icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床検査22巻11号

1978年11月発行

雑誌目次

特集 酵素による臨床化学分析

村地 孝

pp.1163-1164

 生命科学の歴史の中で,酵素はまず"酵素作用"の形で認識された.食物の消化がペプシンをはじめとする消化酵素の作用によるという認識は,これらの酵素が物質として認知されるよりはるかに以前のことであった.また,アルコール発酵なる酵母の生命現象が酵母の無細胞抽出液の作用でも起こりうるという発見は,近代酵素学の始まりとみなしうるが,発酵過程を担う諸酵素の単離精製には,なお半世紀以上待たねばならなかった.

 J.B.Sumnerが約9年間の苦心の後に,ナタ豆の希アセトン抽出液の中にウレアーゼの結晶を発見したのは,1926年(大正15年)4月29日の朝であったと記録されている.彼はこの正八面体の結晶性単純タンパク質こそが尿素の加水分解という触媒作用を示す本体,すなわちウレアーゼそのものであると主張したが,複雑な生命現象の素因子がそんな単純なアミノ酸の共重合体であるはずはないと信じる一派の人々の受け入れるところとならず,Sumnerの得た結晶はウレアーゼという酵素の担体タンパク質の結晶であって酵素そのものではないという,今日からみれば珍妙な議論さえなされたのであった.やがて数多くの結晶酵素の単離同定とともに,このような観念論は駆逐されてしまうのであるが,これら一連の歴史は,酵素が物質として取り扱われるまでにいかに長年月を要したかを物語っている.

総論

1.酵素的分析法

北村 元仕

pp.1166-1179

はじめに

 酵素的分析法とは,その名の示すように酵素を試薬として用い,酵素反応を利用して目的物質を定量する技術である.酵素は本来生体化学成分の代謝を特異的につかさどるものであるから,原理的にはあらゆる生体成分を酵素的に測定することが可能である.事実,現在では既に200種類に達する生体成分の酵素的分析法が確立されており1),化学物質のほかにも生体液中の極めて多種の酵素活性が酵素的に測定されるようになっている.

 今日,酵素的測定法と称されるものはしかしながら物質,すなわち基質濃度の測定に限定される場合が多い.すなわち血清コレステロールや中性脂肪の酵素的分析法がこの数年間に驚くべき勢で普及し,更にリン脂質やアンモニア測定などへと従来極めて実施の困難であった臨床検査を一挙に一段階の簡便法として発展させた.それらの原因が,正に酵素反応の持つ特異的,温和,安全な特性からもたらされたものであったことから,酵素的分析法(enzymatic analysis)として衆目を集め,現在では"酵素法"という略語までが一般化した.はじめからこのような技術が一分野を画していたわけでは全くないのだけれども,改めてその歩みを振り返ってみれば,ウレアーゼによる血液尿素窒素の測定から,コレステロールオキシダーゼ法に至る60年の道のりをたどることができるだろう.

2.酵素試薬の扱い方

村地 孝

pp.1180-1184

はじめに

 どのような分析法でも,その実施者は分析法の原理や試薬の反応性などについて基礎知識を持っていなければならない.酵素を利用した臨床化学分析もその例外ではない.それどころか,ここでは酵素という触媒を試薬として用いるという特殊な事情があるので,酵素についての一般的な知織の習得も必要とされるのである.

 また酵素的分析法はまだ発展途上にあるので,日常検査に携わる技術者が,自ら新しい方法を考案したり,あるいは既にある方法をかなり大幅に改良したりする機会が多い.このようなときに,単に個々の反応系だけでなく,酵素と酵素反応一般に思いをいたして,根本的に考察しなおさなければならない場合も多いと思われる.

