icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床検査20巻6号

1976年06月発行

雑誌目次

カラーグラフ

—細菌の塗抹・培養 Ⅱ—腸管感染原因菌 1

小寺 健一

pp.574-575

腸管系病原菌は伝染病の病原菌と食中毒型の腸炎起因菌とに大別される.

 伝染病の病原菌としては,Vibrio cholerae,Salmonella typhi,Salmonella paratyphi AおよびB,Salmonella sendai,Shigella属菌がある.食中毒型としてはVibrio parahaemolyticus,上記のSalmonellaを除く大部分のSalmonella属菌,病原大腸菌,耐熱性Clostridium perfringensなどがある.Vibrio cholerae serogroup O-1(biotype choleraeとbiotype eltor)によって起こるコレラは,烈しい米のとぎ汁様の下痢と嘔吐を起こし,強い脱水症状を伴うのが特徴である.これらの症状はコレラ菌の産生するコレラ・エンテロトキシン(choleragenとも呼ばれる)によるものである.東南アジアにおいては常に患者が発生しているので,海外からの帰国者の検疫において重要な伝染病といえる.Vibrio parahaemolyticusによって起こる食中毒は,細菌性食中毒の約半数をしめており,その発生は夏期に多い.この疾患は下痢が烈しく,水様性または血便を排泄する.

技術解説

免疫粘着血球凝集反応

関根 暉彬 , 西岡 久寿弥

pp.577-586

 抗原抗体結合物に補体が反応(classical path-way)するか,またはalternate pathwayによりC3bサイトが形成されると,ヒト赤血球上にあるC3bレセプター(IAレセプター)と結合するようになる.この現象は生体内で大きな役割を担っているらしいことが分かりつつある.invitroでは凝集反応として観察されるこの現象を,抗原,抗体,または補体成分の検出のために用いたのが免疫粘着血球凝集反応(lmmune ad-herence hemagglutination;IAHA)である.IAHAがいろいろな抗原,抗体系の検出に用いられるのは次のような理由からである.①感度が良い—HBs抗原の場合では最小検出濃度は約10ng/ml (1μg/mlのHBs抗原のタイターが128倍であった)であり,これはRIAの感度に等しい.しかし,IAHAでは分子量の大きい抗原ほど感度が良く,粒子状抗原でもよい.分子量の小さい抗原では他の方法と大差がない.ウシ血清アルブミンを抗原に用いた場合では,補体結合反応のわずか数倍の感度でしかない.このような傾向は抗体検出の場合でも言える.②抗原または抗体が精製されてなくてもよく,しかも少量でよい.反応系を阻害しないかぎり物質的に純度は要求されない.抗体の特異性については反応系に関係ない抗体はあっても問題にならない.

白血球機能検査法貪食能の定量的測定およびNBT試験簡便法

山縣 香 , 滝川 清治 , 高田 勝利 , 坂井 正治

pp.587-594

 好中球は走化,貪食,殺菌および消化作用を通して,細菌をはじめとする異物を処理することにより,生体防御機構に重要な役割を果たしている.貪食能は良好であるが,ある種の細菌に対する殺菌能の著明な低下を示す小児の慢性肉芽腫性疾患(chronic granulomatous disease of ch-ildhood;CGD)や,好中球の遊走および走化作用のな欠除しているlazy leukocyte syndromeなどの疾患に示されるように,好中球のこれらの機能は密接に関連してはいるが,それぞれ異なった代謝機構により営まれていることが明らかにされてきた.したがって,好中球の機能を評価する場合には好中球の諸機能の多面的観察が必要である.

 また,好中球機能の先天的に欠除した疾患以外にも,細菌感染症,慢性骨髄性白血病,全身性エリテマトーデス,リウマチ性関節炎,肝硬変症,糖尿病などにおいても,好中球自体の機能異常が報告されており,これらの疾患において,感染症の合併率の高い原因の一つと考えられており,また好中球の機能異常がこれらの疾患の病像に関与し,修飾していると考えられている1).したがって,好中球機能の検索は一般臨床的にも車要な意義を有する.

