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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査28巻11号

1984年11月発行

雑誌目次

特集 産業医学と臨床検査

鈴木 秀郎

pp.1253-1254

産業医学とは

 各種産業において,職場で働く者を環境の有害因子から守ろうとする学問は従来,産業衛生,労働衛生,産業保健などの名で呼ばれてきた.しかし,その後,産業化社会の高度の発展に伴い,産業に由来する各種有害因子の影響は,それらの産業に従事する人々にとどまらず,鉱山や工場が存在する地域やその製品を使用する消費者に対してまでも及ぶことが明らかとなった.したがって,従来のように,職場における環境だけでなく,職業に直接従事すると否とを問わず,高度産業化社会に生活するすべての人々の疾病の予防と健康の保持・増進を目的とする新しい医学の必要性が呼ばれるようになったが,これにこたえる医学がすなわち産業医学なのである.

 以上のことから産業医学は,社会情勢の新しい変化に対応するために生まれた新しい医学であると言うことができる.

Ⅰ.総論

1 産業医学の現状と動向

土屋 健三郎

pp.1256-1260

□はじめに

 臨床検査はその文字が表すように,病人の検査,あるいは病気の診断のための検査であった.しかし,その後,医療は病人の管理だけでなく,健康管理,すなわち健康者を対象として個々人の健康の維持や潜在性の健康からの〈ズレ〉の発見をも含めるようになった.産業医学の領域では,戦後,その大きな目的は結核の早期発見であり,技術的にはX線間接撮影がその主流を占めていた.その後,特殊健診や一般健診の普及につれて,いわゆる臨床検査が産業保健の分野で頻繁に用いられるようになった.したがって現在では,臨床検査技師が病院のみならず,健康診断機関を含む多くの保健領域で活躍するようになったのは周知のとおりである.

 現在まで,健康レベルは身長,体重などの主として形態学的な指標で表されていたが,今後は,個人のみならず地域や職場集団の健康レベルが,血液所見,肝機能,循環機能,さらには精神・心理状態を含めて,総合的に評価されなければならない時代に来ているのである.

2 労働衛生関係法規からみた臨床検査

原田 章

pp.1261-1268

□はじめに

 "法規からみた臨床検査"というテーマを与えられたが,これは労働衛生に関する法規などによる健康診断に採用されている項目のうち,いわゆる「検査」に類するものについて述べよということであると考えて,それについて述べることとするが,その前に,健康診断(労働法規などによるものを含む)について簡単に触れておくこととする.

3 臨床検査からみた環境管理

児玉 泰

pp.1269-1274

□はじめに

 労働環境中には一般生活環境中にはみられない特殊な化学物質や物理的条件が存在し,それらがそこに働く人たちの健康になんらかの影響を及ぼすことが少なくない.快適な職場環境を作り,働く人たちの健康増進を図ることは,労働衛生の基本とするところであり,人間の健康に悪影響を与える有害因子を主に工学的技術によって作業環境から除き,良好な作業環境を維持管理することを作業環境管理という.

 そのためには,①作業環境中における有害物質の種類,性質,濃度,発生状態などの情報を正確に把握すること,②有害因子が作業環境になるべく入り込まないような生産工程,作業方法を用いたり,局所排気装置を設置したりすること,③定期的に作業環境中の有害因子のレベルを調べること,などが必要である.過去においては,作業環境中の有害因子による健康障害の発生する場合が少なくなかったが,積極的に環境管理を行うところまではいかなかった.健康診断により異常を見いだし,早期に治療を開始するとしても,その原因の存在する作業環境の改善管理が行われない以上,意味のないものである.まず第一に,健康障害を引き起こす作業環境中の有害因子を除去し,障害の発生を未然に防ぐことに重点が置かれなければならない.このような観点に立って,労働安全衛生法第65条は,作業環境測定の実施と作業管理について定めている.

4 臨床検査からみた作業管理

田中 勇武

pp.1275-1278

□はじめに

 労働者が働いている作業環境中には,ガス,蒸気,粉塵,騒音,放射線,高熱,低温などの有害要因が存在している場合がしばしばある.これらの有害要因は,単独に,あるいは相互に関連しながら労働者の健康に影響を及ぼしている.さらにその影響は,同一作業においても個々人の作業のやりかたによって異なる.そこで,これらの有害要因の実態を的確に把握し,それに基づいて適切な作業管理を行う必要がある.また,有害要因のない作業環境においても,計器監視作業,キーパンチ作業,電子部品組み立てのような精密工作作業などのように,作業のやりかたによっては,健康に影響を及ぼす場合もある1)

 臨床検査は,このような作業者の健康状態を定量的に把握するためには,もっとも適した検査であり,作業環境の管理,改善においていかに重要であるか,以下に述べてみたい.

5 臨床検査からみた健康管理

田中 茂

pp.1279-1288

□産業医学における健康管理の位置づけ

 1)産業保健の定義(ILO/WHO,1950)

 1950年,産業保健に関するILO/WHOの合同委員会は,WHOの健康の定義を基にして,産業保健の目標を次のように述べている.つまり「あらゆる職業に従事する人々の肉体的,精神的および社会的福祉を最高度に増進し,かつ,これを維持させること.作業条件にもとづく疾病を防止すること.健康に不利な諸条件に対して雇用労働者を保護すること.作業者の生理的,心理的特性に適応する作業環境にその作業者を配置すること.以上を要約すれば,人間に対して仕事を適応させること,各人をして各自の仕事に対して適応させるようにすること」である,と.

6 職場の精神衛生

藤井 久和

pp.1290-1292

□はじめに

 産業構造の急激な近代化とあいまって,多くの職場に多様なME機器が導入され,自動化,合理化,分業化が進んできた.そのため計器が主体となって,密室化された人間味の乏しい職場,熟練や経験が十分に評価されない職務,生体のリズムと関係なくつねに精神緊張が強いられる仕事が増加し,身体的労働が減少してきた分だけ,精神的ストレスが増大する傾向にある.さらに,近年の社会構造や教育システムの著しい変革も,現代に生き,働いている者の精神衛生状態に大きな影響を与えている.

 これらのことは臨床検査の職場も例外でなく,臨床検査技師にとっても職場の精神衛生は大きな関心事になりつつある.

Ⅱ.有害因子と臨床検査 1 物理的因子

1 温度・湿度

岡田 晃

pp.1294-1297

□熱交換

 人間を取り巻く環境の温度,湿度が有害作用を発揮するかどうかは,組織,体液に蓄えられた熱が,環境との間で交換されて体の熱平衡がうまく進行するかどうか,にかかっていると言える.人と環境との間における熱交換は,輻射(皮膚温より高い,または低い温度の表面との間),対流(周囲の気流速度が大きく,温度が低い条件でこれにより熱損失),伝導(物理的に直接接触している物体の間の熱交換はこの形式),蒸散(皮膚から汗として,また呼気により)という経路で行われ,尿,糞便排泄物によっても熱が放散される.したがって,この熱交換に影響を与える環境因子としては,大気の圧,温度・湿度,また伝導源が固体,液体の場合には温度,熱伝達率など,あるいは周囲にある壁,装置の場合はその表面における温度,反射,放射・吸収係数などが問題となる.

 ここで取り上げられる温度・湿度は,基本的にはこの熱交換に影響を及ぼすことでその有害性を発揮するものであり,時には健康障害を惹起する.

