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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査20巻8号

1976年08月発行

雑誌目次

カラーグラフ

カラー加算によるX線断層の作図とカラーアニメーションによる心電図体表分布のディスプレイ

吉本 千禎

pp.774-775

 カラーディスプレイを使う2種の新しい表現法である.3原色を加算すると白色を作ることができる.3方向から撮影した頭骨をそれぞれ3原色で表示し,家庭用のカラーテレビで加算すると任意の断層面が白色で得られる(左頁).胸壁前面に5×5の電極を配置して心電図を得て,体表面分布をコンピューターで計算し,正電位を赤,負電位を青,ウィルソン電位(0)を白,その他を緑で表現,P〜T波を500枚の分布図とする.それをアニメーションで約1分間で観察すると,心臓の幾何学的位置と電位分布が直観的に関係づけられる.初期の心筋障害の位置と状態の診断が容易になる.右頁の図はその中から4枚を例示したものである.色彩を用いると高速アニメーションでも見分けやすい.

技術解説

パラフィンによる脳大割切片作製法

市川 悦子 , 安藤 怜子 , 松山 春郎

pp.777-786

 神経系は百億を越えるニューロンより成り立つていて,これが互いに連絡し合って,その複雑な機能が営まれている.実質細胞の形態,機能がその部位により著しく異なることは,他臓器にみられない特異なもので,同種の病変でも,侵された部位によっては異なった臨床症状を現す.また,ある種の病気では特定の部位が侵される.このことは病理診断上に重要である.病変の好発部位は,中毒,栄養障害,代謝障害,系統疾患,ウイルす脳炎などの診断に際して重要鑑別点となる.以上のことから,脳の検索には大切片の組織標本を作ることが要求される.

コントロールチャートの読み方・1

𠮷野 二男

pp.787-792

 臨床検査成績の精度管理の必要性については,十分にご承知のことで,広く実施され,管理図が作成されていることであるが,せっかく作られた管理図でありながら,その判読の仕方が不完全であったりすると,車大な警告を与えごいる管理図からも,それを読み取れなかったり,また,わずかなことをも過大視して困惑することがあったりする.そして混乱の果てには,管理法そのものに対する不信となり,多大の手数をかけま主で作る意義を見失ってしまうようなことにまで発展しかねない.そこで,各種の管理法によって得られる管理図の読み方について述べてみたいと思う.

 臨床検査成績の精度管理の方法には,管理用検体,すなわら,コントロール血清,プール血清などを用いて行う方法と,それらを必要とせず,日常の検体検査から得らねる検査成績を用いる方法とに大別することができる,前者には,既によくご存知のX—R管理図法をはじめとして,Cusummethod (累和法),Twin Plot method (双値法),C.V.method (変動係数法)などがあり,後者には,Repeat Analysis method (反復測定法),Average of Normals method (正常値の平均値法).Number Plus method (正常の平均値以上の値をもつ件数の割合法)などがあるので,以下順に記してゆく.

リチウム測定法

清瀬 闊 , 前畑 英介

pp.793-798

 躁うつ病に対するリチウム療法はCade(1949)1)によって試みられ,今日ではその治療効果は確認されている.このリチウム療法では,投与量と血中濃度の間に比例関係が認められ,その際の至適治療有効濃度(0.41mEq/l Li)を維持する必要があるという報告2)もあるが,特に過剰投与による中毒症状防止の面から,リチウム血中濃度の測定の必要性が強調されている.

 測定は,炎光法の他に原子吸光法でも測定ができる.測定法に関する紹介は外国文献に多くみられ,本邦では数が少ない.

総説

現代のカラーディスプレイ—カラーグラフ参照

吉本 千禎

pp.799-803

 診断ということは非常に難しい決定過程である.その重要な要素は,正確な診断であること以外に,1高速,2可及的に単一結論であること,3単一診断名が得られない場合,可能性の程度を付した完全なリストが欲しい,この3要素が必要と思われる.