第4回樫田記念賞受賞論文

臨床化学分析のシステム化に関する研究

松井 朝子

pp.595-602

 臨床検査における機器の自動化は多くの利点1)を有するものとして世界的に普及してきた.一方,コンピューターをこれに導入してデータの処理,業務の能率化を目的とした検査全般の自動化も,欧米では早くから実施の段階を迎え,本邦でも数年前より着目され2),種々の問題点が指摘されながらも徐々に完成した姿を迎えるに至っている.しかし,終局の目標である病院全体の自動化という近代診療形態の合理化達成までは道遠い観がある3)

 しかし,一歩ずつこれに近づいている流れは正当であり,種々の問題点を克服して一日も早く優れたシステム化を実現することは臨床検査に関係するものの現時点の努力目標であり,そのためには多方面の力を結集して進める必要があると思われる.我々は1971年4月ごろより検討を始め,IDを装着した日立M4004),500およびM181分光光度計にHITAC−10(4+65K語)をつなぎ,特殊検査を除いた血清を検体とする生化学検査の分析,およびその検査に随伴する検体分離後の業務のシステム化を試みた.その日標5)と経過6)については既に臨床検査自動化研究会において概要を報告しているが,具体的な計画が始まってから約1年半を経た1973年4月よりルーチンワークに使用し現在に至っているので,その経験を主とした実際的研究成果を次に述べたい.

私のくふう

セルロゲルの乾燥補助剤

松崎 正明

pp.602

 脂質関係の検査は増加の一途をたどっている中で,リポタンパク分画は血清保存が難しく,経時変化した検体ではPre-β値が測定不能になることもあって,ルーチン化には未解決の問題が多い.測定法としてはセルロゲルを支持体としたオゾン化Schiff反応が最も普及している方法と思われるが,泳動後5%トリクロール酢酸液で固定した膜を,スライドグラスに貼って乾燥してからオゾン化するわけであるが,乾燥が不完全であればオゾン化されず,かといって完全に乾燥すれば膜は歪み,染色液になじまないという,実にやっかいな代物である.それでこの行程をスムーズに進めるために,セルロゲルをスライドグラスに貼り付けるペースト液を考案した.処方は次のとおりで,室温で長期保存に耐える.

 これをスポイトでスライドグラスの上に2〜3滴滴下し,泳動,固定してメタノール液である程度脱水したセルロゲルを貼り,ドライヤーで乾燥させてオゾン化する.このように処理した膜は完全に乾燥しても歪むことはない.染色の前処理として,膜を0.001N塩酸に浸してスライドグラスから離し,湿潤させる場合に一気に液に入れるとムラができて失敗することがある,Brig−35は完全に乾燥した膜に親水性をもたせる効果があって,オゾン化した標本を病理で用いる立形のバットに入れて,スライドグラスの裏面から静かに液を注げば10枚の標本は1分足らずで均一に水分を吸収させることが可能である.

総説

寄生蠕虫症の血清診断

辻 守康

pp.603-607

 近年の医学領域における免疫学的研究の著しい進歩に伴い,寄生虫学領域においてもこれら免疫血清学的手法が検討され,既に多くの寄生虫感染症の補助的診断法として試みられ,実用化されている.人体寄生虫症の確定診断は,虫体あるいは虫卵の証明という形態学的証明にあることはいうまでもないが,最近我が国でもしばしばみられるアニサキス症やイヌ・ネコ回虫症のごとき異所寄生例の場合とか,感染虫体数の少ない場合には血清診断が決め手となることが少なくない.そこで今回はこれら寄生虫症における血清診断の幾つかについて述べるとともに,その問題点,留意すべき事柄などについてもふれてみたいと思う.

臨床検査の問題点・79

染色体標本の作り方—分染法も含めて

黒木 良和 , 石井 久美子

pp.608-614

最近,染色体検査に分染法(Banding)が進出して,より深い分析力が期待されている.しかし,分染の基礎は従来のギムザ標本と同様,標本作成にある.標本の固定・分散・保存,形態の読み方,報告の仕方など実際面から,分染法へ言及していく.(カットは分染された染色体)

異常値・異常反応の出た時・42

ASO(抗ストレプトリジンO)

河合 忠

pp.615-618

レンサ球菌感染における抗体産生

 レンサ球菌の抗原物質は菌体外物質と菌体表在性物質とに二大別される.このうち,菌体外物質にはストレプトリジンO(SLO),ストレプトリジンS,ヒアルロニダーゼ,ストレプトキナーゼ,ディホスフォピリジンヌクレオチダーゼ,デスオキシリボヌクレアーゼ,アミラーゼ,エステラーゼ,発赤毒素,プロティナーゼなどがある.これらの多くは感染経過中に抗体産生を促すものである.菌体外毒素に対する抗体は感染早期から産生され,ある程度高値を持続した後下降して正常に復する.それに反して,菌体成分に対する抗体は感染後徐々に抗体価が上がり,比較的長年月にわたって抗体が持続する.したがって,極く最近にレンサ球菌感染症があったか否かを診断するには主として菌体外毒素に対する抗体,とりわけASOの上昇を参考にするわけである.

