icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床検査24巻11号

1980年11月発行

文献概要

特集 出血傾向のLaboratory Diagnosis Ⅲ.最近注目されている出血性素因

2.線溶阻止物質と出血

著者: 坂田洋一1 青木延雄1

所属機関: 1自治医科大学血液研究所止血血栓部門

ページ範囲:P.1297 - P.1303

文献購入ページに移動
 血栓の成立には血管壁の変化,血流の異常,血液成分の異常など複数の因子が関与している.止血のために生じた血栓はすぐ除去されれば再び出血を招くし,適当に溶解されなければ臓器に虚血性変化が起きることになる.そこで生体のホメオスターシスの一環として,網内系細胞による貪食,プロテアーゼによる線維素溶解現象(線溶)などが血栓の除去,血管再疎通を微妙に調節しているわけである.線溶においては特にプラスミノゲンアクチベーター,プラスミンを介する系が主流であり,プラスミノゲンアクチベーター,プラスミノゲンアクチベーターの阻害因子,プラスミン,プラスミン阻害因子の均衡によって,その線溶能が決定される.プラスミノゲンアクチベーターとしては,血管壁内皮細胞より循環血中に放出される血管壁プラスミノゲンアクチベーターが最も重要であると考えられている.
 プラスミノゲンアクチベーターの阻害因子は組織中にはその存在が示されているが,循環血中のその本態はまだ解明されていない.プラスミンの血漿中の阻害因子としては表1に挙げたようなものが認められるが,最近我我の研究室で分離精製されたα2-プラスミンインヒビター(α2-PI)1)が,生理的に最も重要なプラスミンの阻害因子であることが判明してきた2,3).本稿では重篤な出血傾向を来したその遺伝的欠損症について述べ,それに関連してα2-PIの生理的意義について論ずることにする.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?