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Ex Laboratorio Clinico・49
サプレッサーT細胞増加による免疫グロブリン欠乏症
著者: 新保敏和1 菅原眞智子1 矢田純一2
所属機関: 1東邦大学免疫学 2東京医科歯科大学小児科
ページ範囲:P.60 - P.64
文献購入ページに移動抗体は血清,組織間液,分泌液などに存在し,物理化学的には主にγグロブリアに属する蛋白であるが,免疫学的活性を有することにより免疫グロブリンと呼ばれ,IgM,IgG,IgA,IgD,IgEの5種に区分される.その重要な働きはウイルスや細菌の感染から生体を守る働きである.免疫グロブリン産生の著しい低下やその欠乏状態は感染症に対する防御が不良となり,反復性の感染を示し,時には遷延化するあるいは重症化する感染症を引き起こす.
この免疫グロブリンの欠乏は産生に関与する細胞に異常があると考えられている.免疫グロブリン産生細胞へと分化するべきB細胞の欠損,またはその分化過程における障害が考えられる.B細胞の分化にはT細胞の関与が必要であり,分化に働くT細胞はヘルパーT細胞と呼ばれる.一方,B細胞の分化を抑制するT細胞はサフレッサーT細胞と呼ばれる.通常,両T細胞は生体の恒常性を維持するために働くわけだが,免疫グロブリン欠乏症(無または低γグロブリン血症)の中に,サフレッサーT細胞の活性増強によるもののある可能性がWaldmannらにより報告された1).以下,原発性免疫不全症におけるサプレッサーT細胞の増加例を,我々の研究成績から述べてみたいと思う.
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