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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査24巻9号

1980年09月発行

雑誌目次

今月の主題 補体

カラーグラフ

糸球体への補体沈着

馬杉 洋三

pp.992-993

 腎糸球体への補体成分の沈着は,螢光抗体法あるいは酵素抗体法などの免疫組織学的手技により,主として糸球体腎炎例に認められる.補体の糸球体における沈着形式の検索には,その前期反応成分であるC1q, C4と後期反応成分であるC3を,それぞれの代表として,免疫グロブリン各クラスの検索とともに行うのが普通であるが,その沈着様式として前期反応成分ならびにC3が免疫グロブリンとともに,糸球体毛細管基底膜(GBM)かメサンジウムあるいはその両者に見られる場合と,免疫グロブリン共存の有無にかかわらずC3のみが糸球体に見られる場合があり,前者は補体のclassical pathway,後者はalternative pathway活性型と考えられる.

 ヒト糸球体腎炎各型には定型的な場合,螢光抗体法によりそれぞれ特徴的な補体成分沈着様式,沈着部位及び強度が見られるので,以下各腎炎型の代表的生検例の糸球体における補体C3成分沈着の写真を呈示し.,併せてC1q, C4成分の同時沈着の有無,免疫グロブリン各クラスの沈着の状況ならびに,認められた糸球体形態変化について触れたいと思う.

技術解説

螢光抗体法による補体の検出

馬杉 洋三

pp.994-1002

 螢光抗体法により特定の組織に同定される各種血清成分の沈着のうち,特に免疫グロブリンに伴った補体成分の沈着の確認は,両者が同一の分布形式をとっている場合は血中からその部分への免疫複合物の沈着の事実か,あるいは沈着部位の組織成分自体,またはそこに既に結合している外来成分を抗原としたin situでの免疫複合物の形成を意味し,特に当該組織に何らかの機能形態異常を認める場合には,補体成分沈着の関与は組織障害性の免疫複合物の立証と考えるのが普通である.補体C3以降の後期反応成分のみの沈着で免疫グロブリンを伴わない場合でも,当該組織に障害がみられるならば,抗原抗体結合物以外の何らかの誘発因子による,補体alternative pathway活性化にかかわる組織障害の可能性もある.しかし一方では補体成分が抗原抗体結合物へ関与して,それを可溶化不活化するというin vitroの実験的事実もある.

 以下,筆者は螢光抗体法一般の基本的技術的な面の記載の後,実例として特にヒト糸球体腎炎各型についての,定型的生検例腎糸球体に見られる自己補体成分沈着の状況について述べるが,ほかに腎凍結切片上に新鮮モルモット血清を重層することにより,糸球体において新たに活性化沈着するモルモット補体成分の動向についても述べ,両者を糸球体の形態的障害度と比較のうえで,組織に沈着する補体の意義について考察したいと思う.

補体成分の活性の測定

近藤 元治 , 竹村 周平 , 吉川 敏一

pp.1003-1008

 古く19世紀に,補体系(complement system)は細菌感染に際して血液中に産生される抗体とともに働いて,生体の感染防御に重要であることからその存在が知られるようになった.この細菌感染における補体の役割の主なものは,細菌の溶解(bacteriolysis),好中球による細菌の貪食作用(phagocytosis)におけるオプソニン作用の促進,及び補体の活性化により生じる白血球(主に好中球)を病巣に呼び集める白血球遊走因子(chemotactic factor)である.

 ところが補体が細菌のような有害な細胞を破壊している限りにおいては,補体の役割は生体を守る立場にあるわけであるが,場合により自己の構成する細胞が破壊されるようになると,自己免疫疾患のように生体に害を与えることになりかねない.また補体の活性化に伴った分解産物として前述の白血球遊走因子のほかに,血管透過性を充進させるアナフィラトキシンや,好中球からライソソーム酵素を放出させる因子が産生され,炎症を起こすことも分かってきた.ちなみに皮膚に炎症が生じると発赤,発熱,疼痛が生じるが,これらはいずれも補体の関与した白血球遊走,血管透過性亢進,あるいはライソソーム酵素放出で説明できるのである.