酵素利用技術

1.酵素の固定化と臨床化学分析への応用

高阪 彰

pp.1186-1202

はじめに

 我々が日常の臨床化学検査で酵素を試薬として利用していて感ずることは,値段が高いこと,安定性に欠けるので保存のためには温熱,pHなど細かい点に注意を払う必要があること,測定時に共存物質の影響を受けやすいことなどがある.もちろん,酵素には他の化学試薬の持っていない優れた利点,例えば高い基質特異性,温和な条件下での反応加速性などがあるからこそ,これだけ酵素的測定法が日常検査に応用されるようになったのであるが,上に述べた酵素の持つ欠点を少しでも取り除くことができたらとの願望は,だれしもが抱くことであろう.固定化酵素の臨床検査への応用は,このような背景の中から生まれてきたものであり,酵素の最大の特性である触媒活性を最大限に利用することにより,通常の使用形態である液性酵素(溶液状酵素)にみられる問題点を解消することを目的とするものである.

 1916年にNelsonとGriffinは,インベルターゼを活性炭に吸着させると,活性が長期にわたって保持されるので,繰り返し測定が可能であるとの報告をしているが,酵素の有効利用を目的とした固定化酵素の研究は,1950年代まではほとんど行われていない.1960年代には,工業的応用を目的とした研究が多く,1970年代に入ってからは,酵素工学の中心的課題として,基礎的なものと応用的なものとがからみ合って急速な発展を遂げつつある.

2.半定量・定量用酵素試験紙

奥田 清

pp.1203-1218

はじめに

 いわゆるdip and read方式の尿試験紙の発明は,尿検査法に大きな変革をもたらしたことはここで述べるまでもない.そして更に,この試験紙ストリップの多項目化は,自動分析装置のマルチチャンネル化,あるいは計量診断学なる概念の評価とあいまって,診断作法の体系を従来の問診→診察→検査項目の選択→……という直列的なものから,臨床検査を理学的診断法と同列に行い,より多くの臨床情報によって診断を進める併列思考型の診断学へ,その体系を変革させつつあると言えよう.もちろん,この診断体系の変革は現在流動的であるが,近い将来一定の評価を受けるであろう.

 試験紙による分析方式は簡易検査法の一つの理想的な方式と考えられ,従来のセルロース(濾紙)を基材としたものから,プラスチック板,後述するごとき多重積層フィルムを用いたものが実用化され,更にはガラス線維など,他の各種の含浸基材にもその適用範囲は広がっていくであろう.また,反応操作型式は尿,血清あるいは唾液などの体液用のdip and read方式のものや,全血用のdip, wipe and read方式のもの,更にはユニグラフに代表される変則的なペーパークロマトグラフィー方式のものなど,この面でも多様化しつつあり,従来から有機化学のある分野など一部で用いられていたいわゆるスポットテストなどとともに,一つの分析体系を形成する可能性もある.

3.エンザイムイムノアッセイ

宮井 潔

pp.1219-1229

はじめに

 優れた測定法が開発されると,臨床検査の分野においては飛躍的な発展が期待されるのは言うまでもない.ここで優れた測定法とは,①特異性,②高感度,③良好な再現性,④簡易・迅速性,⑤普遍性などが要求される.その点1959年にBersonとYalowが開発したラジオイムノアッセイ(radioimmunoassay, RIA)は,抗原抗体反応の特異性を利用し,マーカーとして微量測定が可能なラジオアイソトープ(radioisotope, RI)を用いているため,このような諸条件を満足する優れた測定法であった.

 ところが本法にも欠点があり,それは,①RIが減衰するため長期間使用できない,②RI測定用の特殊機器が必要である,③公害防止のためRI汚染物の廃棄が制限されるなどで,特に国土の狭隘な本邦では③が大きな社会問題となっている.ところでこの欠点の主原因はRIを用いていることにある.

定量法各論

1.グルコース

三輪 一智 , 豊田 行康 , 奥田 潤

pp.1232-1261

はじめに

 臨床化学検査におけるグルコースの測定は,糖尿病その他の疾患の診断・治療に欠くことのできない検査であり,またD-グルコースはすべての動植物,微生物に含まれ,我々にとって必須の栄養素であることからこれまでに数多くの測定法が開発・改良され,使用されてきた.近年,酵素反応の特異性と温和な反応条件が注目され,グルコースオキシダーゼやヘキソキナーゼなどを用いる酵素的グルコース測定法が臨床化学検査に取り入れられ,その有用性が広く認められてきている.

 本章においてはグルコースの酵素的定量法について,その種類別に測定原理を概説し,それらの問題点について述べるとともに,特に重要な測定法については詳しい説明を加えた.

