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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査20巻5号

1976年05月発行

雑誌目次

カラーグラフ

圧挫標本による神経系組織の細胞診

高橋 正宜

pp.468-469

脳腫瘍の臨床診断に果たす細胞診の試料として通常髄液が用いられるが,膜炉過法による集細胞法を採用しても原発性神経膠腫に対する診断率は高くない.手術中の迅速診断は脳外科手術の進歩とともに頻度が高くなりつつあるが,凍結標本の作製は試料が小さいことと,腫瘍では組織が脆く壊れやすいことのために標本の作製が困難である.

 圧挫法(squash method)は凍結標本に代えて行う有用な方法として筆者が採用してきた方法である.米粒大の新鮮な組織を2枚のスライドの間に鋏んで指圧を加えて圧挫し,2方向に引き延ばすという簡便な方法である。本法の利点は,①標本作製が速やかで容易なこと,②神経細胞や星膠細胞の同定が容易なこと,③毛細血管の構造,特に壁の肥厚や内皮細胞の増生などを観察できることである.膠原線維成分の多い転移癌では圧挫のしにくい場合があるが,それも判定の参考となる.なお,表示する図はパパニコロウ法であるが,クリューバ・バレラ,ニッスル染色,その他の特殊染色にも都合がよい.

技術解説

白血球機能検査法遊走能

巽 典之 , 木村 雄二郎 , 前田 宏明 , 福岡 紘一 , 福田 ヒロ子

pp.471-480

 白血球がその機能を発揮するのは流血中ではなく,血管外である.造血臓器内の白血球が流血中に動員され,炎症巣に移動し,異物を貧食するまでの一連の白血球の動きを調節するのは白血球内のアクチン・ミオノンから成る収縮タンパク系によるのは周知の事実である1).白血球機能を知る検査法は種々報告されているが,残念ながら分子レベルでの検査法は最近始められたばかりで一般的でない。細胞レベルの検査法は細胞機能の総和の結果を示す意味からも基木的検査法であるといえよう.著者らは遊走能,粘着能,貧食能,殺菌能,そして細胞内物質の測定なとを検査目的にかなった方法を選択し,検査を行って,この結果より病型診断,病期の判定に利用している.今回は諸種の白血球機能検査法のうら,遊走能に関する二,三の一般的な検査術式について述べる.

割断法による走査電顕試料作製法

田中 敬一

pp.481-488

 走査電子顕微鏡はその性能上,細胞・組織の表面を観察するのに威力を発揮する.しかし表面だけの観察ではやがていぎ詰まってしまうので,最近組織細胞を割断し,内部を見ようとする試みが多くなってきた.そしてその方法も,二,三年前までは,樹脂冷凍割断法1),クライオフラクチャー法ぐらいなものであったが,今では,アルコール割断法2,3),スチレン割断法4),DMSOを用いる法5)などいろいろな方法が発明されている.

 これらの方法を,割断に必要とする温度で分類すると,①−30℃ぐらいの温度(冷凍箱)を用いるもの—樹脂冷凍割断法,②窒素温度を用いるもの—アルコール割断など,③室温で行うもの—スチレン割断法,の3種である.

心機図

沢山 俊民 , 山本 誠一

pp.489-496

心機図とは

 心臓病の診断法は日進月歩を続けているが,なかでもこれから解説する心機図法(心臓の機械的収縮過程をグラフ化する方法,Mechanocardio-graphy;MCG)は特に注目されている非観血的な検査法の一つである1,2)

 ここにいう心機図法とは,我々が視診および触診により感知する心血管系の低周波振動の波形,すなわち心尖拍動図,頸動脈波および頸静脈波を,心音図,心電図と組み合わせて記録する方法と解釈する.本法は,1921年,Wiggersが心電図,心音図および頸動脈波を同時に記録したことに始まる3).長い間,この方法はあまり顧りみられなかったが,近年に至り心血管系の視・触診が重要視されるとともに脚光を浴びるようになった.更に,Weisslerらが,この方法による左室収縮時間(Left ventricular systolic interval;LVSTI)が,観血的に測定した左心機能検査成績とある程度よく相関することを示して以来急速な発展を遂げつつある4).特に欧米では本法が一般化しており,本邦でも4〜5年前から盛んに行われるようになった5).著者らも本法をルーチン化し,心電図法に次ぐ心臓診断法として臨床に応用している.