 高速性は,現在の時点での状態をできる限り把握するため重要である.高速,高精度であるためにはすべての検査が同時性を保ち,かつ,早く結果を情報として受容できなければならない.診断の目的は治療の方針とその効果判定を得るためである.したがって,診断は現在または過去の時点での疾患を決定するだけでなく,将来の予測が常に問題となる.予測の精度は過去および現在の状態把握を基礎に,いろいろな予測技術によって向上する.過去の情報ができるだけ多いことは精度を上げるために大切だが,一般には疾患の代償期は患者が病院を訪れないから,短時間の経過から予測を行うことになる.その場合も,高速でなければ,予測のために多くの時間を要することになる.生体現象は不可逆過程を基礎としているので,周期サンプリングは一般に困難で,同時性が必要な場合が多い.このことからも,多くの診断情報がなるべく同時に得られ,かつ,短時間に総合判断できることが望まれる.

臨床検査の問題点・81

血小板凝集能測定

三品 頼甫 , 山本 和子

pp.804-811

血小板凝集能(platelet aggregation)測定のうちで最も広く利用されているのは吸光度(比濁)法である.凝集パターンの再現性をはじめとし,サンプリング,予備加温,検体保存,試薬の力価,データの報告の仕方など実際上の問題点を検討する.(カットは血小板ADP凝集のパターン分類)

異常値・異常反応の出た時・44

LATS

紫芝 良昌

pp.812-815

 "異常な反応"をよく調べて,新しい現象や物質の発見につながった,という例は数多い.LATSは,TSHの生物学的測定の"異常反応"から発見されたし,LATS-protectorも,LATSを甲状腺抽出物で中和する実験の"異常反応"から発見されたものである.ここに,これらのLATSやLATS-protectorについてまとめてみる.

 多くの施設で甲状腺疾患の約80%は,バセドゥ病と慢性甲状腺炎で占められている.この両疾患は,自己免疫性疾患であって,甲状腺組織に対する種々の抗体が血中に産生されており,抗体を検出することは,甲状腺はこの両者の疾患のいずれかがあることを示す"marker"になるので,抗サイログロブリン抗体の検出などは日常の臨床検査に広く応用されている.バセドウ病や慢性甲状腺炎が臨床的に大きな問題となるのは,前者では甲状腺機能亢進症,後者では甲状腺機能低下症が生じて,甲状腺ホルモン過剰あるいは欠乏が全身の代謝に影響を及ぼすからである.これらの疾患における甲状腺機能の異常が流血中の抗体の作用,あるいは何らかの免疫学的機序によって生ずるということも十分ありえてよさそうなことである.このような可能性は,バセドウ病におけるLATSの発見によって裏づけられ,現在も,甲状腺機能亢進症や低下症の原因を究めるのに抗体の機能が注目され,活発に研究されている.

新しい肺機能検査法・Ⅱ

熱線式スパイロメーター

毛利 昌史

pp.816-820

 呼吸機能検査に現在広く用いられている流量計には大別して,①気流計(pneumotachograph)と②熱線式流量計の2種類がある.ここでは両者の測定原理と相違について簡単に説明し,その後,特に熱線式流量計について較正法とともに自験例を中心にその臨床応用について述べる.

学会印象記 第25回日本衛生検査学会

望まれる充実した緊急検査体制

青木 哲雄

pp.821

 第25回日本衛生検査学会(秋田赤十字病院・根本一蔵学会長)は5月22日,23日に,みちのくの秋田市において開催された.今学会は日衛技ならびに秋衛技の創立25周年を記念して催されたが,今日の隆盛を築いた先輩諸氏の努力には敬意の一語につきる.しかし,うれしい悲鳴とともにマンモス学会として真剣にその対策を考えなければならない時期である.この秋田学会も招待講演,学会長講演各1題,一般演題317題,シンポジウム11題(話題提供者68名),分科会講演11題,研究班報告9題と衛生検査学会史上最大規模となり,会場も展示場を含む10会場で開催された.このため交通の便利な所に会場を集中させることは難しく,千秋公園と市役所,県庁付近の二か所に分散し,この間をバス連絡せざるをえなかった.なかには演題を聞きたいため,タクシーで何回か会場間を往復した会員もあったと聞く.だが,この現象はいずれの県で開催しても共通の悩みであり,日衛技でも真剣に検討されている.