2.コレステロール及びエステル

亀野 靖郎

pp.1262-1272

はじめに

 1972年Richmondはコレステロールに対する酸化酵素を精製し,血清コレステロールの定量法への可能性について報告して以来,従来の化学的呈色反応による方法に比して,その有用性が注目された.更に1974年にはAllainらによってコレステロールエステルに対する加水分解酵素を共役させ,コレステロールエステル,総コレステロールの定量が可能となり酵素法による定量法が急速に普及し,今日に至っている.

 ここでは,現在用いられている各種の測定法のうち,我が国において開発された酵素による測定法について,酵素の特性,定量法の考え方,その特徴などについて記述する.

3.尿素

田畑 勝好

pp.1273-1285

はじめに

 尿素はタンパク質の代謝終末産物のうちの一つである.食物中のタンパク質は消化管で加水分解されてアミノ酸になり,血管を経て肝臓に運ばれる.ここでアミノ酸の一部はアルブミンやグロブリンなどの血液タンパク質に合成され,残りは肝臓以外の組織に運ばれてタンパク質に合成される.不用になったアミノ酸は脱アミノ化されてアンモニアが生じ,その一部はカルバミルリン酸シンターゼによって,二酸化炭素とATPと反応してカルバミルリン酸が合成される.カルバミルリン酸はオルニチントランスカルバミラーゼによってオルニチンと反応して,シトルリンを生成する.

 これより尿素サイクルに入り,アルギニノコハク酸を経てアルギニンができる.アルギニンはアルギナーゼの作用でオルニチンと尿素に不可逆的に加水分解され,尿素サイクルは尿素生成の向きにだけ進行するから,いったん尿素生成に使用された窒素は再利用されない.アルギナーゼは肝臓に存在するので,尿素合成は主として肝臓で行われ,その他脳や腎臓でもいくらか合成される.生成された尿素は血液中に入り,腎臓から尿に排泄される.その量は小児8g,成人15〜30gと言われている.尿素は細胞膜を自由に通過することができるから,どこの体液でもその濃度はほとんど同じである.

4.尿酸

影山 信雄 , 中根 清司

pp.1286-1303

はじめに

 尿酸の測定は,1890年にOfferがアルカリ性下でリンタングステン酸を尿酸が還元して,タングステン青を生ずることを見いだし,この反応を1912年にFolinとDenisが血中の尿酸定量に初めて導入したことにより始まった.以来,現在までに数多くの尿酸測定法の考案・改良がなされてきたが,これらの尿酸測定法は,原理別に大きく還元法と尿酸分解酵素を用いた酵素法に分けられる.

5.中性脂肪

仁科 甫啓

pp.1304-1313

はじめに

 脂質分析の中で最初に酵素を用いた測定法が導入されたのはトリグリセリド(TG),すなわち中性脂肪であった.TGの酵素法は1960年後半に,既にEggsteinら1)によって提唱されたもので,まず血清TGをアルカリで加水分解し,得られたグリセロールに酵素であるグリセロールキナーゼ(GK)と補酵素のATPを,更に幾つかの酵素と共役させて,NADHの吸光度の減少を紫外部吸収(UV)で測定するものであった.同じ原理に基づく市販キットも前後して登場したが,化学的測定法に比べやや感度が低かったり,また用いる酵素が当時としては極めて高価であったため,日常検査として余り利用されなかった.しかしこの術式は正確度の点ではほぼ満足するものであり,現在でもTGの標準法の一つとして考えられている.

 酵素法が登場してきた当初,酵素は動物由来のものが主であったが,最近ではこれらの酵素に加え,酵母や細菌からも容易にかつ安価に得られるようになり,それらの酵素を用いての幾つかの測定法が提唱され,実際に迅速化,微量化,簡便化が図られてきている.1977年度の医師会のサーベイ結果でも,TGの酵素法は測定法全体の80%にもなろうとしているが,これには市販キットの寄与が大きい.

6.リン脂質

野間 昭夫

pp.1314-1321

はじめに

 他の血清脂質に比し,リン脂質は測定法の煩雑さと,その臨床的意義が不明な点が多いことより立ち遅れているが,近年酵素的測定法の開発により急速に普及しつつあり,データの集積によってその臨床的意義の解明も進んでくるであろう.