総説

医学文献の調べ方—二次資料を中心として

青木 孝雄

pp.497-503

文献と一口にいっても,その内容は,

1) personal communicationとしてのletter(研究,診療上の)

臨床検査の問題点・78

比色計の性能

長藤 昭正 , 中山 年正

pp.504-509

比色計は,臨床化学検査室の極く当たり前の分析器となっているが,その性能はあまり理解されていない.そこでルーチン検査で遭遇する比色計の問題点──光源,回折格子,直線性,フィルターなど──を直接メーカーに聞いてみる.(カットは分光光度計の操作)

異常値・異常反応の出た時・41

血液ガス

長谷川 博

pp.510-514

 血液ガスの異常値の解読は,電解質その他のデータを一緒に読む力がないと,しばしば大きな誤りを冒す.したがって,血液ガス異常値の判断は考えようによっては非常に難しいものかもしれない.しかし,これから述べるような見方,考え方をすれば,血液ガスの異常値を理解し,その対策を講ずることは非常に簡単である.

質疑応答

骨髄細胞数について

K生 , 衣笠 恵士

pp.515

 問 白血病における骨髄検査で,穿刺部位により成績の差異があるのでしょうか.

中検へ一言・中検から一言

数値を生かすための緊密な連絡,他

古田 精市

pp.516-517

 編集室より臨床側から検査室側に何か一言発言をと依頼されたが,筆者は日ごろから,むしろ検査室側から臨床医に対して積極的に意見を述べていただきたいと考えているものである.メディカルとパラメディカルの両輪が共同して初めて優れた診療ができることは言うまでもないことであるが,特に最近のように各種の臨床検査法が著しく進歩し,その項目も極めて多くなっており,他方臨床医側も専門化の傾向が進みつつある状況においては,臨床医がそれぞれの検査データの意義を十分に理解して受けとめることがややもすればできないこともあるからである.例えば急性肝炎患者の血漿プロトロンビン時間が20数秒といったような値が出た場合に,その著明なプロトロンビン時間の延長を起こす背景になっている肝病変の重篤さの判断が必ずしも正確に行われていないままにそのデータを受けとめている場合もまれでないように思われる.日ごろ多数の検体を取り扱って,それらの数値に慣れている検査室側から,このような異常値を示す疾患の背景について積極的に臨床医側に発言され,採血時の技術的な欠陥による異常か,患者の病態による異常かなどに関しても,緊密な連絡の上に立って検討されて初めて診療上これらの数値が生きてくる.

座談会

病棟・外来における検査技師学校学生の見学実習

福岡 良男 , 古山 隆 , 松浦 緑 , 小畑 由美子 , 片方 敦子 , 北村 清吉

pp.518-526

検査室内で,患者の血液や尿を検体として取り扱う技師にとって,検体=物と思い込みがちであったり,また病院内の組織や医療体制についても認識が浅いといわれている.この2点に対処するものとして,Grady Memorial Hospital Schoolof Medlcal Technology (米)のベットサイド実習に学び,技師学校学生に表題のような見学実習が試みられた(1974.11,東北大臨検学校).卒後教育にも十分取り入れられるものとして考えたい.

研究

集細胞法を用いたLE細胞検出法

清水 進 , 秋山 雄一 , 樫村 聰夫 , 溝呂木 ふみ

pp.527-530

緒言

 LE細胞は1948年HargravesらによりSLE患者の骨髄穿刺液中から発見された1).翌1949年Hargra-vesは,LE細胞は白血球とSLE患者の血清とをinvitroで温置したときにも生ずることを発表した2).以後LE細胞の診断的価値が重要視され,その検出法に関し多くの方法が考案されている3〜5).その代表的なものが凝血法とヘパリン血法であるが,前者は血球が破壊されて標本がきたなくなり,核貧食像との鑑別に注意を要し,後者は検出率が低いなど問題点が多い3).Duboisらはヘパリン血法とrotary法を組み合わせて,陽性率が高くしかもきれいなLE細胞の標本を作る方法を発表している4)

 LE細胞の陽性率を高める重要な条件は,LE因子の作用を受けやすいように白血球に傷害を与えることであり,Duboisらのrotary法はこの点で優れている.一方,LE細胞の検出を妨げるものは,白血球層塗抹標本に多数存在する成熟好中球と混入した赤血球である.これらを除去してLE細胞を分離蒐集できれば,更に高い検出率と確実な細胞形態学的診断が得られることになる.