2 圧力

中山 英明

pp.1298-1301

□生体と圧力

 われわれの体は固体,液体,気体から構成されている.また,通常われわれの遭遇する圧力の範囲では,固体はその性状を変えることはなく,また液体はその容積を変えないが,気体と液体を接するとき,気体の構成ガス分圧に応じて気体が液体中に溶け込む性質を有している(Henryの法則).一方,気体は圧力に応じてその容積を変える(Boyleの法則)ばかりか,生体への影響は分圧に応じて変化するので,複雑である.圧力が生体へ及ぼす影響には,大別してガス分圧の影響と,圧変化に伴うガスの容積変化がもたらすものとがある.さらに,圧力の変動は大気圧を中心にして高低の二方向があり,極端な低圧は宇宙飛行士などが暴露される危険があるが,健康障害として考えるとき,圧力の単一の因子としてより,無重力,加速度などの諸因子と複合してより強い影響を現すと考えられる.亜成層圏を飛行する航空機は,一般に与圧されており,破壊されない限り人体に悪影響を及ぼすことはまずない.登山や高地の生活が,健康障害の研究の対象としてもっとも選ばれやすい.これらの低圧環境における健康障害については,問題の羅列にとどめる(表1).

 逆に,高圧環境は水圧の影響を直接受ける潜水作業がその代表的なものであるが,職業的なものが多くその対象は限定される.

3 騒音

三輪 俊輔

pp.1302-1308

□はじめに

 作業環境や一般環境でもっとも普遍的な物理現象は,騒音である.われわれは音に対して優れた計測器,聴覚器官を持っている.音は人間の行動を規定したり,人間相互間で情報を交換したりするために必須の受容器であるのみでなく,川のせせらぎ,松籟の風音などの自然の音や,美しく楽しい音楽を聞くことで心の安らぎを得る点からも,重要な感覚器官である.

 聴覚は一般に,かなり個人差はあるが繊細にできていて,視覚と違って不必要な音に対して遮蔽を行うことができない.これが,労働環境や社会環境で種々の騒音問題を提起する原因となっている.戦後,国際的に個人の権利の主張の高揚の趨勢と相まって,騒音はますます大きくクローズアップされつつある.しかも現在,情報化時代を迎え,計測法,評価法もマイクロコンピューターの出現によって著しく変わろうとしている.このようなときに,作業環境の騒音について瞥見することも意義があることと思う.

4 振動

岩田 弘敏 , 笠松 隆洋

pp.1309-1312

□振動と健康影響

 振動による健康影響には,大きく分けて二つがある.一つは,乗物などのように全身的に振動を受ける場合で,もう一つは,振動する工具(機械)を使用することにより上肢などの特定の部位に振動を受ける場合である.両者は負荷される部位が異なるだけで,生体への振動の力学的作用には違いはない.

 許容基準を上回るような力学的振動量を受けると,振動が生理機能へのストレッサーとして働き,視床下部や視床の興奮を引き起こし,脳下垂体を刺激して副腎皮質刺激ホルモン(adrenocorticotrophic hormone;ACTH)の分泌を高め,これが副腎皮質に作用し,そこから副腎髄質の活性も高め,カテコールアミンの分泌が増し,交感神経系の緊張亢進が生ずる.振動とともに騒音も発生するので,これらが互いに相加,相乗的に脳下垂体—副腎系の活性を高める.

5 電磁波

輿 貴美子

pp.1313-1319

□はじめに

 電磁波は図1に示すように,その波長の長さによってラジオ波,マイクロ波,赤外線,可視光線,紫外線,X線,γ線に分けられる.X線,γ線および電子線や中性子線などの粒子線は電離作用をもっているので電難放射線と呼ばれ,これに対して紫外線より長い波長の電磁波は非電離放射線と呼ばれている.ここでは,後者について新しい光線と言われているレーザー光を含めて記載する.

6 放射線

東郷 正美

pp.1320-1325

□はじめに

 本特集号では産業現場における有害因子が多数取り扱われているが,放射線については特異な点が多々ある.例えば,生命がこの地球上に発生して以来,天然の放射線を浴び続けてきているし,将来も変わることなく浴び続けるであろう.これは避けることができない.

 被曝した本人に何か有害な効果が現れるだけでなく,その人の子孫にも影響が現れるかもしれない.いかに有害な物質でも,あるいは病原微生物であっても,なんらかの経路で身体に接触または侵入しない限りは有害な作用は人体には生じないが,放射線は近づくだけで被曝が起きる.さらに臨床医学では診断や治療の目的で,人為的に患者に被曝させている.一方では,広島や長崎における原子爆弾による被爆という不幸をわれわれは経験しているし,また一方では原子力発電で同じ原子力を平和的に利用している.そして米国スリーマイル島の事故も発生している.まさに放射線は両刃の剣である.

7 VDT作業

野呂 影勇

pp.1326-1329

□ディスプレイ作業

 事務の情報化と効率化を図るために,各種の計算機の導入が近年盛んとなっている.ある程度以上の規模の計算機には,数台の画像(ディスプレイ)装置の付いた端末が連結されている.規模が小さい場合でも,計算機と一体化された形でディスプレイ装置が付属されている.もっとも,計算機の計算内容を示すというのであれば,どんな小さなものにもディスプレイ装置が付いていないものはない.ディスプレイ作業として対象となる装置は,蛍光塗料を塗布したガラス面を持つ管球CRT (cathode ray tube)を用いたものである.

 このようなディスプレイ装置が必要となったのは,情報の高密度化(ひと口に情報化といっている)のためである.具体的に言うと,卓上計算機なら1行10桁程度のディスプレイで足りる.しかし,これでは従来の事務作業の手伝い程度にしかならない.事務を計算機化するためには,伝票1枚分がそっくり表示される必要がある.12インチ程度のディスプレイ装置が,このために用いられるようになってきたのである.1行の数字を読むだけならば単純で簡単な作業であるが,1枚の伝票となるとそれではすまされなくなる.例えば「カク」,「ナオス」,「ミル」,「ソート」,「ウメル」,「オクル」,「ケス」,「シマウ」,「コピー」といった事務作業特有の仕事が画面を介して行われる.

Ⅱ.有害因子と臨床検査 2 化学的因子

1 鉱物性粉塵

千代谷 慶三

pp.1330-1337

1.じん(塵)肺を起こす鉱物性粉塵

 産業現場で労働者が曝露される粉塵は,産業の種類,工程によってその種類がきわめて多いし,それぞれに固有の生物学的反応性を持っている.そのうち労働者の健康に悪影響を及ぼす重要な粉塵については,次項以下に項目を挙げて詳しく述べられているので,ここではじん肺を起こすことが知られている鉱物性粉塵(石綿粉塵を除く)について述べることにする.

 もともと粉塵とは,掘削,粉砕,穿孔,切断,研磨などの作業工程で固体物質が機械的な外力によって破砕されて生じた固体粒子で,通常150μm以下の大きさのものを言い,したがって形状は不規則で大きさも不ぞろいである.そのほか,特に粉体を製造する産業の混和,焼成,袋詰め,運送などの作業工程は,一般に大量の発塵を伴っていることが多い.

2 石綿

横山 邦彦 , 瀬良 好澄

pp.1338-1344

□アスベストの特性,用途および曝露の機会

 アスベストは主としてカナダ,南アフリカ共和国,ソ連などで産出する繊維状のケイ酸塩鉱物であり,蛇紋岩族と角閃石族の二つに大別される.表1にアスベストの分類を示したが,角閃石族にはクロシドライト,アモサイト,アンソフィライト,トレモライト,アクチノライトが含まれる.

