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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査20巻7号

1976年07月発行

雑誌目次

カラーグラフ

性染色質—その臨床病理的意義

高橋 正宜

pp.676-677

性染色質あるいはX小体(Barr & Bertram)は正常女性の体細胞間期に,核縁に接して見られる平凸状,三角状,半球状の小体で塩基性色素に好染する.これはXXの2個の染色体のうち遺伝学的に不活性化した1個の性染色体(late replicating X)に由来するヘテロクロマチンである.Qバンド,Gバンドなどの新しい分染法が導入されるまではC群におけるX染色体の同定には限界があり,性染色質による性染色体異常のスクリーニング検査は有用なものとして活用されてきた.性染色体数は〔X小体+1〕に当たり,したがって,Turner症候群(XO)ではX小体は欠如し,Klinefelter症候群(XXY)では1個,Superfemale (XXX)では2個のX小体を認める.Y小体がY染色体数と一致するのとは異なっている(臨床検査,18,1098,1974).

 女性の末梢血好中球分葉核にみられる突起,ドラムスチックは性染色質と同意義をもつが,出現頻度は低く2〜3%である.Davidson & Robertson-Smithはその小体を5型に分類しているがドラムスチック,無茎性結節などが代表的である.癌化に伴う常染色体変異と同様にX小体の減少や増加あるいは大きさの異常などが注目される.また,悪性腫瘍例における好中球分葉核の糸状突起は悪性随伴所見として興味深い.

癌細胞における性染色質の態度—カラーグラフ参照

大橋 浩文 , 高橋 正宜

pp.736-737

はじめに

 性染色質(sex chromatin)は,1949年Barr & Ber-tramが,雌猫の神経細胞に発見したのに始まり,1955年Moore & Barrが,sex決定にbuccal smeartechniqueを用い,性染色質はセックスクロマチンテストとして,核の性決定に重要な役割を演ずるようになった.

 性染色質は,女性の間期体細胞において遺伝的に不活性化したX染色体の一つが凝縮して認められるものと考えられる.すなわち正常女性(XX)では,1個であるが,性染色体異常において,時に2個(XXX),あるいは3個(XXXX)出現することもある.大きさは0.7×1.2μm程度の,平凸形(一面凸で一面平ら)で核膜の内側に密接し,塩基性色素で明瞭に染め出され,Feulgen反応陽性で,主としてDNAよりでぎている.

技術解説

心機能検査としての色素希釈法

香取 瞭

pp.679-687

色素希釈法とは

 血管内に指示薬を注入し,その指示薬が血流により希釈される過程を記録することによって心機能,循環動態を検査し,心疾患を診断する方法を指示薬希釈法(indicator-dilution method)という.指示薬として色素を使用したものが色素希釈法(dye-dilution method)である.

 色素希釈法を他の指示薬希釈法(ラジオアイソトープ,熱希釈法,電気伝導度法,白金電極法)と比較したとき,1)装置が比較的簡単で,移動に便利である.2)外来,ベッドサイドなど,どこでも簡便に施行てきる.3)被検者にあまり苦痛を与えない.4)定量的にも正確である.5)心拍出量の測定以外にも下記のような診断的検査として用いうる.などの利点がある.

酵素を用いる血清コレステロール測定法

野本 昭三

pp.688-694

酵素の出現

 現在,日常検査の項目の中にコレステロールを加えていない検査室はおそらくあるまい.脂質に関する最もポピュラーな検査項目の一つである.しかしながら,精確度,精密度を損なわずに煩雑な測定法を簡易化し迅速化して日常検査の項目にふさわしいものにするために,実に長い困難な歴史をたどってきているのもまたコレステロールである。精確度を保持するために抽出,水解,沈殿,純化,発色といった一連の手順が必須とされていたSchoenheimer-Sperry1),Sperry We-bb2)らの法から出発して,ついには一切の前処理を省略して直接に血L清を試薬に投じて発色させ比色する直接法3〜5)にまで発展して一般に普及しているのであるが,その過程をたどってみると実に多数の研究者の報告があり,一方に試薬メーカーの技術的進歩による試薬純度の向上が支えとなってきていることが伺われる.このように長い歴史をもったコレステロールの日常検査用測定法であるが,現時点でもなお反応液が強酸性で粘稠性があることから比色操作の段階で問題を起こしやすく,特に自動化機器に応用する場合などに困難を感じさせることが多い.また簡易化に伴ってビリルビンなど生体中の共存物質からの干渉を受けやすくなっていることの他に,再現性の点でも苦労の多い項日の一つになっている.