編集者への手紙

便潜血反応の再検討

小出 朝男 , 田中 祥子

pp.531

Letter to Editor

 近年,ベンチジン(B)が製造・販売,使用禁止となったため,Bを使用しないヘマテスト(H)法について検討してみました.もちろん,H法にはオルトトリジンが用いられていますので,これも将来問題になるかもしれませんが,H法について次のような結果を得ました.

 B法は種々の術式があって,それぞれ感度が多少異なるが,今回,我々は炉紙に便を塗抹した後,5%B酢酸と3%過酸化水素水を滴下するLevineらの変法を用いて検討した.

新しいキットの紹介

Urotubeによる尿定量培養について

沢村 治樹 , 沢 赫代 , 上野 一恵 , 川出 真坂

pp.532-534

はじめに

 Kass1)により報告された尿定量培養法は,尿路感染症の診断に極めて有効な方法として広く認められている.しかし日常検査として実施するにはやや繁雑であり,小規模検査室ではその実施が困難である.そのため近年,尿中細菌数を簡易に半定量的に測定するスクリーニングテストが登場してきた.著者らは,その一つであるUrotubeを用いて尿中細菌数定量の検討を行ったので報告する.

新しい機器の紹介

Rapid Blood Analyzer Mark Ⅱ—Systemによる簡易比色定量法の検討

山下 巧 , 尾辻 省悟

pp.535-540

緒言

 今日,日常検査の自動化が進むにつれ,定時に提出された検体は一括されて自動分析される傾向にある.しかし自動化や機械化は経済的な点も含めて,規模の大きい病院でこそ効果を上げうるものであるが,小規模な病院における検査の近代化は異なった次元で考えなければならない.緊急検査,ベッドサイドでの迅速検査,散発的に提出された小数検体の処理なども解決されるべき重要な課題である.検体の処理にはできるだけ簡易・迅速に,しかも正確・精密な成績が得られる方法が望まれる.簡易比色システムとして多種の機器があるが,このたび,中外製薬が開発したRapid Blood Analyzer 3010型の改良型,Mark II 3020型(以下RaBAマークⅡと略す)を試用する機会を得,専用試薬ユニキットを用いて,用手法との相関,測定精度について検討を加えたので,その結果を報告する.

細胞診セミナー・6

細胞診スクリーニング—観察と判定の仕方

浦部 幹雄 , 高橋 正宜

pp.543-546

症例1 器質化肺炎病巣からの穿刺細胞診(Ⅰ〜Ⅴ)

症例1 右肺上葉の術中迅速細胞診

 司会(浦部) 症例1は,満45歳の男性であり,主訴はありません.定期健康診断で胸部X線の腫瘤陰影を発見され,当院胸部外科に入院しました.喀痰の細胞診,擦過細胞診を行いましたが,ともに陰性でした.次いで右肺上葉を切除しました.そのときに術中迅速吸引細胞診を行い,その標本をご覧になっていただいたわけです.このスライドは,全部倍率1,000倍で撮影されています.

 新納(弥生,草加市立病院,技師) 図のⅠ,Ⅱは大型の細胞で,N/C比が大で,核が白血球の3倍から4倍に見えますし,核小体がはっきり見えて,核辺が肥厚しているので,腺癌のような気がします.

検査と主要疾患・41

サルコイドーシス

岡野 弘

pp.548-549

1.歴史と疾患概念

 明治2年(1869年) Hutchinsonが四肢の皮疹と反覆性に現れる虹彩ブドウ膜炎の一例を記載したものが本症記載の嚆矢と老えられている.本邦では大正10年(1921年)に本症の皮膚病変が,昭和9年(1934年)には本症の肺病変が初めて報告されるなど歴史的には古い.しかし第二次世界大戦後,欧米ならびに本邦においても症例発見の増加とともに本症への関心が高まり,1975年までに既に7回の国際会議が開かれるに至り,我が国でも病因の解明などを目標とし,難病と指定されて広範な研究が行われている.現在,本邦における本症症例は約4,000名程度存在していると推定され,北海道,東北など緯度の高い地域に多い.