 さて,盛りだくさんで聞きたい発表もままならなかったが,私の興味をもった企画の印象を紹介したい.最近,臨床化学検査は酵素を用いた測定法が普及してきたが,第一会場では,酵素法によるコレステロール,トリグリセライド測定方法の一般演題やシンポジウム,分科会講演で,脂質検査に関する討議が丸一日行われた.排液公害などの問題もからんで普及が望まれる.

中検へ一言・中検から一言

臨床検査のシステム化/他

祖父江 逸郎

pp.822-823

臨床検査は臨床医学においては欠かすことのできないもので,診断と治療の重要な要になっていることはいうまでもない,最近では,臨床検査の内容は量,質ともに著しく進歩し,各領域をカバーするためには膨大なものとなっている.このような膨大な検査をどのようにアレンジして,臨床に還元し役立てていくかということは大変重要なことである.このことは病院の規模や取り扱う疾患の内容,種類などによっても異なるであろうが,絶えず流動的に臨床側からの要求や,医学の進歩に応じ臨床検査室の内容を充実していくことがぜひ必要であろう.臨床検査の内容をどのように分けて考えるかということは,こうした需要に対応するため,いつも基本的に考慮しておかねばならないことである.臨床各科を通じ共通で,しかも最も基本的なものや,各科に応じた諸検査のうちでも,現段階ではルーチンとされるものから特殊なものまで様々であり,更に試験段階のものもあろう.また別の見方をすると,臨床検査の中には,主として材料すなわち物件を検査対象とするものと,患者自体を検査対象として実施する諸検査がある.元来,血液,血清,便,尿,喀痰,髄液,分泌液,生検材料,手術時採取組織などを材料とする検査と,心電図,脳波,筋電図,自律系テスト,呼吸機能テスト,各種の代謝検査,消化吸収試験など患者を対象として行う検査では,物か生体かという点で,検査のやり方なり,取り扱い方,意義などの点で基本的な違いがあろう.

座談会

術中迅速組織切片作製法

三方 淳男 , 佐藤 文夫 , 新宅 孝征 , 畠山 茂

pp.824-831

 10年前の同じテーマの座談会ではザルトリウス型が中心であったが,今日ではクリオスタットが凍結迅速切片作製の主流をなし,まさに隔世の感がある.今月は作製順を追って技術的な問題を検討してみる.

編集者への手紙

トランスアミナーゼの測定をReitman Frankel法を用いて二波長測光による濃度直読の方法に対する質問

松尾 武文

pp.832-833

Letter to Edito

 トランスアミナーゼの測定をReitman-Frankel法(以下R-F法)にて行う場合に,二波長測光を用いてカルメン単位を直接読み取る試みは,日常検査にとって非常に有用な手段と思います。石塚氏の論文1)は,この点について日立701形システム光度計を用いて種々の検討をしています.この発表された方法は非常にユニークであるため早速検討を開始しましたが,以下の点が疑問となりました.

 まず標準の問題であるが,論文の方法によると,低単位の測定には基質0.45mlと2mMのピルビン酸標準液0.05mJを用いて37単位に合わせて測定し,それ以上の高単位の測定には基質0.5mlと標準液0.1mlで72単位に合わせて測定を行っている.そして高低いずれの標準を用いるかについては,肉眼的な濃淡から判別ができるため,器機のconc.ダイヤルを調整して適宜測定を行えばよいと述べられている.

新しいキットの紹介

Dip slide法による尿中細菌簡易測定キット"Urotube"Rocheの検討

藤本 英生 , 丸山 博巳

pp.834-841

 緑膿菌選択培地をもつDip-slide法を使用した尿中細菌簡易測定キット"Urotube"Rocheの機能を検討した.総細菌数測定用のSide 1上の生育数は,簡便法ながら,使用した10菌株については,従来法である平板混釈法での生菌数と高い相関を示し,特に汚染尿と感染尿の診断に重要な104,105 cells/mlの点においては従来法と良く一致する結果を得た.またそのロット内,ロット聞の再現性も良好であった.グラム陰性菌選択性をもつSide 2,緑膿菌選択性をもつSide 3の出現菌数は低下するが平板混釈法との相関は高く,培地ならびにコロニーの色調変化とともに,汚染菌の推定のための定性試験として十分機能しうる.試験者による判定の個人差も診断に支障とならない範囲であり,製品の安定性も有効期限内で何ら変化はみられなかった.