第4回樫田記念賞受賞論文

ゲンタマイシン耐性菌の細菌学的,疫学的研究

久保 勢津子

pp.695-699

 ゲンタマイシン(GM)は好気性グラム陰性杆菌に広く抗菌力を有し,現在使用されている抗生剤中最も感受性率が高い.しかし,この抗生剤の使用が年々増加するにつれ,緑膿菌,変形菌,Providencia,それと緑膿菌以外の非発酵性グラム陰性秤菌などでGM耐性菌が目立つようになり,国内,外で報告されてきている1〜3,4,9).我々は1969年千葉大学病院でGM耐性菌を見い出し報告したが1),その後当院ではこの菌の増加ばみられず,1975年になって急に増加してきた.そこでこの耐性菌の細菌学的,疫学的事項について報告する.

総説

羊水の諸検査

久慈 直志 , 福島 和夫 , 柳沢 弥太郎

pp.700-705

 出生前医学の最も重要な検査法である羊水検査は1930年代から胎児赤芽球症の診断に用いられ1),次いで胎児の性別の判定2)による伴性遺伝性疾患の診断,羊水中細胞成分の培養や羊水中成分の分析による代謝異常症の診断や,他の方面では胎児切迫仮死の診断に用いられるようになった.

臨床検査の問題点・80

心電計の規格の読み方

桜井 隆 , 石山 陽事

pp.706-712

医療技術の高度化に伴い,種々のME機器が出現しているが,その性能を知ることはオペレーターことって必須の条件である,各種機器に示されている"仕様"は何を表現しているのか—代表的なME機器,心電計を取り上げメーカーに聞いてみる.(カットはポータブル心電計)

異常値・異常反応の出た時・43

ウロビリノゲン

水本 隆章 , 山崎 晴一朗

pp.713-718

 ウロビリノゲンの検査は,Ehrlichのアルデヒド反応として,その簡便さに加えて,肝機能や溶血性疾患の診断に大きな価値を有するものとして古くから用いられてきた.しかしながら,また,この検査ほど生体内外,その他種々の因子による影響を受けて変動をするものも少ないのではないかと思われる.実際,検査室において,異常値あるいは異常反応に出合ったとき,どう考えたらよいか.それにはまず,得られた検査成績が"異常値"であるかどうかの判断,それは,病的なものなのか,あるいは検査技師として取り扱われる問題,すなわち,検体または検査技術自体,内因性および外因性(薬物)物質の干渉あるいは生理的な変動によるものなのかの区別が必要である.検査室側から比較的容易に判断できることは,検体や測定技術などに特に誤りがないとすれば,色調異常あるいは正常であっても強度において異常反応を示す場合,あるいはその他の関連する検査成績との比較などに限定されるであろう.臨床診断との食い違いについては臨床側の協力が必要になってくるし,逆に指摘されて気がつくものである.次に検査室側の問題であれば,更に原因を追求し,できる限り除去して,検査を進めていくように努めなければならない.しかしながら,これらの因子は単独に影響するだけでなく,相互にかかわり合って,多岐にわたっており,技術上の誤りなどはある程度究明除去できたとしても,妨害物質の除去となると多くの場合不可能である.

