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文献詳細

雑誌文献

臨床検査20巻3号

1976年03月発行

文献概要

技術解説

血液成分輸血

著者: 徳永栄一1 羽田憲司2

所属機関: 1日本赤十字社中央血液センター 2日本赤十字社中央血液センター製剤課

ページ範囲:P.252 - P.258

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血液成分療法の概念
 これまでは,輸血といえば保存血液による全血輸血を指すのが普通であった.保存血液というのは,抗凝固剤であるACD液(クエン酸,クエン酸ナトリウム,ブドウ糖を含む液)を入れたガラスまたはプラスチックの容器中に血し液を採り,4〜6℃の氷室に72時間以上おいたものである.ACD液は,凝固を妨げる機能の他に,赤血球の代謝を助けて生存期間を延長する作用がある.保存血液の有効期限は採血後21日目までであるが,これは赤血球の活性を指標として定められたもので,21日まで保存した保存血液中の赤血球はその70%以上が生きていることが確かめられている.保存血液は,採血の時点では血液の各成分をすべて含むことは確かであるが,保存とともに赤血球以外の成分は機能を失うものが多い.輸血の目的は大部分が赤血球の補給であるから,保存血液を用いることによって目的は果たされるようなものではあるが,それならば赤血球のみを患者に与えるほうがより効果的であることは,だれでも考えつくことであろう.赤血球とほぼ同量の血漿が体内に入れられることは,心臓の負担を多くし,赤血球補給の目的をかえって阻害することになる.むしろ全血輸血というものは,赤血球とともに血漿成分の補給をも必要とする比較的少ない症例にのみ用いられるべきものであるはずで,無批判に全血を患者に与えることの愚かさが世界的に認識されはじめている.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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