血清希釈を必要としないMBLプレートによる免疫グロブリン定量法の検討

青木 紀生 , 出田 修

pp.842-845

はじめに

 血清タンパク成分のうちで臨床的に問題とされる成分は現在のところ免疫グロブリンと補体で,そのうちでも免疫グロブリンはIgG,IgAおよびIgMが,また補体は第3成分(β1C/A) tsよび第4成分(β1E)が対象となる.

 個々の血清タンパク定量法としては免疫学的沈降反応を応用した方法が広く行われており,なかでも抗体を含有するカンテンゲル,デンプンゲル,ポリアクリルアミドゲルなどの支持体内を拡散させ,沈降反応を観察する免疫拡散法(immunodiffusion method)が普及している.本法に用いられる支持体は均一な孔を有し,血清タンパクと吸着反応あるいは非特異的沈殿反応を起こさず,しかも透明であるものが望ましいことから,一般にはカンテンゲルが用いられている.カンテンゲルによる免疫拡散法には,試験管内単純免疫拡散法(Oudin法1))と平板内単純放射状免疫拡散法(Mancini法2),Fahey法3))があり,それぞれの原理に基ついた免疫グロブリンの定量法が考案されており,その検討成績については既に報告した4,5)

血小板自動計数における"Thrombo-fuge"の利用効果と性能について

井上 日出王 , 民 伸子 , 福田 哲夫 , 前田 宏明

pp.846-849

はじめに

 血小板の形態的,機能的な面の研究が進むにつれて,定量的にもより正確な血小板数値が要求されてくるのは当然である.この点,自動血球計数器の急速な開発と普及によって相応の成果をみたが,一般的には多血小板血漿(PRP)による計数法が採られていることから,PRPの分離法やヘマトクリット値による影響とか補正などに多少の問題点が残されており,方法論的には全血のままで直接的な計数への指向と追求が続けられているのが現状である1)

 そこで現行の自動血球計数器による血小板算定法を大別すると,被検血液を一定時間静置してPRPを分離した後計数するいわゆる静置法と,低速遠心操作によってPRPを得て計数する遠心法とに分けられる.両者の長短についての基礎的検討は,既に数多くの報告にみられるが1〜3),静置法では至適静置時間,遠心法では至適遠心力の設定で苦しんでおり,ひいては自動計数値の動揺を来す誘因となっていることが指摘されている4,5).いずれにしても両者における長所を見出し,常に一定の条件下でPRPの分離を効果的に進めることが計数値の正確さと安定性を得ることを可能にするものと思われる.

検査と主要疾患・44

進行性筋ジストロフィー症

里吉 営二郎 , 鈴木 雍人

pp.854-855

 筋の萎縮には,神経に原因を有するもの(神経原性筋萎縮)と,筋に一次的な原因を有するもの(ミオパチー)がある.後者の代表的疾患が進行性筋ジストロフィー症である.本疾患は主に遺伝性を有する進行性の筋萎縮症であり,臨床的に幾つかの型に区別され,それぞれが比較的一定の経過をとることが多い.したがって,その病型分類にそって病態を述べなければならない.

検査機器のメカニズム・56

ネフェロメーター

小出 朝男

pp.856-857

 従来,濁りの強さを測定する方法は比濁法(turbidimetry)と比朧(ろう)法(nephelometry)に分類され,前者は懸濁液に光を当て,吸収および散乱された後,溶液を通過した一部の光を吸光度の増加として測定するもので,後者は懸濁液に光を当てると生ずる散乱光を測定するものである.しかし,現在では濁りの度合による定量分析を一括してnephelometryと呼び習慣的に比濁法と呼ぶことが多く,したがってnephelometerも比濁計と呼ばれている.

検査室の用語事典

臨床検査のRI用語

山県 登 , 松村 義寛

pp.859

11)螢光ガラス線量計

照射されるとガラス内に安定な螢光中心が生じ,紫外線により燈色の螢光を発生する.螢光の強さは吸収線量に比例するので,これを光電子増倍管で増幅して測定する.温度に影響されることがなく,また150keV以上のX,γ線ではエネルギーに左右されない.放射線治療など高線量の場合にはImmφ×6mmの小さなものが用いられる.

