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文献詳細

雑誌文献

臨床検査33巻11号

1989年10月発行

文献概要

特集 癌の臨床検査 I 癌そのものをとらえる検査 3 癌組織産生物質"腫瘍マーカー"の検査

C.臓器別腫瘍マーカー 10)小児癌

著者: 金子道夫1

所属機関: 1筑波大学臨床医学系小児外科

ページ範囲:P.1441 - P.1444

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はじめに
 小児の悪性固形腫瘍としては神経芽腫,腎芽腫(Wilms腫瘍),肝芽腫,悪性奇形腫,横紋筋肉腫の5腫瘍が頻度が高く,重要である.これら5腫瘍のうち,診断・治療にきわめて有用な腫瘍マーカーを有するのは神経芽腫,肝芽腫,悪性奇形腫で,腎芽腫,横紋筋肉腫では臨床的に有用な腫瘍マーカーはまだ知られていない.小児腫瘍は成人の癌と違い,いずれもまれな疾患である.最も頻度の高い神経芽腫でも年間の新規患者数は200名程度にすぎない.したがって,成人のがん検診のような無症状な患者の効率的な早期発見はきわめて困難であった.しかし,神経芽腫では尿中のカテコラミン代謝産物のスクリーニングにより乳児期に早期発見ができるようになった.現在,全国的に神経芽腫のスクリーニングが実施されており,その治療成績はきわめてよい.この点に関して,わが国は世界の最先端を行っている.腫瘍マーカーの有用性を示した好例といえよう.
 最近では遺伝学の進歩により,これまでの生化学的腫瘍マーカーに加えて染色体や遺伝子も診断や予後予測の有力なマーカーとなってきており,今後さらに新しいマーカーが登場してくると思われる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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