わだい
癌の温熱療法—RF誘電加温
著者:
古賀成昌1
浜副隆一1
前田迪郎1
所属機関:
1鳥取大・第1外科
ページ範囲:P.1564 - P.1564
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癌に対する温熱療法の歴史は古く,文献的には紀元前2000年のヒポクラテスの時代まで遡る.しかし,当時の加温法は焼いたコテで癌の部分を焼いてしまうという単純なもので,体表面以外の腫瘍には応用できず,その後長い間,進展は見られなかった.20世紀後半になり,温熱の選択的な抗腫瘍性と放射線や化学療法剤との併用効果が,進歩した細胞生物学的手技によって確認され,癌の温熱療法への関心が高まった.さらに,理工学系技術の進歩により精度の高い加温装置が開発されたことによって,温熱療法の臨床的適用対象が拡大されるに至り,最近では集学的治療の一環に組み入れられるようになってきた.しかし,治療対象となる癌腫の多くは身体深部に存在するので,温熱療法が癌治療法の一つとして普及していくためには,深部腫瘍をいかにして加温するかが課題である.
加温方法は,全身加温と局所加温の二つに大別される.全身加温ではもちろん深部臓器も十分に加温され,広範な進展あるいは遠隔転移をもつ消化器症例に対しても有効であることが確認されている.一方,深部腫瘍を加温できる局所加温法としては,食道あるいは胆管などの管腔臓器内に発熱体を置いて加温する方法や,腹腔,胸腔あるいは膀胱などの体腔内を温水などで灌流する方法などが報告されているが,腫瘤内への温度の深達性は弱く,その適応は限られている.