 本症はHutchinson-Boeck氏病,類肉腫症,サルコイドーシス(sarcoidosis)などと呼ばれているが,現在はサルコイドーシスの病名が一般的に用いられている.

検査機器のメカニズム・53

呼吸機能検査におけるガスクロマトグラフィー

大久保 隆男 , 野村 武男 , 高橋 寛

pp.550-551

 ガスクロマトグラフィーは,今日利用されている定量分析法のうちでも適用範囲が広く,また質量分析計や赤外線スペクトル分析計などと比較しても正確かつ簡単で,多量のサンプルを必要とせず,一度に数種の試料が分析でき,しかも比較的短時間で行える非常に便利な分析器械である.

 クロマトグラフィーによる試料の分離は,固定相(stationary phase)とそれに流れる移動相(mobil phase)とで構成されている.固定相には液体と固体の2種が用いられているが,呼吸機能検査に応用できるのは,固定相を固体にしたカラムクロマトグラフィー(gas-solid chromat-ography)が用いられる.

検査室の用語事典

精度管理用語

井川 幸雄

pp.553

50)中心線;central line,CL

 X-R管理図においての管理線(control lines)の一つで,xバー・バー(X)のレベルを示す実線で表現される.上部管理限界(upper control limit)と下部管理限界(lower controllimit)を破線でひき,3本の管理線で工程を管理する.

臨床検査のコンピューター用語

鈴木 孝治 , 春日 誠次

pp.554

47) Decode (デコード)

コード化されたものを元の形式にもどすことをデコードという.デコードのため用いられる装置をデコーダー(Decorder)という.デコーダーは,複数個の入力端子と複数個の出力端子を有し,入力端子にコード化されたデータが入力された場合,そのコード入力に対応した出力端子に信号を出すようになっている.

臨床化学分析談話会より・33<関東支部>

依然として問題の多いコレステロール測定法

野間 昭夫

pp.555

 第188回関東支部部会は昨年12月16日に開催された.当日は"コレステロール酵素法"がテーマとして取り上げられた.コレステロール(chol)定量法は古くから行われているにもかかわらず,多くの問題を抱えてきたが,酵素を用いて測定することが1972年Richmondによって発表されて以来,急速に発展し,我が国においても一昨年あたりより多くの機関で検討されており,先の第22回臨床病理学会でも20題近い演題が発表されたのは,広く注目されていることを物語る.談話会当日も熱心な会員が多く集まり,熱気を感じつつ開始された.

 まず酵素法の問題点について虎の門病院中山年正先生が講演された.用いられているchol水解酵素(CEH)とchol酸化酵素(COD)とを分けて,歴史的なことから始められ,CODが既に1948年に報告されているとのことに筆者も驚かされた.文献的考察から先生が行われた種々の検討に移り,特に表面活性物質の問題について多くの興味ある結果を示された.すなわち混濁血清と表面活性物質との関係,更にCODおよびCEHを加えた場合の影響などで,特に花王石鹸からのhydroxypoly-ethoxydodecaneおよびTriton X−100を血清に加えると濁りの出るものがあり,それは酵素法で高値を示す.これに反しベーリンガーのhydroxypolyethoxydodecaneではそのようなことは認めないとのことであった.

Senior Course 生化学

—臨床化学検査における酵素化学—酵素による定性・定量分析 Ⅴ

山下 辰久

pp.556-557

 これまで4回にわたって代謝物質の定量に酵素反応を用いる場合に注意しなければならない一般的事項ならびに現在臨床化学検査に用いられている幾つかの測定法と酵素反応の使用が可能であると思われる測定法についての原理を簡単に述べてきたが,この他まだ酵素を用いて測定される物質の定量法をあげればきりがないけれど,それらが直ちに臨床化学検査に応用されるとは思われないので,ひとまず"酵素による定性・定量分析"の具体例はこの辺で止めにし,ここでもう一度これまで述べた測定法を振り返りながら,代謝物質濃度の測定に酵素を用いる場合に必要な基本的な問題について少し述べてみたい.