臨床検査のコンピューター用語

鈴木 孝治 , 春日 誠次

pp.860

80) lnpuf;入力

入力装置または外部記憶装置などよりコンピューターに入力される情報のことをいう.通常,紙テープ,せん孔カード,磁気テープ,磁気カードなどの記録媒体を介して入力されるか,タイプライターまたはキーボードなどよりマニュアルに直接入力される.

臨床化学分析談話会より・36<関東支部>

無限な生体情報を秘める赤血球に注目を—臨床化学と血液形態学との接点

仁科 甫啓

pp.861

 春闘交通ストのためやむを得ず1週間延期となったが,第191回分析談話会関東支部例会(1976.4.27)は東大薬学の記念講堂にて開催された.今回は"赤血球は語る—赤血球の形態と化学とその臨床—"というテーマで川崎医科大学内科の八幡義人先生が話題を提供された.

 赤血球の代謝を広く,機能,形態を含めたいろいろな角度から解説,その知識がどこまで到達していて,どこまでの範囲がはっきり言えるか,また,その研究を進めるに当たって,特に臨床検査のレベルとしての研究テーマはどのようなものかをいくつかの例で説明された.

Senior Course 生化学

—臨床化学検査における酵素化学—酵素による定性・定量分析 Ⅷ

山下 辰久

pp.862-863

3.反応時間

 今回は既に述べた酵素分析のデザインを組む場合の留意点の一つである"反応時間の設定"──どのくらいの活性をもった酵素をどのくらい用いたら,反応が完結するまでに要する時間がどのくらいかかるか──に関する問題を考えてみよう.

 酵素分析で測定物質すなわち基質濃度(〔S〕)が低いという場合Km(ミカエリス定数)との関連において考えることが大切で,一般に〔S〕≒Km,〔S〕<Km,〔S〕《Kmという三つの場合が考えられる.しかしこの最後の〔S〕《Kmという状態は反応が終了する前には必ず到達する状態であり,それから反応は一次反応の法則に従って進行し,反応曲線は図に示すように漸近線的に終点に近づく.

Senior Course 血液

血液凝固 Ⅰ—PT,PTTを中心に

黒川 一郎

pp.864-865

1.血液凝固機序

 1906年Morawitzが古典的な模式図を工夫し,それ以後プロトロンビンー段法の工夫,種々の凝固因子の発見などを経て,現在内因性,外因性凝固機序に分けて説明されている.

Senior Course 血清

—血清検査の基礎—血清補体価の測定

浅川 英男

pp.866-867

補体の定量法

 血清中の補体の動静を知ることは,その疾患に免疫現象が関与しているか否かの重要なマーカーとなる.また逆に補体の増加していることから推測しうる疾患もあって,補体定量の意義は大きい.

 また補体結合反応,免疫溶血反応を行うためにも補体血清の補体価を測定する必要に迫られる.補体の量と溶血度との関係を示したものが右図で,この図で見ると溶血度が20%から80%まではほぼ直線を示すので,この間で補体量をみたほうが合理的であることが分かる.それが50%溶血で補体量をみる理由である,以下測定法1)を述べる.

Senior Course 細菌

腸内細菌の分類 Ⅴ

坂崎 利一 , 田村 和満

pp.868-869

Citrobacter属

1.定義

 腸内細菌の定義に示された性状をもつグラム陰性かん菌.

 ふつう周毛によって運動する.

Senior Course 病理

—病理検査の技術と知識—染色 Ⅴ

橋本 敬祐

pp.870-871

脂肪染色

 パラフィン切片作製に大量に用いられるアルコール,キシロールあるいはクロロホルムなどは脂溶性溶媒であるから,特殊な場合を除けば脂肪の染色は新鮮未固定氷結切片によるか,脂溶性溶媒を含まないホルマリン水溶液による固定後の氷結切片が用いられる.通常のホルマリン固定液の代わりにBakerのホルマリン・カルシウム固定液(局方ホルマリン10ml,無水塩化カルシウム1.0g蒸留水80ml)を用いるか,McManusの液(硝酸コバルト1.09,10%塩化カルシウム水溶液10ml,局方ホルマリン10ml)を用いれば脂肪の散逸を防ぐことができる.しかし,いずれにしても脂肪の染色はなるべく早い時期に行うほうが良い結果が得られる,特にリン脂質より成る小滴脂肪が消失しやすいとされている.