 アスベストの特性として抗張力が非常に強く,また耐熱性,耐圧性,耐摩耗性,電気絶縁性に優れ,さらに耐酸,耐アルカリ性など化学的安定性にも富むことから,表2のごとく工業的に広く利用されており,その使用品目は約3,000種類に達すると言われている.

3 鉛

和田 攻 , 石川 晋介 , 柳沢 祐之 , 真鍋 重夫

pp.1345-1353

□鉛中毒とその検査の歴史

 鉛中毒は,すでにHippocratesの時代から知られていたが,その検査手技が出現したのはつい最近のことである.一般臨床検査学の発展により,まず鉛中毒で貧血がみられることがわかって一つの指標とされ,これは現在まで受け継がれているが,これのみでは他の貧血との鑑別が不可能であった.同時に,赤血球の中毒性顆粒が多くの中毒で出現することが知られ,鉛に関しても好塩基性斑点の検出として受け継がれ,蛍光法など鋭敏な方法も出現したものの,現在ではその鋭敏性や感度などで劣るため,あまり用いられなくなった.

 古くから,鉛中毒患者の尿にポルフィリン体の排泄が増加することが知られ,秀でた指標として多く用いられた.しかし,肝疾患,貧血,その他でも尿中排泄増加がみられること,測定法に注意を要すること,日光照射などで分解されやすいことなどから,いちおうは現在でも鉛曝露指標の一つとして残っているものの,あまり重視されなくなってきている.その後,血中および尿中鉛を測定できるようになり,まずジチゾン法,次いで原子吸光法(AAS)が出現,最近では無炎型原子吸光法,ポーラログラフ法,放射化分析など優れた方法が開発されつつあるが,今のところ原子吸光法が主流となっている.これらの方法による鉛量の正常値は,不思議なことであるが,年々低下しており,これは測定法の改良に伴う系統誤差の減少によるものと考えられる.

4 水銀

村井 由之 , 滝澤 行雄

pp.1354-1362

□はじめに

 近年,水銀の急激な需要増加に伴って,工場廃水に起因する水俣病,メチル水銀やエチル水銀農薬禍が国の内外で繰り返され注目を浴びてきた.水銀に起因する健康影響は,これを契機に多くの情報がもたらされた.

 その病機には急性,慢性,胎児性のほか,最近では遅発性水俣病の存在が報告されているが,これに関する明確な解答は今後の研究にまたれている.

5 カドミウム

村上 正孝

pp.1364-1372

□カドミウム(Cd)の代謝と障害

1.金属としての性質

 原子番号48,原子量112.4,天然には亜鉛鉱物に伴って少量産出する.融点320.9℃,沸点765.0℃で亜鉛と化学的によく似た性質をもち,空気中では酸化膜で保護され,青味を帯びた銀白色の,光沢のある金属である.希硝酸,熱塩酸,熱硫酸には溶けるが,アルカリ溶液には溶けない.一般にカドミウム塩は耐食性に富むためメッキとして用いられ,合金の成分によく使われる.

 分析は原子吸光分析が主であるが,発光分光分析,吸光光度定量法,放射化分析法も用いられる.

6 マンガン

西山 敬太郎 , 鈴木 泰夫

pp.1373-1376

 マンガン(Mn)は自然界に広く分布しており,動植物にとって必須の元素である.それゆえ,他の必須元素と同様に高度な不足は欠乏症状を呈す.

 このようなマンガンも不注意な取り扱い,あるいはその他の条件によって,過剰曝露を受ければ,健康障害を起こす危険性がある.

7 クロム

𠮷川 博

pp.1377-1381

□産業とクロム

 クロム(Cr)は原子量51.99,融点1905℃,沸点2,200℃,比重6.92の銀白色の光沢ある金属である.クロムは2から6までの酸化状態を持つが,通常,われわれが接するクロム化合物は三価と六価のものである.金属クロムを塩酸や硫酸に溶解させると二価のクロムとなるが,不安定で,酸素により三価のクロム塩になる.六価クロム化合物は黄色ないし橙赤色で,強い酸化剤となり,酸化クロム,クロム酸塩,重クロム酸塩などがよく知られている.これらの六価クロム化合物は,酸性溶液や有機物質の存在下で容易に還元されて三価クロムになる.六価クロム化合物は生体内に取り込まれた場合にも,生体膜または細胞膜を容易に透過した後に還元されて三価クロムになると言われている.

 クロムは硬度・融点が高く,耐蝕性,耐摩耗性に優れているので,多種類のステンレス鋼の重要成分として用いられている.クロムメッキや皮なめし,また耐火煉瓦,顔料,鉄(Fe)・クロム合金などや化学工業で広く用いられているが,産業には主として六価クロム化合物が使用されている.

8 ベリリウム

島 正吾

pp.1382-1386

□ベリリウムの主な用途

 今日,ベリリウム(Be)は金属,合金および工業原料として,種々の産業分野で繁用されている.金属ベリリウムは宇宙開発用構造体,航空機用制御部品,原子力構造材,X線管など,ベリリウム—銅母合金はその優れた金属特性から,電子,家電部品,自動車部品,精密機械部品,安全工具,溶接用電極などその用途は多彩である.酸化ベリリウムはセラミック部品,るつぼ,熱被覆材の製造,原子炉などに用いられるほか,航空機構造材料にも利用される.

 その他ベリリウムはエメラルドなどの宝石類,釣りざお,自転車用スポーク,歯科用プレートなど生活用品としても用いられている.

9 バナジウム

山村 行夫

pp.1387-1391

□はじめに

 地殼中のバナジウム(V)は遊離金属の形としてではなくて,不溶性塩の形,特に三価の状態で亜鉛やニッケルなどと同様に豊富に存在する.バナジウムはカルノー石,ウラニウム・バナジウム鉱,リン酸岩堆積物,チタン磁鉄鉱,粘土ケツ岩などの鉱物資源中に含まれている.バナジウムは,また化石燃料中にも含まれている.

 海水中には微量のバナジウムが含まれている.バナジウムはホヤやナマコなど,ある種の海水中動物ではヘモバナジンとして呼吸触媒の役割を果たしており,これらの動物の呼吸色素にはバナジウムが10%以上含まれている.これらの動物はバナジウムを海水中から取り込んで濃縮する.その動物の死骸は海底に堆積し,やがて石油などの化石燃料が生じたものと考えられる.ベネズエラ産原油の残渣灰の中には,バナジウムは0〜40%含まれている(表).ボイラーで重油を燃焼すると,バナジウムは五酸化物として煙道の壁に沈着する.ベネズエラ産の重油を使用している船舶の煙道から,毎年,20トン以上のバナジウムが回収されるという.この煤は酸性であり,煙道作業員がその煤を吸入すると目,咽頭,気管,気管支,肺などの粘膜刺激症状が生じる1)

10 ニッケル

児玉 泰

pp.1392-1395

□はじめに

 ニッケル(Ni)は,原子番号28,原子量58.71,融点1,455℃,沸点3,075℃の銀白色の輝く金属で,主にイオウ,ヒ素,アンチモンなどと結合して産出する.