 例えば,ASOについては,レンサ球菌の感染が始ってから7〜10日ころに上昇しはじめ,2〜5週後には最高値に達し,数週間で徐々に低下してくる1).しかし,個々の例によってかなり差が認められ,特に咽頭より長期間にわたって菌が検出される場合には,ASOが長期間高値を持続することが多い.

質疑応答

尿沈渣にチロジンが出現

K生 , 猪狩 淳

pp.619

 問 先日,沈渣にチロジンが出ました.このチロジンは成書には病的のみに出現と書かれてありますが,薬アミノ系を飲用した場合出現するのでしょうか.この患者は,肝機能正常でカリクロモンカプセルを服用していました.

中検へ一言・中検から一言

中検制度の功罪,他

石田 尚志

pp.620-621

ほとんどの検査が臨床医の日常業務から離れて中央検査室で行われるようになって,かれこれ20年近くになるが,少なくとも血液,尿,ふん便などの検査できりきり舞いさせられた経験のある者にとっては現在の検査室制度は感慨深いものがある.今回"検査室ヘ一言"をとの注文をうけたが,これまで見聞された検査室に関係するいくつかの事柄を整理して老えて見よう.まず第一に,おそらくどこの病院でも問題とされることは検査報告のスピードの問題であろう.しかし,これについては検査室での検査処理スピードの問題よりも,むしろ検査伝票の動きが滞っている場合が少なからずあると思われるので,検査室と事務部門との間で緊密な話し合いの存在が必要であろう.次に問題として取り上げられる頻度の高いものは検査結果のバラツキあるいは変動についてである.これについては検査結果を利用する医師側の認識不足に基づく場合が多く,特に提出された検査材料の状態(凝固あるいは溶血)と日内あるいは日差変動のもともと大きい対象について検査を指示する側の十分な配慮が必要である.さて今日,大抵の大学病院の中央検査室には臨床側から医師が派遣され,検査室と臨床側とのパイプ役をなしているが,検査内容の性質上必ずしもその存在が明確となっていない場合がみられる.

座談会

一級試験を目指して

福永 昇 , 黒坂 公生 , 保崎 清人 , 内浦 玉堂 , 村上 省三 , 井川 幸雄 , 樫田 良精

pp.622-630

 非常に厳しい難関を突破したことから,"技術の神様"といわれる一級臨床病理技術士(日本臨床病理学会).二級試験の合格者が得られる受験資格であるが,いまだに57名の合格者を数えるのみである.そこで,過去に各科目の試験委員を経験された先生方に,これから受験する技師のために内容のポイント,勉強の仕方など,具体的なサゼスションを伺う.

研究

婦人科における塗抹細胞標本作製法の再検討

福永 義一

pp.631-634

緒言

 最近,産婦人科実地医家から子宮頸部より細胞採取,塗抹,固定されたコーティング法による郵送標本が急増しているが,これらの標本のなかには,いわゆる不良標本が多数含まれ,スクリーニングに際し,その目標となる核クロマチンが明瞭に染色されないものが多い.そこで染色不良の原因追求を重点に,婦人科細胞診の標本作製行程における技術上の問題点,郵送標本の改良点,およびアメリカの細胞診検査機関の染色法の現況,特にギル染色法の追試を行い,細胞判定に最も適した標本の作製に対し各種実験を行い,若干の新知見を得たので報告する.

ヘモグロビン測定試薬(Van Kampen液)における二,三の考察

富田 眞市 , 藤原 充 , 峰村 義隆 , 吉井 新 , 松本 嘉夫

pp.635-639

緒言

 シアンメトヘモグロビン(HiCN)法はヘモグロビン(Hb)の正確な測定法として現在広く用いられ,VanKampenら1)の方法に準じた試薬が市販されている.これは(図1)フェリシアン化カリウム〔K3Fe(CN)6〕とシアン化カリウム(KCN)とを含むVan Kampen試薬に血液を加えることにより,スルフォヘモグロビン(SHb)以外のすべてのHbはK3Fe(CN)6によってメトヘモグロビン(Hi)に酸化され,更にKCNによって変えられたHiCNを比色定量する方法で,操作が簡単で,安定かつ長時間保存の効く利点を有し,国際標準法2)に設定されている.

 近年,種々の臨床検査法の自動化が進むにつれ,緊急検体や小数検体を迅速に処理するために多項目血液検査装置(Sequential Multiple Blood Analyzer)が開発され,この器機1台でHbを含め,アルカリホスファターゼ,ビリルビン,アルブミン,コレステロールなど十数項目の生化学検査がなされている.