新しい肺機能検査法・Ⅰ【新連載】

クロージングボリュームの測定

冨田 友幸 , 高橋 唯郎 , 金城 幸政

pp.719-724

 末梢気道(small airway)といわれる直径2mm以下の細気管支レベルの病変は,そのあるものは進行性で重篤な状態に至るものがある.しかし従来の一般的な肺機能検査ではその早期の病変が検出しえず,この領域はquiet zoneまたはsilent zoneと呼ばれていた.近年この領域の病変の検出のためにdynamic complianceの周波数依存性,フローボリューム曲線,肺胞気動脈血ガス分圧較差,クロージングボリュームなどの測定が試みられ,なかでもクロージングボリュームはその検出性,測定手技の簡単な点,被検者への負担の少ない点などで優れており,臨床検査としても急速に普及しつつある.

質疑応答

日本臨床病理同学院のこと

O生 , 松村 義寛

pp.725

 問 昨年の秋に発足しました臨床病理同学院とはどんな性格の団体で,何を目的としているのでしょうか.また,日本臨床病理学会との関係はどうなのでしょうか.

中検へ一言・中検から一言

中検と臨床医/ラジオアッセイの中央化を!/"明日もまたどうかよろしく"

竹下 吉樹

pp.726-727

20年余り前に,我々内科医が行っていた諸検査が,中検の設立とともに,広範囲にわたり大量にできるようになったことは,臨床医学にとって非常な進歩であり有り難いものだと思っている.一方,我々直接臨床に携わっている者にとって,いささか不満を感じていることも2〜3あるので述べてみたい.まず第1に中検の時間制の問題である.土曜日は極めて限られた簡単な検査しかできず大部分は検査不能,日曜日は休みで,金曜日に入院した急を要する患者は一般患者と同様2日遅れて月曜日からやっと検査を受けることになる.連休の場合はいっそう深刻だ.また平日でも午後5時になると終わるので,夜間の救急患者の処置に困ることが多い.この解決のためには中検が常時動いていることが最上の方法であるが,これは将来に期待したい夢であろう.そこで現実的には救急時に必要不可欠でしかも簡単な検査ができる第2中検を設けておけば,必要なときにはいつでも検査ができる態勢になり必要性を満たすことができると思う.もっとも,最近の若い医師は自分で検査ができない人が多いが,これは少なくとも将来内科医になる人は研修医時代にでも中検を訪れ,自分の手で一応の検査はできるようになっておく必要がある.次いで,現在中検で扱っている検査の種類をもっと増やすことと,予約制をなくし迅速に検査できるようにすることだ.

座談会

固定化酵素の応用

村地 孝 , 北村 元仕 , 高阪 彰 , 降矢 震

pp.728-735

 工業的に利用されている固定化酵素が,最近臨床化学分析に応用されようとしている.繰り返し使用できるので,経済性が高いといわれるが,安定性はどうなのか—固定化酵素の応用面を中心に,その将来性などを臨床化学の専門家に話し合ってもらう.

研究

酸化タンタル心電図用電極

新明 豊次郎

pp.738-740

はじめに

 この種の電極の試みは1969年A.LopezとP.C.Richardsonがアルミニウムの表面を陽極酸化し絶縁物電極を製作した.ところが酸化被膜に多くの孔があり,そこから皮膚よりの湿気を吸収し,塩素イオンが酸化被膜を侵し抵抗値を下げる欠点がある.1971年にはC.H.Lagowらはアルミニウムより化学的,電気的に特性の良いタンタル箔を陽極酸化し,塩素イオンによる腐蝕を改善している.松尾らも誘電率が極めて高く,機械的に丈夫で安価なチタン酸バリウム磁器を使い絶縁物電極を製作した.

 今回,著者はタンタル板を入手し,表面を陽極酸化し心電図用電極を試作した.従来の生体用電極のほとんどが金属電極であり,生体よりの電気信号を金属電極と電解質溶液(生体)との界面を通して電荷の授受が行われる電気化学的導電機構を用いて検出している.これに対して,絶縁物電極は金属と電解液との間に絶縁体を挿入して,その静電容量を通して,生体の電気信号のうち交流成分のみを検出する.実際に,酸化タンタル電極を使い電気的特性を測定し,また心電図誘導を行った結果,装着直後から雑音が少なく,分極電位などの直流電位が現れないので基線が安定しており,周波数特性についても申し分なく心電図用電極として十分に使えることが確認できた,特にこの電極では電極ベーストを必要としないため,長時間連続的に使用するICU,体育医学,宇宙医学に適していると考える.