 1751年A.F.Cronstedtにより発見されて以来,メッキ,貨幣,器具,家具製造,ニッケル鋼,ニッケルクロム鋼,ステンレス鋼,耐熱鋼,耐熱合金などに広く利用されているほか,水素添加用触媒,油脂工業の添加剤などにも使用されている.ニッケル鉱からの製錬工程をはじめとして,各種のニッケル化合物の取扱関連職種が存在し,都市においてもニッケルは大気汚染物質として今日注目されている.

11 ヒ素

稲益 建夫 , 石西 伸

pp.1396-1401

□はじめに

 ヒ素(As)は自然界に広く存在しており,人間生活とのかかわりにおいても古い歴史を持っている.一般に,ヒ素は《強力な毒物》との印象を持たれているが,医薬品をはじめ農薬,顔料,殺鼠剤,ガラス,半導体,特にヒ素ガリウム素子など多方面で使用されており,現代の日常生活の中でも有益な活用がなされている.

 ヒ素化合物には多くの種類があり,それぞれその物理的,化学的性状を異にしている.その生体作用にも相違がみられる.無機ヒ素化合物と有機ヒ素化合物に大別されるが,天然には無機体として存在しており,有機体の多くは人工的に合成されたものである.最近,無機体のヒ素が生体内で有機化されること1)や,高濃度のヒ素を含有するある種の海産植物や動物体の中のヒ素が有機体であること2,3)が発見され,ヒ素化合物の化学形態と生体作用との関係に強い関心が持たれてきている.

12 有機溶剤

竹内 康浩

pp.1402-1411

□有機溶剤の種類と使用の実態

 有機溶剤は,非水溶性の油脂,樹脂などの有機化合物を溶解して均一な溶液を作り,この溶液から溶剤を除けば溶質が回収できる有機化合物の総称である.工業的には塗料,インキ,接着剤などの溶媒,金属製品の脱脂洗浄剤,衣類の洗浄剤,食用油脂の抽出溶媒などに広く使われている.有機溶剤の種類は化学工業の発展に伴って著しく増加した.最近,研究用や工業用によく使用されている有機溶剤の種類は449種に達している1).これらすべてが本項の対象となるが,わが国の有機溶剤中毒予防規則(有機則)ではこれらのうち,①有害性が強いものと,②健康障害が多発するおそれのあるものを選び出し,さらに物理化学的性質,使用の実態,生産量,障害事例などの面から総合的に判断されて,表1に示した54種が法規制の対象とされている.ただし,ベンゼンは造血器に対する毒性が強く,発癌性(白血病の原因物質)を有しているために,特定化学物質等障害予防規則の第2類物質として規制されている.

 1980〜1981(昭和55〜56)年に全国の七つの大学・研究機関を通じて,1,179検体の溶剤製品を収集し,分析した結果を,表2に示した2,3).一般に工業的に使われている溶剤成分の大部分は,有機溶剤中毒予防規則に列記されているものであった.また,有機溶剤は数種が混合されて使われることが多い.特殊な使用方法や新しい溶剤による中毒にも注意する必要がある.

13 一酸化炭素

井上 尚英 , 馬場 快彦 , 小堀 一二

pp.1412-1416

□はじめに

 一酸化炭素(carbon monoxide.以下,COと略す)による中毒は,おそらく人類が火を使用し始めたころから存在したものと推定されており,帝政ローマ時代には,すでにその中毒が発生していたことを示す記録が残されている.

 COを最初に発見したのは,1799年のPriestryであり,1842年にはLeblancによるCO中毒の報告がなされている1)

14 刺激性ガス

堀口 俊一

pp.1417-1420

□はじめに

 刺激性ガス(蒸気を含む.以下同じ)は皮膚および粘膜,ことに呼吸器と眼に刺激作用を及ぼす化学物質である.このものは種々の化学構造を持ち,その作用は局所刺激性のほかに,全身毒性を発揮するものも少なくない.後者については本特集で別に取り上げられているので,本稿では刺激作用を主とする,いわゆる一次性刺激性ガスに限定して述べることにする1,2)

 一次性刺激性ガスの主なものとして,次のガスを挙げることができる.塩素*1,塩化水素*2(塩酸),ホスゲン*2,フッ化水素*1,二酸化イオウ*2,一酸化イオウ,硫酸*2,硫酸ジメチル*1,硝気,特に二酸化窒素,硝酸*2,オゾン,アンモニア*2,アクロレイン*3,ホルムアルデヒド*2など.これらの大部分のものに対して,わが国では特定化学物質として労働衛生上の規制を行っている3)

15 硫化水素

山口 裕

pp.1421-1427

□はじめに

 硫化水素(H2S)は火山や温泉のガスとして,また自然界の硫黄循環の過程でもつねに生成されている,もっともありふれたガスの一種であるが,人間生活の営みの中で,環境汚染の結果としても大量に発生しており,また工業的にも,例えば石油の脱硫処理の際にも大量に生成し,利用されている.これが遊離のガスとしてヒトに呼吸された場合は,瞬時に恐るべき毒性を発揮し,重大な結果をもたらす.

 硫化水素中毒は現在日本の産業中毒の中で,酸素欠乏症と並んで最多発しているものの一つである.高濃度の原材料物質としての硫化水素は,特定化学物質等障害予防規則(特化則)でその取扱上の安全衛生管理や取扱従事者の健康管理が定められている.また一般の自然発生的な硫化水素に対しては,酸素欠乏症等防止規則の中で中毒防止措置が規定されている.

16 発癌性物質

和田 攻 , 山崎 信行 , 長橋 捷

pp.1428-1436

□職業癌の歴史1)

 1775年,英国の外科医Pottが,煙突掃除人に多発する陰嚢癌の原因が煤(すす)であることを報告したのが,職業癌の歴史の第一ページであり,その後の主な歴史は表1に示すとおりである2).この表からわかるように,職業癌に対する対策としての規制やAmes法などの検査法が開発され,まず一段階の予防が行われるようになった現在まで,約200年の年月がかかっている.

 これは,一つにはある化学物質が職業癌を起こさせるかどうかが判明するまでにはきわめて長い年月を要する,ということによる.例えば石綿についてみると,石綿工業が発足したのは1870年であり,健康障害である石綿肺が解剖学的に初めて示されたのが1899年であり,石綿による気管支癌が最初に見いだされたのが1934年で,中皮腫が発見されたのは1955年である.すなわち,石綿に特徴的な中皮腫が発見されるのに75年かかっているのである.また,塩ビモノマーが工業的に使用され始めたころは1920年代であり,CreechとJohnsonが重合工程作業者から3人の肝血管肉腫患者を見いだし,この疾患は一般人ではきわめてまれであることから3),全国の塩ビモノマー作業者の疫学調査を行い,その因果関係を明らかにできるまでに約55年かかっているのである.

17 塩化ビニルモノマー

錫村 満

pp.1437-1440

□はじめに

 塩化ビニルモノマー(vinyl chloride monomer:VCM.以下,塩ビモノマー)は,無色の,やや塩素臭に近い息気を有するガスで,ほとんど刺激性は感じられない.

 化学式 CH2=CHCl

18 イソシアネート

大前 和幸 , 桜井 治彦

pp.1441-1446

□はじめに

 イソシアネートは非常に反応性の強い官能基—NCOを有する化学物質の総称であるが,産業上使用されるものは2個のイソシアネート基を有するジイソシアネートおよびそのプレポリマーである(図1).

