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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査28巻3号

1984年03月発行

雑誌目次

今月の主題 画像診断

総説

画像診断技術の進歩

赤塚 孝雄 , 渡辺 富夫 , 武田 徹

pp.244-254

はじめに

 最近,ディジタルラジオグラフィーや核磁気共鳴を用いた画像化など,臨床診断に用いている画像の新しい処理による診断情報の抽出や,これまでは見えていなかった情報を画像として提供してくれる新しい画像化技術の開発が,目覚ましい速さで進んでいるのがみられる.これに伴って,この情報を十分に活用する医学的な知識と,これに基づいた操作とか画像の活用などが要請されている.

 このような画像診断技術の展開を,ディジタル画像処理技術を中心にながめてみようというのがこの小論の主旨である.視覚的な情報を認識し識別する能力で,人間に優る機械はなかなか実現できそうにはない.しかし,新しいセンサー技術,電子回路技術,情報処理技術を駆使することで,不可視情報が可視化され,見えなかったものが見えてくるだけでなく,本来,画像とは言い難い情報の二次元的な広がりを画像として表現し,診断に必要な情報が取り出されるようになってきた.その読影にしても,画像を見やすく変換し,定量的に計測評価し,それらの情報を大量に蓄積して迅速に引き出すとか,ひずみ無く遠方に高速で送るといったことが,比較的容易に実現できるようになってきている.種々雑多な画像情報を整理し診断に生かしてゆくのも,これからの課題と言えよう.

画像診断装置

NMR-CT

井上 多門

pp.256-259

1.はじめに

 夢の診断用映像法として期待されてきたNMR映像法もようやく実用化の時代に入り,わが国でも数台のNMR-CTが臨床実験に用いられる段階となった.NMR (核磁気共鳴)は第二次大戦の直後に,当時の電子工学技術の発展を背景として誕生した,物質のミクロな性質を知るために有効な物理化学的測定手段である.この現象の発見直後から,種々の医学方面への応用が試みられていたのであるが,実用的な医学診断において課せられる厳しい条件の下でこれが利用されるには,関連する多くの技術がシステム的に成立していなければならなかった.これらの技術の中で,特に情報処理技術の発展は重要な因子であり,この意味でX線CTは,NMR映像法誕生の直接の契機を与えるものであった.

 1970年に入り間もなく,突如として世に現れたX線CTは,診断用映像装置として画期的な性能を示すものであった.しかし,決して万能なものではなく,例えば細胞レベルの生化学的状態に関する情報を抽出することなどには,まったく無力と言っても差し支えないほどであった.また,情報抽出の媒体となるX線自体の障害も問題であり,X線CTの持つこれらの弱点を解決する方法が望まれていたのである.

ポジトロンCT

山﨑 統四郎

pp.260-262

1.はじめに

 放射性同位元素(RI)を薬剤として臨床に利用する領域を核医学と呼ぶが,この中でもっとも期待される分野がポジトロンCT技術を駆使するポジトロン核医学である.ポジトロン(陽電子)を放出するRIの多くがサイクロトロンで生産されるので,サイクロトロン核医学とも呼ばれる.

 シンチグラフィー(RIイメージング)1)は核医学の中心をなすものであるが,これに使われる代表的なRIは99mTcである.これは人工的に作られた元素であり,身体を構成する元素ではないから,これをトレーサーとして生命現象を追求することは最善の方法とは言い難い.一方,サイクロトロンで生産されるポジトロン放出RIの15O,13N,11Cは身体を構成する重要な元素である.これらは,体内で代謝される各種の物質や薬剤に,その構造を変化させることなく標識できるので,これらをトレーサーとした体外からの追跡が可能となる.やはりサイクロトロンで作られる18Fは,身体構成元素ではないが,ハロゲンであることから種々の物質に標識することができる.

