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文献詳細

雑誌文献

臨床検査33巻11号

1989年10月発行

文献概要

特集 癌の臨床検査 I 癌そのものをとらえる検査 1 ウイルスに関する検査

A.発癌とウイルス

著者: 畑中正一1

所属機関: 1京都大学ウイルス研究所ヒトがんウイルス研究分野血清免疫部

ページ範囲:P.1254 - P.1258

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はじめに
 ヒトの癌がウイルスによって起こる可能性を,10年前に信じる人は少なかった.ところが今は,癌の臨床検査の中に当然のこととして容れられるようになった.もちろんBurkittリンパ腫のように,1960年代からヘルペス型のウイルスであるEpstein-Barrウイルスが発見されて,ヒトの腫瘍にもウイルスが関与することが早くから明らかにされたものもある.それでもBurkittリンパ腫はアフリカの限られた地方に発生するきわめて特殊な腫瘍であり,われわれ日本人が普通の病院で出くわすような腫瘍ではない.
 日本人にとって最も衝撃的なニュースは,1981年にもたらされた.成人T細胞白血病がHTLV-Iと呼ばれるレトロウイルスによって生じることが,京都大学ウイルス研究所の日沼頼夫教授らによって発見されたからである.さらに驚いたことには,子宮頸癌がヒト乳頭腫ウイルス(HPV)によることがドイツのH.zurHausen教授らによって明らかにされた.HPVに感染している人は20〜50%に達するといわれており,今では子宮頸癌のみならず,肺癌などを含めて広くいろいろな臓器癌にも関係することが知られてきた.一方,肝臓癌はB型肝炎ウイルス,非A非B肝炎ウイルスの関与が濃厚になってきた.特に日本にとって関係の深いのはB型肝炎ウイルスである.毎年発生する実質性肝癌の半分はこのB型肝炎ウイルスによるもので,残りは非A非B肝炎ウイルスによるものが多いであろうと推測されている.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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