 一般にある物質(S)が酵素反応S→Pに関与しているならば,この反応がその物質の定量に使用される.この場合基質(S)の産物(P)への転換が実用上完全に行われれば酵素分析は簡単である.しかも基質と産物との性質が化学的にも物理学的にも互いに違っている場合には,SまたはPを物理化学的—例えば分子吸光係数のような物理恒数を用いて—または酵素学的に分析することによって容易にその物質の濃度を計算することができる.

Senior Course 血液

リンパ球について

黒川 一郎

pp.558-559

 末梢血で我々が見るリンパ球は直径によって6〜8μmの小リンパ球と10μm以上の大リンパ球に分けられる,また普通の細胞は未熱なものほど大型で細胞質の塩基性も強く核網も繊細であるが,必ずしもリンパ球ではそうでなく,成熟したものも細胞質の塩基性は他に比べて強い.しかし大型のリンパ球の内核網も繊細で胞体が強く塩基性を示すものをリンパ芽球と呼んでいる.リンパ芽球以上の幼若なリンパ球はリンパ胚球→リンパ性細網細胞と区別されている.

 我々は日常伝染性単核症などで大型のリンパ芽球,胚球に相当するような異型リンパ球に遭遇するが(Down-ey型異型リンパ球,virocyteなど),これらは正常リンパ球がPHA刺激などで幼若化したときに見られるものに類似していると思われ,リンパ球の形態の区別も積極的な生体反応の一種として評価するべきかもしれない.またリンパ球はリンパ組織中には100g,骨髄中に70gその他の組織に散在しているものを合わせると1,300gになるが,流血中には3gしか存在しないとされている.それゆえ顆粒球同様その起源,分類,機能の基礎的成果を学ぶことは日常検査を行ううえに大切であろう.

Senior Course 血清

—血清検査法の基礎—赤血球凝集反応 Ⅱ

浅川 英男

pp.560-561

ワーラーローズ反応

 慢性関節リウマチ患者の血清中にはリウマチ因子と言われる特殊のタンパクが出現する.しかし,このリウマチ因子は慢性関節リウマチばかりではなくて,免疫現象が身体の中で起こっていると思われる疾患にも証明されることがしだいに分かってきた.反面リウマチ因子は多様性をもっていることも証明された.Lospllutoはリウマチ因子として,

(1)Factor Iヒトγグロブリンとウサギγグロブリンと反応するもの,

Senior Course 細菌

腸内細菌の分類 Ⅱ—Escherichia属

坂崎 利一 , 田村 和満

pp.562-563

1.定義

 腸内細菌の定義に示された性状をもつグラム陰性の運動性または非運動性杆菌.

 普通の培地によく発育する,ブドウ糖およびその他の炭水化物を発酵して酸とガスを産生するが,ガス非産生株もみられる.大部分の菌株は乳糖をすみやかに発酵するが,それを遅または非発酵性菌株もある,他の菌との鑑別上のおもな生化学的性状はつぎのとおりである.

Senior Course 病理

—病理検査の技術と知識—染色 Ⅱ

橋本 敬祐

pp.564-565

エオジン(つづき)

 前号で明らかなように,色素の正確な化学名は長い場合が多いし,染色性という特性から見たまとめ方が重要でもあり,むしろ商品名と考えなければならぬことが多い.例えばメチルブルーはsodium triphenyl-p-rosani-line trisulphateだからメチル基はもっていない.メチレンブルーはtetrarnethyl-thioninechlorideだからメチレン基は含んでいない.また色素名のうしろにアルファベットや数字を付けることがよくある.これは製造会社の都合で付けられたものが多く,製造する際わずかに異なる化合物の混合が避けられず,手間をかけて純品を取り出す必要性もあまりないというようなときに,色調やその他の性質を現わす符号の代わりに付けられる場合が多いようである.一方,染められる側の組織タンパク質にも固定の項などで見てきたような大変なバラエティーがあって,色調が変化するわけであるから,染色の実施に当たって色素の正確な化学名が必要となるのはもう少し先の日であろう.今のところ染色の化学はほとんど分かっていないと言っても過言ではないのだから.

