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文献詳細

雑誌文献

臨床検査30巻11号

1986年11月発行

文献概要

わだい

Campylobbacter jejuniの産生する細胞毒素の検出

著者: 辻孝雄1

所属機関: 1大阪大学微生物病研究所

ページ範囲:P.1276 - P.1276

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 日本では,Campylobacterが起因菌として起こる炎症性腸炎が最も頻度の高い細菌性腸炎であるといわれ,注目されている.起因菌として散発下痢症および食中毒から分離されたCampylobacterは,大半がC.jejuniである.本菌はヒトでは主に空腸と回腸または結腸に主病変を生じるといわれているが,潜伏期間(2〜7日)が長いことから,体内で菌が増殖することによって下痢症が発生すると考えられている.しかし,下痢の原因はまだ明らかにされていないが,解明の努力がなされている.
 その一つとして近年,毒素検出法により研究が進められ,毒素の産生性が明らかにされてきた.まず毒素原性大腸菌の産生する易熱性エンテロトキシン(LT)とよく似た下痢毒素(LT様毒素)を産生すると報告され1),さらにC.jejuni腸炎が炎症性腸炎であることから,赤痢(Shigella dysenderia)のShigatoxinや,腸出血性大腸菌の産生するVerotoxinと似た細胞毒(Cytotoxin)が産生され,細胞障害を生じて出血性下痢を引き起こしているのではないか,と報告された2).これらの結果から,毒素産生の有無を検索することが,本菌の下痢発症の原因究明に重要であると考えられるようになってきた.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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