蓄尿試料の尿糖値低下阻止に関する検討

岩村 幸江 , 郷 ヒロ子 , 近持 由美子 , 堀内 聰 , 菅野 剛史

pp.741-744

はじめに

 尿糖の測定は,糖尿病の診断および治療の経過観察に古くから行われている.坪井1,2)は1905年に,採尿時刻により尿糖値の日内変動が大きいことを報告した.以後24時間蓄尿尿糖値の測定が,空腹時血糖測定とともに糖尿病による代謝異常の状態を知る指標として日常頻繁に用いられている.糖尿病患者は腎障害を伴いタンパク尿を合併するので,ブドウ糖の存在とともに細菌が繁殖しやすく,細菌により尿中ブドウ糖が消費される.したがって尿糖の測定は採尿後直ちに検査するのが原則となる.24時間蓄尿尿糖値の分析は,細菌の繁殖を抑える条件下で蓄尿し,それを試料として行われなければならない.現在この目的のためにトルエン3)が広く用いられ,当院でも入院患者の蓄尿に加えられていた.また当院の通院患者は検査前日の蓄尿を原則として持参することになっているので,これには静殺菌剤は加えていない.

 著者らの検査室でも多数の検体を測定しているが,その中には,空腹時血糖値が200mg/dl以上の高値を示すにもかかわらず,24時間蓄尿尿糖値が著しく低い例を今までに数多く経験した.そこで著者らは24時間蓄尿尿糖値をより正確に測定するためには尿糖検査の試料となる蓄尿試料での尿糖値の低下を抑えることが不可欠と考え,種々の蓄尿試料保存の薬剤について検討した.

編集者への手紙

酵素法グルコース側定キットにみられたマルトースによる著しい正誤差について

白井 克彦 , 小島 ひさし , 和田 正

pp.745-746

Letter to Editor

 マルトースを点滴投与中の糖尿病患者の血清グルコースを,glucose-oxidase法(以下G-o法と略)で測定したところ,マルトースは血糖値にほとんど影響がないといわれているにもかかわらず,臨床的に想像しえないグルコースの高値が得られました.そこで,この測定法に問題があるのではないかと考え,下記の方法で検討したところ,我々が使用した試薬キットの品質不良によってマルトースの妨害反応が生じていたことが判明しましたので報告します.

LKB 8600による透析患者血清のトランスアミナーゼ測定

本田 健一

pp.746

Letter to Editor

 LKB 8600酵素反応測定装置とベーリンガーGOT,GPT試薬を用いて入工透析患者血清のトランスアミナーゼ測定を行うとき,透析前の血清では測定されたりされなかったり,LightまたはLowと表示が出て悩まされていると思います.私はこれを次のようにして簡単に解決し,データがプリントできたこともお知らせしたいと思います.

 LKB 8600の測定は血清色調の濃淡に大きく影響される.透析血清は色調が希釈されている状態であるが,こねに正常色調血清をともに半量ずつ加えて混合血清として測定するとトラブルが解決できるわけである.

検査と主要疾患・43

ホジキン病

伊藤 健次郎

pp.748-749

 ホジキン病は,リンパ節に原発する増殖性疾患(悪性リンパ腫)に含まれる疾患であるが,他の悪性リンパ腫と異なり,早期から複雑な臨床症状と組織学的所見を示しやすく,また検査室検査における生検以外のものに,本症に特有なものは乏しいために,検査成績から診断へのアプローチは必ずしも容易でない.頻度は本邦ではまれであるが,米国では1年に3,200例が死亡しているといわれ,その原因は,ウイルス・細菌による感染説,腫瘍説,更に両者の折衷説などがあり,なお定説はない現状である.