Senior Course 生理

—電気生理検査に必要な電気の基礎知識—電気生理検査に用いる記録器

石山 陽事

pp.872-873

 生体の電気現象(または電気信号に変換されたもの)を増幅器で必要な周波数成分のみを増幅し,それを記録したり観察したりするためには,その信号のもつ成分を十分に表示しうるものでなければならなく,また臨床データとして能率の良い記録法が必要となる.例えば高い周波数まで記録できるからといって,電磁オシログラフ(後述)に多チャンネルもの心電図を同時に記録することは,コストの点,手間の点で非能率的である.ルーチンワークの心電図検査ではインク書きのオシログラフ(または熱ペン式)で十分である.逆にコストが安く,手間がかからないからといって,筋電図や心音図などをインク書きオシログラフで記録すると本来の現象を忠実に再現することは不可能となる.今回はこういった記録器について述べることにする.

Senior Course 共通

廃棄物の処理・1—細菌検査

工藤 祐是

pp.874-875

 標記の問題は,細菌検査に従事する人々の最初に身につけておくべき重要な手技のはずであるが,多くの成書はこれを改めて述べるまでもない常識とみなしているのか,ほとんどふれていないようである.したがって大部分の検査室では,単に慣行的に言い伝えられたとおりにやっているのが実情であろう.

 この問題は検査室内での検査精度の維持や業務室内感染防止と深いかかわり合いをもっているばかりでなく,最近は環境汚染との関係も重視しなければならなくなってきている.それにもかかわらず,これらの廃棄物処理の方式の系統的な記載は全くないといってよく,せいぜい細菌学の黎明期にまでさかのぼって,滅菌法のデータを参考にするくらいのものである.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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今月の特集2 百日咳,いま知っておきたいこと

60巻6号(2016年6月発行)

今月の特集1 もっと知りたい! 川崎病
今月の特集2 CKDの臨床検査と腎病理診断

60巻5号(2016年5月発行)

今月の特集1 体腔液の臨床検査
今月の特集2 感度を磨く—検査性能の追求

60巻4号(2016年4月発行)

今月の特集1 血漿蛋白—その病態と検査
今月の特集2 感染症診断に使われるバイオマーカー—その臨床的意義とは?

60巻3号(2016年3月発行)

今月の特集1 日常検査からみえる病態—心電図検査編
今月の特集2 smartに実践する検体採取

60巻2号(2016年2月発行)

今月の特集1 深く知ろう! 血栓止血検査
今月の特集2 実践に役立つ呼吸機能検査の測定手技

60巻1号(2016年1月発行)

今月の特集1 社会に貢献する臨床検査
今月の特集2 グローバル化時代の耐性菌感染症

59巻13号(2015年12月発行)

今月の特集1 移植医療を支える臨床検査
今月の特集2 検査室が育てる研修医

59巻12号(2015年11月発行)

今月の特集1 ウイルス性肝炎をまとめて学ぶ
今月の特集2 腹部超音波を極める

59巻11号(2015年10月発行)

増刊号 ひとりでも困らない! 検査当直イエローページ

59巻10号(2015年10月発行)

今月の特集1 見逃してはならない寄生虫疾患
今月の特集2 MDS/MPNを知ろう

59巻9号(2015年9月発行)

今月の特集1 乳腺の臨床を支える超音波検査
今月の特集2 臨地実習で学生に何を与えることができるか

59巻8号(2015年8月発行)

今月の特集1 臨床検査の視点から科学する老化
今月の特集2 感染症サーベイランスの実際

59巻7号(2015年7月発行)

今月の特集1 検査と臨床のコラボで理解する腫瘍マーカー
今月の特集2 血液細胞形態判読の極意

59巻6号(2015年6月発行)

今月の特集1 日常検査としての心エコー
今月の特集2 健診・人間ドックと臨床検査

59巻5号(2015年5月発行)

今月の特集1 1滴で捉える病態
今月の特集2 乳癌病理診断の進歩

59巻4号(2015年4月発行)