X線CT

竹中 榮一

pp.263-267

1.はしがき

 英国EMI社のG.N Hounsfieldが1972年,体軸横断断層(transverse axial tomography)を発表した1).これでは,頭の水平断面像で造影剤を使用しないで明らかに脳室,一部の脳回がわかる程度だったが,すぐに出血,梗塞,脳腫瘍や脳室が簡単に診断できるようになり,頭部診断にきわめて大きな寄与をした.近年はソフトウエアの改良で,脊髄,耳小骨,白質や灰白質も明瞭に描出される一方,全身用CTについては,走査時間の短縮,大量サンプリングデータ,高マトリックス化(ピクセルサイズの微小化),低コントラスト解像力の向上,dynamic scan (心臓用),target scan (後述)の高性能が要求され,着々と進歩している.

マグネチックフィールド

小谷 誠

pp.268-270

1.はじめに

 人間が身体を動かしたり,心臓が収縮したりするのは,体内に発生する約0.1Vの活動電位によって神経細胞を刺激するからである.特に心筋内で発生した活動電位を体表面で測定したものが心電図であり,これは1903年に初めて測定されている.生体内に電圧が発生すると,生体は絶縁物でないので,これによって生体内に電流が流れるはずであるから,生体から磁界が発生していることは以前から考えられていた.しかしながら,磁界があまりに微小であるため測定することができなかった.1963年にBaule1)らによって,フェライト棒に約200万回巻いた磁束検出コイルを用いて,初めて胸壁面上で心臓の発生する磁界,すなわち心磁図の計測に成功している.その後,1970年にMITのCohen2)らは,新しく開発された超高感度SQUID磁束計を用い,磁気シールド・ルーム内で雑音の無い安定した心磁図の測定に成功している.

 人体各部から発生する磁界とその大きさを図1に示す.図1からもわかるように,人体からの磁界は非常に微小であるため,大部分の磁気計測にはSQUID磁束計を用いなければならない.そのため,生体磁気信号計測の研究はSQUID磁束計の開発された1970年ごろから始められ,現在,世界十数か国で研究が行われている.

超音波診断装置

飯沼 一浩

pp.271-273

1.超音波の特徴

 超音波は振動数(周波数)の非常に高い音であり,この音を媒体中に発射してそのエコーから媒体内の不均一な情報を検出する手法は,はじめ潜水艦で使用されるソーナーや魚群探知器,金属探傷器に利用され,その後医学診断へも応用されるようになった.

 超音波はX線と比較すると生体への障害がほとんど無く,造影剤を使わずに軟部組織の診断ができるという大きな特長を有するため,装置の開発が精力的に進められ,分解能の良いリアルタイム断層装置が開発されるに至って急速に普及するようになった.被検者に障害が無く(無侵襲),リアルタイムで断層像が得られるため特に動態観測に適し,心臓疾患の検査にはもちろん,呼吸性移動のある腹部臓器の診断や胎児の診断にも,他の画像診断装置では得られない情報を提供することができる.無侵襲性を最大の特長として,当初,心臓,腹部臓器,胎児等々を体表から観測していたが,しだいにその用途が拡大され,穿刺用のガイド,消化器や脳の手術中での検査,内視鏡との併用,経直腸的検査などの利用が盛んになり,専用のプローブが種々開発されている.

超音波顕微鏡—第3の顕微鏡

伊東 紘一

pp.274-277

1.はじめに

 超音波診断装置の進歩により,人体内部の構造や病変が手に取るように簡単に描出されるようになってきた.超音波診断の目標は音響組織特性にあり,ミクロレベルの組織構造が判明すれば,診断学上に多大の貢献を成しうる.

 超音波顕微鏡とは光学顕微鏡,電子顕微鏡に続く,第三の顕微鏡とも言えるもので,超高周波超音波技術により光と同等レベルの高周波が得られるようになって実現したものである.現在は医学や生物学上での利用は少なく,工学分野での利用がなされている.

サーモグラフィーによる画像診断

藤正 巖

pp.278-281

1.はじめに

 「サーモグラフィーとは体表の温度分布を図に表して診断に役だてる方法である」と書き始めて,もう20年近くが経過してきた.しかし,体表の温度分布図が何に役にたつのかが明確に示されないまま今日に至ったため,その普及は急速とは言えなかった.健保の枠組みの中に入った検査法でありながら,その利用はいまだしの感が深い.この1,2年サーモグラフィーは新しい表現力を得て,新しい画像診断の道を歩み始めた.熱画像から一歩踏み込んで,今まで画像化されなかった生理画像を手に入れ始めているのである.ここでは,そのような新しい波を紹介することとしよう.同時に,本法の利用の拡大を願うものである.

体表面心電図マッピング

星野 一也 , 春見 建一

pp.282-285

1.体表面心電図マッピングとは

 前胸壁や背部に多数の電極を配置して心電図を記録し,従来の心電図よりも詳細な心電情報を得ようとするのが体表面心電図マッピング(体表面電位図)のねらいである.すなわち,心電図をたくさんとって,より多くの情報をとらえようとするのが本法の原理であり,等電位線図で表現する方法がとられている.

 その作りかたは,各誘導点の心電図よりある時刻点の電位を測定し,等しい電位の場所を結んで地図の等高線のように等電位線を描く.この等電位線図が,その時間点の体表面電位図である.体表面の心起電力による電位分布をこのように図示し,これを臨床診断に用いる基礎を作ったのは1960年代,Taccardiらの仕事である.彼は胸壁の200〜400点から心電図を記録し,体表面電位図を手で作り,心室の興奮伝播過程が電位図によく表現されることを示し,また従来の心電図ではわからない心起電力の非単一双極子成分を証明し,本法の有用性を示した.その後,コンピューターやMEの進歩によって多数の心電図の同時収録が可能となり,また電位図の作製が簡単に高速にできるようになるとともに,体表面電位図は心疾患の診断法として注目されてきた.

脳波二次元ディスプレイ

松岡 成明 , 徳田 元 , 石川 忠廣

pp.286-291

1.はじめに

 脳波が脳の機能を反映する手段として臨床的に,実験的に有用であることは異論の無いところである.その判読に際して,結果が客観性,定量性に欠けることは否めない現状である.多チャンネル誘導法による脳波処理がコンピューター技術の進歩に伴い,信号演算処理(signal processing)の技術の開発などによって情報処理がこの分野に応用されるようになった.動的な脳波を静的に定量的に表現し,二次元的に表示しようとする研究が多く報告されるようになった.われわれは,脳波の各周波数帯域の活動を抽出するための等価電位の導出と,脳波地図作成のためのアルゴリズムなどから成る二次元表示システムを開発した(computed topographic EEG,以下CTEと略す)5).以下,本法の理論とその実際について述べることとする.

細胞診の自動化機器

野口 義夫

pp.292-297

1.細胞診の自動化の方式

 細胞とか白血球および染色体などのタイプ分類を,人間の判断力を借りずに機械的に行うことを,細胞診の自動化と呼ぶ.自動化を実現する方法は,次の二つの方式に分類できる.

 一つは画像処理方式である.この方式では,光学顕微鏡で見える像をTVカメラでアナログ電気信号に変換し,アナログ信号をディジタル化してディジタル画像を求め,このディジタル画像をコンピューターで処理して細胞などのタイプ分類を行う方式である.この方式に基づく血球自動分類装置として,Abbott研究所社のADC 500, Per-kin-Elmer社のCoulter diff 3, Geometric Data社のHematrakなどが,1970年代に市販されている.

血液像自動分類装置

新谷 和夫

pp.298-300

1.はじめに

 血液像検査は古くから内科系では基礎的な検査項目として広く実施されてきたが,外科系などでは必要に応じてという程度にしか実施されず,各施設ともに全体としては比較的少数の熟練した技師の手によって十分処理可能であった.ところが,検査のプロファイリングという考えかたが導入されるようになると,血液像検査もスクリーニング検査として広範に実施されるようになってきた.もちろん,これによって従来は見逃がされたかもしれない白血病をはじめとする各種血液疾患が早期に的確に把握されるようになった功績は大きいが,検査室側から眺めると熟練した技師の養成は一朝一夕では不可能であるから,やむなく不慣れな新人でも早期に血液像検査に従事させることで急増する件数処理に追われる結果となってきた.各検査室ともに,血液像検査のレベルを落とさず対処することが最大の課題となってきたわけで,このようなときに画像診断技術を応用した血液像自動分類装置が出現したのだから,注目を集めたのも当然と言えよう.

主題を語る

画像診断は形態病理検査にどこまで迫れるか

影山 圭三 , 飯尾 正宏

pp.302-315

 X線,γ線,NMR現象などの発見が,近来のその理論的成果および急速なコンピューターの発達と相まって,医学における画像診断装置として結実し目覚ましい活躍をみせている.画像診断が,病態の認識の基礎にある病理学のレベルにどれだけ迫ってゆけるかは,どの程度組織認識が可能であるかで量ることができる.今,画像診断はどこまで到達しているのか,そして新技術ならではの成果は何であろうか.

検査と疾患—その動きと考え方・87

膵癌

松野 正紀 , 佐々木 浩一 , 小寺 太郎 , 佐藤 壽雄

pp.316-323

はじめに

 膵癌は消化器癌の中で,もっとも診断の困難なものの一つとされてきた.その理由として,膵癌には特有の症状が無く,初期にみられるのは不定の腹部症状であることが多いため,膵癌を疑うきっかけがつかみ難いことが挙げられる.さらに,従来の膵の形態学的診断法は動脈造影をはじめとして侵襲の大きいものが多く容易に施行できなかった点も,診断の困難性に拍車をかけるものであった.

 しかし近年,超音波検査法やCT (computedtomography)が開発されるに及び,その様相は一変したと言っても過言ではない.特に超音波検査法は無侵襲であるうえに外来でも容易にできる利点があり,解像力の飛躍的な向上と相まってスクリーニング検査法として広く行われるようになった.それに伴い,膵癌症例も発見率が向上しているのが現状である.

特別寄稿

カナダ・ブリティシュコロムビア・サイトロジーセンターを訪れて

畠山 重春 , 池田 栄雄 , 編集室

pp.326

 田中昇博士(千葉県がんセンター研究所所長)を団長とする一行約20名が,第8回国際細胞学会出席のため,緑と湖の国,カナダへ旅立ったのは6月18日である.

 約2週間の日程に,ブリティシュコロムビア・サイトロジーセンター見学の機会があったので紹介したい.数か月前に訪問の連絡を現在Britsh Columbia,Cancer Control Agency (対癌協会)所長Dr.Boyes,Laboratoryの所長Dr.Andersonと連絡し,見学の準備をお願いしておいた.案内は細胞診部長Dr.LeRiche(昨年のカナダ細胞学会の会長で女性)以下,総出でして下さった.

講座・リンパ球の検査・3

IL 1, IL 2の測定法

笠原 忠 , 向田 直史

pp.328-337

はじめに

 リンパ球やマクロファージはマイトーゲンや抗原の刺激を受けると種々の可溶性因子を放出し,これらは種々の免疫反応や炎症反応における細胞間相互作用のメディエーターとして働く.リンパ球やマクロファージから放出される因子はそれぞれ,リンホカインやモノカインとも呼ばれてきた.現在では,T細胞から放出される因子のうちthymocyte mitogenic factor (TMF),co-stim-ulator, killer cell helper factor (KHF),secon-dary cytotoxic T cell-inducing factor (SCIF)はT cell growth factor (TCGF)と物理化学的に同一であるとされインターロイキン2(IL2)と呼び,またマクロファージから放出される因子のうちmitogenic protein (MP),helper peak-1(HP−1),Tcell replacing factorⅢ(TRF-Ⅲ),T cell-replacing factor macrophage (TRFM),B cellactivating factor(BAF),B cell differentiatingfactor(BDF)はlymphocyte activating factor(LAF)と同一であるとされ,IL 1と呼ぶことが提唱されている1)

基礎科学からの提言・9

品質管理の勧め

久米 均

pp.339-343

まえがき

 本欄の名前は"基礎科学からの提言"であるが,筆者は品質管理を専門としており,基礎科学とはあまり縁のない人間である.したがって,欄名にふさわしい執筆者であるかどうかは少し問題があるように思われるが,日ごろ臨床化学検査について考えていることを,この機会を利用して述べてみたい.

 昨今の臨床化学検査は分析装置の自動化・大型化が進み,日々大量の検体の分析が行われており大きな施設では"Laboratory"というよりは"Fac-tory"と呼ぶべき様相を呈している."量の変化は質の変化をもたらす"とは弁証法の有名な命題であるが,大量の検体処理に当たっては,従来の小規模な分析室において行われていた良い方法は必ずしも良い方法ではなくなってくる.大量の検体処理にあっては,それにふさわしい方法が必要であるが,その具体的な方法の一つとして工業生産における品質管理の考えかたが参考になるのではないだろうか."品質管理"という言葉は臨床化学検査においてもしばしば用いられているけれども,手法面に走りがちであり,大量に物事を処理するための方法としての原理的な理解においては,必ずしも十分とは思われないのである.

学会印象記

第34回電気泳動学会/第24回日本組織細胞化学会

竹尾 和典

pp.344,348

 電気泳動学会は前学会会長故児玉桂三先生,現会長平井秀松教授と島尾和男教授(東京医歯大)らを中心としてTiseliusの電気泳動装置の開発と応用を目的として戦後いち早く発足した学会で,その後泳動法の発達とともに発展し,現在会員数1,400余名を擁し,秋の総会と春季大会と年2回の学会が開催されるが,今回は第34回総会であって,浜松医大検査部菅野剛史教授を総会会長として10月22,23の両日,浜松市青年婦人会館において開催された.

 総合はLDHサブユニット欠損症と題する菅野総会会長講演,「マイクロコンピュータ一を用いたセルロースアセテート膜2次元電気泳動法」と題する電気泳動学会児玉賞受賞講演(大橋望彦・戸田年総 都老人研生化学)をはじめ一般講演30題,ポスター展示11題,「血液凝固関連物質の電気泳動的解析」と題するシンポジウム(司会.河合忠 自治医大臨床病理,高田明和 浜松医大二生理)と酵素結合性免疫グロブリンの検出法と題するワークショップ(司会・北村元仕 虎の門病院生化学,五味邦英 昭和大臨床病理)と賛助会員による科学器械展示とが行われ,参加者は約500名を数えた.

研究

異なる導出法による聴性中潜時反応の比較

吉良 保彦 , 門林 岩雄 , 豊島 明照 , 西島 英利

pp.345-347

はじめに

 検査室で通常行う脳波検査では,主に自発性活動としての周期性活動と発作性異常とを知りうるのみであるが,誘発反応加算法が開発されて以来,刺激に対する脳の誘発反応の記録が臨床的に行われるようになってきた.

 種々の誘発反応が研究されてきたが,中でも聴覚誘発反応は通常の聴性大脳誘発反応(auditory evokedresponse)のほかに,より速い成分である潜時8ミリ秒までの聴性脳幹反応1〜3)(auditory brain stem re-sponse)と,潜時8ミリ秒以降50ミリ秒までの聴性中潜時反応4〜11)(auditory middle latency response)とが存在することが知られてきた.

Ti-PAR-H2O2発色系を用いた血清中遊離脂肪酸の酵素的測定法

森下 芳孝 , 松本 祐之 , 中根 清司 , 高阪 彰 , 木沢 仙次 , 宮島 雅行 , 安江 鉄雄 , 水谷 和子

pp.349-352

緒言

 遊離脂肪酸(free fatty acid,以下FFAと略す)の測定法として,acyl CoA synthetase (ACSと略す),acylCoA oxidase (ACOと略す)を用いた酵素的測定法が,日常検査に広く採用されている1).しかし,それらの方法の多くは,FFAから生じた過酸化水素(H2O2)をペルオキシダーゼ(PODと略す)発色反応に導く方法であり,基質成分のcoenzyme A (CoAと略す)や血清検体中のアスコルビン酸やピリルビンが水素供与体として反応し,影響を与えることが問題1)となっている.

 松原らは,POD反応ではなく,四塩化チタン(TiCl4),4—(2—ピリジルアゾ)—レゾルシノール(PARと略す)を用いたキレート反応によるH2O2定量法2)を報告している.

ABC法による免疫組織染色法—高感度免疫ペルオキシダーゼ組織染色

江石 義信 , 畠山 茂

pp.353-358

はじめに

 免疫組織染色法は,現在,病理検査室にてルーチンに行われる組織病理学的領域から各種の研究分野に至るまで,幅広い分野で有効な検索法として利用されている.

 組織病理学の領域では,染色標本の永久保存および固定切片の利用が可能なことから,免疫ペルオキシダーゼ染色法がその主流をなしている1,2)

質疑応答

臨床化学 12歳女児における受精とHCG濃度

中林 正雄 , 竹田 省 , 水野 正彦 , 坂元 正一 , N子

pp.359-360

 〔問〕 12歳の女児で,HCGが2倍,4倍,8倍で陽性を呈したのでHG濃度40IU/lとし,またゴナビスは陰性でした.この女児は排卵期だと思われますが,この時期に受精した場合,HCG濃度はこのまま上昇するのでしょうか.また,ゴナビスとハイゴナビスとはどのような違いがあり,どのように使われるものなのでしょうか.

輸血 希釈遠心法を用いた血小板測定

佐々木 正照 , 黒川 一郎 , A生

pp.360-361

 〔問〕 遠心法により血小板を測定する際の血小板希釈液(セルキットCDなど)の組成と,その比重についてご教示ください.

微生物 IgE RASTとリファレンス血清の材料について

伊藤 幸治 , S生

pp.361-363

 〔問〕 IgE RASTの検査結果が陽性と出た場合治療にはどう利用されるのか,臨床的意義,およびRASTの精度管理のしかたを教えてください.

 また,アレルゲンは多種多様にあり,それぞれに標準液はたてられませんが,なぜリファレンス血清にシラカンバ属花粉の抽出エキスを用いているのか,ハウスダストやスギ花粉ではいけないのか,について教えてください.

免疫血清 コレラ菌の菌株保存

余 明順 , 本田 武司 , T生

pp.363-364

 〔問〕 腸内細菌などの菌株保存にゼラチンディスク法を利用していますが,コレラ菌については応用できません,その理由をお教えください.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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今月の特集2 感染症診断に使われるバイオマーカー—その臨床的意義とは?

60巻3号(2016年3月発行)

今月の特集1 日常検査からみえる病態—心電図検査編
今月の特集2 smartに実践する検体採取

60巻2号(2016年2月発行)

今月の特集1 深く知ろう! 血栓止血検査
今月の特集2 実践に役立つ呼吸機能検査の測定手技

60巻1号(2016年1月発行)

今月の特集1 社会に貢献する臨床検査
今月の特集2 グローバル化時代の耐性菌感染症

59巻13号(2015年12月発行)

今月の特集1 移植医療を支える臨床検査
今月の特集2 検査室が育てる研修医

59巻12号(2015年11月発行)

今月の特集1 ウイルス性肝炎をまとめて学ぶ
今月の特集2 腹部超音波を極める

59巻11号(2015年10月発行)

増刊号 ひとりでも困らない! 検査当直イエローページ

59巻10号(2015年10月発行)

今月の特集1 見逃してはならない寄生虫疾患
今月の特集2 MDS/MPNを知ろう

59巻9号(2015年9月発行)

今月の特集1 乳腺の臨床を支える超音波検査
今月の特集2 臨地実習で学生に何を与えることができるか

59巻8号(2015年8月発行)

今月の特集1 臨床検査の視点から科学する老化
今月の特集2 感染症サーベイランスの実際

59巻7号(2015年7月発行)

今月の特集1 検査と臨床のコラボで理解する腫瘍マーカー
今月の特集2 血液細胞形態判読の極意

59巻6号(2015年6月発行)

今月の特集1 日常検査としての心エコー
今月の特集2 健診・人間ドックと臨床検査

59巻5号(2015年5月発行)

今月の特集1 1滴で捉える病態
今月の特集2 乳癌病理診断の進歩

59巻4号(2015年4月発行)

今月の特集1 奥の深い高尿酸血症
今月の特集2 感染制御と連携—検査部門はどのようにかかわっていくべきか

59巻3号(2015年3月発行)

今月の特集1 検査システムの更新に備える
今月の特集2 夜勤で必要な輸血の知識

59巻2号(2015年2月発行)

今月の特集1 動脈硬化症の最先端
今月の特集2 血算値判読の極意

59巻1号(2015年1月発行)

今月の特集1 採血から分析前までのエッセンス
今月の特集2 新型インフルエンザへの対応—医療機関の新たな備え

58巻13号(2014年12月発行)

今月の特集1 検査でわかる!M蛋白血症と多発性骨髄腫
今月の特集2 とても怖い心臓病ACSの診断と治療

58巻12号(2014年11月発行)

今月の特集1 甲状腺疾患診断NOW
今月の特集2 ブラックボックス化からの脱却—臨床検査の可視化

58巻11号(2014年10月発行)

増刊号 微生物検査 イエローページ

58巻10号(2014年10月発行)

今月の特集1 血液培養検査を感染症診療に役立てる
今月の特集2 尿沈渣検査の新たな付加価値

58巻9号(2014年9月発行)

今月の特集1 関節リウマチ診療の変化に対応する
今月の特集2 てんかんと臨床検査のかかわり

58巻8号(2014年8月発行)

今月の特集1 個別化医療を担う―コンパニオン診断
今月の特集2 血栓症時代の検査

58巻7号(2014年7月発行)

今月の特集1 電解質,酸塩基平衡検査を苦手にしない
今月の特集2 夏に知っておきたい細菌性胃腸炎

58巻6号(2014年6月発行)

今月の特集1 液状化検体細胞診(LBC)にはどんなメリットがあるか
今月の特集2 生理機能検査からみえる糖尿病合併症

58巻5号(2014年5月発行)

今月の特集1 最新の輸血検査
今月の特集2 改めて,精度管理を考える

58巻4号(2014年4月発行)

今月の特集1 検査室間連携が高める臨床検査の付加価値
今月の特集2 話題の感染症2014

58巻3号(2014年3月発行)

今月の特集1 検査で切り込む溶血性貧血
今月の特集2 知っておくべき睡眠呼吸障害のあれこれ

58巻2号(2014年2月発行)

今月の特集1 JSCC勧告法は磐石か?―課題と展望
今月の特集2 Ⅰ型アレルギーを究める

58巻1号(2014年1月発行)

今月の特集1 診療ガイドラインに活用される臨床検査
今月の特集2 深在性真菌症を学ぶ

57巻13号(2013年12月発行)

今月の特集1 病理組織・細胞診検査の精度管理
今月の特集2 目でみる悪性リンパ腫の骨髄病変

57巻12号(2013年11月発行)

今月の特集1 前立腺癌マーカー
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査②

57巻11号(2013年10月発行)

特集 はじめよう,検査説明

57巻10号(2013年10月発行)

今月の特集1 神経領域の生理機能検査の現状と新たな展開
今月の特集2 Clostridium difficile感染症

57巻9号(2013年9月発行)

今月の特集1 肺癌診断update
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査①

57巻8号(2013年8月発行)

今月の特集1 特定健診項目の標準化と今後の展開
今月の特集2 輸血関連副作用

57巻7号(2013年7月発行)

今月の特集1 遺伝子関連検査の標準化に向けて
今月の特集2 感染症と発癌

57巻6号(2013年6月発行)

今月の特集1 尿バイオマーカー
今月の特集2 連続モニタリング検査

57巻5号(2013年5月発行)

今月の特集1 実践EBLM―検査値を活かす
今月の特集2 ADAMTS13と臨床検査

57巻4号(2013年4月発行)

今月の特集1 次世代の微生物検査
今月の特集2 非アルコール性脂肪性肝疾患

57巻3号(2013年3月発行)

今月の特集1 分子病理診断の進歩
今月の特集2 血管炎症候群

57巻2号(2013年2月発行)

今月の主題1 血管超音波検査
今月の主題2 血液形態検査の標準化

57巻1号(2013年1月発行)

今月の主題1 臨床検査の展望
今月の主題2 ウイルス性胃腸炎

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