 もっとも大量に使用されているのは,トルエン・ジイソシアネート(TDI)とジフェニルメタン・ジイソシアネート(MDI)であり,活性化水素化合物との重合反応,発泡反応によりポリウレタン樹脂となる.ポリウレタンは,使用するイソシアネートと活性水素化合物の種類と成型法の組み合わせにより物性の非常に異なった製品となり,幅広い分野で利用されている.主な製品は,軟質フォーム(マットレス,クッションなど),硬質フォーム(冷凍倉庫,LPGタンカー,家屋などの断熱材),表皮付きフォーム(自動車内装材),エラストマー(工業用歯車,ソリッドタイヤ,防振ゴム),高級塗料,シーラント,合成皮革,弾性繊維などである.

19 臭化メチル,ヨウ化メチル,塩化メチル

松井 寿夫

pp.1447-1450

□はじめに

 臭化メチル,ヨウ化メチル,塩化メチルはいずれも飽和ハロゲン化アルキル化合物で,有機化学合成のアルキル化剤,害虫駆除用燻蒸剤,冷媒などとして用いられている.これらの物質は神経系障害を中心とする毒性を有し,すべて,毒物及び劇物取締法(厚生省)の対象物質となっている.さらに,臭化メチルとヨウ化メチルは,製造ないし取扱労働者の健康障害を防ぐために特定化学物質等障害予防規則(特化則,労働省)によって規制されている.健康障害を起こすような曝露は,主として職業性のものである.

 職業性の中毒では従来から急性中毒が報告されてきたが,労働衛生上の対策により最近は低濃度曝露による慢性障害の予防が重視されるようになってきた.したがって,環境中低濃度物質の測定,低濃度曝露の際の生体代謝物質の測定,低濃度曝露による生体影響の検出などが重要となってきている.

20 農薬

松島 松翠

pp.1451-1463

□はじめに

 農薬中毒の問題には二つの面がある.その一つは,農業労働災害としてであり,直接これを使用する農民の問題である.他の一つは,環境や食品の汚染からくる,いわゆる公害的影響についてである.

 前者の職業災害としての農薬中毒は,なお今日さまざまな問題をかかえている.1970年,パラチオン(ホリドール)などの強毒性農薬が禁止になってから,重症例や死亡例は著しく減少したが,代わって登場してきた低毒性農薬といえども,死亡事故は皆無ではないし,また皮膚障害,眼障害などは逆に増えつつある.また複数農薬の相乗作用の問題や慢性中毒,催奇形性,発癌性の問題が大きくクローズアップされている.

Ⅲ.産業医学に用いられる機能検査

1 血液検査

和田 攻 , 荒川 泰昭 , 余 泰宏 , 陳 再生

pp.1466-1473

□産業医学における血液検査の意義と特色

 血液に関する検査は,種々の臨床検査の中でももっともアプローチのしやすいものであり,産業医学においても広く応用されている.

 その大きな目的には二つある.すなわち,第一は,経気道あるいは経口的に摂取されたすべての化学物質は流血を介して体内諸臓器に運ばれる.したがって血液細胞はもっとも傷害を受けやすいものであること,さらに骨髄造血細胞は体内でもっともターンオーバーの速い細胞の一つで同様に傷害を受けやすく,かつその結果が早く表現されること,体内に侵入してきた外敵と戦う第一線の場であることなどにより,化学物質の全体としての生体影響をもっとも早く,かつ鋭敏に示しうることである.第二は,血液は血漿蛋白を含めて全体としての個人の栄養状態,その他の状況を総体的に表しやすいということである.

2 肝機能検査

兼高 達弐

pp.1474-1478

□はじめに

 職業性疾患は,作業環境あるいは作業方法などの作業条件に起因するもので,本来あってはならない,人間の作り出した疾患である.したがって,これらの疾患は予防されなければならない.また,不幸にしてこのような疾患が発生した場合には,事業主はこれに対して補償する義務がある.

 このような背景から,労働基準法施行規則第35条をはじめとして,労働災害および安全衛生の方面には多くの法規があり,これらの職業病に対応する努力が払われている.これらの法規は省略するが,これらで扱われている疾患のうち,肝障害について検査法の面から論じてみたい.

3 腎機能検査

斎藤 寛

pp.1479-1487

□はじめに

 腎臓の病気には急性・慢性糸球体腎炎,腎腫瘍などの腎原発性病変,糖尿病,SLEなどの全身性疾患の腎合併症,また重金属,薬剤など化学物質による中毒性腎疾患など100種類以上の独立疾患がある.

 これらの疾患を診断するための腎機能検査法もまた数多いが,ここでは「産業医学に用いられる機能検査」というテーマに鑑み,疾患の予防ならびに早期発見の見地からみて重要なものに的を絞って述べることにしたい.

4 呼吸機能検査

三品 陸人

pp.1488-1496

 職業性に粉塵,メタル,フューム,蒸気,ガスなどの吸入によって惹起される職業性呼吸器疾患は,種々の型の肺機能障害を示す.それらは,拘束性換気障害,閉塞性換気障害,拡散障害,ガス交換障害,換気,血流および両者の比の不均等分布,気道過敏性などのいずれか,または種々の組み合わせで出現する.一方,軽症ないし初期には,末梢気道の閉塞性障害に留意する必要がある.

5 神経機能検査

村井 由之

pp.1497-1500

□はじめに

 産業医学の領域における神経系の障害は,主として脳を侵す場合と,末梢神経系を侵す場合に大別することができる.しかし,その両者をともに侵すものや,症候に対する責任病巣が神経系のどの部分にあるのか,いまだはっきりしていないものもある.神経系の機能検査を行うに当たってまず問題となることは,神経系のどの部分を検査するかということ,およびどの検査法を行うかということである.

 脳の検査法としては,脳波(electroencephalogra-phy)とCT (conputerized tomography),末梢神経系の機能検査法としては神経伝導検査(nerve conduc-tion study)と筋電図(electromyography)がある.体性感覚系の全体を末梢から中枢にかけて検査する方法として,体性感覚誘発電位(somatosensory evokedpotential)がある.本稿では,これらの検査法の適応,意義,所見の見かた,考えかた,治療との関係などについて述べる.検査の具体的な方法については,特に注意を要する点についてのみ述べるにとどめる.

6 視覚機能検査

栗本 晋二

pp.1501-1503

□産業医学における視覚障害

 従来,産業医学上で問題になっている視覚障害は,第一に,業務上の負傷または異物の侵入,残留による眼疾患である.例えば,旋盤使用者の角膜鉄粉異物,眼内鉄片異物による外傷性白内障,眼鉄錆症や動力草刈り機による眼内出血,眼球破裂などである1)

 第二は,物理的因子による疾病である.例えば,アーク溶接やガス溶接,水銀灯など特殊電球による紫外線にさらされる業務に従事する者に起こる電気性眼炎,製鉄,ガラスなどの炉前作業など赤外線にさらされる業務による白内障,網膜火傷や,眼科手術(光凝固手術),分光分析作業などアルゴンやYAGレーザー光線にさらされる業務による網膜火傷,マイクロ波による白内障,X線などの電離放射線による白内障,可視光線,例えば太陽光線による日食性網膜炎などが問題となっている2)

7 聴覚機能検査

坂本 弘

pp.1504-1506

□産業医学における聴覚障害

 職業に起因して起こる難聴には次のものがある1).すなわち──(1)災害性難聴:爆発などによる強大な音響や気圧変動による急性音響性外傷,および頭部外傷の部分症状.

