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文献詳細

雑誌文献

臨床検査34巻11号

1990年10月発行

文献概要

特集 電解質と微量元素の臨床検査ガイド 総論 1 代謝と生理

7)鉄(Fe)

著者: 八幡義人1

所属機関: 1川崎医科大学第一内科

ページ範囲:P.1311 - P.1321

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はじめに
 鉄(Fe)は地球上に広く分布しており,特に鉱石,土には大量に含有されており,その点では,決して微量金属ではない.しかし,いったん生体内をみると,その含有量は極めて微量で,成人男子でもその体内Fe量はおよそ数gにすぎない.また,体内分布にも著しい特徴があり,赤血球内には全体内Fe量の約60%が含まれている一方,他の体組織にはごくまれである.
 他方,機能面からFeの作用をみると,大別して,生体にとって,おおよそ四つの作用を持っているといえる1~9).第一は,ヘモグロビン(hemoglobin;Hb)分子とその生合成の点であり,第二は,細胞呼吸に関与する酸化還元系の諸酵素,例えばチトクロームC還元酵素,コハク酸脱水素酵素(SDH),NADH脱水素酵素,キサンチンオキシダーゼなど,Fe3+⇄Fe2+反応に関与するFeの役割である.第三は,細胞増殖に重要な細胞回転の調節酵素,例えばリボ核酸還元酵素などにおける構成成分としてのFeの作用であり,第四は,重金属としてのFeの直接作用,例えば肺結核症の空洞壁の異常Fe沈着などがそれであり,Feの殺菌作用が示唆されている.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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