 リン脂質は脂肪酸,グリセロール,リン酸残基及び含窒素化合物(コリン,エタノールアミン,セリン,その他)などより成るグリセロリン脂質と,スフィンゴシンまたはその類似物質に脂肪酸が結合し,更にリン酸残基及び種々の物質が結合したスフィンゴリン脂質に大別され,その構造は図のごとくである.リン脂質は脂肪酸などの非極性(疎水性)部分とリン酸基及び塩基の極性(親水性)部分を有しており,この構造上の特徴がリン脂質の機能及び生体内での役割に大きく関与している.生体内のリン脂質はほとんどすべてタンパクと結合して存在し,特に重要なことは,コレステロールとともにタンパクと結合して生体内の種々の膜構造(細胞膜,ミトコンドリア,ミクロソームなど)を形成している.この際,リン脂質中の脂肪酸の飽和度が膜の透過性や流動性に関与する.また細胞内小器官の特異的な機能とも密接な関連を持ち,代謝物質の細胞内外への輸送,膜酵素の活性発現などに関係している.

7.アンモニア

横手 保治 , 安井 浩 , 渡辺 克之 , 林 忠寿

pp.1322-1330

はじめに

 血液中のアンモニアの源泉は,アンモニウム塩として腸管から吸収されたものと,アミノ酸転移酵素とグルタミン酸脱水素酵素の共役反応で産生されたもの,及び体細胞でアミノ酸から直接離脱したものなどである.

 遊離アンモニアは門脈を経て肝に運ばれ,毒性の低い尿素に変換された後,腎臓より排泄され,一部はグルタミンなどのアミドの形で処理される.したがって,健常者の血中及び組織中の遊離アンモニアは,極めて低いレベルに保たれている.更に,遊離アンモニアは血液中で次のようになっており,99.9%以上がNH4の形で存在している.

8.クレアチニン

鶴 大典

pp.1331-1338

はじめに

 アルカリ性ピクリン酸を用いるJaffe法は操作が簡単で,発色度も比較的大きいという特徴から,現在クレアチニンの測定に広く利用されている.しかしこの発色はクレアチニンに特異的な反応でないという欠点がある.またクレアチニンの血中濃度をこの方法で測定する場合,血清を除タンパク処理する必要がある.この欠点を除くためにまず考えられるのは,特異性の高い酵素を利用する分析法であり,既に1937年Millerらは血清クレアチニンを正確に測定するために微生物の生産する酵素を導入することを試みている.

 筆者らは血清及び尿のクレアチニンとクレアチンを酵素的に分別定量することを意図して,数年前より微生物酵素の研究を進めてきたが,最近民間企業の協力を得て一応の分析条件を設定し,酵素法用のキットを調製しうるまでに至ったので,以下関与する酵素の概略と我々の方法で得た結果を中心にして酵素分析法の実際について述べる.

9.無機リン,重炭酸,クエン酸,アミノ酸

溝口 香代子

pp.1339-1344

はじめに

 酵素を用いた臨床化学分析は,①緩和な反応条件で分析できること,②酵素の特異性の高さは共存系の分析に適しており,操作手順が簡略化できること,③これらの特徴はそのまま検査の自動化の条件を満たすこと,などの理由で,臨床化学分析の主流となりつつある.更に,試薬としての各種酵素標品の製造における日本の微生物界の貢献は目覚ましく,いろいろの性質を異にする酵素の供給がなされるようになっていることが,世界でも類を見ないほどの酵素的測定法の普及となったものと思われる.本稿では,いまだ日常検査として取り入れられてはいないが,酵素的測定法として実用性があると考えられる項目で,その測定原理の応用性が広いと思われるものについて,比較的新しい報告を中心に測定法をまとめてみた.

資料

市販酵素一覧

高阪 彰 , 浅井 正樹

pp.1345-1353

 日常の臨床検査の中で酵素を試薬として用いることが多くなった.しかし実際には自分の使用している酵素の起源,純度,その他の諸特性を知ることは困難なことが多い.