 次によく出遇う符号をあげておく.

Senior Course 生理

—電気生理検査に必要な電気の基礎知識—フィルター回路 Ⅱ

石山 陽事

pp.566-567

高域減衰用フィルター

 前回は低い周波数を制限するようなフィルター回路について述べたが,図1のようなRC回路を用いると高域周波数を制限するフィルターになる.入力電圧をEin,出力電圧をEoutとしてベクトル計算法によってこの入出力電圧の関係を計算してみよう.

Senior Course 共通

検査室の火災予防

白戸 四郎

pp.568-569

 検査室は火を使うことが多く,引火性・爆発性のものも数多くあるので,火災に対する注意はだれもがもっているものと思われるが,ここでは忘れられがちな問題を主として取り上げたい.

 病院火災の統計をみると検査室が出火点になっているケースは割合少なく数%以下であるが,延焼の過程で事故を大きくしていることは容易に想像されるところである.本稿では検査室が内蔵している出火点となる危険性と延焼の際の問題点について述べ,次に火災予防上の具体的なチェックポイントをあげる.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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今月の特集2 臨床検査とIoT

64巻11号(2020年11月発行)

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今月の特集2 パニック値報告 私はこう考える

64巻10号(2020年10月発行)

増刊号 がんゲノム医療用語事典

64巻9号(2020年9月発行)

今月の特集1 やっぱり大事なCRP
今月の特集2 どうする?精度管理

64巻8号(2020年8月発行)

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今月の特集2 IgG4関連疾患の理解と検査からのアプローチ

64巻7号(2020年7月発行)

今月の特集1 骨髄不全症の病態と検査
今月の特集2 薬剤耐性カンジダを考える

64巻6号(2020年6月発行)

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64巻5号(2020年5月発行)

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今月の特集2 EBLM(evidence based laboratory medicine)の新展開

64巻4号(2020年4月発行)

増刊号 これで万全!緊急を要するエコー所見

64巻3号(2020年3月発行)

今月の特集1 Clostridioides difficile感染症—近年の話題
今月の特集2 質量分析を利用した臨床検査

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今月の特集2 筋疾患に迫る

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62巻3号(2018年3月発行)

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今月の特集2 実は増えている“梅毒”

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60巻11号(2016年10月発行)

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60巻10号(2016年10月発行)

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今月の特集2 キャリアデザイン

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60巻3号(2016年3月発行)

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今月の特集2 smartに実践する検体採取

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今月の特集1 深く知ろう! 血栓止血検査
今月の特集2 実践に役立つ呼吸機能検査の測定手技

60巻1号(2016年1月発行)

今月の特集1 社会に貢献する臨床検査
今月の特集2 グローバル化時代の耐性菌感染症

59巻13号(2015年12月発行)

今月の特集1 移植医療を支える臨床検査
今月の特集2 検査室が育てる研修医

59巻12号(2015年11月発行)

今月の特集1 ウイルス性肝炎をまとめて学ぶ
今月の特集2 腹部超音波を極める

59巻11号(2015年10月発行)

増刊号 ひとりでも困らない! 検査当直イエローページ

59巻10号(2015年10月発行)

今月の特集1 見逃してはならない寄生虫疾患
今月の特集2 MDS/MPNを知ろう

59巻9号(2015年9月発行)

今月の特集1 乳腺の臨床を支える超音波検査
今月の特集2 臨地実習で学生に何を与えることができるか

59巻8号(2015年8月発行)

今月の特集1 臨床検査の視点から科学する老化
今月の特集2 感染症サーベイランスの実際

59巻7号(2015年7月発行)

今月の特集1 検査と臨床のコラボで理解する腫瘍マーカー
今月の特集2 血液細胞形態判読の極意

59巻6号(2015年6月発行)

今月の特集1 日常検査としての心エコー
今月の特集2 健診・人間ドックと臨床検査

59巻5号(2015年5月発行)

今月の特集1 1滴で捉える病態
今月の特集2 乳癌病理診断の進歩

59巻4号(2015年4月発行)