補体成分の分離精製

鈴木 貴和

pp.1009-1016

 最近補体は抗体に対する従属的立場から脱却し,免疫機構をはじめとする種々の生体防御機構の中で,独立した地位を占めるようになった.これと併行して血中の補体量が自己免疫疾患や癌など種々の疾患で変動するため,これらの病状経過の指標として有用なことも明らかにされた.

 このような補体に対する知識の蓄積を背景に,臨床研究的にもCH50やACH50価の測定が一般化され始めているが,方法論的な頻雑さもあって,補体成分の活性測定には手が届きかねているのが現状である.したがって,補体成分の測定に関しては免疫一元拡散法やネフェロメーターを使用して,主としてC3,C4,C5やC9などの含量測定が主体となっている.

総説

補体と臨床

稲井 眞彌

pp.1017-1022

 補体系は新鮮な動物の血清中に含まれる20種類以上の蛋白質によって構成されている.これら蛋白質は,①補体成分,②alternativc pathwayの反応に関与する因子群,及び③活性化された補体成分や,生物活性を持つ補体成分のフラグメント(fragment)を不活化する物質(inactivator)の3群に大別される.補体系はclassical pathwayとalternative pathwayとの二つの経路によって活性化され,後で述べるような種々の生物活性を表してくる.

 classical pathwayは主としてIgG抗体やIgM抗体を含む抗原抗体複合物によって補体系が活性化される場合の経路で,各補体成分はC1(C1q,C1r,C1sの三つの亜成分から成っている),C4,C2,C3,C5,C6,C7,C8,C9の順序で反応が進む,この経路ではC1rやC1sのように活性化された成分はそれ自体酵素活性を持ち,あるいは活性化された成分のフラグメントはC4b2a, C4b2a3bのように酵素様活性を持つ分子複合体を形成し,次に反応する成分を活性化するという形式で反応が進み,最終的に形成されるC5b〜9複合体は細胞膜を傷害し,細胞溶解反応を起こす.

臨床検査の問題点・131

血清補体価の測定

田村 昇 , 石倉 永

pp.1024-1029

 血清補体価の測定は,その需要が伸びる一方で,自動検査化も進まず,"手間のかかる検査"とされている.それは,安定した溶血素の作製,信頼できる標準血清にはどんなプール血清が必要かなど日常検査のうえで難題をかかえているからである.

(カット写真:この電顕写真から1025ページのC1qの構造が推定されている.奈良医大細菌学教室米増國雄助教授提供)

検査と疾患—その動きと考え方・45

HANE(遺伝性血管神経性浮腫)

行山 康

pp.1031-1036

 症例 K.O.,26歳,女性.

 主訴 呼吸困難,顔面浮腫.

臨床化学分析談話会より・84<四国支部>

1979年度四国支部の活動報告—手さぐりのなかの活動

大島 一洋

pp.1023

 臨床化学分析談話会四国支部は1979年8月に発足以来,四国4県による合同セミナーを軸に1979年度の活動を行ってきた.

 第1回セミナーが11月11日高松市で開催され,(1)臨床化学分析談話会の中央における動向

          水島  淳(香川県立中央病院)

学会印象記 第29回日本臨床衛生検査学会

意欲的だったシンポ"検査と臨床の対話"

安井 重裕

pp.1030

 第29回日本臨床衛生検査学会は,5月31日,6月1日の両日にわたって,札幌市の15会場で約3,500名の参加者を集めて開催された.

 特別講演の平井秀松北大教授"癌領域における血清学的診断法"と,上田正義学会長講演"エキノコックスについて"は,いずれも開催地北海道にゆかりのある演題であった.なぜなら,エキノコックスが北海道を代表することは周知のとおりであるが,AFP, CEAなどのRIA法確立は,抗体が大量にできる"ウマ"の存在が必要であったという意味において,(このことは平井先生から伺ったことがある.)やはり北海道という条件を想起させるからである.

学会印象記 第30回電気泳動学会春季大会

二次元電気泳動法の実用化へ

島尾 和男

pp.1058

 第30回電気泳動学会春季大会は6月6,7の両日,大会会長東京学芸大学生物学井上勤教授主宰の下に,例年と同じ野口英世記念会館で開催され,大会会長の企画による2題の教育講演と一般演題53題の発表が行われた.

