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文献詳細

雑誌文献

臨床検査34巻11号

1990年10月発行

文献概要

特集 電解質と微量元素の臨床検査ガイド 総論 1 代謝と生理

12)メタロチオネイン

著者: 鈴木和夫1

所属機関: 1国立環境研究所環境健康部病態機構研究室

ページ範囲:P.1339 - P.1343

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はじめに
 亜鉛(Zn)は生体に必須な微量重金属のうちでは,最も多く含まれている元素である.また,金属蛋白あるいは金属酵素と分類される一群の生体構成成分のうちでは,Znを含むものが最も多い.さらに,Znを含む酵素は核酸の合成または分解を触媒するものが多く,Znが生体にとって極めて重要な働きを担っている金属であることは,古くからよく知られている.一方,周期律表上でZnのすぐ下に位置するカドミウム(Cd)が,どのような生物学的役割を持っている金属であるのか明らかでなかった.Cdの生物学的役割に興味を持ったVallee教授は,ウマの腎臓にCdが多く含まれているという文献から出発し,1957年にウマの腎皮質からCdを含む蛋白を単離した1)
 Cdを含む蛋白を精製し,その性質を明らかにするための研究が開始され,1960年と1961年にKägiとValleeによってその成果が公表された2,3).この蛋白は,それまでに知られていた蛋白と違っていかなる酵素活性も示さず,化学的性質もまったく異なっていた.Cd以外にZnと銅(Cu)を含んでおり,システイン含量も極めて高い低分子量蛋白であったため,金属とチオール基を多量に含む低分子量蛋白という意味で,メタロチオネインと名づけられた.現在に至るまで,メタロチオネインには酵素活性がまったく認められていないことや,化学構造は少しずつ異なってはいるが,あらゆる生命体にメタロチオネインと呼ぶことのできる金属結合蛋白が存在することが明らかになってきたことから,メタロチオネインという命名は適切なものであったといえる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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