文献詳細
特集 癌の臨床検査
I 癌そのものをとらえる検査 1 ウイルスに関する検査
文献概要
はじめに
ヘルペス科のウイルスは,自然界に広く存在し,潜伏感染を特徴とする.そして,宿主の状態に応じて,ウイルスの再活性化,再発を引き起こす.それゆえに,病因不明の疾患の場合,病因としてヘルペス科のウイルスを疑うことがしばしばなされてきた.子宮頸癌の場合も例外ではなく,陰部に感染を起こし,潜伏して再発する単純ヘルペスウイルス(herpes simplexvirus;HSV)2型(HSV−2)が,病因として疑われたのである.子宮頸癌患者は正常人と比べてHSV−2に対する抗体価が高いことや,その抗体が子宮頸癌組織と反応することが報告されたこともあった.また,実験室においては,HSV−2を用いて動物に腫瘍を作る試みや,HSV−2のDNAを用いて細胞をトランスフォームさせる試みがなされてきた.しかし,自然発生するヒトの子宮頸癌とHSV−2の関連性はあまりないと考えられるに至っている1〜4).したがって,本特集にHSVを加えることには問題が多いが,歴史的には重要なウイルスであり,またHSVのDNAの断片にトランスフォーメーションの能力があることも事実であるので,この項が加えられることになった.本稿においては本特集の主旨に従い,まずHSVに対する検査法を概説し,HSVと発癌性について述べる.
ヘルペス科のウイルスは,自然界に広く存在し,潜伏感染を特徴とする.そして,宿主の状態に応じて,ウイルスの再活性化,再発を引き起こす.それゆえに,病因不明の疾患の場合,病因としてヘルペス科のウイルスを疑うことがしばしばなされてきた.子宮頸癌の場合も例外ではなく,陰部に感染を起こし,潜伏して再発する単純ヘルペスウイルス(herpes simplexvirus;HSV)2型(HSV−2)が,病因として疑われたのである.子宮頸癌患者は正常人と比べてHSV−2に対する抗体価が高いことや,その抗体が子宮頸癌組織と反応することが報告されたこともあった.また,実験室においては,HSV−2を用いて動物に腫瘍を作る試みや,HSV−2のDNAを用いて細胞をトランスフォームさせる試みがなされてきた.しかし,自然発生するヒトの子宮頸癌とHSV−2の関連性はあまりないと考えられるに至っている1〜4).したがって,本特集にHSVを加えることには問題が多いが,歴史的には重要なウイルスであり,またHSVのDNAの断片にトランスフォーメーションの能力があることも事実であるので,この項が加えられることになった.本稿においては本特集の主旨に従い,まずHSVに対する検査法を概説し,HSVと発癌性について述べる.
掲載誌情報