今月の特集1 奥の深い高尿酸血症
今月の特集2 感染制御と連携—検査部門はどのようにかかわっていくべきか

59巻3号(2015年3月発行)

今月の特集1 検査システムの更新に備える
今月の特集2 夜勤で必要な輸血の知識

59巻2号(2015年2月発行)

今月の特集1 動脈硬化症の最先端
今月の特集2 血算値判読の極意

59巻1号(2015年1月発行)

今月の特集1 採血から分析前までのエッセンス
今月の特集2 新型インフルエンザへの対応—医療機関の新たな備え

58巻13号(2014年12月発行)

今月の特集1 検査でわかる!M蛋白血症と多発性骨髄腫
今月の特集2 とても怖い心臓病ACSの診断と治療

58巻12号(2014年11月発行)

今月の特集1 甲状腺疾患診断NOW
今月の特集2 ブラックボックス化からの脱却—臨床検査の可視化

58巻11号(2014年10月発行)

増刊号 微生物検査 イエローページ

58巻10号(2014年10月発行)

今月の特集1 血液培養検査を感染症診療に役立てる
今月の特集2 尿沈渣検査の新たな付加価値

58巻9号(2014年9月発行)

今月の特集1 関節リウマチ診療の変化に対応する
今月の特集2 てんかんと臨床検査のかかわり

58巻8号(2014年8月発行)

今月の特集1 個別化医療を担う―コンパニオン診断
今月の特集2 血栓症時代の検査

58巻7号(2014年7月発行)

今月の特集1 電解質,酸塩基平衡検査を苦手にしない
今月の特集2 夏に知っておきたい細菌性胃腸炎

58巻6号(2014年6月発行)

今月の特集1 液状化検体細胞診(LBC)にはどんなメリットがあるか
今月の特集2 生理機能検査からみえる糖尿病合併症

58巻5号(2014年5月発行)

今月の特集1 最新の輸血検査
今月の特集2 改めて,精度管理を考える

58巻4号(2014年4月発行)

今月の特集1 検査室間連携が高める臨床検査の付加価値
今月の特集2 話題の感染症2014

58巻3号(2014年3月発行)

今月の特集1 検査で切り込む溶血性貧血
今月の特集2 知っておくべき睡眠呼吸障害のあれこれ

58巻2号(2014年2月発行)

今月の特集1 JSCC勧告法は磐石か?―課題と展望
今月の特集2 Ⅰ型アレルギーを究める

58巻1号(2014年1月発行)

今月の特集1 診療ガイドラインに活用される臨床検査
今月の特集2 深在性真菌症を学ぶ

57巻13号(2013年12月発行)

今月の特集1 病理組織・細胞診検査の精度管理
今月の特集2 目でみる悪性リンパ腫の骨髄病変

57巻12号(2013年11月発行)

今月の特集1 前立腺癌マーカー
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査②

57巻11号(2013年10月発行)

特集 はじめよう,検査説明

57巻10号(2013年10月発行)

今月の特集1 神経領域の生理機能検査の現状と新たな展開
今月の特集2 Clostridium difficile感染症

57巻9号(2013年9月発行)

今月の特集1 肺癌診断update
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査①

57巻8号(2013年8月発行)

今月の特集1 特定健診項目の標準化と今後の展開
今月の特集2 輸血関連副作用

57巻7号(2013年7月発行)

今月の特集1 遺伝子関連検査の標準化に向けて
今月の特集2 感染症と発癌

57巻6号(2013年6月発行)

今月の特集1 尿バイオマーカー
今月の特集2 連続モニタリング検査

57巻5号(2013年5月発行)

今月の特集1 実践EBLM―検査値を活かす
今月の特集2 ADAMTS13と臨床検査

57巻4号(2013年4月発行)

今月の特集1 次世代の微生物検査
今月の特集2 非アルコール性脂肪性肝疾患

57巻3号(2013年3月発行)

今月の特集1 分子病理診断の進歩
今月の特集2 血管炎症候群

57巻2号(2013年2月発行)

今月の主題1 血管超音波検査
今月の主題2 血液形態検査の標準化

57巻1号(2013年1月発行)

今月の主題1 臨床検査の展望
今月の主題2 ウイルス性胃腸炎

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