検査機器のメカニズム・55

ジェット式レコーダー

葛西 晴雄

pp.750-751

 生体諸現象の記録には古くからペン書きレコーダーが使用されているが,周波数特性が100〜150Hzどまりと悪く,また電磁オシロは周波数特性は良いが消耗品コストが高く,かつ定着処理などを必要とする欠点がある.インクジェット式レコーダーはペン書きレコーダーの軽便さと電磁オシロの周波数特性の良さを兼ね備えたものであり,シーメンス・エレマシュナンダ社の"ミンゴグラフ"が知られているが,日本光電工業(株)より国産品が開発発売され価格も安く特性も良好で心音図の忠実な記録などに広い応用範囲をもっている.

検査室の用語事典

臨床検査のRI用語

山県 登 , 松村 義寛

pp.753

1)アイ・シー・アール・ピー(ICRP);国際放射線防護委員会

 International Commission on Radiological Protection.1928年の第2回国際放射線学大会において創立され,それ以来電離放射線に対する最大許容被ばく線量(→15)の値について勧告する責任をもつ機関として国際的に認められてきた.我が国の関連法律も,多くはICRPの勧告に基づいたものである.

—臨床検査の—コンピューター用語

鈴木 孝治 , 春日 誠次

pp.754

69) FORTRAN (フォートラン)

Formula Translatorの略で,科学技術計算用に開発された自動プログラミング言語のことをいう.本言語は,一般の演算記号に近い記号を用いて数式を記述できる点に特徴がある.READ,WRITEの入出力ステートメントと,DO,IF,GOなどの制御ステートメントと数式の記述でプログラムが作成できる.

臨床化学分析談話会より・35<関東支部>

検査法の新旧交替—膠質反応

中 甫

pp.755

 第190回臨床化学分析談話会関東支部例会(1976.3.16)は東大薬学部記念講堂において開催された.今回は"なぜいけないか,本当に必要か"シリーズ(6)で,膠質反応を取り上げた.膠質反応については測定法にまつわる問題点,臨床的意義などがしばしば論議されている.また肝機能検査として数多くの検査を行っている現在,膠質反応は止めてもよいのではないかという声さえある.そこで再びこの問題を取り上げ討議した.話題提供は虎の門病院北村元仕先生,順天堂大学病院林康之先生,指定ディスカッサーは北里大学病院柴田久雄先生であった.

 まず初めに北村先生は,測定法上の問題点としておおむね次のようなことを指摘された.

Senior Course 生化学

—臨床化学検査における酵素化学—酵素による定性・定量分析 Ⅶ

山下 辰久

pp.756-757

2.反応平衡

2)類似物質の使用(前号より続く)

(2) NADの関与する酵素反応の場合,先に述べたようにtrapping agentを用いて酸化反応産物であるケト化合物を捕捉することにより平衡を移動させることができるが,もしNADの代わりにNADのピリジン部分が置換された,アナログ(pyridine-substituted NADanalogue),すなわち3-acetylpyridine-adenine dinu-cleotide (APAD)を用いるとtrapping agentを用いることなしに,平衡を移動させることができる.

Senior Course 血液

血液染色 Ⅱ

黒川 一郎

pp.758-759

 日常検査における血液染色で,ライトあるいはギムザ法は細胞の全体的特徴を把握分類するために用いられるが,一方,細胞個々の小器管を個別に染色する方法との共用によって診断的価値がいっそう高められることが多い.すなわち血液細胞の核・細胞質・酵素・金属・タンパク質にわたって光学的レベルで染色法が近年開発されている.今日これらを総合的に観察し,①白血病細胞の分類,②白血病,類白血病と骨髄増殖性疾患の区別,③リンパ球の分類(CLLなどの),④赤血球内の鉄,血色素,酵素異常などの診断,などに用いられている.