編集者への手紙

血清γ-GTP測定の自動化—日立400を用いて

小林 一二美 , 下村 弘治

pp.640

Letter to Editor

 我々はOrlowski法に基づく試薬キット(三共)により血清γ-GTPの測定を日立400自動分析装置に適用することを試み,若干の知見を得ましたので以下に述べ,ご批判を得たいと思います.

新しいキットの紹介

血液中の病原細菌の検出に関する検討—新しいVacutainer culture tubeについて

浅野 英夫 , 恵木 由美子 , 横田 好子 , 西田 実

pp.641-644

 現在,市販されているVacutainer culture tube−20mlは好気性菌に対しては優れた増菌能を示すが,ある種の嫌気性菌の増殖については必ずしも十分満足したものではなかった.今回,新しく検討したVacutainerculture tube−50mlはこの点に改良が加えられた.すなわち,この実験に用いた嫌気性菌の10種類の試験菌は,血液試料中1個/ml (VCT−50中5個/ml)の接種により,そのすべてが1〜3日間の培養で増殖が認められた.また新しいVacutainer culture tube−50 mlにおける増殖能の増強は,好気性菌のE,coli NIHJ JC−2,K.Pneumoniae NCTC−418およびP.aeruginosaIAM−1095においても認められた.

尿試験紙BM Test Strip 6の使用経験

加藤 恵一 , 屋形 稔

pp.645-648

はじめに

 尿定性,半定量検査は,いつでも,どこでも,だれでも実施できることが建前で,病院,実地医家の日常診療に,集団検診のふるい分け検査に利用される.特に最近重視されてきているのは緊急検査としての役割である.例え検査室が休みのときでも用いられることは,集中化した現代の検査体系では貴重な方法といわねばならない.一方で,今後はprofilingの一環として多項目同時測定としての意義も評価されてよいと思われる1)

 かかる試験紙や錠剤を用いた尿検査は,あらゆる簡易検査の口火を切って行われたもので,あまねく普及してきた.特に外来診療における尿タンパク質,尿糖,尿ウロビリノゲンの三つの検査はもともと不可欠のものであったが,簡易化で極めて容易となった.更にpH,ケトン体,潜血反応,ビリルビンなども加わって,外来検査の最初の実施項目としてスクリーニングの役割を果たしている.

検査と主要疾患・42

免疫不全症

河合 忠

pp.650-651

 免疫不全症というのは,生体がもっているはずの免疫機能が欠損または低下する病態を意味している,臨床的には反復する感染罹患傾向を示すのが特徴である.しかも,通常は病原性を発揮しない微生物が感染症を起こすことが少なくなく,このような場合を"ひよりみ感染(opportunisticinfections)"と呼んでいる.免疫機能のうちでも細胞性免疫が主として侵されていると真菌感染症やウイルス感染症が起こりやすく,体液性免疫が主として侵されていると化膿菌感染症や敗血症が起こりやすい.

 免疫不全症は原発性と続発性に分けられる.また,免疫機能のどの部分が主として侵されているかによって,(1)細胞性免疫不全症,(2)体液性免疫不全症,および両者が合併してみられる(3)複合免疫不全症の三つに大別される.

検査機器のメカニズム・54

フレームレスアトマイザー

長谷川 敬彦

pp.652-653

 原子吸光分析での熱解離による原子化の方法としては,一般に化学炎が用いられてきている.

(MX⇔M+X⇔M+e)

検査室の用語事典

精度管理用語

井川 幸雄

pp.655

63)標準血清;standard (in) serum

成分濃度既知の血清があれば,検量の基準としてはなはだ便利なので,血清を凍結乾燥したもの,血清を透析し低分子成分を除き純成分を添加したもの,血清各成分の純品から合成したものなど多くが工夫され,また現実にも自動分析の標準液として用いられている.しかし,標準血清は今のところ標準液としての正確度に匹敵するものとはいえないので,この言葉には羊頭狗肉の感がつきまとっている.

臨床検査のコンピューター用語

鈴木 孝治 , 春日 誠次

pp.656

58) Double Precision;2倍精度

コンピューターの四則演算命令が通常取り扱う数の2倍の桁数の数を取り扱って,演算精度を2倍にすることをいう.1語16ビットのミニコンピューターでは,2倍精度では32ビットとなる.このような2倍精度の演算命令を2倍精度演算命令という.