 教育講演は第1日及び第2日の午後のはじめに行われ,第1日は平林民雄(筑波大学生物科学系)による"筋肉の多形性蛋白分子と電気泳動法"で,細胞分化研究の手段としての筋蛋白の多形性の解析の研究成果と,電気泳動法のこの分野での有効性についての御自身の実験装置による成果を交えての講演で,参考となること大なるものがあった.

Ex Laboratorio Clinico・45

C3欠損症

藤田 禎三

pp.1037-1041

はじめに

 補体とは約20種の血清蛋白の総称で,その反応は一定の順序で進み,生体に侵入した細菌及びウイルスなどに対する防御機構に重要な役割を演じている.免疫学を専攻している友人などに"Complement is complicated"と言われるのだが,補体の世界的第一人者であるMüller Eberhard博士もある総説の中で,補体はなぜこんなに複雑なのかとよく聞かれると述べている.そんなとき彼は,どうしたらもっと簡単になるのかと逆に質問することにしていると書いている.補体が複雑だと感じる一つの理由として,補体の機能が主として精製された補体成分を用いた実験系で明らかにされたことが挙げられるのではないだろうか.しかし1970年代に,臨床医学と臨床検査の急速な進歩により数々の補体欠損症が発見され,補体の機能をより具体的に疾病の中で捕らえ直すことが可能になった.

負荷機能検査・9

ACTH負荷試験

内田 俊也 , 尾形 悦郎

pp.1042-1050

 ACTH負荷試験は内分泌学領域における数多い負荷試験の一つであり,副腎皮質の予備能をみるための重要な検査である.一般に内分泌学における負荷試験には刺激と抑制があり,負荷を与えた後の血中,尿中ホルモンその他の推移をみることによって,生体の複雑なフィードバック機構を解明し,内分泌疾患を診断することができる.負荷の程度としては生理的に近い条件の負荷を与えるか,あるいは最大限に近い負荷を加えて生体の反応をみるかは,その目的によっても副作用によっても異なってくる.ACTH負荷試験の歴史をたどると,少量で最大の効果を得るためと副作用を極力少なくするための努力が払われているのが分かる.

 ACTH負荷試験の発祥は1948年のThornら1)の研究に始まる.彼らはコルチコトロピン(天然ACTH)に対する副腎皮質の反応として,循環好酸球の減少と尿中尿酸排泄量の増加に注目した.純粋ACTH25mg1回筋注法により,4時間後の変化は正常において,循環好酸球数は前値に比し−60%〜−100%(平均−80%)と減少を示し,尿中尿酸排泄量(尿中尿酸値/尿中クレアチニン値)は+60%〜+180%(平均+100%)と増加を示した,Addison病では前者は−20%〜+30%(平均0%),後者は−20%〜+60%(平均+20%)という結果であり,正常者とは明らかな有意差を認めた.

多変量解析の応用・9

数量化Ⅲ類,Ⅳ類

古川 俊之 , 田中 博

pp.1051-1057

 外的基準のある場合の数量化手法については前回解説したので,引き続き外的基準のない場合の数量化手法,すなわち数量化Ⅲ,Ⅳ類について述べる.外的基準のある数量化手法,すなわち数量化I,II類はそれぞれ重回帰分析,判別分析をカテゴリカルデータに適用できるように拡張したものであり,その基本的な考え方は,各アイテムカテゴリーにダミー変数を対応させることにあった.

 しかし外的基準を設けず,与えられた離散的データより何らかの相関構造を抽出する場合は,分析者の方針,与えられたデータの質に応じて幾つかの数量化の方法が考えられる.例えば主成分分析をカテゴリカルデータに適用する場合,個体間あるいは変量間の相関をどのような形で定義するかによって分析の結果が異なる.近年,潜在構造分析,多次元尺度構成法あるいは外的基準のない数量化手法のような手法が発表されているが,これらはいずれも名義尺度や順序尺度などの形で与えられたデータから相関関係を抽出し,次元の少ない連続変量の空間に移し変えて相関関係を表示しようとする手法,ということができる.

