機器と共用される場合には,その使用法に関しては十分に注意を払わねばならない.今回はこの講座の最後でもあるので,電気生理検査機器に限らず,ME機器一般としての安全な取り扱いを中心に述べることにする.

Senior Course 共通

廃棄物の処理・3—法令による規制

川邊 新

pp.1556-1557

 今回は,各種検査に伴う廃棄物に限定せず,病院からの廃棄物の処理の法律的な側面からのアプローチをしてみたい.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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60巻13号(2016年12月発行)

今月の特集1 認知症待ったなし!
今月の特集2 がん分子標的治療にかかわる臨床検査・遺伝子検査

60巻12号(2016年11月発行)

今月の特集1 血液学検査を支える標準化
今月の特集2 脂質検査の盲点

60巻11号(2016年10月発行)

増刊号 心電図が臨床につながる本。

60巻10号(2016年10月発行)

今月の特集1 血球貪食症候群を知る
今月の特集2 感染症の迅速診断—POCTの可能性を探る

60巻9号(2016年9月発行)

今月の特集1 睡眠障害と臨床検査
今月の特集2 臨床検査領域における次世代データ解析—ビッグデータ解析を視野に入れて

60巻8号(2016年8月発行)

今月の特集1 好塩基球の謎に迫る
今月の特集2 キャリアデザイン

60巻7号(2016年7月発行)

今月の特集1 The SLE
今月の特集2 百日咳,いま知っておきたいこと

60巻6号(2016年6月発行)

今月の特集1 もっと知りたい! 川崎病
今月の特集2 CKDの臨床検査と腎病理診断

60巻5号(2016年5月発行)

今月の特集1 体腔液の臨床検査
今月の特集2 感度を磨く—検査性能の追求

60巻4号(2016年4月発行)

今月の特集1 血漿蛋白—その病態と検査
今月の特集2 感染症診断に使われるバイオマーカー—その臨床的意義とは?

60巻3号(2016年3月発行)

今月の特集1 日常検査からみえる病態—心電図検査編
今月の特集2 smartに実践する検体採取

60巻2号(2016年2月発行)

今月の特集1 深く知ろう! 血栓止血検査
今月の特集2 実践に役立つ呼吸機能検査の測定手技

60巻1号(2016年1月発行)

今月の特集1 社会に貢献する臨床検査
今月の特集2 グローバル化時代の耐性菌感染症

59巻13号(2015年12月発行)

今月の特集1 移植医療を支える臨床検査
今月の特集2 検査室が育てる研修医

59巻12号(2015年11月発行)

今月の特集1 ウイルス性肝炎をまとめて学ぶ
今月の特集2 腹部超音波を極める

59巻11号(2015年10月発行)

増刊号 ひとりでも困らない! 検査当直イエローページ

59巻10号(2015年10月発行)

今月の特集1 見逃してはならない寄生虫疾患
今月の特集2 MDS/MPNを知ろう

59巻9号(2015年9月発行)

今月の特集1 乳腺の臨床を支える超音波検査
今月の特集2 臨地実習で学生に何を与えることができるか

59巻8号(2015年8月発行)

今月の特集1 臨床検査の視点から科学する老化
今月の特集2 感染症サーベイランスの実際

59巻7号(2015年7月発行)

今月の特集1 検査と臨床のコラボで理解する腫瘍マーカー
今月の特集2 血液細胞形態判読の極意

59巻6号(2015年6月発行)

今月の特集1 日常検査としての心エコー
今月の特集2 健診・人間ドックと臨床検査

59巻5号(2015年5月発行)

今月の特集1 1滴で捉える病態
今月の特集2 乳癌病理診断の進歩

59巻4号(2015年4月発行)

今月の特集1 奥の深い高尿酸血症
今月の特集2 感染制御と連携—検査部門はどのようにかかわっていくべきか

59巻3号(2015年3月発行)

今月の特集1 検査システムの更新に備える
今月の特集2 夜勤で必要な輸血の知識

59巻2号(2015年2月発行)