Ⅳ.座談会

産業医学と臨床検査

和田 攻 , 原田 章 , 児玉 泰 , 森 雄一 , 福渡 靖 , 鈴木 秀郎

pp.1507-1520

 産業医学における臨床検査は,通常の病院で行われている臨床検査とは大きく異なっている.すなわち,第一に,産業医学の臨床検査では対象が原則として健康者であるため,正常と異常との差がより小さく,厳しいこと,第二に,検査がしばしば職場で行われるために,試料の採取と保存や検査法に特別の注意とくふうが要ること,第三に,病院で行われる臨床検査では通常対象とならないような物質がしばしば検査対象となること,などの点がそうである.また,産業医学の分野の対応や研究の立ち遅れも指摘されよう.医学や検査法の進歩により,現行の法規に規定されている検査項目には,現状に沿っていないものも少なくない.産業医学に関連のある臨床検査には特殊なものが多いにもかかわらず,そのような専門の検査技師の養成施設が設けられていない.検査対象には高齢者が多いが,年齢別の正常値といったデータが少ない.法規の改正や管理者の努力とくふうが求められるところであろう.

 この座談会では以上の相違点,問題点を中心に議論されたが,最後に,永年の努力により労働災害や職業病は激減しており,今後はより高齢まで健康で労働が続けられるような健康管理が必要であろう.関係者のこれに対する積極的な取り組みが期待されよう.

付録

有害業務に関する健康診断方法

原田 章

pp.1521-1532

 有害業務に関する健康診断は,法規によって実施が義務づけられているもののほか,通達などによって行政指導でその実施が指導されているものがあり,その中に,それぞれの健診方法が示されている.これらのほかに,労働省から法規や通達といった形ではないが,昭和39〜41年度労働衛生試験研究班の検討結果,昭和45年度労働衛生試験研究班の検討結果という形で示されているものがある.有害業務に関する健康方法は,上記のものを中心にこれらを要約する形で述べることとするが,有害業務は何も法規などによって規定されたり,労働省から示されているものだけではない.労働省によって規定されていない物質や条件については,健診の必要はないということではないので,みずからが健康診断方法を決め,実施すべきである.

 また,これらの法規などによる健診は,総論[2]「労働衛生関係法規からみた臨床検査」のところで述べたように種々の問題点が発生しており,現状にマッチしないものもあるので,健診を実施する場合には,このことを考慮して,追加したり,アレンジしたりして実施すべきである.

資料

1 炭坑の女子労働者

鈴木

pp.1268

 この写真はおそらく明治時代のもので,当時炭坑内で作業をする女子労働者の姿を写したものである.現在に比べて換気,その他の設備がはるかに不十分であったというより,皆無であった当時の坑内の温度は高く,坑内で働く人たちは全裸に近い姿をしていたと言われるが,女子もまた例外ではなかったのである.

 よく炭坑では,一家の全員が働いていたと言われる.ほとんどの炭坑の火が消えた現在でも,かつて炭坑で働いていたという人の話を聞くと,朝早く一家の全員が坑内に降りてゆき,7歳くらいの女の子が,1〜2歳の赤ん坊を背中に背負って,夕方家の人が上がってくるのを待っていたという話が,必ずといってよいほど出てくる.

2 化学物質の有害性の調査—労働安全衛生法第57条2および同条3について

児玉

pp.1274

 化学工業の急速な発展に伴って,数多くの化学物質が生産され,利用されている.労働環境や生活環境におけるこれらの化学物質のあるものは,人間の健康に有害な影響を与えることが知られているが,これらの毒性評価においては,急性,あるいは慢性毒性に加えて,人間の遺伝子の損傷を含む毒性についても重視されてきている.また,化学発癌研究によって,大部分の発癌物質は,突然変異誘起作用を示すことが見いだされ,発癌性と突然変異活性との間に強い相関性のあることが示されている.

 したがって,化学物質の取り扱いに当たっては,これらの毒性を十分に認識したうえで使用しなければならないが,わが国においては,特定の目的に使用する化学物質の規制については,薬事法,食品衛生法などがあり,また一般工業用化学物質の有害性の規制については,化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律,労働安全衛生法などがある.なかでも,後者では化学物質への曝露の機会の多い労働者の健康障害の予防や,健康の保持増進を目的として,新規化学物質と既存化学物質の有害性の調査の実施について規定している.

4 寒暖計製造工場と水銀中毒

鈴木

pp.1301

 水銀は,毛皮工業,水銀鉱山,アマルガム・体温計・寒暖計・気圧計製造工業,水銀電極・電気器具の製造工場,化学工業など,工業界で広く取り扱われている.

 微量の水銀蒸気は経気道的に吸入されて,消化器症状(歯肉炎,口内炎,胃炎,流涎過多,食欲不振,吐き気,腹痛,下痢など),神経症状(めまい,眼振,視力低下,視野狭窄,視神経炎,自律神経失調,筋萎縮など),精神症状(易疲労性,不隠,不眠,脱力,重症の場合抑うつ,知能低下,嗜眠,狂躁など)など多彩な慢性中毒症状を惹起する.

5 水銀ながし,水銀床屋と佐渡金山

鈴木

pp.1319

 写真は,慶長12(1607)年佐渡に駐在していた岩下惣太夫および草間内記という2人の武士が,これも駿府に在住していた長安家老の戸田藤左衛門にあてた書状で,当時の佐渡金山における労働の情況を報告したものである.

 文中に「水銀ながし」あるいは「水銀床屋」に関する記述があるが,これは当時の佐渡金山で金を精製するのに,まず水銀と金を合金とする《アマルガム法》が導入され,それが便利な方法として盛んにもてはやされたことを示すもので,当時の金の精錬法の移り変わりをうかがう点で興味深い記述と言うことができる.

6 出稼ぎ人の職業病—江戸煩い

鈴木

pp.1325

 《脚気》は主としてビタミンB1の欠乏による病気で,主な症状は下肢の倦怠と浮腫であるが,時に心臓を侵し,頓死することがあるところから,《脚気衝心》と呼ばれて恐れられていた.

 脚気が,いつごろから知られていたかということは明らかではないが,中国ではすでに晋の時代(265〜419)にその記載があると言われる.日本では,平安時代(8〜12世紀)に上流社会で時々みられたというが判然とせず,鎌倉時代(1125〜1333)になって初めてはっきりとした記述が見られ,元禄,享保のころには江戸でも知られるようになった.

7 生物学的モニタリング—内容と定義

原田

pp.1337

 職業に起因する健康障害には,必ず因果関係がある.一般疾病でもそうであるが,一般疾病では往々にしてあいまいであることもあり,他方,職業に起因する健康障害では,はっきりした原因と結果の関係が成立する.したがって職業内にある原因を取り除くと,それによる健康障害はなくなる.

 同時に,職業に起因する健康障害の大部分には,量—影響関係,量—反応関係があると言ってよい.この量とは曝露量のことであり,有害物質や条件(「有害物質など」と略す)による曝露状態を示すものである.

8 人絹工場と二硫化炭素中毒

鈴木

pp.1344

 もっとも初期の化学繊維であるビスコース・レイヨンは,俗に《人絹》,《スフ》などと呼ばれたが,わが国初の人絹工場は,帝国人絹株式会社米沢工場として1924年に造られた.

