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文献詳細

雑誌文献

臨床検査33巻11号

1989年10月発行

文献概要

特集 癌の臨床検査 I 癌そのものをとらえる検査 3 癌組織産生物質"腫瘍マーカー"の検査

C.臓器別腫瘍マーカー 2)大腸・直腸癌

著者: 小山洋1 丹羽寛文1

所属機関: 1防衛医科大学校第2内科

ページ範囲:P.1410 - P.1413

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はじめに
 近年わが国においては,環境の変化,特に食生活の欧米化に伴い大腸疾患,特に大腸癌は増加傾向にある.
 大腸癌の診断は通常,X線,内視鏡検査によって行われる.これらは形態学的に十分に確立された方法であり,これだけで確定診断ができるので腫瘍マーカーに頼ることは少ない.しかし,これらの検査は,前処置の複雑さおよび検査自体の被検者に対する負担が大きいことのために,腫瘍マーカーなどの簡便な方法で大腸癌がスクリーニングできれば,非常に有用である.しかし,残念ながら,現在では,そこまでには至っていない.
 以上のことから,大腸癌確定診断には腫瘍マーカーはあまり意味をもたない.しかし,大腸癌の再発についての診断のモニタリングには,腫瘍マーカーは非常に有用である.その点を考慮に入れて検査することが,重要である.したがって,すべての患者にスクリーニング目的で腫瘍マーカーの検査を行うことは,意味がない.同様に大腸癌,かなりの進行癌であっても,必ずしも陽性率は高くない.特に早期癌では,ほとんど意味がない.そのことを十分に認識したうえで,腫瘍マーカーを使用しなければいけない.将来,もっと特異性があり,感度の高い腫瘍マーカーが出現したときには,スクリーニングへの応用が期待される.しかし,現状では,そこまでには至っていない.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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