臨床化学分析談話会より・34<第2回冬期セミナー>

薬剤干渉に議論集中!

伊藤 忠一

pp.657

 ニセコでの第1回冬期セミナー(札医大・佐々木禎一先生)に次いで,第2回の冬期セミナー(2月11〜12日)を蔵王というスキーリゾートで行うことになり,それをお世話することになってしまった.蔵王はご存じのごとく樹氷で有名な日本有数のスキーリゾートでもあり,またセミナー開催の案内文の文意に若干リクリエーションに偏りすぎているのではないかという危惧を抱かれた方もあったようだが,出席の方が第1回に続けての方が多く,内容をよく理解していただいていたせいか,非常に楽しく討論に参加することができたというお手紙をたくさんいただいている.この際に誤解を解いておきたい.演題は追加発言を含めて19題集まった.そのうちdruginterference (薬劑干渉)関連の演題を集めてシンポジウムの形式にした,そのプログラムを略記する.

Senior Course 生化学

—臨床化学検査における酵素化学—酵素による定性・定量分析 Ⅵ

山下 辰久

pp.658-659

酵素分析のデザイン

 実際に酵素分析のデザインを組む場合,一般に,

・酵素反応の特異性の問題—特異性が高いかどうか

Senior Course 血液

血液染色 Ⅰ

黒川 一郎

pp.660-661

 日常の血液検査に用いられる色素の大半は芳香族化合物である.これを中心に色素の構造を考えてみると,まず,ベンゼン核に1個ないし数個の結合物を有したものを一括してクロモゲン(chromogen)と称している.この結合物自体はchromophoreと呼ばれ,一定の原子の集まりで—C=C—,=C=O,=C=S,=C=N,N=N,N=O,—NO2などが基本的なもので,クロモゲン自体の有する色調の種類に大きく関係する.しかし,クロモゲン自体に染色能力は乏しい.例えばベンゼン核に—NO2が3個付着した物質はトリニトロベンゼンで黄色を呈する.しかし染色能力はなく,血液標本にかけても染色させる力はない.クロモゲン(色素の前段階)といわれるゆえんであろう.しかしベンゼン核の1個のHがOHに置換するとピクリン酸となり染色性をもつようになる.OHのようにクロモゲンを染色対象と結びつける化合物をauxochrome (助色団?)と呼ぶ.クロモゲンはこれによって色素としての機能が可能になり色の強さが増強される.一方,色素はその全体としてのイオン力によって3種に分類される.すなわち非イオン性,陰イオン性,陽イオン性色素である.イオン性色素という場合,色素のイオン力を決定する部分(colour impa-rting ion)はC6H5(ary1基)との複合化合物であり,色素全体のイオンカのバランスが陰性に傾けば陰性イオン,陽性だと陽性イオンである.

Senior Course 血清

—血清検査法の基礎—溶血反応 Ⅰ

浅川 英男

pp.662-663

 抗原,抗体のうちいずれか既知,いずれか一方が未知であるとき,それを補体結合反応を用いて知ろうとするときには最初に溶血系を作らなければならない.図に抗原,抗体,補体,溶血系の関係を示した.これは補体結合反応の原理を示したものである.補体結合反応を行うときは溶血素価の測定,補体の正常異種溶血素を取り除かなければならない.

Senior Course 細菌

腸内細菌の分類 Ⅲ—Shigella属

坂崎 利一 , 田村 和満

pp.664-665

 赤痢菌に対する属名のShigellaは志賀潔の名にちなんでCastellani & Chalmers (1919)が命名したものである.Shigellaの発見は実際にはChantemesse & Widal(1888)が最初のようであるが,その性状を詳細に研究し,これに学名(Bacillus dysenteriae)を与えたのは志賀で,かれの発見した志賀赤痢菌すなわち今日でいうShigella dysenteriae はShigella属のtypespeciesとして指定されている.

Senior Course 病理

—病理検査の技術と知識—染色 Ⅲ

橋本 敬祐

pp.666-667

 膠原線維染色法は数多いが,その中でもvan Giesonの酸性フクシンの赤色とAZANのアニリン青の青色とが特に鮮明であるから多く用いられる.あるいはMa-ssonのGoldner変法のように膠原線維をおだやかな緑で染め,核は鉄ヘマの黒色というようにしてH・Eに代わる美しい概観標本を作るのも便利である.