研究

光学顕微鏡標本中の特定な部分を電子顕微鏡写真にする試み—光顕・電顕同一視野観察法

千田 龍吉 , 川北 勲

pp.1059-1062

はじめに

 一般病理検査室では各種剖検,生検材料の病理診断は光学顕微鏡(以下光顕)によって行っている.しかし症例によっては電子顕微鏡(以下電顕)を併用すれば,なお多くの情報が得られる場合もある.前もって電顕の必要なことが推測できれば両方の準備を行うが,実際には生検前に組織像を推測することは困難であり,すべての例に電顕材料を作ることはむだが多くてできない.また電顕が必要と思われるときにも光顕所見を見てから再度,電顕だけのために生検を施行することは実際問題としては困難な場合が少なくない.光顕で必要と思われる同一部位を電顕で撮影することが可能であるならば,より詳細な点まで分かり有用である.

 我々は光顕標本の特定の視野を電顕で撮影する試みを行った.既に光顕用の固定,包埋,染色が施してあるため,最初から電顕用に固定,包埋したものに比較して出来上がった写真が良くないことは当然のことであるが,パラフィン切片内の細菌,細胞内異物,ウイルス,封入体及び各種小体などの細胞との関係,光顕レベルの診断の再確認には有用な手段と考える.本文ではヘマトキシリン・エオジン染色標本について実施した結果について報告する.

HDLコレステロールの全自動測定法

小田 幸生 , 真鍋 美智子 , 橋本 美由紀 , 富岡 和実

pp.1063-1066

はじめに

 近年,Framingham Studyに代表されるHDLコレステロール(以下HDL Chol)の疫学調査1)からその測定がにわかに注目されてきた.

 HDL Cholの測定法には超遠心法,酸性多糖体ポリアニオン及び2価金属イオンを用いた各種沈殿法2,3),電気泳動法4),免疫沈降法5)などがある.これらはいずれも用手法にて行われ煩雑な操作のうえ長時間を要する.一方自動分析法においては各種沈殿法にて遠心分離後,上清HDL分画を用いたChol発色のみ自動化測定を行う方法はあるが,分離操作をも含めた完全自動化についてはまだその報告を見ない.今回我々は抗原抗体複合体の粒子の大きさに着目し,高力価の抗β-リポ蛋白(β-LP)抗血清を用いて,テクニコン連続濾過装置を用い,沈降物を自動的かつ連続的に取り除き,濾液HDL中のChol測定をAuto Analyzerにて試み十分実用化しうる結果を得た.

GOD-POD-ABTS法における尿糖定量の妨害物質の除去について

斎藤 恵美子 , 笠井 治子 , 石渡 和男 , 仁科 甫啓

pp.1067-1070

はじめに

 現在我が国では,酵素を用いた血糖定量にグルコースオキシダーゼ/ペルオキシダーゼ(GOD-POD)法が広く行われているが,尿糖への応用は極めて少ない.

 GOD-POD法のGOD反応はβ-D-グルコースに特異的であるが,共役酵素によるPOD反応の特異性は低く,特に本法を尿糖定量に用いる場合には尿中に排泄される種々の還元物質や薬剤などの影響を受けやすい1,2).そのためそれらの物質をあらかじめ除去する必要があり,イオン交換樹脂3,4)や活性炭5)を用いて前処理を行うことが提唱されているが,操作が煩雑となり精密度に問題を生じやすい.一方GOD-POD法は高感度であるため,尿糖定量に用いるには尿を希釈する必要があり,血糖定量条件を直ちに日常の尿糖定量に採用することはできない.

臨床材料より分離されたVibrio succinogenesの性状

渡辺 邦友 , 渡辺 泉 , 山田 規恵 , 磯野 美登利 , 上野 一恵 , 那須 勝

pp.1071-1074

はじめに

 Vibrio succinogenesは1961年Wolinらによりウシのルーメン液から分離され,新しい菌種として初めて記載されている1).Wolinらによると,V.succinogenesは彎曲した菌体の一端に1本の鞭毛を有する嫌気性の無芽胞のVibrioであり,チトクロームbとcを有すること,SIM培地で硫化水素を産生すること,硝酸塩を還元すること,炭水化物を発酵しないこと,ウレアーゼ,カタラーゼを有しないことなどが知られている1)

 著者らは,最近の2年間に呼吸器感染症患者の気管内痰から分離された本菌と思われる菌種2株について,その性状を詳しく検討する機会を得たので以下に報告する.

