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文献詳細

雑誌文献

臨床検査30巻8号

1986年08月発行

文献概要

医学の中の偉人たち・8

Louis Pasteur 免疫学の父

著者: 飯野晃啓1

所属機関: 1鳥取大学医学部解剖学第1

ページ範囲:P.908 - P.908

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 Pasteurはもともと生物学者でもなく医者でもなかった.医者でなくして,彼ほど医学の分野に貢献した人物はRöntgenらほんの少人数であると思う.パリの高等師範学校を出たPasteurは,化学者として第一歩を踏み出した.Pasteurをして人類の大恩人と言わしめるのは,晩年に開発した狂犬病予防ワクチンによるものであるが,20歳代の化学研究における業績も,酒石酸の結晶の性質を明かにした,超一流のものであった.
 1845年リイルの理科大学の化学教授兼理学部長となったころから,Pasteurの研究方向は生物学および医学の分野に傾いていった.リイル大学はフランスの主要産業であるブドウ産地の中にあり,当時ブドウ酒製造業者は商品価値のない酸っぱいブドウ酒のために経営の危機に瀕(ひん)していた.Pasteurは正常に発酵しているブドウ酒は酵母菌が盛んに繁殖しているが,腐敗したブドウ酒には別の微生物が繁殖しているのを見つけ,50℃でゆっくり加熱する方法を考案し,ブドウ酒造りを根本から改良した.Pasteurはこの研究を通して発酵と腐敗とはすべて微生物のしわざであることを確信した.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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