Senior Course 生理

—電気生理検査に必要な電気の基礎知識—平衡型増幅器とブリッジ回路

石山 陽事

pp.668-669

 心電図や脳波などの生体電気現象を歪みなく忠実に増幅するためには,前節で述べたフィルター回路と,それを含む高感度の増幅器が必要である.一般にこれらの現象を増幅する増幅器は平衡型増幅器(Balanced Am-plifier)が用いられる.平衡型増幅器の考え方としては図1—(a)に示すような抵抗ブリッジ回路に増幅機能をもたせたものと考えれば理解しやすい.

Senior Course 共通

医学用語の整理

松村 義寛

pp.670-671

冠不全か肝不全か

 カンフゼンといわれると一瞬肝障害の重症のことかと考えることはないだろうか.しばらくたってから,冠不全で心の冠状動脈の障害であることに思い至ってやっと話が分かるようになってくる,学会の講演の場のように範囲の広い話題が取り上げられるときには,平常の狭い領域で使用されている極くあたりまえの用語が多くの聴衆には理解し難いものであったり,場合によっては全く異なった意義のものとして受けとられることもある.

 理解を正しくさせるためには,いわゆる術語(Tech-nical term)は日本語で述べた後に外国語(多くは英語,時にドイツ語)で繰り返すことが行われる.更に詳しく内容を説明しなければならないこともあり,そのほうが喜ばれることにもなる.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

64巻12号(2020年12月発行)

今月の特集1 血栓止血学のトピックス—求められる検査の原点と進化
今月の特集2 臨床検査とIoT

64巻11号(2020年11月発行)

今月の特集1 基準範囲と臨床判断値を考える
今月の特集2 パニック値報告 私はこう考える

64巻10号(2020年10月発行)

増刊号 がんゲノム医療用語事典

64巻9号(2020年9月発行)

今月の特集1 やっぱり大事なCRP
今月の特集2 どうする?精度管理

64巻8号(2020年8月発行)

今月の特集1 AI医療の現状と課題
今月の特集2 IgG4関連疾患の理解と検査からのアプローチ

64巻7号(2020年7月発行)

今月の特集1 骨髄不全症の病態と検査
今月の特集2 薬剤耐性カンジダを考える

64巻6号(2020年6月発行)

今月の特集 超音波検査報告書の書き方—良い例,悪い例

64巻5号(2020年5月発行)

今月の特集1 中性脂肪の何が問題なのか
今月の特集2 EBLM(evidence based laboratory medicine)の新展開

64巻4号(2020年4月発行)

増刊号 これで万全!緊急を要するエコー所見

64巻3号(2020年3月発行)

今月の特集1 Clostridioides difficile感染症—近年の話題
今月の特集2 質量分析を利用した臨床検査

64巻2号(2020年2月発行)

今月の特集1 検査でわかる二次性高血圧
今月の特集2 標準採血法アップデート

64巻1号(2020年1月発行)

今月の特集1 免疫チェックポイント阻害薬—押さえるべき特徴と注意点
今月の特集2 生理検査—この所見を見逃すな!

63巻12号(2019年12月発行)

今月の特集1 糖尿病関連検査の動向
今月の特集2 高血圧の臨床—生理検査を中心に

63巻11号(2019年11月発行)

今月の特集1 腎臓を測る
今月の特集2 大規模自然災害後の感染症対策

63巻10号(2019年10月発行)

増刊号 維持・継続まで見据えた—ISO15189取得サポートブック

63巻9号(2019年9月発行)

今月の特集1 健診・人間ドックで指摘される悩ましい検査異常
今月の特集2 現代の非結核性抗酸菌症

63巻8号(2019年8月発行)

今月の特集 知っておきたい がんゲノム医療用語集

63巻7号(2019年7月発行)

今月の特集1 造血器腫瘍の遺伝子異常
今月の特集2 COPDを知る

63巻6号(2019年6月発行)

今月の特集1 生理検査における医療安全
今月の特集2 薬剤耐性菌のアウトブレイク対応—アナタが変える危機管理

63巻5号(2019年5月発行)

今月の特集1 現在のHIV感染症と臨床検査
今月の特集2 症例から学ぶフローサイトメトリー検査の読み方

63巻4号(2019年4月発行)

増刊号 検査項目と異常値からみた—緊急・重要疾患レッドページ

63巻3号(2019年3月発行)

今月の特集 血管エコー検査 まれな症例は一度みると忘れない

63巻2号(2019年2月発行)

今月の特集1 てんかんup to date
今月の特集2 災害現場で活かす臨床検査—大規模災害時の経験から

63巻1号(2019年1月発行)

今月の特集1 発症を予測する臨床検査—先制医療で5疾病に立ち向かう!
今月の特集2 薬の効果・副作用と検査値

62巻12号(2018年12月発行)

今月の特集1 海外帰りでも慌てない旅行者感染症
今月の特集2 最近の輸血・細胞移植をめぐって

62巻11号(2018年11月発行)

今月の特集1 循環癌細胞(CTC)とリキッドバイオプシー
今月の特集2 ACSを見逃さない!