最近の臨床材料より分離されたSerratia marcescensについて

中村 恵一 , 高森 陽子 , 大川 澄男 , 柳瀬 義男

pp.1075-1078

 1978年5月〜11月に伊達赤十字病院検査部細菌検査室で扱った検体より分離したS.marcescens90株について検討を行い次の成績を得た.

(1)検出率については尿からの20.9%が最も多く,全体では7.6%であった.

(2) CBPC, SBPC及びTCに対してはいずれも80%以上が,CPでも過半数が高度耐性を示した.

(3) GM耐性菌は57.8%であり,このGM耐性菌に対してAMKはMICが1〜3管程度低い値であった.またTOB, DKB及びKMではGMより劣る感受性を示した.

(4) GM耐性菌と検出部位の関係については有意の差をもつ特徴はみられなかった.

(5)血清型4型菌株にはGM耐性菌が有意に多かった.

私のくふう

ポリアクリルアミドゲルの染色及び脱色法

高橋 豊三 , 武山 直子

pp.1079-1080

 電気泳動の優れた支持体として用いられているポリアクリルアミドゲルには,通常円柱状あるいは平板状にゲルを作製して行う方法がある.どちらの方法においても,染色及び脱色に手間どるのが現状である.脱色するには電気的に荷電して行う方法もあるが,我々は自然脱色を効率良く行う目的のために,特にディスク電気泳動ゲル脱色法を中心に,図1のような装置を考案したので報告する.

新しいキットの紹介

酵素免疫測定法によるα-フェトプロテインの測定

西田 康一 , 松村 直幸 , 堀田 忠弘 , 吉川 敏一 , 近藤 元治

pp.1081-1084

はじめに

 アルファーフェトプロテイン(α-fetoprotein:AFP)は,電気泳動でα分画に認められる分子量約64,600の胎児蛋白1)で,正常成人血清には極めて微量(20ng/ml以下)にしか存在しない2).しかしある病的状態で血清AFPは増加し,特に原発性肝細胞癌の約80%で著しい上昇を示すことより,現在その測定が肝疾患の鑑別や原発性肝細胞癌の早期発見などに広く利用されている3).また異常妊娠において妊娠血中や羊水中のAFPが上昇することより,奇型児出産予防の点で産科領域でも最近注目されている4)

 AFPの測定は従来,ゲル内一元免疫拡散法(single radial immunodiffusion),逆受身赤血球凝集法(reversed passivc hemagglutination),更により高感度のラジオイムノアッセイ(radioimmunoassay;RIA)などの免疫学的手法により行われてきた.しかし高感度定量法として推賞されているRIA法は特殊な装置を必要とするうえ,使用中の放射能汚染の危険性,使用後の放射性物質廃棄問題などをかかえており,それに代わる放射性物質を用いない安全な高感度AFP測定法の開発が望まれていた.

固相法によるT4ラジオイムノアッセイ—Corning IMMOPHASE T4キットの応用

小豆沢 瑞夫 , 芦田 信之 , 三木 哲郎 , 熊原 雄一

pp.1085-1088

はじめに

 T4のラジオイムノアッセイ(RIA)は1970年Chopraらにより開発されて以来1),しだいに広く利用されるようになり,現在血中サイロキシン(T4)の測定において,従来のcompetitive protein binding anaIysisを凌駕している.T4RIAの長所はサンプル量が微量で済み,操作が簡便である点にある.近年,RIAの抗体結合と非結合のフラクションの分離(B・F分離)に固相法が導入されつつある.固相法は操作が簡略化でき再現性も良好であるので,特にT4のように極微量の血清サンプルを用いるRIAでは望ましい方法と考えられている.最近,著書らはCorningのIMMOPHASE T4キットを試用する機会を得たので,臨床的検討を行った.

検査室の用語事典

脳波検査

江部 充

pp.1089

94) phase reversal;位相逆転

ある導出で得た脳波の一つの波と,同時記録による他の導出で得たそれと同じ波の極性が正反対にあることを言う.連結双極導出法では,異常波の位相逆転を示す導出部位から頭上での異常波の焦点部位を定めることができる.

筋電図検査

渡辺 誠介

pp.1091

77) neuromuscular unit (NMU);神経筋単位

一つの運動神経細胞と,この細胞の軸索が支配する筋線維を言う.一つの神経細胞の支配する筋線維数は筋により異なり数十から数百に及ぶ(→57) innervation ratio).この数百の筋線維はまとまっているのではなく,幾つもの亜単位に分かれ,他の神経筋単位の亜単位と混じり合っている(subunit参照).