 この「市販酵素一覧」は単品またはバルクとして臨床検査の領域で広く使用されている酵素の主たるものを,酵素メーカーまたは販売会社からの資料に基づいて整理したものである.記載もれや記入上の不備も多々あろうかと思うが,メーカーとユーザーの一つの接点としてご利用いただければ幸いである.

海外の学会から

第30回アメリカ臨床化学会年次学会

𠮷野 二男

pp.1202

 1978年7月23日から28日までサンフランシスコにおいて,30th Annual National Meeting of Ameri-can Association for Clinical Chemists (30th AACC '78)が開催された.会場の中心は同市の市民ホールであり,その前は広場になっていて向かいには日米講和条約を結んだ建物があり,左手には市役所がある.広場の地下は催し物用の場所でそこで機械,試薬の展示が行われた.

 開会式は大ホールで,雲の中にその橋柱を出した金門橋を写した映画によって始まり,ノーベル賞受賞者のYalow, R.S.によるラジオイムノアッセイの講演があった.学会は午前中は特別講演,シンポジウムなどが行われ,そのほかに朝7時から朝食をとりながらのラウンドテーブルディスカッションが行われている.午後は各会場に分かれて約380の演題の発表が,大ホールを囲む50名から200名ぐらい入る小会場で行われ,時間を守った運営はみごとで,"もう少し","もうちょっと"などと言って時間を無視するような演者はなく,座長も時間をきちんと守って進行させていくのは気持が良かった.演題発表の時間には2時45分から1時間の休憩があり,展示場へと追記してあるのはこの時間に展示を見よというのであろう.

ホルモン・薬物の酵素イムノアッセイの国際シンポジウム(西独)

辻 章夫

pp.1230

 7月10,11日の2日間西独のドナウ河沿いの緑に囲まれた美しいUlmの町の郊外にあるUlm大学において,表記の国際学会が開催された.ヨーロッパ各国はじめ米国,カナダ,インド,イスラエル,日本などから約300人の研究者が参加した.演題は36で,いずれも20分の講演で特別講演はなかった.エンザイムイムノアッセイ(EIA)が研究され始めてから数年になるが,はじめは感度も精度も悪く,ラジオイムノアッセイ(RIA)に代わる技術となりうるかどうか疑問視されていたが,本シンポジウムではEIAがホルモンや薬物の微量分析法としての地位を完全に確立したことが示された.

 我が国でも使用され始めたSyvaのHomogeneousEIAについて幾多の臨床例が報告され,Dr.SnyderによりT4からT3,更にステロイド(コーチゾール,エストリオールなど)のHomogeneous EIAの開発が進んでいることが報告された.新しいHomogeneous EIAとして,MilesとWeizman研究所のグループにより,補酵素を用い酵素サイクリング法によるEIAが発表された.また,Milesのグループはβ-ガラクトース-螢光色素-ハプテン結合体を用い,抗体がハプテンに結合すると酵素によるガラクトースと螢光色素の水解が阻害されることに基づく新しい方式を発表した.

第10回国際臨床化学会議(メキシコ)

戸谷 誠之

pp.1338

 2月末にメキシコで開催された第10回国際臨床化学会議は,今年の臨床化学における重要な行事として列記される.しかし,その学会記については多くの方が記事を書かれたので省略することとし,本稿では臨床酵素学に関係する話題について報告する.

 酵素的測定法による血清成分の分析法として過酸化と素を発生させる方法は多い.例えばグルコース,尿酸,総コレステロールなどについて知られている.この方法は最終反応を可視部測定に安定に導びくことが可能である.ところでMasureker(米国)らはトリグリセリドについてもこの反応系による測定法に成功した.彼らはStreptococcus faeciumの膜からL-α-グリセロリン酸酸化酵素の精製法を確立した.トリグリセリドはリパーゼ,グリセロキナーゼ処理によりグリセロール-1-リン酸水なる.これを先の酵素によりジヒドロキシアセトンを過酸化酸素へと導びく.この方法はEsders (米国)らによりMultilayer coating film systemの一環として使用されると報告した.