今月の特集1 奥の深い高尿酸血症
今月の特集2 感染制御と連携—検査部門はどのようにかかわっていくべきか

59巻3号(2015年3月発行)

今月の特集1 検査システムの更新に備える
今月の特集2 夜勤で必要な輸血の知識

59巻2号(2015年2月発行)

今月の特集1 動脈硬化症の最先端
今月の特集2 血算値判読の極意

59巻1号(2015年1月発行)

今月の特集1 採血から分析前までのエッセンス
今月の特集2 新型インフルエンザへの対応—医療機関の新たな備え

58巻13号(2014年12月発行)

今月の特集1 検査でわかる!M蛋白血症と多発性骨髄腫
今月の特集2 とても怖い心臓病ACSの診断と治療

58巻12号(2014年11月発行)

今月の特集1 甲状腺疾患診断NOW
今月の特集2 ブラックボックス化からの脱却—臨床検査の可視化

58巻11号(2014年10月発行)

増刊号 微生物検査 イエローページ

58巻10号(2014年10月発行)

今月の特集1 血液培養検査を感染症診療に役立てる
今月の特集2 尿沈渣検査の新たな付加価値

58巻9号(2014年9月発行)

今月の特集1 関節リウマチ診療の変化に対応する
今月の特集2 てんかんと臨床検査のかかわり

58巻8号(2014年8月発行)

今月の特集1 個別化医療を担う―コンパニオン診断
今月の特集2 血栓症時代の検査

58巻7号(2014年7月発行)

今月の特集1 電解質,酸塩基平衡検査を苦手にしない
今月の特集2 夏に知っておきたい細菌性胃腸炎

58巻6号(2014年6月発行)

今月の特集1 液状化検体細胞診(LBC)にはどんなメリットがあるか
今月の特集2 生理機能検査からみえる糖尿病合併症

58巻5号(2014年5月発行)

今月の特集1 最新の輸血検査
今月の特集2 改めて,精度管理を考える

58巻4号(2014年4月発行)

今月の特集1 検査室間連携が高める臨床検査の付加価値
今月の特集2 話題の感染症2014

58巻3号(2014年3月発行)

今月の特集1 検査で切り込む溶血性貧血
今月の特集2 知っておくべき睡眠呼吸障害のあれこれ

58巻2号(2014年2月発行)

今月の特集1 JSCC勧告法は磐石か?―課題と展望
今月の特集2 Ⅰ型アレルギーを究める

58巻1号(2014年1月発行)

今月の特集1 診療ガイドラインに活用される臨床検査
今月の特集2 深在性真菌症を学ぶ

57巻13号(2013年12月発行)

今月の特集1 病理組織・細胞診検査の精度管理
今月の特集2 目でみる悪性リンパ腫の骨髄病変

57巻12号(2013年11月発行)

今月の特集1 前立腺癌マーカー
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査②

57巻11号(2013年10月発行)

特集 はじめよう,検査説明

57巻10号(2013年10月発行)

今月の特集1 神経領域の生理機能検査の現状と新たな展開
今月の特集2 Clostridium difficile感染症

57巻9号(2013年9月発行)

今月の特集1 肺癌診断update
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査①

57巻8号(2013年8月発行)

今月の特集1 特定健診項目の標準化と今後の展開
今月の特集2 輸血関連副作用

57巻7号(2013年7月発行)

今月の特集1 遺伝子関連検査の標準化に向けて
今月の特集2 感染症と発癌

57巻6号(2013年6月発行)

今月の特集1 尿バイオマーカー
今月の特集2 連続モニタリング検査

57巻5号(2013年5月発行)

今月の特集1 実践EBLM―検査値を活かす
今月の特集2 ADAMTS13と臨床検査

57巻4号(2013年4月発行)

今月の特集1 次世代の微生物検査
今月の特集2 非アルコール性脂肪性肝疾患

57巻3号(2013年3月発行)

今月の特集1 分子病理診断の進歩
今月の特集2 血管炎症候群

57巻2号(2013年2月発行)

今月の主題1 血管超音波検査
今月の主題2 血液形態検査の標準化

57巻1号(2013年1月発行)

今月の主題1 臨床検査の展望
今月の主題2 ウイルス性胃腸炎

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