62巻10号(2018年10月発行)

増刊号 感染症関連国際ガイドライン—近年のまとめ

62巻9号(2018年9月発行)

今月の特集1 DIC診断基準
今月の特集2 知っておきたい遺伝性不整脈

62巻8号(2018年8月発行)

今月の特集 女性のライフステージと臨床検査

62巻7号(2018年7月発行)

今月の特集1 尿検査の新たな潮流
今月の特集2 現場を変える!効果的な感染症検査報告

62巻6号(2018年6月発行)

今月の特集1 The Bone—骨疾患の病態と臨床検査
今月の特集2 筋疾患に迫る

62巻5号(2018年5月発行)

今月の特集1 肝線維化をcatch
今月の特集2 不妊・不育症医療の最前線

62巻4号(2018年4月発行)

増刊号 疾患・病態を理解する—尿沈渣レファレンスブック

62巻3号(2018年3月発行)

今月の特集1 症例から学ぶ血友病とvon Willebrand病
今月の特集2 成人先天性心疾患

62巻2号(2018年2月発行)

今月の特集1 Stroke—脳卒中を診る
今月の特集2 実は増えている“梅毒”

62巻1号(2018年1月発行)

今月の特集1 知っておきたい感染症関連診療ガイドラインのエッセンス
今月の特集2 心腎連関を理解する

60巻13号(2016年12月発行)

今月の特集1 認知症待ったなし!
今月の特集2 がん分子標的治療にかかわる臨床検査・遺伝子検査

60巻12号(2016年11月発行)

今月の特集1 血液学検査を支える標準化
今月の特集2 脂質検査の盲点

60巻11号(2016年10月発行)

増刊号 心電図が臨床につながる本。

60巻10号(2016年10月発行)

今月の特集1 血球貪食症候群を知る
今月の特集2 感染症の迅速診断—POCTの可能性を探る

60巻9号(2016年9月発行)

今月の特集1 睡眠障害と臨床検査
今月の特集2 臨床検査領域における次世代データ解析—ビッグデータ解析を視野に入れて

60巻8号(2016年8月発行)

今月の特集1 好塩基球の謎に迫る
今月の特集2 キャリアデザイン

60巻7号(2016年7月発行)

今月の特集1 The SLE
今月の特集2 百日咳,いま知っておきたいこと

60巻6号(2016年6月発行)

今月の特集1 もっと知りたい! 川崎病
今月の特集2 CKDの臨床検査と腎病理診断

60巻5号(2016年5月発行)

今月の特集1 体腔液の臨床検査
今月の特集2 感度を磨く—検査性能の追求

60巻4号(2016年4月発行)

今月の特集1 血漿蛋白—その病態と検査
今月の特集2 感染症診断に使われるバイオマーカー—その臨床的意義とは?

60巻3号(2016年3月発行)

今月の特集1 日常検査からみえる病態—心電図検査編
今月の特集2 smartに実践する検体採取

60巻2号(2016年2月発行)

今月の特集1 深く知ろう! 血栓止血検査
今月の特集2 実践に役立つ呼吸機能検査の測定手技

60巻1号(2016年1月発行)

今月の特集1 社会に貢献する臨床検査
今月の特集2 グローバル化時代の耐性菌感染症

59巻13号(2015年12月発行)

今月の特集1 移植医療を支える臨床検査
今月の特集2 検査室が育てる研修医

59巻12号(2015年11月発行)

今月の特集1 ウイルス性肝炎をまとめて学ぶ
今月の特集2 腹部超音波を極める

59巻11号(2015年10月発行)

増刊号 ひとりでも困らない! 検査当直イエローページ

59巻10号(2015年10月発行)

今月の特集1 見逃してはならない寄生虫疾患
今月の特集2 MDS/MPNを知ろう

59巻9号(2015年9月発行)

今月の特集1 乳腺の臨床を支える超音波検査
今月の特集2 臨地実習で学生に何を与えることができるか

59巻8号(2015年8月発行)

今月の特集1 臨床検査の視点から科学する老化
今月の特集2 感染症サーベイランスの実際

59巻7号(2015年7月発行)

今月の特集1 検査と臨床のコラボで理解する腫瘍マーカー
今月の特集2 血液細胞形態判読の極意

59巻6号(2015年6月発行)

