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文献詳細

雑誌文献

臨床検査21巻3号

1977年03月発行

文献概要

Ex Laboratorio Clinico・3

オーストラリア抗原の発見

著者: 大河内一雄1

所属機関: 1九州大学,検査部

ページ範囲:P.287 - P.291

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BlumbergとAu抗原の出会い
 1976年度のノーベル医学生理学受賞者の一人としてオーストラリア抗原(Au抗原)の発見者であるB.S.Blumberg教授が選ばれた.肝炎ウイルスの研究とは直接の関係があったわけではないが,この発見はそれまで不毛であった肝炎ウイルスの研究を急速に進歩させ,今日,ウイルスの培養は成功したと言えないまでも,ワクチン,免疫グロブリンの利用によってB型肝炎ウイルス感染に対する予防も可能となったことはノーベル賞に値するものであろう.そもそも彼の発見の経過と発展は臨床検査室でも起こりうる偶然の出来事を生かしたもので参考となるところが多い.
 すべての発見にはその背景,情況あるいは発見者の意識の方向があろう.Au抗原の発見にはBlumbergの指向するAnthropology (人類学)とヒトの同種免疫が背景にある.人類の進化,人種の移動と成立を実証するために便利な方法としてヒトの血液の遺伝学的な性質を調べる方法があり,血液型,血清型が調査の対象となる.Blumbergは既に隔離されたヒト集団で新しいアルブミンの型を見出し報告していたが,更に新しいヒトの血清型を探すため,血清学的方法を用いた.ここにAu抗原の発見の出発点があると言える.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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