質疑応答

臨床化学 酵素抗体法などでのグルタルアルデヒドの作用

E生 , 高阪 彰

pp.1093-1094

 〔問〕最近,酵素抗体法,固定化酵素などでグルタルアルデヒドが種々使用されていますが,どのような原理で固定とかラベルができるのか,化学式などを使用して説明してください.

臨床化学 血清カルシウム値の補正

I生 , 中山 年正

pp.1095-1097

 〔問〕現在,血清Ca値をOCPC法にて測定していますが,血清蛋白の異常値(高値,低値)に血清Ca値の補正を要すると聞きましたが,その意義と補正式について具体的にご教示ください.

血液 高分子フィブリノゲン複合体

S生 , 風間 睦美

pp.1097-1100

 〔問〕血液凝固検査の中で最近フィブリノゲンに関連し,高分子フィブリノゲン複合体という言葉を聞きました.どのようなものなのですか.①検出方法,②正常値,③異常値について教えてください.

免疫血清 Rocket immunoselection法

A生 , 猿田 栄助 , 長縄 謹子

pp.1100-1102

 〔問〕Rocket immunoselection法について,その方法と適応を教えてください.

病理 PAS染色とPAM染色

T生 , 須藤 嘉子 , 佐久間 由子

pp.1103-1106

 〔問〕PAS染色でシッフ試薬に浸け過ぎた場合,反応をもどす方法はありますか.またPAS法とPAM法の細かい染色性の違いについて教えてください.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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今月の特集1 睡眠障害と臨床検査
今月の特集2 臨床検査領域における次世代データ解析—ビッグデータ解析を視野に入れて

60巻8号(2016年8月発行)

今月の特集1 好塩基球の謎に迫る
今月の特集2 キャリアデザイン

60巻7号(2016年7月発行)

今月の特集1 The SLE
今月の特集2 百日咳,いま知っておきたいこと

60巻6号(2016年6月発行)

今月の特集1 もっと知りたい! 川崎病
今月の特集2 CKDの臨床検査と腎病理診断

60巻5号(2016年5月発行)

今月の特集1 体腔液の臨床検査
今月の特集2 感度を磨く—検査性能の追求

60巻4号(2016年4月発行)

今月の特集1 血漿蛋白—その病態と検査
今月の特集2 感染症診断に使われるバイオマーカー—その臨床的意義とは?

60巻3号(2016年3月発行)

今月の特集1 日常検査からみえる病態—心電図検査編
今月の特集2 smartに実践する検体採取

60巻2号(2016年2月発行)

今月の特集1 深く知ろう! 血栓止血検査
今月の特集2 実践に役立つ呼吸機能検査の測定手技

60巻1号(2016年1月発行)

今月の特集1 社会に貢献する臨床検査
今月の特集2 グローバル化時代の耐性菌感染症

59巻13号(2015年12月発行)

今月の特集1 移植医療を支える臨床検査
今月の特集2 検査室が育てる研修医

59巻12号(2015年11月発行)

今月の特集1 ウイルス性肝炎をまとめて学ぶ
今月の特集2 腹部超音波を極める

59巻11号(2015年10月発行)

増刊号 ひとりでも困らない! 検査当直イエローページ

59巻10号(2015年10月発行)

今月の特集1 見逃してはならない寄生虫疾患
今月の特集2 MDS/MPNを知ろう

59巻9号(2015年9月発行)

今月の特集1 乳腺の臨床を支える超音波検査
今月の特集2 臨地実習で学生に何を与えることができるか

59巻8号(2015年8月発行)

今月の特集1 臨床検査の視点から科学する老化
今月の特集2 感染症サーベイランスの実際

59巻7号(2015年7月発行)

今月の特集1 検査と臨床のコラボで理解する腫瘍マーカー
今月の特集2 血液細胞形態判読の極意

59巻6号(2015年6月発行)

今月の特集1 日常検査としての心エコー
今月の特集2 健診・人間ドックと臨床検査

59巻5号(2015年5月発行)

今月の特集1 1滴で捉える病態
今月の特集2 乳癌病理診断の進歩

59巻4号(2015年4月発行)