市販酵素標品便覧

pp.1355-1372

栄研化学㈱……1356

㈱カイノス……1358

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

64巻12号(2020年12月発行)

今月の特集1 血栓止血学のトピックス—求められる検査の原点と進化
今月の特集2 臨床検査とIoT

64巻11号(2020年11月発行)

今月の特集1 基準範囲と臨床判断値を考える
今月の特集2 パニック値報告 私はこう考える

64巻10号(2020年10月発行)

増刊号 がんゲノム医療用語事典

64巻9号(2020年9月発行)

今月の特集1 やっぱり大事なCRP
今月の特集2 どうする?精度管理

64巻8号(2020年8月発行)

今月の特集1 AI医療の現状と課題
今月の特集2 IgG4関連疾患の理解と検査からのアプローチ

64巻7号(2020年7月発行)

今月の特集1 骨髄不全症の病態と検査
今月の特集2 薬剤耐性カンジダを考える

64巻6号(2020年6月発行)

今月の特集 超音波検査報告書の書き方—良い例,悪い例

64巻5号(2020年5月発行)

今月の特集1 中性脂肪の何が問題なのか
今月の特集2 EBLM(evidence based laboratory medicine)の新展開

64巻4号(2020年4月発行)

増刊号 これで万全!緊急を要するエコー所見

64巻3号(2020年3月発行)

今月の特集1 Clostridioides difficile感染症—近年の話題
今月の特集2 質量分析を利用した臨床検査

64巻2号(2020年2月発行)

今月の特集1 検査でわかる二次性高血圧
今月の特集2 標準採血法アップデート

64巻1号(2020年1月発行)

今月の特集1 免疫チェックポイント阻害薬—押さえるべき特徴と注意点
今月の特集2 生理検査—この所見を見逃すな!

63巻12号(2019年12月発行)

今月の特集1 糖尿病関連検査の動向
今月の特集2 高血圧の臨床—生理検査を中心に

63巻11号(2019年11月発行)

今月の特集1 腎臓を測る
今月の特集2 大規模自然災害後の感染症対策

63巻10号(2019年10月発行)

増刊号 維持・継続まで見据えた—ISO15189取得サポートブック

63巻9号(2019年9月発行)

今月の特集1 健診・人間ドックで指摘される悩ましい検査異常
今月の特集2 現代の非結核性抗酸菌症

63巻8号(2019年8月発行)

今月の特集 知っておきたい がんゲノム医療用語集

63巻7号(2019年7月発行)

今月の特集1 造血器腫瘍の遺伝子異常
今月の特集2 COPDを知る

63巻6号(2019年6月発行)

今月の特集1 生理検査における医療安全
今月の特集2 薬剤耐性菌のアウトブレイク対応—アナタが変える危機管理

63巻5号(2019年5月発行)

今月の特集1 現在のHIV感染症と臨床検査
今月の特集2 症例から学ぶフローサイトメトリー検査の読み方

63巻4号(2019年4月発行)

増刊号 検査項目と異常値からみた—緊急・重要疾患レッドページ

63巻3号(2019年3月発行)

今月の特集 血管エコー検査 まれな症例は一度みると忘れない

63巻2号(2019年2月発行)

今月の特集1 てんかんup to date
今月の特集2 災害現場で活かす臨床検査—大規模災害時の経験から

63巻1号(2019年1月発行)

今月の特集1 発症を予測する臨床検査—先制医療で5疾病に立ち向かう!
今月の特集2 薬の効果・副作用と検査値

62巻12号(2018年12月発行)

今月の特集1 海外帰りでも慌てない旅行者感染症
今月の特集2 最近の輸血・細胞移植をめぐって

62巻11号(2018年11月発行)

今月の特集1 循環癌細胞(CTC)とリキッドバイオプシー
今月の特集2 ACSを見逃さない!

