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文献詳細

雑誌文献

臨床検査33巻11号

1989年10月発行

文献概要

わだい

腫瘍壊死因子

著者: 川上正舒1

所属機関: 1国立病院医療センター病態生理研究室

ページ範囲:P.1565 - P.1566

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 癌患者が重症の感染症やエンドトキシン血症にかかると,癌が自然に治癒することがある.この現象は,患者の体内で細菌やウイルスあるいはエンドトキシンに反応した免疫細胞が抗腫瘍性の物質を作り,これが癌細胞を殺すことによるものと推測されていた.1975年,米国のOldらがエンドトキシン血症のマウスにおいてこれを証明し,この抗腫瘍性物質をtumor necrosis factor(TNF)(腫瘍壊死因子)と呼んだ.TNFは分子量17,000のペプチドで,現在ではアミノ酸配列はもとより遺伝子も同定されている1)
 一方,細胞障害性T細胞(cytotoxic T cell)による移植抗原の拒絶あるいはウイルス感染細胞や癌細胞の排除の機構の一つとして,T細胞は標的細胞に付着した後,リンフォトキシン(LT)と呼ばれる細胞障害性の因子を分泌する.リンフォトキシンはTNFとはまったく異なった,分子量約25,000のペプチドであるが,TNFとLTを結合する標的細胞上の受容体は同一であり,したがって,その生物作用もほとんど同じである.そこで,TNFをTNFα,LTをTNFβと呼ぶこともある.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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