 当時の人絹の製造工程では,二硫化炭素と繊維素を混合する《硫化工程》において,攪乳器(Churn)として写真に示すような《ビヤダル》を用いていた.硫化工程の反応が終わると,ビヤダルのふたを開けて,内容物を取り出し,あとを掃除するわけであるが,この際,濃厚な二硫化炭素に曝露され,中毒を起こす危険があった.

9 先端産業と結核

鈴木

pp.1353

 明治に入って日本も近代国家の仲間入りをし,ようやく産業の勃興をみるようになったが,その先端産業の第一は紡績業であった.明治22(1889)年,わが国における紡績工場の数は30に達し,当時産業に投下された資本のうち約37%が紡績業への投下であったというから,紡績業がいかに花形産業であったかがわかる.

 しかも,この花形産業を支える作業者には若い女子が圧倒的に多く,それまで社会における女性の職場といえば,そのほとんどが水商売であったことを考えれば,これもまた日本の労働史上まさに画期的なことであった.

10 化学性発癌因子

児玉

pp.1363

 ヒトの癌の70〜80%は環境因子となんらかのかかわりのあることが,従来の研究結果から考えられている.化学物質の発癌性は,職業癌として明らかにされたものが大部分であり,これらの物質の取り扱いについては特別な注意が必要となってくる.

 IARC (lnternational Agency for Research on Cancer)では,①ヒトに発癌性を有する化学物質,混合物質,作業工程,②ヒトに対する発癌性の疑われる化学物質,混合物質,③ヒトへの発癌性を現段階で明らかにできなかったものについては分類がなされている.またわが国でも日本産業衛生学会の許容濃度等の勧告(1983)で,職業性発癌物欣として13物質が挙げられている.

11 健康診断と作業環境測定結果

原田

pp.1372

 最近,有害物質を取り扱う大部分の事業場の設備は整備され,作業にもくふうが加えられたため,環境も良くなってきている.したがって,昭和20〜30年ごろにみられたような中毒は認められなくなったという認識がある.

 しかし,鉛や有機溶剤のように,古くから問題にされてきたようなものについての健康障害ですら,毎年何名か発生しているのである(鉛による障害は,昭和54年16名,55年9名,56年24名,57年3名).これらの作業者については,それぞれの予防規則があって,健診が義務づけられており,異常者が発見されると措置が講ぜられてきた.これはこれでたいへん結構なことであるが,これだけでは有害物質による健康障害を完全に防止することはできないことを,上述の事実は物語っているのである.

12 生物学的モニタリング—意義

原田

pp.1381

 生物学的モニタリングは曝露状態の推定をするために実施するものであるので,その結果が悪いと,その労働者は有害物など曝露によって曝露されていること,しかも悪ければ悪いほど曝露が高いと考えることができる.

 ところで,その労働者の曝露が高いことがわかれば,直ちに対象物質などによって影響を受けているかもしれないと考えなければならない.そこで早急に影響の有無,その程度を調べなければならない.その結果,影響があるということがわかれば,直ちに配置転換,作業時間の短縮,作業内容の変更,休業,治療などの措置を講じなければならない.

13 煙突掃除人夫と陰部皮膚癌

鈴木

pp.1386

 写真は,18世紀当時の英国のロンドンで見られた煙突掃除人夫である,当時,英国では石炭の需要が急激に増加し,各家庭でも暖をとるため暖炉で石炭が盛んにたかれた.そこで登場したのが煙突掃除人夫であるが,細い煙突でも容易に入りこめるというところから,多く少年が使われた.

 これらの煙突掃除人夫の陰部に皮膚癌が高頻度にみられることが,その後間もなく気づかれるようになったが,皮膚癌の発生が彼らの職業に関係があるのではないかということを初めて指摘したのは,Percivall Pott (1714〜1788)で,まことに時代を越えた慧眼であったと言うことができる.

14 微生物を用いる変異原性試験の基準(抄)

pp.1391

I.試験の方法

 有害性の調査を行う化学物質(以下「検体」という.)の変異原性をサルモネラ菌及び大腸菌を用いて次の各場合について調べる.

(1)代謝活性化法による場合

15 産業医学の父,Ramazzini

鈴木

pp.1395

 Bernardini Mamazzini (1633〜1714)は,イタリア・パドウア大学医学部の教授で,世界で初めて職業病に関する系統的な著書"De morbis artificum diatriba"(工人の病気)を出したところから,現在もなお《産業医学の父》として世に知られている.

 産業革命のはしりとして,15世紀から17世紀にかけて,世界的にまず鉱業が盛んとなり,ヨーロッパを中心とする世界各地において,金,銀,水銀,銅などの鉱山で働く労働者の数が著しく増加した.また,社会的に世は封建主義時代から資本主義時代へと移行し,鉱業のみならず各種の多彩な産業が発達し,これらでの労働者人口もまた大幅に増加した.

16 江戸時代の珪肺

鈴木

pp.1401

 写真は,代表的な職業病の一つである塵肺症のうちの,珪肺についての江戸時代の記録である.

 当時の大葛金山主であった荒谷忠兵衛が文化8(1811)年に江戸の医者に出した手紙の一節で,金掘(鉱山労働者)特有な病気とされていた"よろけ"(今日の珪肺)の原因が,それまで考えられていたように坑内の照明用灯火の煙を吸ったために起こるのではなく,採掘している鉱石中の石粉や金属粉を,口または鼻から吸い込むために起こることを明らかにしているとともに,珪肺特有の呼吸困難を中心とする症状についても的確な記述がみられる.

17 森鴎外とPettenkoferの出会い

鈴木

pp.1411

 Max von Pettenkofer (1818〜1901)は,衛生学の父と言われるドイツの学者である.当時はKochが感染症が細菌によって起こることを主張し始めたころで,Pettenkoferはそれにまっこうから反対したと言われる.

 ある学会場で,大激論のあげく,Kochが純培養に近いほどのコレラ菌の入ったコップをPetten-koferに突きつけ,「私の説が嘘だというのなら,このコップの水を飲んでみなさい」と言ったところ,Pettenkoferは平然として眉一つ動かすことなくそれを飲みほしたが,驚いたことに,その後まったく何の症状も示さなかったという逸話が残っている.

18 生物学的モニタリング—実施上の注意

原田

pp.1416

1)試料に何を選ぶべきか:血液か,尿か,毛髪か,呼気か,それ以外か.例えばアルキル水銀では試料は毛髪が唯一のものであり,水銀の場合は,血中がもっとも優れた試料である.

 2)試料の採取時期:これは生物学的半減期によって決める.トルエンなどの有機溶剤の大部分のごとくきわめて短いものは,時期を誤ると評価に耐えない.

19 生物学的モニタリング—評価基準

原田

pp.1420

 生物学的モニタリングを実施した後の評価基準については,一定したものはない.したがって,いわゆる正常値(ただし集団で作成したもの)をまず明らかにし,これを基にして決めればよい.

 決めるに当たって,どの辺に線を引くかの考えかたで,かなり相違がみられることは当然である.すなわち,正常値ですら,国によって,また集団によってかなりの差異のあるものもある.また,例えば喫煙者と非喫煙者間の差,男女間の差,職業による差,環境,食物などによる差,年齢による差などのように,集団間で差のあるものがある.

20 臨床検査周辺の産業医学関連図書・雑誌

児玉

pp.1440

■図書

 1) Clayton, G.D.& Clayton, F.E.(ed.):Patty's Industrial Hygiene and Toxicology(3 rd rev.ed.).John Wiley and Sons, Somerset.N.J.

