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特集 癌の臨床検査 I 癌そのものをとらえる検査 3 癌組織産生物質"腫瘍マーカー"の検査
A.総論 2)癌の糖鎖抗原
著者: 神奈木玲児1 高田亜希子1 松田弘二1 銭田晃一1
所属機関: 1京都大学医学部臨床検査医学教室
ページ範囲:P.1323 - P.1330
文献購入ページに移動1.モノクローナル抗体による癌抗原の研究
最近,新しい腫瘍マーカーが次々と臨床検査に導入されている.腫瘍マーカーがこのように活発に開発されるようになった背景には,1975年にKöhlerおよびMilsteinによって樹立されたモノクローナル抗体による抗原研究法がある.この方法の応用によって,α—フェトプロテインおよびCEA以来長い間途絶えていた新しい腫瘍マーカーの開発が飛躍的に進展した.この十余年の間,世界中の癌抗原の研究者が,癌細胞に対するモノクローナル抗体を数多く作製した.これらが次々と臨床検査に導入されつつあるわけである.
これらのモノクローナル抗体の多くは,マウスをヒトの癌細胞で免疫するという方法で得られている.したがって,癌細胞の表面に存在する物質であれば,蛋白質であろうと,糖鎖であろうと,脂質であろうと,原理的にはどんなものでも抗原たりうるははずである.しかしながら,こうして得られたモノクローナル抗体のうち,臨床的に役立っ抗体のほとんどのものが,糖鎖を認識抗原とすることが判明している.このため,糖鎖抗原が癌抗原としてたいへん重要であることがわかってきたのである.以上のモノクローナル抗体を用いた癌抗原の基礎研究の経緯については,総説(文献1〜4)を参照されたい.
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