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文献詳細

雑誌文献

臨床検査34巻1号

1990年01月発行

文献概要

TOPICS

抗イディオタイプ抗体のワクチンとしての応用

著者: 竹田多恵1

所属機関: 1国立小児病院小児医療研究センター

ページ範囲:P.94 - P.95

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 抗体が個々の抗原と特異的に結合する可変部領域には,抗原に対応した固有の型,すなわちイディオタイプがある.これは抗体(Ab1)のH鎖とL鎖のN末端約100個のアミノ酸で構成されていて,それ自体もまた抗原決定基となりうる.すなわち,抗イディオタイプ抗体(Ab2)を誘導することができる.このAb2の中には,ほんの一部ではあるが元の抗原と同じか類似の構造(内的イメージ)を持ち,元の抗原と同じ抗原性を示すことができるものがある.これにヒントを得て,Ab2をウイルス感染や癌の予防・治療に応用する試みがなされるようになった.
 ワクチンとして使える可能性をはじめて示したのはSacksらである.彼らは,アフリカ睡眠病の病原体Trypanosoma rhodesienseに対するモノクローン抗体(MAb)でマウスを免疫し,得られたAb2をマウスに投与したところ予防効果が得られたと報告してる1).ただこの時の予防効果は,MAbを調整したのと同じ近縁のマウスにしか発現されなかった(allotype-restricted).内的イメージを持つAb2ではなかったようである.抗体可変部のイディオタイプ決定基の中には遺伝的背景が関与する領域や,パラトープ(抗原と直接結合する部分)にあずからない領域もあるので,Ab2がすべて有効なワクチンとはなりえない.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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