 2) Last.J.M.Maxcy-Rosenau Public Health & Preventive Medicine(11 th ed.),Appleton-Cen-tury Crofts, New York.

21 全衛連クロスチェック結果から(1)

原田

pp.1463

 昭和55年から実施してきた,労働省委託による(社)全国労働衛生団体連合会(全衛連)の精度管理のためのクロスチェックは,自機関で測定できない参加機関では委託先の検査結果を報告することになっている.

 ところで,委託率を調べてみると,表1のとおりで,委託率は年を追って高くなる傾向が認められ,昭和58年度は51.7〜67.7%という高率となった.

25 全衛連クロスチェック結果から(2)

原田

pp.1532

 労働省は,健康管理にしめる健康診断の重要性にかんがみ,昭和55年から健康診断適正化事業を,(社)全国労働衛生団体連合会(全衛連)に委託して実施しているが,その一つに血中・尿中金属量,代謝物質量測定に関するクロスチェックがある.

 対象機関は,中・小企業労働者健康管理事業助成制度による健康管理を実施するとして,中央労働災害防止協会に名簿登載されている機関,その他であるが,それらの機関はわが国ではいわゆるエリート機関である.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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今月の特集2 感度を磨く—検査性能の追求

60巻4号(2016年4月発行)

今月の特集1 血漿蛋白—その病態と検査
今月の特集2 感染症診断に使われるバイオマーカー—その臨床的意義とは?

60巻3号(2016年3月発行)

今月の特集1 日常検査からみえる病態—心電図検査編
今月の特集2 smartに実践する検体採取

60巻2号(2016年2月発行)

今月の特集1 深く知ろう! 血栓止血検査
今月の特集2 実践に役立つ呼吸機能検査の測定手技

60巻1号(2016年1月発行)

今月の特集1 社会に貢献する臨床検査
今月の特集2 グローバル化時代の耐性菌感染症

59巻13号(2015年12月発行)

今月の特集1 移植医療を支える臨床検査
今月の特集2 検査室が育てる研修医

59巻12号(2015年11月発行)

今月の特集1 ウイルス性肝炎をまとめて学ぶ
今月の特集2 腹部超音波を極める

59巻11号(2015年10月発行)

増刊号 ひとりでも困らない! 検査当直イエローページ

59巻10号(2015年10月発行)

今月の特集1 見逃してはならない寄生虫疾患
今月の特集2 MDS/MPNを知ろう

59巻9号(2015年9月発行)

今月の特集1 乳腺の臨床を支える超音波検査
今月の特集2 臨地実習で学生に何を与えることができるか

59巻8号(2015年8月発行)

今月の特集1 臨床検査の視点から科学する老化
今月の特集2 感染症サーベイランスの実際

59巻7号(2015年7月発行)

今月の特集1 検査と臨床のコラボで理解する腫瘍マーカー
今月の特集2 血液細胞形態判読の極意

59巻6号(2015年6月発行)

今月の特集1 日常検査としての心エコー
今月の特集2 健診・人間ドックと臨床検査

59巻5号(2015年5月発行)

今月の特集1 1滴で捉える病態
今月の特集2 乳癌病理診断の進歩

59巻4号(2015年4月発行)

今月の特集1 奥の深い高尿酸血症
今月の特集2 感染制御と連携—検査部門はどのようにかかわっていくべきか

59巻3号(2015年3月発行)

今月の特集1 検査システムの更新に備える
今月の特集2 夜勤で必要な輸血の知識

59巻2号(2015年2月発行)

今月の特集1 動脈硬化症の最先端
今月の特集2 血算値判読の極意

59巻1号(2015年1月発行)

今月の特集1 採血から分析前までのエッセンス
今月の特集2 新型インフルエンザへの対応—医療機関の新たな備え

58巻13号(2014年12月発行)

今月の特集1 検査でわかる!M蛋白血症と多発性骨髄腫
今月の特集2 とても怖い心臓病ACSの診断と治療

58巻12号(2014年11月発行)

今月の特集1 甲状腺疾患診断NOW
今月の特集2 ブラックボックス化からの脱却—臨床検査の可視化

58巻11号(2014年10月発行)

増刊号 微生物検査 イエローページ

58巻10号(2014年10月発行)

今月の特集1 血液培養検査を感染症診療に役立てる
今月の特集2 尿沈渣検査の新たな付加価値

58巻9号(2014年9月発行)

今月の特集1 関節リウマチ診療の変化に対応する
今月の特集2 てんかんと臨床検査のかかわり

58巻8号(2014年8月発行)

今月の特集1 個別化医療を担う―コンパニオン診断
今月の特集2 血栓症時代の検査

58巻7号(2014年7月発行)

今月の特集1 電解質,酸塩基平衡検査を苦手にしない
今月の特集2 夏に知っておきたい細菌性胃腸炎

58巻6号(2014年6月発行)

今月の特集1 液状化検体細胞診(LBC)にはどんなメリットがあるか
今月の特集2 生理機能検査からみえる糖尿病合併症

58巻5号(2014年5月発行)

今月の特集1 最新の輸血検査
今月の特集2 改めて,精度管理を考える

58巻4号(2014年4月発行)

今月の特集1 検査室間連携が高める臨床検査の付加価値
今月の特集2 話題の感染症2014

58巻3号(2014年3月発行)

今月の特集1 検査で切り込む溶血性貧血
今月の特集2 知っておくべき睡眠呼吸障害のあれこれ

58巻2号(2014年2月発行)

今月の特集1 JSCC勧告法は磐石か?―課題と展望
今月の特集2 Ⅰ型アレルギーを究める

58巻1号(2014年1月発行)

今月の特集1 診療ガイドラインに活用される臨床検査
今月の特集2 深在性真菌症を学ぶ

57巻13号(2013年12月発行)

今月の特集1 病理組織・細胞診検査の精度管理
今月の特集2 目でみる悪性リンパ腫の骨髄病変

57巻12号(2013年11月発行)

今月の特集1 前立腺癌マーカー
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査②

57巻11号(2013年10月発行)

特集 はじめよう,検査説明

57巻10号(2013年10月発行)

今月の特集1 神経領域の生理機能検査の現状と新たな展開
今月の特集2 Clostridium difficile感染症

57巻9号(2013年9月発行)

今月の特集1 肺癌診断update
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査①

57巻8号(2013年8月発行)

今月の特集1 特定健診項目の標準化と今後の展開
今月の特集2 輸血関連副作用

57巻7号(2013年7月発行)

今月の特集1 遺伝子関連検査の標準化に向けて
今月の特集2 感染症と発癌

57巻6号(2013年6月発行)

今月の特集1 尿バイオマーカー
今月の特集2 連続モニタリング検査

57巻5号(2013年5月発行)

今月の特集1 実践EBLM―検査値を活かす
今月の特集2 ADAMTS13と臨床検査

57巻4号(2013年4月発行)

今月の特集1 次世代の微生物検査
今月の特集2 非アルコール性脂肪性肝疾患

57巻3号(2013年3月発行)

今月の特集1 分子病理診断の進歩
今月の特集2 血管炎症候群

57巻2号(2013年2月発行)

今月の主題1 血管超音波検査
今月の主題2 血液形態検査の標準化

57巻1号(2013年1月発行)

今月の主題1 臨床検査の展望
今月の主題2 ウイルス性胃腸炎

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