今月の特集1 奥の深い高尿酸血症
今月の特集2 感染制御と連携—検査部門はどのようにかかわっていくべきか

59巻3号(2015年3月発行)

今月の特集1 検査システムの更新に備える
今月の特集2 夜勤で必要な輸血の知識

59巻2号(2015年2月発行)

今月の特集1 動脈硬化症の最先端
今月の特集2 血算値判読の極意

59巻1号(2015年1月発行)

今月の特集1 採血から分析前までのエッセンス
今月の特集2 新型インフルエンザへの対応—医療機関の新たな備え

58巻13号(2014年12月発行)

今月の特集1 検査でわかる!M蛋白血症と多発性骨髄腫
今月の特集2 とても怖い心臓病ACSの診断と治療

58巻12号(2014年11月発行)

今月の特集1 甲状腺疾患診断NOW
今月の特集2 ブラックボックス化からの脱却—臨床検査の可視化

58巻11号(2014年10月発行)

増刊号 微生物検査 イエローページ

58巻10号(2014年10月発行)

今月の特集1 血液培養検査を感染症診療に役立てる
今月の特集2 尿沈渣検査の新たな付加価値

58巻9号(2014年9月発行)

今月の特集1 関節リウマチ診療の変化に対応する
今月の特集2 てんかんと臨床検査のかかわり

58巻8号(2014年8月発行)

今月の特集1 個別化医療を担う―コンパニオン診断
今月の特集2 血栓症時代の検査

58巻7号(2014年7月発行)

今月の特集1 電解質,酸塩基平衡検査を苦手にしない
今月の特集2 夏に知っておきたい細菌性胃腸炎

58巻6号(2014年6月発行)

今月の特集1 液状化検体細胞診(LBC)にはどんなメリットがあるか
今月の特集2 生理機能検査からみえる糖尿病合併症

58巻5号(2014年5月発行)

今月の特集1 最新の輸血検査
今月の特集2 改めて,精度管理を考える

58巻4号(2014年4月発行)

今月の特集1 検査室間連携が高める臨床検査の付加価値
今月の特集2 話題の感染症2014

58巻3号(2014年3月発行)

今月の特集1 検査で切り込む溶血性貧血
今月の特集2 知っておくべき睡眠呼吸障害のあれこれ

58巻2号(2014年2月発行)

今月の特集1 JSCC勧告法は磐石か?―課題と展望
今月の特集2 Ⅰ型アレルギーを究める

58巻1号(2014年1月発行)

今月の特集1 診療ガイドラインに活用される臨床検査
今月の特集2 深在性真菌症を学ぶ

57巻13号(2013年12月発行)

今月の特集1 病理組織・細胞診検査の精度管理
今月の特集2 目でみる悪性リンパ腫の骨髄病変

57巻12号(2013年11月発行)

今月の特集1 前立腺癌マーカー
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査②

57巻11号(2013年10月発行)

特集 はじめよう,検査説明

57巻10号(2013年10月発行)

今月の特集1 神経領域の生理機能検査の現状と新たな展開
今月の特集2 Clostridium difficile感染症

57巻9号(2013年9月発行)

今月の特集1 肺癌診断update
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査①

57巻8号(2013年8月発行)

今月の特集1 特定健診項目の標準化と今後の展開
今月の特集2 輸血関連副作用

57巻7号(2013年7月発行)

今月の特集1 遺伝子関連検査の標準化に向けて
今月の特集2 感染症と発癌

57巻6号(2013年6月発行)

今月の特集1 尿バイオマーカー
今月の特集2 連続モニタリング検査

57巻5号(2013年5月発行)

今月の特集1 実践EBLM―検査値を活かす
今月の特集2 ADAMTS13と臨床検査

57巻4号(2013年4月発行)

今月の特集1 次世代の微生物検査
今月の特集2 非アルコール性脂肪性肝疾患

57巻3号(2013年3月発行)

今月の特集1 分子病理診断の進歩
今月の特集2 血管炎症候群

57巻2号(2013年2月発行)

今月の主題1 血管超音波検査
今月の主題2 血液形態検査の標準化

57巻1号(2013年1月発行)

今月の主題1 臨床検査の展望
今月の主題2 ウイルス性胃腸炎

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