今月の特集1 日常検査としての心エコー
今月の特集2 健診・人間ドックと臨床検査

59巻5号(2015年5月発行)

今月の特集1 1滴で捉える病態
今月の特集2 乳癌病理診断の進歩

59巻4号(2015年4月発行)

今月の特集1 奥の深い高尿酸血症
今月の特集2 感染制御と連携—検査部門はどのようにかかわっていくべきか

59巻3号(2015年3月発行)

今月の特集1 検査システムの更新に備える
今月の特集2 夜勤で必要な輸血の知識

59巻2号(2015年2月発行)

今月の特集1 動脈硬化症の最先端
今月の特集2 血算値判読の極意

59巻1号(2015年1月発行)

今月の特集1 採血から分析前までのエッセンス
今月の特集2 新型インフルエンザへの対応—医療機関の新たな備え

58巻13号(2014年12月発行)

今月の特集1 検査でわかる!M蛋白血症と多発性骨髄腫
今月の特集2 とても怖い心臓病ACSの診断と治療

58巻12号(2014年11月発行)

今月の特集1 甲状腺疾患診断NOW
今月の特集2 ブラックボックス化からの脱却—臨床検査の可視化

58巻11号(2014年10月発行)

増刊号 微生物検査 イエローページ

58巻10号(2014年10月発行)

今月の特集1 血液培養検査を感染症診療に役立てる
今月の特集2 尿沈渣検査の新たな付加価値

58巻9号(2014年9月発行)

今月の特集1 関節リウマチ診療の変化に対応する
今月の特集2 てんかんと臨床検査のかかわり

58巻8号(2014年8月発行)

今月の特集1 個別化医療を担う―コンパニオン診断
今月の特集2 血栓症時代の検査

58巻7号(2014年7月発行)

今月の特集1 電解質,酸塩基平衡検査を苦手にしない
今月の特集2 夏に知っておきたい細菌性胃腸炎

58巻6号(2014年6月発行)

今月の特集1 液状化検体細胞診(LBC)にはどんなメリットがあるか
今月の特集2 生理機能検査からみえる糖尿病合併症

58巻5号(2014年5月発行)

今月の特集1 最新の輸血検査
今月の特集2 改めて,精度管理を考える

58巻4号(2014年4月発行)

今月の特集1 検査室間連携が高める臨床検査の付加価値
今月の特集2 話題の感染症2014

58巻3号(2014年3月発行)

今月の特集1 検査で切り込む溶血性貧血
今月の特集2 知っておくべき睡眠呼吸障害のあれこれ

58巻2号(2014年2月発行)

今月の特集1 JSCC勧告法は磐石か?―課題と展望
今月の特集2 Ⅰ型アレルギーを究める

58巻1号(2014年1月発行)

今月の特集1 診療ガイドラインに活用される臨床検査
今月の特集2 深在性真菌症を学ぶ

57巻13号(2013年12月発行)

今月の特集1 病理組織・細胞診検査の精度管理
今月の特集2 目でみる悪性リンパ腫の骨髄病変

57巻12号(2013年11月発行)

今月の特集1 前立腺癌マーカー
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査②

57巻11号(2013年10月発行)

特集 はじめよう,検査説明

57巻10号(2013年10月発行)

今月の特集1 神経領域の生理機能検査の現状と新たな展開
今月の特集2 Clostridium difficile感染症

57巻9号(2013年9月発行)

今月の特集1 肺癌診断update
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査①

57巻8号(2013年8月発行)

今月の特集1 特定健診項目の標準化と今後の展開
今月の特集2 輸血関連副作用

57巻7号(2013年7月発行)

今月の特集1 遺伝子関連検査の標準化に向けて
今月の特集2 感染症と発癌

57巻6号(2013年6月発行)

今月の特集1 尿バイオマーカー
今月の特集2 連続モニタリング検査

57巻5号(2013年5月発行)

今月の特集1 実践EBLM―検査値を活かす
今月の特集2 ADAMTS13と臨床検査

57巻4号(2013年4月発行)

今月の特集1 次世代の微生物検査
今月の特集2 非アルコール性脂肪性肝疾患

57巻3号(2013年3月発行)

今月の特集1 分子病理診断の進歩
今月の特集2 血管炎症候群

57巻2号(2013年2月発行)

今月の主題1 血管超音波検査
今月の主題2 血液形態検査の標準化

57巻1号(2013年1月発行)

今月の主題1 臨床検査の展望
今月の主題2 ウイルス性胃腸炎

icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら