icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床検査28巻6号

1984年06月発行

文献概要

今月の主題 細胞膜 総説

細胞膜の構造と機能—生化学的立場から

著者: 岩森正男1

所属機関: 1東京大学医学部生化学

ページ範囲:P.659 - P.669

文献購入ページに移動
はじめに
 膜構造は細胞の基本的構成単位であることは言うまでもない.おそらく地球上に生命が誕生することになったきっかけも,膜構造の出現によるものと思われる.自己増殖能を持った原始細胞をはじめとして,人体を構成する複雑な機能を持った細胞のすべては,膜によって生命が維持されていると言っても過言ではなく,膜の理解は,すなわち生命現象の本質的理解にもつながると言える.
 人体を構成する細胞の中でもっとも単純なものは赤血球であるが,その外壁となっている形質膜(細胞膜)の厚さは7.5nm,直径は,ほぼ8.6μmであるから,仮に1mmの厚さの薄膜でその形を作製すると,直径は1mにもなり,いかに薄い膜が巨大な細胞体を維持しているかがわかる.形質膜を例にとると,隔壁としての保護膜的役割の他,細胞内外へのイオンや物質の輸送をはじめ,レセプター分子を介しての刺激や情報の伝達など多岐にわたる反応が,このような薄い膜を介して行われている.また,細胞内の生化学反応の多くは膜構造を必要とし,酵素分子などの活性発現や,生合成と分解反応の秩序性,および情報伝達の方向性が膜構造によって維持されている.細胞が生命活動を維持するために備えている膜構造は,それぞれ厳密な役割分担を持った細胞内器官を構成している.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?