Senior Course 血清

—血清検査の基礎—ASO価,血清補体価の測定

浅川 英男

pp.760-761

中和反応

1.抗ストレプトリジンO測定

 日常の臨床においてレンサ球菌の感染によって引き起こされたと思われる疾患にはしばしば遭遇する.扁桃腺炎,猩紅熱,腎炎,リウマチ熱などである.それらを引き起こす菌の大部分はA群,β型溶血性レンサ球菌である.しかもレンサ球菌にはその感染によって抗体を産生する抗原性物質を多く含んでいるので,その抗体を見出すことによってレンサ球菌感染の有無を診断することができる.その中で最もよく用いられるのがASOである.しかしすべてのレンサ球菌がストレプトリジンOを産生するわけではないので,その場合にはASO以外の抗ヒァルロニダーゼ価,抗ストレプトキナーゼ価を測定しなければならない.

Senior Course 細菌

腸内細菌の分類 Ⅳ

坂崎 利一 , 田村 和満

pp.762-763

Salmonella属

 Salmonellaの分類については,1934年の国際微生物学会でKauffrnann-Whiteの分類様式が採択され,それ以後約30年間その原則はまったく変更されることなく受けいれられてきたが,この分類は属から直接血清型への区分で,種の概念がまったくとりいれられていないために,分類学の面では大きな問題が残されている.したがって現在用いられているSalmonellaの分類は分類学にのっとったものでなく,ただ便宜的区分にすぎないことを銘記しておく必要がある.

Senior Course 病理

—病理検査の技術と知識—染色 Ⅳ

橋本 敬祐

pp.764-765

神経組織の染色

 神経組織の顕微鏡標本作製に当たっては,まず第1に切り出し部位の確認(墨と筆で直接組織片に書き込むか,テフロンネットで包んで紙片を添えるかする)と,標本作製の目的を明らかにする必要がある.検索の目標としては,細胞構築(cytoarchitectonics),線維解剖学(fiber anatomy)および血管構築(angioarchitechto-nics)の3種が考えられるが,細胞構築は更に神経細胞胞体,軸索,マクログリア,ミクログリア,オリゴデンドログリアなどにより適当な手技を選択しなければならない.固定もそれに応じて変わることになるが,通常の場合は少し濃い目のホルマリンで大抵は用が足りる.局方ホルマリンを10倍希釈した通常のホルマリン固定液でもよく,5倍あるいは4倍希釈を用いる人もある.理想的なのは剖検時両側の内頸動脈および脊椎動脈からホルマリン注入固定を行うことであり,脊髄は髄腔に注入して,しばらくたってから取り出すようにすれば変形が少ない.

Senior Course 生理

—電気生理検査に必要な電気の基礎知識—ペン書き記録計の特性

石山 陽事

pp.766-767

 心電計,脳波計などの装置は図1に示すようなブロックダイヤグラムで示される.平衡型増幅器やフィルター回路については既に述べてきた.前置増幅器(preamp.)はフィルター回路によって心電図や脳波に必要な周波数のみをできるだけ交流雑音の少ない状態で検出し増幅する.主増幅器(main amp.)では前置増幅器で増幅された信号に比例して記録器のペンを動かすために必要な電力を供給する.この増幅器はペンを動かす目的の増幅器という意味で駆動用増幅器(drive amp.)とも呼ぶ.

 普通心電計や脳波計の記録部は,可動コイル型のもの(ガルバノメーター)を用い,コイルに流れる電流の変化によってコイルを動かすもので,現在の直記型の記録装置はほとんどこのタイプのものが使用されている.今回はこの記録部について述べることにする.

Senior Course 共通

データによって異なる統計手法—対応のない場合,ある場合

斧田 大公望

pp.768-769

1.検査データの性質

 臨床検査することにデータが生まれる.健保制度との関連もあって,日々,全国ではそのおびただしい堆積がうかがえよう.