今月の特集1 動脈硬化症の最先端
今月の特集2 血算値判読の極意

59巻1号(2015年1月発行)

今月の特集1 採血から分析前までのエッセンス
今月の特集2 新型インフルエンザへの対応—医療機関の新たな備え

58巻13号(2014年12月発行)

今月の特集1 検査でわかる!M蛋白血症と多発性骨髄腫
今月の特集2 とても怖い心臓病ACSの診断と治療

58巻12号(2014年11月発行)

今月の特集1 甲状腺疾患診断NOW
今月の特集2 ブラックボックス化からの脱却—臨床検査の可視化

58巻11号(2014年10月発行)

増刊号 微生物検査 イエローページ

58巻10号(2014年10月発行)

今月の特集1 血液培養検査を感染症診療に役立てる
今月の特集2 尿沈渣検査の新たな付加価値

58巻9号(2014年9月発行)

今月の特集1 関節リウマチ診療の変化に対応する
今月の特集2 てんかんと臨床検査のかかわり

58巻8号(2014年8月発行)

今月の特集1 個別化医療を担う―コンパニオン診断
今月の特集2 血栓症時代の検査

58巻7号(2014年7月発行)

今月の特集1 電解質,酸塩基平衡検査を苦手にしない
今月の特集2 夏に知っておきたい細菌性胃腸炎

58巻6号(2014年6月発行)

今月の特集1 液状化検体細胞診(LBC)にはどんなメリットがあるか
今月の特集2 生理機能検査からみえる糖尿病合併症

58巻5号(2014年5月発行)

今月の特集1 最新の輸血検査
今月の特集2 改めて,精度管理を考える

58巻4号(2014年4月発行)

今月の特集1 検査室間連携が高める臨床検査の付加価値
今月の特集2 話題の感染症2014

58巻3号(2014年3月発行)

今月の特集1 検査で切り込む溶血性貧血
今月の特集2 知っておくべき睡眠呼吸障害のあれこれ

58巻2号(2014年2月発行)

今月の特集1 JSCC勧告法は磐石か?―課題と展望
今月の特集2 Ⅰ型アレルギーを究める

58巻1号(2014年1月発行)

今月の特集1 診療ガイドラインに活用される臨床検査
今月の特集2 深在性真菌症を学ぶ

57巻13号(2013年12月発行)

今月の特集1 病理組織・細胞診検査の精度管理
今月の特集2 目でみる悪性リンパ腫の骨髄病変

57巻12号(2013年11月発行)

今月の特集1 前立腺癌マーカー
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査②

57巻11号(2013年10月発行)

特集 はじめよう,検査説明

57巻10号(2013年10月発行)

今月の特集1 神経領域の生理機能検査の現状と新たな展開
今月の特集2 Clostridium difficile感染症

57巻9号(2013年9月発行)

今月の特集1 肺癌診断update
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査①

57巻8号(2013年8月発行)

今月の特集1 特定健診項目の標準化と今後の展開
今月の特集2 輸血関連副作用

57巻7号(2013年7月発行)

今月の特集1 遺伝子関連検査の標準化に向けて
今月の特集2 感染症と発癌

57巻6号(2013年6月発行)

今月の特集1 尿バイオマーカー
今月の特集2 連続モニタリング検査

57巻5号(2013年5月発行)

今月の特集1 実践EBLM―検査値を活かす
今月の特集2 ADAMTS13と臨床検査

57巻4号(2013年4月発行)

今月の特集1 次世代の微生物検査
今月の特集2 非アルコール性脂肪性肝疾患

57巻3号(2013年3月発行)

今月の特集1 分子病理診断の進歩
今月の特集2 血管炎症候群

57巻2号(2013年2月発行)

今月の主題1 血管超音波検査
今月の主題2 血液形態検査の標準化

57巻1号(2013年1月発行)

今月の主題1 臨床検査の展望
今月の主題2 ウイルス性胃腸炎

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