62巻10号(2018年10月発行)

増刊号 感染症関連国際ガイドライン—近年のまとめ

62巻9号(2018年9月発行)

今月の特集1 DIC診断基準
今月の特集2 知っておきたい遺伝性不整脈

62巻8号(2018年8月発行)

今月の特集 女性のライフステージと臨床検査

62巻7号(2018年7月発行)

今月の特集1 尿検査の新たな潮流
今月の特集2 現場を変える!効果的な感染症検査報告

62巻6号(2018年6月発行)

今月の特集1 The Bone—骨疾患の病態と臨床検査
今月の特集2 筋疾患に迫る

62巻5号(2018年5月発行)

今月の特集1 肝線維化をcatch
今月の特集2 不妊・不育症医療の最前線

62巻4号(2018年4月発行)

増刊号 疾患・病態を理解する—尿沈渣レファレンスブック

62巻3号(2018年3月発行)

今月の特集1 症例から学ぶ血友病とvon Willebrand病
今月の特集2 成人先天性心疾患

62巻2号(2018年2月発行)

今月の特集1 Stroke—脳卒中を診る
今月の特集2 実は増えている“梅毒”

62巻1号(2018年1月発行)

今月の特集1 知っておきたい感染症関連診療ガイドラインのエッセンス
今月の特集2 心腎連関を理解する

60巻13号(2016年12月発行)

今月の特集1 認知症待ったなし!
今月の特集2 がん分子標的治療にかかわる臨床検査・遺伝子検査

60巻12号(2016年11月発行)

今月の特集1 血液学検査を支える標準化
今月の特集2 脂質検査の盲点

60巻11号(2016年10月発行)

増刊号 心電図が臨床につながる本。

60巻10号(2016年10月発行)

今月の特集1 血球貪食症候群を知る
今月の特集2 感染症の迅速診断—POCTの可能性を探る

60巻9号(2016年9月発行)

今月の特集1 睡眠障害と臨床検査
今月の特集2 臨床検査領域における次世代データ解析—ビッグデータ解析を視野に入れて

60巻8号(2016年8月発行)

今月の特集1 好塩基球の謎に迫る
今月の特集2 キャリアデザイン

60巻7号(2016年7月発行)

今月の特集1 The SLE
今月の特集2 百日咳,いま知っておきたいこと

60巻6号(2016年6月発行)

今月の特集1 もっと知りたい! 川崎病
今月の特集2 CKDの臨床検査と腎病理診断

60巻5号(2016年5月発行)

今月の特集1 体腔液の臨床検査
今月の特集2 感度を磨く—検査性能の追求

60巻4号(2016年4月発行)

今月の特集1 血漿蛋白—その病態と検査
今月の特集2 感染症診断に使われるバイオマーカー—その臨床的意義とは?

60巻3号(2016年3月発行)

今月の特集1 日常検査からみえる病態—心電図検査編
今月の特集2 smartに実践する検体採取

60巻2号(2016年2月発行)

今月の特集1 深く知ろう! 血栓止血検査
今月の特集2 実践に役立つ呼吸機能検査の測定手技

60巻1号(2016年1月発行)

今月の特集1 社会に貢献する臨床検査
今月の特集2 グローバル化時代の耐性菌感染症

59巻13号(2015年12月発行)

今月の特集1 移植医療を支える臨床検査
今月の特集2 検査室が育てる研修医

59巻12号(2015年11月発行)

今月の特集1 ウイルス性肝炎をまとめて学ぶ
今月の特集2 腹部超音波を極める

59巻11号(2015年10月発行)

増刊号 ひとりでも困らない! 検査当直イエローページ

59巻10号(2015年10月発行)

今月の特集1 見逃してはならない寄生虫疾患
今月の特集2 MDS/MPNを知ろう

59巻9号(2015年9月発行)

今月の特集1 乳腺の臨床を支える超音波検査
今月の特集2 臨地実習で学生に何を与えることができるか

59巻8号(2015年8月発行)

今月の特集1 臨床検査の視点から科学する老化
今月の特集2 感染症サーベイランスの実際

59巻7号(2015年7月発行)

今月の特集1 検査と臨床のコラボで理解する腫瘍マーカー
今月の特集2 血液細胞形態判読の極意

59巻6号(2015年6月発行)

今月の特集1 日常検査としての心エコー
今月の特集2 健診・人間ドックと臨床検査

59巻5号(2015年5月発行)

今月の特集1 1滴で捉える病態
今月の特集2 乳癌病理診断の進歩

59巻4号(2015年4月発行)