 データの"ものさし"には,単に有無といった分類(名儀尺度)から,++・+・±・−と段階付けたもの(順序尺度)のほか,いろいろな約束に従った単位当たりの量(間隔尺度)で示される.あるときは,比率で表される.これらデータの集まりは,計られる対象,時や場所によって変わるので,標本(samples)と規定するが,いわゆる正常域と対比したり,集まり同士の間を比較する場合どんな計り方をしたか(尺度化)によって,様々な統計的手法が老案されている.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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64巻10号(2020年10月発行)

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今月の特集2 IgG4関連疾患の理解と検査からのアプローチ

64巻7号(2020年7月発行)

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今月の特集2 薬剤耐性カンジダを考える

64巻6号(2020年6月発行)

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今月の特集2 EBLM(evidence based laboratory medicine)の新展開

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今月の特集2 生理検査—この所見を見逃すな!

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今月の特集2 災害現場で活かす臨床検査—大規模災害時の経験から

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今月の特集2 成人先天性心疾患

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今月の特集2 実は増えている“梅毒”

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今月の特集2 がん分子標的治療にかかわる臨床検査・遺伝子検査

60巻12号(2016年11月発行)

今月の特集1 血液学検査を支える標準化
今月の特集2 脂質検査の盲点

60巻11号(2016年10月発行)

増刊号 心電図が臨床につながる本。

60巻10号(2016年10月発行)

今月の特集1 血球貪食症候群を知る
今月の特集2 感染症の迅速診断—POCTの可能性を探る

60巻9号(2016年9月発行)

今月の特集1 睡眠障害と臨床検査
今月の特集2 臨床検査領域における次世代データ解析—ビッグデータ解析を視野に入れて

60巻8号(2016年8月発行)

今月の特集1 好塩基球の謎に迫る
今月の特集2 キャリアデザイン

60巻7号(2016年7月発行)

今月の特集1 The SLE
今月の特集2 百日咳,いま知っておきたいこと

60巻6号(2016年6月発行)

今月の特集1 もっと知りたい! 川崎病
今月の特集2 CKDの臨床検査と腎病理診断

60巻5号(2016年5月発行)

今月の特集1 体腔液の臨床検査
今月の特集2 感度を磨く—検査性能の追求

60巻4号(2016年4月発行)

今月の特集1 血漿蛋白—その病態と検査
今月の特集2 感染症診断に使われるバイオマーカー—その臨床的意義とは?

60巻3号(2016年3月発行)

今月の特集1 日常検査からみえる病態—心電図検査編
今月の特集2 smartに実践する検体採取

60巻2号(2016年2月発行)

今月の特集1 深く知ろう! 血栓止血検査
今月の特集2 実践に役立つ呼吸機能検査の測定手技

60巻1号(2016年1月発行)

今月の特集1 社会に貢献する臨床検査
今月の特集2 グローバル化時代の耐性菌感染症

59巻13号(2015年12月発行)

今月の特集1 移植医療を支える臨床検査
今月の特集2 検査室が育てる研修医

59巻12号(2015年11月発行)

今月の特集1 ウイルス性肝炎をまとめて学ぶ
今月の特集2 腹部超音波を極める

59巻11号(2015年10月発行)

増刊号 ひとりでも困らない! 検査当直イエローページ

59巻10号(2015年10月発行)

今月の特集1 見逃してはならない寄生虫疾患
今月の特集2 MDS/MPNを知ろう

59巻9号(2015年9月発行)

今月の特集1 乳腺の臨床を支える超音波検査
今月の特集2 臨地実習で学生に何を与えることができるか

59巻8号(2015年8月発行)

今月の特集1 臨床検査の視点から科学する老化
今月の特集2 感染症サーベイランスの実際

59巻7号(2015年7月発行)

今月の特集1 検査と臨床のコラボで理解する腫瘍マーカー
今月の特集2 血液細胞形態判読の極意

59巻6号(2015年6月発行)

今月の特集1 日常検査としての心エコー
今月の特集2 健診・人間ドックと臨床検査

59巻5号(2015年5月発行)

今月の特集1 1滴で捉える病態
今月の特集2 乳癌病理診断の進歩

59巻4号(2015年4月発行)

今月の特集1 奥の深い高尿酸血症
今月の特集2 感染制御と連携—検査部門はどのようにかかわっていくべきか

59巻3号(2015年3月発行)

今月の特集1 検査システムの更新に備える
今月の特集2 夜勤で必要な輸血の知識

59巻2号(2015年2月発行)

今月の特集1 動脈硬化症の最先端
今月の特集2 血算値判読の極意

59巻1号(2015年1月発行)

今月の特集1 採血から分析前までのエッセンス
今月の特集2 新型インフルエンザへの対応—医療機関の新たな備え

58巻13号(2014年12月発行)

今月の特集1 検査でわかる!M蛋白血症と多発性骨髄腫
今月の特集2 とても怖い心臓病ACSの診断と治療

58巻12号(2014年11月発行)

今月の特集1 甲状腺疾患診断NOW
今月の特集2 ブラックボックス化からの脱却—臨床検査の可視化

58巻11号(2014年10月発行)

増刊号 微生物検査 イエローページ

58巻10号(2014年10月発行)

今月の特集1 血液培養検査を感染症診療に役立てる
今月の特集2 尿沈渣検査の新たな付加価値

58巻9号(2014年9月発行)

今月の特集1 関節リウマチ診療の変化に対応する
今月の特集2 てんかんと臨床検査のかかわり

58巻8号(2014年8月発行)

今月の特集1 個別化医療を担う―コンパニオン診断
今月の特集2 血栓症時代の検査

58巻7号(2014年7月発行)

今月の特集1 電解質,酸塩基平衡検査を苦手にしない
今月の特集2 夏に知っておきたい細菌性胃腸炎

58巻6号(2014年6月発行)

今月の特集1 液状化検体細胞診(LBC)にはどんなメリットがあるか
今月の特集2 生理機能検査からみえる糖尿病合併症

58巻5号(2014年5月発行)

今月の特集1 最新の輸血検査
今月の特集2 改めて,精度管理を考える

58巻4号(2014年4月発行)

今月の特集1 検査室間連携が高める臨床検査の付加価値
今月の特集2 話題の感染症2014

58巻3号(2014年3月発行)

今月の特集1 検査で切り込む溶血性貧血
今月の特集2 知っておくべき睡眠呼吸障害のあれこれ

58巻2号(2014年2月発行)

今月の特集1 JSCC勧告法は磐石か?―課題と展望
今月の特集2 Ⅰ型アレルギーを究める

58巻1号(2014年1月発行)

今月の特集1 診療ガイドラインに活用される臨床検査
今月の特集2 深在性真菌症を学ぶ

57巻13号(2013年12月発行)

今月の特集1 病理組織・細胞診検査の精度管理
今月の特集2 目でみる悪性リンパ腫の骨髄病変

57巻12号(2013年11月発行)

今月の特集1 前立腺癌マーカー
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査②

57巻11号(2013年10月発行)

特集 はじめよう,検査説明

57巻10号(2013年10月発行)

今月の特集1 神経領域の生理機能検査の現状と新たな展開
今月の特集2 Clostridium difficile感染症

57巻9号(2013年9月発行)

今月の特集1 肺癌診断update
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査①

57巻8号(2013年8月発行)

今月の特集1 特定健診項目の標準化と今後の展開
今月の特集2 輸血関連副作用

57巻7号(2013年7月発行)

今月の特集1 遺伝子関連検査の標準化に向けて
今月の特集2 感染症と発癌

57巻6号(2013年6月発行)

今月の特集1 尿バイオマーカー
今月の特集2 連続モニタリング検査

57巻5号(2013年5月発行)

今月の特集1 実践EBLM―検査値を活かす
今月の特集2 ADAMTS13と臨床検査

57巻4号(2013年4月発行)

今月の特集1 次世代の微生物検査
今月の特集2 非アルコール性脂肪性肝疾患

57巻3号(2013年3月発行)

今月の特集1 分子病理診断の進歩
今月の特集2 血管炎症候群

57巻2号(2013年2月発行)

今月の主題1 血管超音波検査
今月の主題2 血液形態検査の標準化

57巻1号(2013年1月発行)

今月の主題1 臨床検査の展望
今月の主題2 ウイルス性胃腸炎

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