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文献詳細

雑誌文献

臨床検査33巻11号

1989年10月発行

文献概要

特集 癌の臨床検査 I 癌そのものをとらえる検査 1 ウイルスに関する検査

B.癌関連ウイルス 2)ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)

著者: 岩坂剛1

所属機関: 1佐賀医科大学産科婦人科学教室

ページ範囲:P.1263 - P.1267

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はじめに
 ヒト乳頭腫ウイルス(human papilloma virus;HPV)の検出は,このウイルス感染の特殊性から,他の多くのウイルス感染を診断するように簡単にはいかない.適当な血清学的診断法もないし,培養細胞を用いて臨床材料からウイルスを分離することもできない.一方,良性の増殖性感染を起こしている部分であれば,電顕や免疫組織化学的検索法を用いることによって,ウイルス粒子あるいはカプシド蛋白を証明することは可能である.しかし,いずれの方法もその検出感度に問題があり,特に癌細胞において観察されるようにウイルスDNAが存在するのに粒子形成がみられなかったり,カプシド蛋白が合成されていなかったりするような場合は検出不可能である.そこで,HPV感染の診断は,こうした労多くして実りの少ない検査法より,主に細胞診や生検組織の病理学的診断に頼ってきた.
 HPV感染による形態学的特徴は上皮組織表層から中層にかけて出現するkoilocytotic changeである.この診断は比較的容易であるが,この方法の欠点は,こうした形態学的変化を伴わないHPV感染を診断できないことであり,さらには最近重要視されているHPVの型について何の情報も得られないことである.HPV6,11型が一般に良性病変に見いだされ,HPV16,18,31,33,35型が主に悪性病変に強い関係をもつといわれていることを考えるとき,HPVの型の診断はこれから特に重要となってくる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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