今月の特集1 奥の深い高尿酸血症
今月の特集2 感染制御と連携—検査部門はどのようにかかわっていくべきか

59巻3号(2015年3月発行)

今月の特集1 検査システムの更新に備える
今月の特集2 夜勤で必要な輸血の知識

59巻2号(2015年2月発行)

今月の特集1 動脈硬化症の最先端
今月の特集2 血算値判読の極意

59巻1号(2015年1月発行)

今月の特集1 採血から分析前までのエッセンス
今月の特集2 新型インフルエンザへの対応—医療機関の新たな備え

58巻13号(2014年12月発行)

今月の特集1 検査でわかる!M蛋白血症と多発性骨髄腫
今月の特集2 とても怖い心臓病ACSの診断と治療

58巻12号(2014年11月発行)

今月の特集1 甲状腺疾患診断NOW
今月の特集2 ブラックボックス化からの脱却—臨床検査の可視化

58巻11号(2014年10月発行)

増刊号 微生物検査 イエローページ

58巻10号(2014年10月発行)

今月の特集1 血液培養検査を感染症診療に役立てる
今月の特集2 尿沈渣検査の新たな付加価値

58巻9号(2014年9月発行)

今月の特集1 関節リウマチ診療の変化に対応する
今月の特集2 てんかんと臨床検査のかかわり

58巻8号(2014年8月発行)

今月の特集1 個別化医療を担う―コンパニオン診断
今月の特集2 血栓症時代の検査

58巻7号(2014年7月発行)

今月の特集1 電解質,酸塩基平衡検査を苦手にしない
今月の特集2 夏に知っておきたい細菌性胃腸炎

58巻6号(2014年6月発行)

今月の特集1 液状化検体細胞診(LBC)にはどんなメリットがあるか
今月の特集2 生理機能検査からみえる糖尿病合併症

58巻5号(2014年5月発行)

今月の特集1 最新の輸血検査
今月の特集2 改めて,精度管理を考える

58巻4号(2014年4月発行)

今月の特集1 検査室間連携が高める臨床検査の付加価値
今月の特集2 話題の感染症2014

58巻3号(2014年3月発行)

今月の特集1 検査で切り込む溶血性貧血
今月の特集2 知っておくべき睡眠呼吸障害のあれこれ

58巻2号(2014年2月発行)

今月の特集1 JSCC勧告法は磐石か?―課題と展望
今月の特集2 Ⅰ型アレルギーを究める

58巻1号(2014年1月発行)

今月の特集1 診療ガイドラインに活用される臨床検査
今月の特集2 深在性真菌症を学ぶ

57巻13号(2013年12月発行)

今月の特集1 病理組織・細胞診検査の精度管理
今月の特集2 目でみる悪性リンパ腫の骨髄病変

57巻12号(2013年11月発行)

今月の特集1 前立腺癌マーカー
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査②

57巻11号(2013年10月発行)

特集 はじめよう,検査説明

57巻10号(2013年10月発行)

今月の特集1 神経領域の生理機能検査の現状と新たな展開
今月の特集2 Clostridium difficile感染症

57巻9号(2013年9月発行)

今月の特集1 肺癌診断update
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査①

57巻8号(2013年8月発行)

今月の特集1 特定健診項目の標準化と今後の展開
今月の特集2 輸血関連副作用

57巻7号(2013年7月発行)

今月の特集1 遺伝子関連検査の標準化に向けて
今月の特集2 感染症と発癌

57巻6号(2013年6月発行)

今月の特集1 尿バイオマーカー
今月の特集2 連続モニタリング検査

57巻5号(2013年5月発行)

今月の特集1 実践EBLM―検査値を活かす
今月の特集2 ADAMTS13と臨床検査

57巻4号(2013年4月発行)

今月の特集1 次世代の微生物検査
今月の特集2 非アルコール性脂肪性肝疾患

57巻3号(2013年3月発行)

今月の特集1 分子病理診断の進歩
今月の特集2 血管炎症候群

57巻2号(2013年2月発行)

今月の主題1 血管超音波検査
今月の主題2 血液形態検査の標準化

57巻1号(2013年1月発行)

今月の主題1 臨床検査の展望
今月の主題2 ウイルス性胃腸炎

icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら