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今月の主題 生体色素 総説
β-カロチンと癌の一次予防
著者: 青木國雄1 伊藤宜則2 佐々木隆一郎3
所属機関: 1名古屋大学医学部予防医学教室 2藤田学園保健衛生大学医学部衛生学教室 3名古屋大学医学部予防医学教室
ページ範囲:P.275 - P.282
文献購入ページに移動日常生活環境中におびただしい癌原性物質が検出されているが,発癌抑制物質もかなり数多く発見され,癌予防の道を開くものとして期待されている.従来癌の一次予防は非特異的な健康増進法と,特異的な対策として癌原性物質の発見,除去,前癌病変の処置,癌情報の提供と衛生教育によるすばやい対応などがあったが,いずれも積極的な対策ではない.癌原性物質の除去といっても,人の生活と密接した要因が多く,除去することは実際には不可能に近い.例えば食品中の癌原性物質をとっても,食品の構成成分のほとんどは人体の生命維持に不可欠のものであり,有害部分はほんのわずかであって分離することは容易でないからである.一方食品中に含まれる金属元素では,多種類同時投与をすれば互いに干渉して有害作用が減少するということが報告1)されている.人体中に入った癌原性物質が,抑制物質によりその作用を失ったり,癌化の過程が修飾されたり,または生体の防御機構を強化して発癌阻止することができれば,まことにつごうが良いわけである.
Chemoprevention2)は,化学的物質を用いて癌の発生を予防したり,癌化の過程を阻害する方法を指している.もともとこの用語は,INHなど抗結核剤を用いて,感染の危険のある群や,初感染を受けた直接の人々の発症を予防する際に用いられた.
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